空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。

・キャラ崩壊注意。特に、ディオがかなり丸くなっています。


 ――空条承太郎だって、自分に非があると分かれば、前世の宿敵が相手でも素直に謝罪するはず。




空条承太郎の友人と、始まりの二人

 

 

 

 

 

 主人公ズとディオと俺による塩撒きが終わった後、承太郎がジョルノに声を掛けた。

 

 

「そういや、ジョルノ。俺が頼んだ事は?」

 

「抜かりは無いですよ。……ほら、この通り」

 

 

 そう言って、ジョルノがスマホの画面を俺達に見せる。……応接室での出来事の一部始終が、録画されていた。

 

 

「……ん。よくやった」

 

「はァー、何かこそこそ話してるな、と思ってたらこれか!」

 

「ちゃんと証拠を残したんスね!さっすが承太郎さん!ジョルノもグレート!」

 

「本当にさすがだな……これなら、俺の方はいらなかったか?」

 

 

 そう言って、俺もスマホを取り出し……録音アプリを開く。先ほどまでの会話が、音声として流れた。

 

 

「……どうせ戦うなら、今後の役に立ちそうな証拠を手に入れようと思ったが、ジョルノの方が確実だったな」

 

「……くくっ。やるじゃねーか、シド」

 

「証拠が多いに越した事はありませんよ。志人さんのそれも、ちゃんと役に立ちます」

 

 

 承太郎が俺の頭をぐしゃぐしゃと撫で、ジョルノも微笑む。……ようやく緊張が解けた気がする。

 

 

「……助かったぜ。承太郎達がいてくれたおかげで、あいつに立ち向かう事ができた。それから、迷惑掛けてすまな、」

 

「あぁ、待て。謝罪はいらねえ」

 

「そうよ、志人さん。あたし達は、誰も迷惑だなんて思ってないから」

 

「お礼だけなら、ありがたく受け取るっスよ!」

 

「……そう、か。じゃあ――本当に、ありがとう」

 

 

 お礼を言って笑うと、承太郎がまた頭を撫でてきた。それ、止めろ。ぐらぐらする。

 

 それから、俺は少し離れた場所でこちらを見守っていたジョナサンと、ディオの下に行って、彼らに頭を下げた。

 

 

「ジョナサン、ディオさんも……ありがとうございます。特に、ディオさんのおかげでスカッとしました。

 俺、あいつのあんな情けない姿を見た事が無かったので、凄くスッキリしたんです。恐怖心も何処かに飛んで行ったみたいで……本当に、ありがとうございまし――た……?」

 

 

 お礼の途中で伸びて来たディオの手が、止める間もなく俺の頭に届いて……優しく、撫でられる。ほんの一瞬の出来事だった。

 

 

「…………あ、あの、」

 

「おい」

 

「は、はい!?」

 

「先程、遺品のほとんどを売り払われた、と言っていたな?……ほとんど、という事は何か残っている物があるのか?」

 

「……はい。あります。……これです。俺は違いますが、母と祖母がクリスチャンで、亡くなった祖母から母へ。母から俺へ受け継がれたのが、このロザリオでした。

 あの男は過去に、母が必死に止めたにも関わらず、祖母の遺品も全て売ってしまったらしいので……俺にとっては、祖母と母から残された、唯一の形見です」

 

 

 ロザリオを取り出し、ディオに見せる。……彼はそれを見て、ゆっくりと目を細めた。まさか、笑ってる……?

 

 

「……そうか。――ならば、大切にしろ。絶対に手放すな」

 

「放しませんよ。絶対に」

 

 

 自信を持って、即答する。言われなくても手放すつもりは無い。これは、俺の命の次に大切な物だから。

 そう伝えると、ディオは誰の目にも分かる程に笑った。……こいつ、本当にあの(・・)ディオか?

 

 ……いや。この人もまた、今は漫画の世界のキャラクターではなく、現実で生きている人間だ。それなら笑っていても、おかしくない。

 心の中で魔王様って呼ぶの、止めようかな。前世とは違い、今世のこの人は俺が思っている程、恐ろしい人では無いのかもしれない。

 

 

 俺が納得した時、ディオはすれ違い様に俺の頭をポンと撫でて、立ち去って行く。するとすぐに、承太郎達が寄って来た。

 

 

「園原、お前!何したんだよ!?何したらディオにあんな顔をさせられるんだよォ!?」

 

「あ、あんな顔、とは?」

 

「笑顔ですよ。……あんなに柔らかく笑う兄さんは、初めて見ました」

 

 

 どうやら、あの笑顔はレア物だったらしい。

 

 

「――前世のディオは、幼い頃。父親から母親の遺品を売って、酒代にするよう命じられ、それに従った。……従うしか、なかったんだ。彼も父親から暴力を振るわれていたから」

 

「――――」

 

 

 ジョナサンの言葉で、原作のディオの過去を思い出した。……そうだ。あの人の家庭環境もかなり酷かった。

 父親を毒殺しているが、その根底には自分や母親に対する虐待への恐怖と、怒りがあった。……俺と、同じだ。

 

 俺も一歩間違えていたら、今世の父親を殺していたかもしれない。

 

 

「君の父親と、前世の父親が重なり、志人君に前世の自分を重ねてしまったのかも。……ところで、さっき言ってた証拠の扱いはどうするの?それに、志人君の父親についても」

 

「あ、ああ……そう、だったな。とりあえず財団に報告するのは当然として――」

 

 

 ジョナサンが話を逸らそうとする空気を感じ取ったのか、ジョセフは空気を読んでそれに乗った。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 それから。夕食を食べ終わった俺は、承太郎の提案で今日だけはジョースター家に泊まる事になった。

 今日は俺の祖母の命日、しかもその日中に今世のトラウマが襲来したせいで疲れているだろうから、泊まっていけ。……というのが、承太郎の言い分だ。

 

 明日は学校が休みで、俺のバイトも午後からだし、泊まっても明日に支障は出ない。……俺も今日はいろいろあり過ぎて1人になりたくない気分だったし、お言葉に甘える事にした。

 

 

 夕食後。承太郎と一緒に図書室に行くと、そこには先客が2人。

 

 

「あ、ディオさん。ジョナサンも」

 

「ん?……何だ、貴様か」

 

「やぁ。2人も本を読みに来たの?」

 

「はい」

 

 

 備え付けられたソファーに、ディオとジョナサンが隣り合わせで座っている。承太郎が眉間に皺を寄せた。

 

 

「……シド。場所を移すぞ」

 

「え、やだ」

 

「やだって、ガキかよ。……いいから、行くぞ。ここじゃなければ何処でも良い」

 

「何でだよ。お前、さっき"今日は本を読みたい気分だ"って言ってたじゃねぇか。俺だってその気分だ」

 

「……俺の部屋にも本がある」

 

「そっちは読み終わったやつばかりだ。こっちにする」

 

「…………他に人がいない方がいい」

 

「なら、俺もいない方がいいんだな」

 

「そういう事じゃねえよ」

 

「じゃあ、ジョナサンか?」

 

「は?」

 

「――それとも、ディオさんか?」

 

「っ、」

 

「なるほど、ディオさんだな。そうか」

 

 

 承太郎の反応から、ここを離れたがる原因がディオにある事が分かった。

 

 

「前世の事を話してくれた時、今は向こうが下手に構って来ないならどうでもいいって言ってただろ?それなら、わざわざ場所を移さなくてもいいじゃねぇか」

 

「俺はいい。だが、お前は駄目だ」

 

「あ?何で?」

 

「お前は奴に初めて会った時からずっと興味を持たれている。その危険性を自覚しろ」

 

 

 えっ?まだ興味持たれてたのか?

 

 イージスの名付けの時に話し掛けられてから、今日頭を撫でられるまでは、向こうから何かを言ってきた事は無かった。

 だから既に無関心になっているのだろうと、そう思っていたのだが……どうやら違ったらしい。

 

 

「ふーん……ちょうど良いな。俺も今日、ディオさんに興味持ったところだ」

 

 

 最初は怖かったが、今日のディオの様子でこの人も普通の人間だという事が分かったし、今は興味しか無い。

 

 

「シド、お前な、」

 

「じゃあ聞くが、今世のディオさんも吸血鬼なのか?」

 

「あ?…………それは、違うが」

 

「ほら、普通の人間だろ?」

 

「普通、の……?いや、どこが普通だよ」

 

「じゃあお前も普通の人間じゃねぇのか?それなら俺は対応を変えるぜ」

 

「嫌だ」

 

「だろうな。……ディオさんだって、もしもお前と同じ立場だったらそう思うんじゃねぇの?」

 

「う……」

 

「自分が人にされて嫌な事は、他の人にもやったらいけないんだぜ?知ってたか?」

 

「…………知ってる」

 

「分かってるなら最初からやるな」

 

「はい」

 

「ってわけで、今日はここで本読むぞ。よし、決定」

 

「…………はいはい、仰せのままに」

 

「――ぶふ……っ!!」

 

 

 後ろから、誰かの吹き出す音が聞こえた。振り向くと、ジョナサンがディオの肩口に顔を埋めて震えている。ディオはこっちを見てニヤニヤ笑っていた。あれ?

 

 

「あは、あははははっ!ふふ、はははは……っ!!」

 

「……主導権は承太郎にあるのかと思っていたら、実は園原の方が握っていたのか。くく、これは傑作だな」

 

「……主導権?」

 

 

 それは、聞き捨てならないな。

 

 

「ディオさん。……そういう言い方、止めてくれませんか。俺達にはどっちが主導権を握るとか、そういう上下関係は無いので」

 

「……ほう?」

 

「俺と承太郎は親しい友人同士で、対等です。承太郎が俺より下だと思うのも、俺が承太郎より下だと思うのも、どちらも止めてください。――正直に言わせてもらいますが、不快です」

 

「っ、シド!」

 

 

 承太郎に肩を掴まれた。下手に逆らうな、とでも言いたいのだろうか?ディオの隣で爆笑していたジョナサンも、今は目を点にして俺を見ている。

 

 

「…………ふ、」

 

「ん?」

 

「ふふ、くくく……っ!おい。今の聞いたか、ジョナサン。この小僧、俺に逆らったぞ」

 

「……そう、だね。僕も驚いた。前世のディオの事を知った上で、ここまで堂々と文句を言った人って、ジョースター家の人間を除けば、初めてじゃないかな?」

 

「ははは!なるほどなァ。あの時、貴様が密かに牽制してきた理由が分かってきたぞ、承太郎……」

 

「…………ちっ」

 

 

 牽制?……何の事だ?

 

 

「……理由が分かったからって、こいつに余計な手出しはするんじゃねえぞ」

 

「ふん……今はもう、その気は無い。だがその代わりに1つ、聞かせてもらおうか。……園原」

 

「はい?」

 

「――貴様は前世の存在について、どう思う?」

 

「どう思う、って……」

 

 

 ディオの質問の意図が読めない。何が言いたいんだ?

 

 

「……そんな事言われても、俺の前世の人生は短くて、呆気なく死んでしまったから、何とも言えないですよ」

 

「あぁ……死因は、弓と矢だったな。そして虹村形兆……あれには前世の私にも関係がある」

 

「虹村の前世の父親に埋め込まれた肉の芽、ですよね?承太郎の前世の話を聞いた時、その話もしてました」

 

「それを知っているなら、話は早いな。……前世の自分が死んだ原因の大本が、私の存在にあると知った時。貴様はどう思った?」

 

 

 ……あー。なんとなく、ディオの言いたい事が分かってきた。それなら正直に答えよう。

 

 

「――そういう事だったのか、と納得しました」

 

「……それだけか?」

 

「はい。……別に、てめぇのせいで死んだのか、とかは思ってないです」

 

「ほう?私を恨むつもりはない、と?」

 

「全く無いですね。前世は前世、今世は今世なので。……死んだ時のトラウマが今でも残っているのは別として、前世の出来事を今世にまで持ち込みたくないし」

 

「……続けろ」

 

 

 いつの間にか、ディオとジョナサンの表情が真剣になっていた。隣を見れば、承太郎も同じ顔だ。

 

 

「俺にとっての前世とは、"既に終わったもの"です。そして今の俺は、今世の人生が"始まったばかり"。……終わったものに構っている暇は無いです」

 

 

 前世の事も、前々世の事も。俺はできる限り今世には持ち込まないようにしている。今の俺は"前々世の俺"でも、"前世の俺"でもなく、"今世の俺"だから。

 

 

 前々世は言わずもがな、前世は今世と同姓同名だが、今世の俺とは歩んでいる人生が違う。

 例え前世と姿形が同じでも、俺は前世で一度死んでから今世に新しく生まれ変わったのだ、という認識をしている。

 

 前々世と前世の人生を否定する気は無い。どちらも俺の人生だ。特に前世では仗助と出会ってるし、その出会いを否定したい訳じゃねぇ。

 ただ、その人生は俺に例の矢が刺さって死んだ時点で、終止符を打たれた。……もう、再び始まる事はない。

 

 その代わりに新しく始まったのが、今世の俺の人生だった。それだけだ。……この考えは、俺が前世の記憶を持つ人達と関わる時も変わらない。

 

 ディオの場合、原作1部と3部のラスボスだった事もあって、今までは前世と絡めて警戒し過ぎていたが、それは例外だ。

 俺は相手の前世のみを気にするのではなく、今世も含めた"その人自身"を知りたいと思う。直接顔を見たり、話したりして、相手がどんな人間なのかを判断する。偏見は持たない。

 

 

 ……という長い話を、前々世や原作云々を除いて、簡潔に話した結果。

 

 承太郎に肩を組まれ、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。ジョナサンはニコニコと満面の笑み。

 そしてディオは……なんか、すげぇ優しい顔して笑ってるんですが?さすがに今世のディオは丸くなり過ぎだろ。何があったんだよ、あんた。

 

 

「……承太郎が君の事を気に掛ける理由が、よく分かったよ。ディオもそうだろう?」

 

「あぁ。……私やジョナサン、承太郎に……おそらくジョルノもそうだな。

 ――我々のように、前世の因縁に区切りをつけ、今世を生きたいと願う人間にとっては、園原のような人間が、他の誰よりも必要なのだろう」

 

「…………ディオ。お前、」

 

「前世の自分よりも、今世の自分を見ろ。……周囲の人間に、そう言いたいと思った事は無いか?承太郎」

 

 

 承太郎が目を見開き、息を呑む。……ディオの言葉は、以前承太郎が俺に吐露した気持ちそのものだった。

 

 

「私とジョナサンにとっては、今世の自分を見ようとする相手が互いしかいなかった。貴様にとってのその相手は、園原なのだろう?」

 

「……あぁ」

 

「ならば、もう園原に余計な手出しはしない。……私とて貴様と同じ立場なら、ジョナサンにちょっかいを出されたら腹が立つからな。……納得したか?」

 

「…………分かった、もう疑わねえよ。――俺は、今世のあんたを見誤っていた。……悪かったな」

 

 

 帽子を深く被り、そっぽを向きながらも謝罪する。……今までのディオへの態度を考えれば、承太郎はこれでも、かなり素直になったと思う。

 

 

「……いや。私も1つ、謝罪しよう」

 

「何?」

 

「貴様らのどちらかが、主導権を握っている。……そんな見方をした事だ。貴様らの関係を侮辱した事は、悪かったと思っている」

 

「あぁ、その事ですか。こちらこそ、生意気な口利いてすみませんでした」

 

「……一応、謝罪は受け取っておくぜ」

 

「ふん」

 

 

 ……丸く収まった、かな?じゃあ、そろそろ良いだろ。良いよな?

 

 

「承太郎。本選んで来ていいか?」

 

「待て、俺も行く」

 

 

 本を求めて歩き出すと、承太郎もついて来た。さぁ、読むぞー!

 

 

 

 

 

 

「…………もしも、」

 

「……ディオ?」

 

「もしも俺が、前世で園原のような心根を持っていたら。その時の俺とお前は、園原と承太郎のような関係性になっていたのだろうか?……どう思う?ジョナサン」

 

「……うーん……どうかな?――彼らのような綺麗な友情が、僕達に似合うと思う?」

 

「…………なるほど。俺とした事が、下らない質問をしてしまったな。確かに、俺達には似合わん」

 

「そうだよ。前世での憎悪が混ざった友情とか死後に首から下を奪われたとかその他諸々を考えたら、彼らの純粋な関係と僕達の関係には天地の差があるよ?」

 

「……貴様、今世に生まれ変わってからは毒を吐く事が増えたな?そんなに俺が嫌いなのか?」

 

「え?――あんな前世があっても、今世では老衰で死ぬまで友達でいたいな、って思うぐらいには嫌いじゃないし、好きだと思うけど……?」

 

「そういうところだぞジョジョ貴様」

 

「んっ?何が?」

 

「知らん。自分で考えろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

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