空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。


 ――空条承太郎だって、気を抜ける面子の前ではテンションが上がるはず。




ジョースター家と沖縄旅行
空条承太郎の友人に、拒否権は無い


 

 

 

 

 

 クソ野郎の襲来から、数日後。SPW財団の職員である六車さん――以前、スタンド使い登録の手続きをしてくれた職員――が、承太郎と共に俺の家を訪ねて来た。

 

 

「……それは、本当ですか?」

 

「はい。……念のために、こちらから監視をつけますが……ジョルノさんと園原さんから頂いた証拠を突きつけて脅し、ゴホン。説得しましたので、園原さんの父親があなたやジョースター家の人間に接触する事は、二度とありません」

 

「……という訳だから、シド。もう奴から逃げなくても大丈夫だぜ」

 

「…………」

 

「……シド?」

 

「園原さん?」

 

 

 六車さんと承太郎から話を聞いても、しばらくは内容が頭に入らなかった。

 だが、やがてその内容を理解して、もう逃げなくていいのだと、過去の呪縛から解放されたのだと分かった。

 

 

「…………来年、」

 

「ん?」

 

「――来年の春に、母さんの墓参りに行きたい。婆ちゃんも眠ってる、あの教会の墓の前に行きたい。……今はまだ、昔の事を思い出すから、元々住んでいた地域に戻るのが怖いけど……来年の春には、絶対に行きたい」

 

「……その時は、俺も一緒に行っていいか?」

 

「あぁ……あぁ、連れて行く!母さんと婆ちゃんに大事な親友を紹介する!

 

 ……嗚呼。もう、逃げなくていいんだな。無理に顔を隠さなくてもいい。あいつに、怯えなくてもいいのか――そうか……!!」

 

 

 そう言って嗚咽する俺の背を、承太郎が優しく撫でて慰めてくれた。来年の春の墓参り、絶対にこいつ連れて行こう。

 

 

 ……六車さんは、そんな俺達を見て号泣していた。あんた、真面目な顔して意外と涙脆いんだな。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 あと数週間もすれば、学校の1学期が終わる。それはつまり、とある行事が迫っている事を示していた。

 

 そう――期末試験です。

 

 まぁ、人生二度目どころか三度目の俺には大した苦にならない……と、思うだろ?

 ところが。俺にとってこの行事は、かなり気を使わなければいけない物なのだ。……周りに怪しまれない程度に、テストの点数を落とさなければいけないからな!

 

 

 俺の学年には、試験の度に毎回学年1位と2位を争う奴らがいる。……承太郎と花京院だ。

 

 あの2人は1年の頃からずっと、1位と2位以外になった事が無い。内部生の1人に話を聞いたところ、中学の時からずっとそうだったという。

 高校1年の、最初の中間試験を受ける前にそんな話を聞いた俺は念のため、試験では教師や生徒に怪しまれない程度に、手を抜く事にした。

 

 その試験後。俺は自宅に持ち帰った問題用紙を使って自己採点を行い、手を抜いた場合の結果と、本気でやった場合の結果を記録して、試験結果が返って来る日を待った。

 そして当日。学年ごとの順位と点数が廊下に貼り出され、自分が本気でやった場合の結果と照らし合わせた俺は――この学校の試験では本気を出してはいけないと、確信する。

 

 だって、ファンクラブ怖い。

 

 俺が本気で問題を解いたら、間違いなく承太郎と花京院に並んでしまう。という事は、今までずっと2人でトップ争いをしていた奴らの間に割り込む事になる。

 そんな悪目立ちをしたら、ファンクラブの過激派が俺を血眼になって探すだろう。そして吊し上げだ。

 

 心配し過ぎ、とは言えない。ファンクラブの過激派は、過去に何度かやらかしているらしいからな。何がきっかけになるかが分からない以上、下手に目立つとまずい。

 

 

 ……という理由から、何度も手を抜いてやっているうちに、目立たない程度の高得点を取るのも慣れてきた。

 今では学年10位前後をうろちょろするぐらいで落ち着いているのだが……ある日。そんな俺の地味な工作が、承太郎とジョルノにバレてしまった。

 

 

 事の発端は、いつも通り俺と承太郎とジョルノの3人で旧図書館にいた時。次の期末試験の話が話題となり、ふと何かを思い出した様子のジョルノが、こんな事を口にする。

 

 

「――そういえば、志人さんは特待生の入試で歴代最高得点を出したらしいですね」

 

「な、」

 

「は?……おい、シド。それ本当なのか?」

 

「あれ?承太郎さん、志人さんから聞いてなかったんですか?」

 

「聞いてねーよ、そんな話。……シド。本当か?」

 

「――何それ俺も知らねぇ」

 

「あ?」

 

「おや……?」

 

「いやいやいやいや聞いてない聞いてない!」

 

 

 マジで知らねぇよ!何だ、その話は!?

 

 

「入試の結果は返って来てねぇし、返って来たのは学費全額免除の知らせだけだったし……」

 

「結果はネットで公開されていたはずですが……」

 

「……俺、その時はまだスマホ持ってなかったんだよ。パソコンの使用も禁止されてたし。……あのクソ野郎は、俺と母さんには雀の涙程度の金しか渡して来なかったからな。

 隠れてバイトしてた時にスマホ買ったとして、クソ野郎にそれがバレたら俺が金を稼いでる事もバレる訳で――」

 

「もういい。それ以上何も言うな!」

 

「奴を思い出させるような事を言ってごめんなさい!」

 

 

 多分死んだ目をしている俺を見て、承太郎とジョルノは言葉を遮って止めて来た。……そうだな、話を戻そう。

 

 

「……で、ジョルノくん?君はどうやってそんな情報を手に入れたのかな?」

 

 

 個人情報保護の観点から見れば、普通は生徒が入手できるような情報では無いはず。ジョルノは何処でそんな話を聞いたんだ?

 

 

「それは――秘密です」

 

「アッ、ハイ」

 

 

 ジョルノは、意味深に笑う。……深くは聞かない方が良いと、直感した。承太郎から聞いた、"裏番はジョルノ"という言葉も、思い出さなかった事にする。

 

 

「……歴代最高得点、か。それだけ実力があるなら、試験の順位も――あ……?」

 

 

 あっ、やばい。承太郎が気づいた。勢いよく俺を見る承太郎に合わせて、目を逸らす俺。……黒豹の唸り声が聞こえる。

 

 

「シド、てめえ……今までの試験、手を抜いてやがったな?」

 

「な、な、何の事だか俺さっぱり、」

 

「わざとらしく惚けるぐらいならさっさと理由を吐け」

 

「アッ、ハイ」

 

 

 ちょっとふざける事も許されなかった。……正直に事情を説明すると、承太郎とジョルノは驚き、そして呆れた。

 

 

「お前、徹底してるな……」

 

「それだけ、ファンクラブの過激派を警戒しているという事ですよね……まぁ、警戒するに越した事はありませんが……」

 

「だが、手を抜いていた事が分かった今、そのままにしておくのは癪に障るぜ」

 

「……俺は何を言われても、この学校の試験では本気を出さないからな?」

 

「分かってる。それは強制しねーよ。……その代わりに、」

 

「あ?」

 

「――夏休み。俺が今から指定する日の予定を空けておけ」

 

 

 そう言って承太郎が口にしたのは、8月初旬の5日間連続。……これからバイトの日数増やして、代わりにこの5日間を休みにしてもらって……うん。いけるな。

 

 

「……別に構わねぇが、この日に何をするんだ?」

 

「それは……いや、ギリギリまで秘密にしておくぜ。後のお楽しみだ」

 

「おい。何を企んでる?」

 

「お前が嫌がる事ではない。……まぁ、困らせる事にはなるか?」

 

「何だそれ怖い」

 

「心配するな。最後は楽しくなるだけだ」

 

「怖い怖い怖い」

 

 

 承太郎が意味あり気な笑みを浮かべている……!これ、前にも見たぞ!

 俺が梯子から落ちた後。こいつに"助けてくれたお礼に何かできる事はないか"と聞いた時と同じ顔だ。あの時は最初から最後まで、ゴーイングマイウェイ太郎に振り回された。今回も振り回される予感がする。

 

 

「とにかく、その5日間は何も予定を入れるな」

 

「…………あぁ、もう、分かったよ!ちょっと今からバイト先に電話してくるわ。早めにシフトの相談をしておく」

 

「おう」

 

 

 最終的に、俺の方が折れた。……仕方ねぇ。何があっても対処できるように、覚悟しておこう。

 

 

 

 

 

 

「……何故5日間なんですか?あれ(・・)は4日間ですよ?」

 

「最初の日にシドを連れて、あいつに必要な物を買いに行こうと思ってる。……何も言わずに連れて行く詫びとして、金は全部俺から出す」

 

「あぁ、それで5日間でしたか。……それなら、ジョージさんに事情を話してみたらどうです?志人さんが苦労している事を知ってますし、向こうからお金を出してくれるかも」

 

「……そうだな、そうしよう。当日、お前も買い物に付き合うか?」

 

「いいですね、是非。……荷物が多くなるでしょうね。誰かに車を出してもらった方がいいかもしれません」

 

「……女共に頼むと、うるさくなるな。シドを連れて行くと聞けば、もっと騒ぐはず」

 

「では、男性陣から。ジョージさんは仕事が忙しいはずですから、それ以外だと……ジョナサンか、兄さんか」

 

「……どうせあの2人はセットだろ」

 

「でしょうね。そして兄さんは基本、ジョナサンに運転を任せます」

 

「消去法でジョナサンしか残らねえ……」

 

「では、後日お願いしてみましょう」

 

「おう」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 期末試験も終わり、夏休みに突入。承太郎に指定された日までバイトをしたり、学校から出された宿題を大体終わらせたり、忙しい日々を送っていた。

 

 そして、8月初旬。指定された5日間の初日に、俺は承太郎に呼び出されてジョースター邸までやって来た。

 そこで待っていた承太郎とジョルノ……そして、何故かジョナサンとディオも含めた5人で、ジョナサンが運転する車に乗り込む。

 

 

「……で、一体何処に行くんだ?」

 

「ショッピングモールで買い物ですよ」

 

「買い物?」

 

「――さて、ここで問題だ」

 

「あ?」

 

 

 そう言った承太郎はニヤニヤしていて、運転席のジョナサンは楽しそうに笑っているし、ディオとジョルノは似たような意味深な笑みを浮かべている。……事情を分かっていないのは、俺だけか。

 

 

「今日買う物は、もう大体決まっている。ほとんどがお前に必要な物だ。……今からそのリストを教えるから、これが一体何のための買い物なのかを、当ててみろ」

 

 

 そのリストとは、4日分の着替え、水着、洗面用具、日焼け止め、エトセトラ……そして最後に、それらを詰め込む大きなバック、もしくはスーツケース。

 

 

「…………旅行……?」

 

「――Exactly(その通り)

 

 

 えっ。お前が某館の執事のセリフ言っちゃうの?ディオの前だぞ?……とか思ってる場合じゃねぇ!!

 

 

「……おいおいおいおい承太郎くーん?誰が誰といつ何処に旅行に行くんだ!?」

 

「お前が、ジョースター家と、明日から、3泊4日の――沖縄旅行に出発だ!」

 

「――はああぁぁぁっ!?」

 

 

 俺がすっとんきょうな声を出すと、承太郎達4人に大笑いされた。

 

 

「待て、待ってくれ!それ飛行機だろ!?」

 

「既に席は予約済みだ」

 

「今日の買い物も合わせて俺そんな金払えねぇぞ!?」

 

「大丈夫です。それは全て、ジョースター家が払います」

 

「今日の買い物も、父さんから前もってお金を渡されてるよ!」

 

「遠慮はいらんぞ、園原」

 

 

 マジですか。

 

 

「それから4日分の着替えだが、1日ずつ、俺達4人が選んだ服を着せるからな。そのつもりでいろ」

 

 

 マジですか!?

 

 

「…………俺に拒否権は、」

 

「「「無い」」」

 

「あはは……ごめんね、志人君」

 

 

 ――マジかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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