空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。


 ――空条承太郎だって、好きな分野の事なら夢中で解説したくなるはず。




空条承太郎の友人による、人たらし爆撃

 

 沖縄旅行、2日目の朝。俺と承太郎が部屋で身支度をしていると、何故かディオとジョルノが来訪した。朝から一体何の用だと、承太郎が尋ねる。

 

 

「承太郎。今からここの洗面所と、園原を借りるぞ」

 

「は?」

 

「園原……ふむ。やはり私の見立てに狂いは無いな。その服はよく似合っている」

 

「は、はぁ。そう、ですね?」

 

「だが、やるからには完璧にだ。ちょっと来い」

 

「えっ?ちょっ、えー!?」

 

「おい、ジョルノ。どういう事だ?」

 

「まぁまぁ。兄さんに任せてください」

 

 

 背後で承太郎とジョルノの会話が聞こえるが、俺はディオに手を引かれて洗面所へ。……そこでいろいろ手を加えられて分かったのは――ディオ様のセンスが半端ねぇ、という事だ。

 

 

「承太郎、ジョルノ。出来たぞ」

 

「……よう、お前ら。どう思う?これ」

 

「「――誰?」」

 

「ですよねー」

 

 

 数分後。全身ディオ様コーディネートになった俺が、こちらです。

 

 服装は白いタンクトップの上に、薄いピンクの麻混シャツ。下はクロップドデニム。それから、普段は服の中に仕舞っているロザリオも、タンクトップの上に出している。

 俺さえ良ければ、ロザリオを表に出して欲しいとディオに言われ、たまには良いかと服の中から外に出してみた。それを見たディオが嬉しそうに笑ったので、素直に出して正解だったと思う。

 

 そんな服を着ている俺が洗面所で最初にやられた事は、スキンケアだった。そして、眉毛を整えるなどの軽いメイクまで施される。

 さらに髪型。いつもは掻き上げているだけの前髪を下ろし、片側を耳に掛けて、ディオが持って来ていたピンでそれを止められた。

 それとは逆側の前髪は、横に軽く流す。……仕上げに、俺が学校で使っている伊達眼鏡を装着。

 

 

 最後に鏡を見れば、そこには別人になったイケメンがいたわけだ。……いや、それは外見だけで、中身はいつもの俺だが。承太郎とジョルノが"誰?"と言いたくなる気持ちは、よく分かる。

 

 

「……ディオがその服を選んだ時から、ピンクのシャツが意外と似合うなと思ってはいたが……」

 

「髪型を変えてメイクまですると、大分印象が変わりますね。伊達眼鏡のおかげで、目付きの悪さも全く気になりませんし……」

 

「確かに……」

 

「昨日のジョナサンが選んだ服を着た志人さんは、大人っぽい爽やかさがありましたけど、今の志人さんは年相応の爽やかさがありますね」

 

「……年上の女から好かれそうな見た目だな」

 

「分かります」

 

「…………そんなにじろじろ見ないでくれ」

 

 

 恥ずかしくなってそっぽを向くと、そこには満足そうな顔をしているディオの姿が。

 

 

「お前は目付きは悪いが、素材が良い。普段からそうしていれば、この私ほどでは無いが良い男だぞ」

 

「……ありがとうございます、ディオさん」

 

 

 その後。他の人達よりも遅れて、朝食を取るために本館の食堂に行くと、さっそく女性陣に囲まれてしまった。

 カッコいいだの可愛いだのキャーキャー言われて困った俺は、とにかくディオを持ち上げる事にした。このコーディネートは全てディオに手掛けられた物で、俺がこうなったのは彼のおかげだ、と。

 

 すると、女性陣はこぞってディオを褒め称える。……さすがの彼も照れ臭かったのか、ちょっと居心地悪そうにしていた。

 そんなディオをからかって小突くジョナサンと……何故かディオを睨む、ジョセフと仗助。後で聞いたところ、彼らはディオのセンスの良さに嫉妬していたとか。

 

 

「あの野郎の事を俺の恋人まで褒めてたんだぞ!?睨むのも仕方ねえだろ!?」

 

「俺だって志人さんをこんな風にコーディネート出来るようになってやる!!」

 

「……ジョセフはともかく仗助。お前、それでいいのか……?」

 

「いくらなんでも、仗助は志人さんの事が好き過ぎるのでは?」

 

 

 仗助のずれた発言と、それを聞いた承太郎とジョルノの呆れ顔がなかなか印象的だった。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 視線、視線、視線。……視線が刺さる。あと、女性達がざわざわする声。

 

 

「……2日前、ジョナサンも入れた5人で買い物に行った時もそうだが……本当にお前らといると視線が刺さるな!」

 

「いや、今回は俺達だけのせいじゃねえだろ」

 

「そうですよ。志人さんも原因です。むしろ、いつも以上に注目されている気がします」

 

「ふっ……私のコーディネートのおかげだな」

 

「でしょうね!」

 

 

 現在。俺と承太郎、ジョルノとディオの4人は、かの有名な美ら海水族館に来ている。ちなみに、ジョナサンは恋人のエリナさんと一緒に別の場所でデート中だ。

 最初はここに行きたいという承太郎に付き合う形で、俺と2人で行く予定だったが、途中で暇そうにしているジョルノとディオを見つけたので、せっかくだからと誘ってみた。

 

 その時誘った事を、ちょっとだけ後悔している。

 

 

(ディオのコーディネート効果がすげぇ……)

 

 

 今までに無いくらい、俺にも視線が刺さっている。落ち着かない……!

 

 

「……な、なぁ承太郎。このヒトデの名前、分かるか?」

 

「ん、ああ。それはな――」

 

 

 落ち着かないので、元海洋学者を巻き込んでその解説を聞きながら、気を紛らす事にする。

 と、最初は気を紛らす事が目的だったんだが、今では解説の方が面白過ぎて、それを聞くのが目的になっている。

 

 

「――そもそも、ヒトデってどういう生き物なんだ?」

 

「棘皮動物、だな。ナマコやウニもここに含まれる。ちなみに、世界にいる棘皮動物の種類は6000以上だと言われている。その中で、ヒトデは2000種類ほど」

 

「えっ?ヒトデ、多過ぎだろ。見分けつくのか?」

 

「そうだな、俺でも覚え切れない。見分けも難しい。……その2000種類の中でも、日本にいるのは約250種ほどだという。世界に比べたら少ないな」

 

「……承太郎さん。僕、ヒトデには血液や脳が無いって昔聞いた事があるんですが、それって本当ですか?」

 

「ああ、本当だ」

 

「マジで?じゃあ血管もねぇのか?そんなの、どうやって体に栄養運んでんだよ。酸素とか必要だろ」

 

「ふっ……良い着眼点だな。確かにこいつらには血管は無いが、代わりに水管がある」

 

「……水管。名前から察するに、海水を取り入れているのか?海中には植物プランクトンや海藻があるからな。それらのおかげで、海水には酸素が含まれている」

 

「……ディオも鋭いな。その通りだ」

 

 

 俺以外にも、ジョルノとディオが興味を示して承太郎に話を振る。……水族館に設置されてる解説板を見るよりも、承太郎の話の方が分かりやすいんだよなぁ。

 そして承太郎の解説は、ヒトデだけでなく他の海洋生物にも及ぶ。

 

 

「はいはい、承太郎先生!」

 

「何かな、シド君」

 

 

 おっ?ノリが良いな、先生。

 

 

「ジンベエザメの名前の由来って何ですかー?」

 

「あの体の模様が、夏着の甚平に似ている。もしくは、上から見た時の姿が甚平を身に付けているように見えたから、その名前がついたとされている」

 

「……承太郎先生。ジンベイザメと一緒に泳いでいる、あのエイは何ですか?」

 

 

 ジョルノまで先生呼びを始めた。こっちもノリが良い。

 

 

「ナンヨウマンタだ」

 

「マンタ……エイとの違いは?」

 

「マンタはエイの一種だな。エイは体の下に口があるが、マンタはジンベイザメのように真正面に口がついている。それから、エイは主にカニやエビ、貝などを食べるが、マンタはプランクトンを食べる」

 

「へぇ……」

 

「詳しいなァ、承太郎先生?」

 

「…………てめーにそう呼ばれると鳥肌が立つ。止めろ、ディオ」

 

「くくっ……!」

 

 

 あ、さすがにディオに呼ばれるのは嫌だったらしい。

 

 

 このように、承太郎の解説を聞きながら水族館を回っていれば、視線なんて気にならない……と思いきや、そうはならなかった。むしろ周りに人が増えた。

 周囲の観光客が、承太郎の解説を盗み聞きしていたからだ。そりゃ分かりやすいからな!気持ちは分かるが、群がるのは止めて欲しい。

 

 承太郎達もそれに気づき、途中から解説は止めて普通に回る事にした。……大勢に注目されるよりも、女性達の視線を我慢した方がまだマシだった。

 

 

 館内の観光が終わった後に、水族館のショップに寄り道した。ここで全員と別れ、それぞれ好きに見て回る事に。……が、

 

 

「君、1人?やだ、カッコいい!」

 

「えー?カッコいいより、可愛いじゃん」

 

「良かったらこの後、私達と遊ばない?」

 

「い、いや、あの――」

 

「悪いが、こいつは俺の連れなんでな。他を当たれ」

 

「あ、ちょっと!」

 

「あらー、残念……」

 

 

 1人になった途端、俺は年上の女性グループに囲まれてしまい、颯爽と現れた承太郎によって回収され、2人で行動するようになった。

 

 

「……シド。お前、因縁付けてくる野郎共は上手くあしらうくせに、ああいうしつこい女のあしらいには慣れてねえんだな」

 

「……そうだよ、悪いか!?俺は目付き悪いせいで普段のてめぇみたいに女に囲まれる事が皆無なんだよ!どうやって切り抜ければいいのか分かんねぇし!」

 

「眼鏡外して睨めば一発じゃねえか」

 

「それは最終手段だ!1人の男として、女を睨むなんてできる訳がねぇ。こんな目で睨まれた人が可哀想だろ」

 

「……本当にお人好しだな、お前は」

 

「そんなんじゃねぇよ。この配慮は女子供限定だ」

 

「と言いつつ、男が相手でもあまり睨まないようにしてるだろ?」

 

「…………」

 

 

 図星を突かれて思わず沈黙すれば、承太郎がため息を吐く。

 

 

「……そういうところがお人好しなんだよ。つけ込まれないように気をつけろ」

 

「はーい、先生」

 

「もう先生じゃねえ。……親友として、忠告してるんだ。本当に気をつけろよ?」

 

「……分かった」

 

 

 承太郎がそこまで言うなら、気をつけた方がいいんだろう。……ただ、まだあまり自覚できて無いんだよな。具体的に、俺のどういうところがお人好しなんだ?

 

 その時、承太郎の足が止まった。……視線の先にあったのは、小さなストラップになった海洋生物達。種類がたくさんある。

 

 

「……ザトウクジラってさ、」

 

「……ん?」

 

「ディオさんのイメージがあるんだよな」

 

「待て待て、それはどういう……ああ、いつもの癖か。何故そう思った?」

 

「何かの本で読んだ記憶があるんだが、ザトウクジラは他の海洋生物を助ける事があるんだって?」

 

「……そうだな。以前からそれ以外の鯨類や、海洋生物以外の生物にも利他や博愛精神があると言われているが……

 昔、別種のクジラの子供が母親とはぐれてしまい、シャチの群れに襲われていたところを、ザトウクジラの群れが助けるという行動が確認されたらしい。……それの事か?」

 

「そう、それだ!」

 

 

 さっすが博士。よく知ってるわ。

 

 

「……その行動と、この前ディオさんがあのクソ野郎から俺を守ってくれた時の事が、重なったんだ」

 

「…………」

 

「あの時のディオさんの背中は、クジラみたいに凄く大きく見えた。……その子供のクジラもさ、ザトウクジラの群れが守ってくれた時、俺と同じような事を考えたんじゃないか……なんて思ったりして」

 

 

 話している途中で照れ臭くなり、ザトウクジラのストラップをなんとなく手に取って誤魔化す。

 すると、その手の中に誰かの手が伸びて、勝手にストラップを取っていった。それから頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。

 

 

「え、」

 

「――そういう事なら、私はこれを買うとしよう」

 

「ディオさん!?」

 

 

 犯人はディオだった。あんた、いつからいた!?いつから話聞いてたんだ!?

 

 

「志人さん」

 

「うわ、ジョルノ!?」

 

「僕を海洋生物に例えるとしたら、どれですか?」

 

「お前を?……あー、そうだな……」

 

 

 これまたいつの間にか側にいたジョルノに驚きつつ、俺は1つのストラップを手に取る。

 

 

「――アシカ……?」

 

「……ジョルノが?」

 

「……海のギャングの異名がある、シャチを選ぶんじゃないかと思ってたぜ」

 

「それも考えたけどな。アシカは頭が良くて芸達者だし……それに、英語ではSea lion(海のライオン)と言うらしい。海洋生物縛りじゃなければ、俺はジョルノにライオンの雌のイメージを持ってるし」

 

「ライオンの……雌、ですか」

 

「野生のライオンの群れは、雄よりも雌の方が狩りをするだろ?前世でギャングのボスだった時のお前の事はよく知らないから、今世のお前に対する勝手なイメージになるが……

 ――ライオンの雄みたいに緊急時にのみ動くリーダーというより、他の雌達と共に、自ら積極的に動く方が好きなタイプじゃないかと思ってな」

 

「――――」

 

「あと、俺は後ろでふんぞり返ってる雄ライオンより、ジョルノみたいに気高い雰囲気がある雌ライオンの方が好きだから……って、ジョルノ?どうした?」

 

 

 目を見開いて固まっているジョルノの前で、アシカのストラップを揺らす。……しかし次の瞬間、急に動いた彼がストラップを奪った。

 

 

「これ買います。絶対買います!」

 

「お、おう。好きにすれば?」

 

「ジョルノお前……ふふ、耳、赤いぞ……!」

 

「フッ、くくく、ふは……っ!おい、園原……っ、ジョナサンはどうだ?」

 

 

 何故かそっぽを向くジョルノと、笑いを堪える承太郎とディオ。……首を傾げつつ、ディオの問いに答えた。

 

 

「ジョナサンは……スナメリですかね?」

 

「すなめり。……何故だ?」

 

「よく笑ってるから。スナメリの顔って、ずっと笑ってるように見えるでしょう?……で、これは本人には言えないんですが、」

 

「ん?」

 

「――よく笑っているからこそ、その時に腹の中で何を考えているかが分からない」

 

「よし、ジョナサンはスナメリだな。間違いなくこれだ。私が買っておく」

 

「あ、はい」

 

 

 ディオは不自然な程に早口でそう言うと、スナメリのストラップを手に取る。……やっぱり、今世のあの人は腹黒系なのか?

 

 

「……なぁ、シド。俺は?」

 

「承太郎もか?そうだな、お前は……これ」

 

「……アザラシ、ですね」

 

「アザラシだな。……承太郎が、アザラシ?」

 

「…………」

 

 

 承太郎にアザラシのストラップを見せると、目で"どういう事だ、てめえ"と訴えられたので、説明する。

 

 

「アザラシは元々、好奇心旺盛。承太郎もそうだろ?あと、漢字にすると海豹って書くから。海洋生物縛りじゃなければ、お前のイメージは黒豹だし」

 

「黒豹……」

 

「あぁ。別に普通の豹でも良いんだが、黒豹の方が見た目カッコいいし、俺は動物の中だと黒豹が一番好きだし」

 

「は、」

 

「豹は木登りが得意だ。得物を狩った後もその場で食べるんじゃなくて、わざわざ木の上に持って行く。それって、狩りを成功させた後も、安全な木の上に行くまで気を抜いてないって事だろ?

 お前も同じだ。戦闘後も気を抜かず、油断しない。冷静なプロのハンターで、歴戦のスタンド使い。それと、喧嘩やってる時の動きも豹みたいにしなやかで――」

 

「もういい充分、充分!分かったから黙れ」

 

「むぐ?」

 

 

 承太郎の片手で口を塞がれた。何だよ、最後まで言わせろよ。

 

 

「ふふ……耳が赤いですよ、承太郎さん?」

 

「はっ!ふ、くく、はははは……!!」

 

「てめえらも黙りやがれ!!」

 

「……アザラシいらないなら戻すが、」

 

「待て、シド!……それは買いだ。寄越せ」

 

 

 ……乱暴な言葉とは裏腹に、やたら丁寧な手つきでストラップを取られた。

 

 結局。承太郎達はそれぞれストラップを購入。さらに承太郎が、イルカのストラップを買って俺に渡した。何でイルカ?

 

 

「イルカは万人に好かれる。嫌いだという人間はいないはずだ。それに、アニマルセラピーでも活躍しているからな。……つまり人たらしであり、誰かの心を癒す力も持っている。お前にぴったりだろうが」

 

「はぁ?……まぁ、くれるって言うならもらうが、お前はイルカじゃなくていいのか?好きだろ?良かったらアザラシと交換するけど」

 

「……そうだな。イルカが好きだ。だからこそお前に――あー、いや。何でもない。とりあえず、イルカはお前が持ってろ。俺はこのアザラシが良い」

 

「?……分かった」

 

 

 ……後に、これらのストラップはジョナサンも含め、5人それぞれの携帯に付けられる事になった。お前ら、男同士でお揃いとか気にしないのね?

 俺は恥ずかしくて一度外そうとしたんだが、承太郎とジョルノに捨てられた子猫みたいな目で見つめられてしまったので、渋々やめた。

 

 

 

 

 

 

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