・男主視点。
・ご都合主義、捏造過多。
・オリジナルのスタンドと、スタンド使いが登場します。
――空条承太郎だって、前世の宿敵とその息子と共闘する時があるはず。
「――――え?」
「志人!?」
今、何が起こった……?
「なっ、何だよ今の……!と、とりあえずバリア!って、駄目だ使えない!?志人、しっかりして!君の心が安定しないとバリアが使えないんだ!!」
勝手に出て来たイージスの、焦った声が聞こえる。……聞こえるが、上手く処理できない。だって、俺の、俺の大事な――
「――っ、承太郎!承太郎!!こっちに来てくれ!承太郎ぉぉっ!!」
――ロザリオが、母さんと婆ちゃんの形見が、消えた。
―――
――――――
―――――――――
時は、少し前に遡る。
水族館の館内から出た俺は、承太郎達に待ってもらってトイレに向かった。そして用を済ませて外に出る。……それは、突然だった。
首筋に一瞬冷たい何かが当たって、ぴりっと痛みが走り、首に掛けていたロザリオが落ちていくのが感覚で分かる。
慌てて下を見てそれを取ろうとしたら――目の前で、見る見るうちに消えていった。
「…………え?」
パッと消えるのではなく、まるで景色に溶け込むように消えたのだ。その場にしゃがみ込んで地面を触っても、ロザリオはどこにも無い。
その事実を呑み込めずに呆然としていたら、イージスが大声で承太郎の名前を呼ぶのが聞こえて、バタバタと駆け寄って来る音も聞こえた。
「イージス!どうした!?」
「承太郎、志人の首!ロザリオが!!」
「首?――志人、お前、それ……っ!!」
「切り傷ですか!?すぐに治療を、」
「待て、ジョルノ!ここでは人目が多過ぎる。場所を移せ!」
「はい、兄さん!……承太郎さん、志人さんをお願いします」
「ああ!……志人、行くぞ。来い!」
……承太郎に引きずられ、喧騒から離れた場所にやって来た。
ジョルノのスタンドによって首の切り傷を治療されたあたりで我に返った俺は、まずジョルノにお礼を伝え、それからディオに謝罪した。
「すみません。ディオさんが選んでくれた服、血で汚してしまって、」
「そんな事を気にしている場合か!?それに貴様が謝罪する必要は無い!……いいから話せ。何があった?」
「……俺も、状況がよく分かって無いんですが……」
ありのままに、自分が見た事を説明すると、承太郎達は険しい表情になった。
「――スタンド攻撃?」
「……おそらく、そうだな。園原を狙った理由は分からないが……あのロザリオは、かなり高価な物だろう?」
「はい。……母の遺書にも、そう書かれていました。犯人は、ロザリオを売って金にする事が目的なのかも……」
自分で言いながら、腹が立ってきた。大事な形見を盗んだ犯人に対しても……油断していた、自分に対しても。やはりロザリオは隠しておくべきだった。これは俺の責任だ。
俺が、自分でなんとかしないと。
「……触れた物を透明にするという能力を持つスタンドには、心当たりがある」
「何?」
「だが、これはあの子の能力では無い。あれは不可視化する能力だが……シドの話では、背景に溶け込むようにして消えたようだからな。不可視ではなく、迷彩の能力じゃないか?」
「……迷彩、ですか。それなら、僕が知っている元暗殺者が、そんな事もできる能力を持っていますが……
今世では足を洗ってますし、彼は僕と繋がりがある人を狙うような、無駄に馬鹿な真似をするはずが無いので、彼は犯人ではないでしょう」
あー……某赤ちゃんと、某暗殺チームのリーダーですね、分かります。というか某リーダー、足洗ってたのか。それなら、他のチームメンバーも……?
いや、それよりも。2人のおかげで、敵スタンドの正体のヒントを掴めた気がする。
「切られる前に、首に何か冷たい物が当たった感覚があった。今思うと、あれは……吸盤だったかもしれない」
「吸盤――っ、タコの触手か?」
「なるほど。タコなら保護色という能力がありますね」
「だが、触手で首が切れるのか?」
「それの正体がスタンドなら、触手を鋭利な物に変化させる事ができても、おかしく無いだろう」
保護色の能力と、鋭利な触手を持つスタンドか……それさえ分かれば、あとは犯人を探すだけ。
「……もしも犯人の目的が、ロザリオを売り払う事だとしたら、急がねえとな」
「……園原の母の形見を売り払うなど、やらせてたまるか」
「せめてロザリオの一部が残っていれば、僕が生命力を与えて生物に変化させ、ロザリオ本体の下に戻ろうとする性質を利用して、それを追う事ができるのですが――」
「――あるよ」
そう言ったのは、イージスだった。彼は握っていた片手を広げて見せる。……ロザリオの珠だ!
「1個だけ落ちていたのを見つけたから、念のために拾っておいたんだけど、役に立てそうだね」
「よくやった、イージス!……ジョルノ、頼む」
「……分かりました。お借りします」
イージスから俺へ、俺からジョルノへと渡ったそれは、生命力を与えられ、テントウムシになった。
「では、行きましょう」
―――
――――――
―――――――――
テントウムシに導かれ、やって来た場所は人気の無い廃墟。慎重に歩を進め、ある建物の前に到着すると、誰かの話し声が聞こえてきた。
その時点でテントウムシは回収し、元の珠の姿に戻した後は、俺の服のポケットに入れられている。
「――あーあ!何やってんだよ、お前!このロザリオ、傷が付いちまってるじゃねぇか!!いつも言ってるだろ。てめーのスタンドを使う時、ネックレスとかの類いはもっと上手く切り取れってよぉ!」
「ごめん、兄貴」
ロザリオに傷。そう聞こえた瞬間、中に飛び込みそうになり、ギリギリで耐えた。……俺の両肩に手を置かれたおかげでもある。後ろにいる、承太郎の手だ。
冷静さを取り戻し、思考する。……どうやら、犯人は2人の男のようだ。そして会話から察するに、謝った男の方が実行犯だな。
それに、今スタンドって言った!やっぱりスタンド使いか。
「……まぁいい。他に盗んだ物も合わせれば、これがあまり売れなくても問題ねぇだろ」
「……そのロザリオ、本当に売れるのかな?何か古そうだし、安物っぽく見えるぜ」
安物じゃねぇ!!俺の大事な形見を馬鹿にするな!!
「おい……オレのスタンドの力を疑うのか?あぁ?」
「あ、ご、ごめん、兄貴!疑ったわけじゃない。兄貴のスタンドのおかげで、今までも儲けられた事は分かってるから……」
先頭にいたジョルノが少しだけ体を起こし、扉の無い入り口から中を覗く。俺もそれに続いた。
建物の中には、会話している男が2人。実行犯の方は体格が大きく、兄貴と呼ばれた方は小柄だ。
「本当に分かってんのか?盗みを実行するのはお前のミミックだが、そもそもオレのテイスティング・アイが無ければ、良い獲物が見つかんねぇんだぜ?オレのスタンドの、物の価値を正確に見破る力が無ければな!」
「あぁ、分かってる!」
「……ふん!」
ミミックに、テイスティング・アイ……それが、こいつらのスタンドの名前か。そして、兄貴と呼ばれている男のスタンドは、物の価値を正確に見破る能力を持つ、と。……戦闘向きじゃないのか?
「……今回盗んだ物を全部売り払ったら、そろそろ充分な金が貯まるはずだ。そしたら、次は……」
「――イタリアか?」
「そうさ!」
と、思わぬ言葉を聞いたせいだろう。ジョルノの肩が揺れた。……何故イタリア?どう見ても、奴らは日本人なのに。
「兄貴からパッショーネっていう組織の事は聞いたけど……今世もあるのか?その組織」
「オレが出来る範囲で調べても何も情報は出て来なかったが、前世であったんだから、今世だってある!きっとな!」
「そっか、兄貴が言うならあるんだろうなぁ」
しかもパッショーネ!?……俺、承太郎、ディオの3人で顔を見合せ、揃ってジョルノを見る。
「……お前の組織って、今世もイタリアにあるのか?」
「ありませんよ!」
小声で尋ねると、小声で叫ばれた。……なるほど。じゃあ奴らの勘違いか。
「オレは前世でも日本人だったが、イタリアで育った。その時はパッショーネの下っ端でしかなかったし、ちょっと失敗してすぐに死んじまったが、今世では違う!
お前とコンビを組めば、2人なら成り上がれる!絶対だ!今度こそ幹部まで上り詰めて――ドン・パッショーネに会うんだ!!」
いるぞ?ドン・パッショーネはここにいるぞ!?
「そのドン・パッショーネって、すげーカリスマがあるっていう奴だっけ?」
「馬鹿野郎!奴とか言うな!あの方と言え!!
オレはまだ会った事はねぇけど、前世で聞いた話じゃ悪のカリスマであり、どんな奴でも膝を折りたくなるとか、あの方のためなら命を差し出しても構わないとか、多くの構成員にそう思わせるような魅力を持つボスなんだってよ!あと、とんでもなく美しい金髪の男だとか……」
ジョルノが頭を抱えている。確かに、今のジョルノのイメージとはかけ離れてるよな。とんでもなく美しい金髪の男、というのは当たっているが。
……ん、待てよ?そういえば、そのイメージに完全に当てはまる人間は他にいるな。ちょうど、俺と承太郎の後ろに。
「……おい。あの野郎、前世のディオの話をしてるんじゃねえんだよな……?」
「私に聞くな、承太郎……」
そんな小声の会話が聞こえたので振り向くと、ディオをジト目で見る承太郎と、頭を抱えているディオがいた。……黒歴史ってやつですね、ディオ様。
「とにかく、そんな悪党の中の悪党であるあの方に、オレは憧れている!イタリアに行ってまたパッショーネの一員になり、あのお方の目に留まる事が当面の目標だ!お前と組んで盗みをやって金を稼いだのは、そのためだからな!」
あーあ。確実に実現不可能な夢を語ってやがる。というか、ジョルノが悪党の中の悪党だと?ふざけんな。今世のこいつはそんなんじゃねぇよ。侮辱するな。
「……そういや、兄貴。今日の最後に盗んだ、このロザリオの持ち主の事なんだけどよ」
と、向こうの話題が俺の話になった。
「あのガキ、何でロザリオなんて持ってたんだろうな。それも、金になるようなやつを」
「あぁ?知らねーよ、そんな事。大方、これの価値も知らずに、カッコつけたくて首に掛けてた悪ガキだったんじゃねぇか?年相応に遊んでそうな見た目だったし、やけに整った顔だったしな」
「それか、本当にクリスチャンだったり?」
「はぁ?っ、ハハッ!がははははは!!おいおい、お前にしちゃあ面白い冗談だな!そんなわけねぇだろ。
今時、キリストを信じる馬鹿なんていねぇよ。神を信じる奴らの気が知れないな。本当に神がいたら、オレ達みたいな悪党は存在してないだろ?」
「……それもそうかぁ」
「だろ?……でも、そうだな。盗んだ後はすぐに逃げたから、今ガキがどうなってるかは知らねーが、もしも本当にクリスチャンだったら、今頃困ってるだろ。
なんせ、不幸な事が起こったから祈りを捧げて安心したいって時に、肝心な祈るための道具が手元に無い!――"助けて、神サマ!"ってなぁ!ぎゃははははっ!!」
大声で嗤う、クソ野郎共の不快な声が聞こえる。奴らは、キリスト教徒を馬鹿にした。それはつまり、キリスト教徒だった母と祖母の事も馬鹿にしている。
それを理解した俺が、怒りのままに行動を起こそうとした瞬間――背筋が冷えた。
(…………う、後ろ見たくねぇ……!!)
前にいるジョルノからは、背中しか見えないのに威圧感を感じるが、それよりもやばいのは後ろだ、後ろ!!勝手に体が震える……!
なんか、こう、空気が重い。ちょっと息苦しいぐらいに。……もしかして。これが殺気というやつなのか?
本当は、俺の油断が原因だからと、犯人を見つけた後は自分の力でロザリオを取り返そうと思っていた。……しかし。そんな考えはたった今、消え失せた。
俺、怒ってる場合じゃねぇわ。むしろストッパーに回らなきゃ駄目だわ。……え、待って?俺ストッパーになれるの?これ。
(前にいるのは雌獅子、後ろにいるのは黒豹とザトウクジラ――否、海洋生物縛りじゃなければ、虎。そのうち翼が生えそうな、最強の虎)
…………いや、無理だ。無理無理無理。手綱握れない。無理。
「……シド、ジョルノ」
「お、おう」
「はい」
「さっき話した手筈通りに行くぞ」
「了解。……では、僕は一旦離れますね。準備が整ったら、承太郎さんの携帯にメッセージを送ります」
そう言ったジョルノが静かに離れ、建物の裏側に回り込む。
作戦は既に、ここに到着する前に立てていた。俺以外の3人は皆、優秀な頭脳を持っているからな。作戦の立案は簡単だった。
「さて……ディオ。どっちがどっちを殴る?ちなみに、俺はついさっきシドを侮辱しやがった野郎の方を殴りたい」
「……譲る気は、無いようだな。……はぁ。ならば仕方ない。私は園原の首を傷つけた上、大事な形見まで盗んだ男の方で我慢してやろう。その代わり、私の分まで殴れ」
「ああ、いいぜ。やってやるよ。……シド。それでいいよな?」
「…………あー、うん――程々に、な?」
2人からの返事は、無かった。……マジで行き過ぎた時は、頑張って止めよう。
「……ジョルノからメッセージが来た。シド、そろそろだぞ」
「了解」
いつでもバリアを使えるように、身構えておく。……それから間もなく、奴らの悲鳴が聞こえた。
「――蛇だぁ!?」
「な、なんだこいつらは!?」
ゴールド・エクスペリエンスが、割れた窓の破片に生命力を与え、複数の蛇を生み出し、それを奴らの元へ放ったのだ。
「おい、逃げるぞ!」
「ま、待ってくれ兄貴ぃ!!」
もしも弟分(仮)の方がスタンドで対処した場合に備え、別の作戦も用意していたが、その心配はいらなかったようだ。向こうはパニックになって、スタンドを使う事を忘れている。
慌てて、1つしか無い出口……俺達がいる方へ逃げて来る。さぁ、俺の出番だ。
「イージス、やれ!」
「了解!」
イージスのバリアによって、奴らを囲む。……いつものバリアは俺を中心として広がるが、今回はバリアの中に俺がいない。
以前検証した結果。このバリアは中に俺がいなくても、射程距離内の何処かに出現させる事ができると分かった。ただし、その場合は自由に大きさを変えられない。
一度大きさを決めたら、そこから範囲を広げたり、狭めたりする事はできないらしい。
だが、敵を捕らえたい時は役に立つ。
「す、スタンド使いだと!?おい、ミミック出せ!このドームを破れ!!」
「わ、分かった!」
弟分が出したスタンドは、俺達の予想通り、タコによく似た人型のスタンドだった。鋭利な刃物のような触手がバリアを破ろうと、攻撃してくる。……しかし、
「あ、兄貴!これ硬いぞ!?壊せない!」
「なっ、なにいぃ!?」
イージスのバリア……ジェダイトをイメージしたバリアは、スタープラチナのラッシュでも破れなかった。生半可な攻撃で突破できるわけが無い。
「よくやった、シド。イージス」
「後は任せるがいい」
承太郎とディオが、スタープラチナとザ・ワールドを出したまま進み出る。……震えが止まらねぇ。スタプラさんとザワさんのタッグ、夢みたいな組み合わせだが、これは酷い。
"混ぜるな、危険"とは、この事だろうか?
俺が感じている恐怖以上のものを抱いたのだろう。奴らの血の気が引いていた。
「お、おお、おい!オレごと擬態しろ!!早く!!」
「えっ!?あ、そうか、わ、わ、分かった!!」
と、ミミックが奴らの手を掴むと、背景に溶け込むように消えていく。……全然見えない。
「む……やはり、擬態の能力を持っていたか」
「確かに、人間の肉眼ではよく見えん。だが――人間ではない生き物が相手なら、どうだろうなァ?」
そう。ここには人間ではない生き物もいる。そいつらは、奴らのすぐ側まで迫っていた。
「――ひいいいぃぃっ!?へ、蛇が……!?」
「くそっ!離れろ!!な、何で分かったんだこいつら!?」
「……それはそうだろう。蛇はピット器官という、熱を探知する器官を持っているのだから」
割れた窓から建物内に侵入したジョルノが、そう言いながら悠然とこちらに歩いて来る。……蛇のピット器官を利用する事を考えたのは、もちろん彼だ。さすがである。
「姿は見えにくいが、人体の熱はそのままだ。ならばそれが分かる蛇達にお前らを囲ませて、居場所を把握すればいい……」
「こ、この蛇はてめーの仕業か、ガキ!誰だてめーは!!何なんだよ、てめーらは!?」
あちゃー……よりによって、ジョルノにそれ聞く?馬鹿だなぁ。
「おや?僕をご存知ではない?さっきあれ程褒め称えていたのに?」
「へ?」
「――前世のイタリアンマフィア、パッショーネのボス、ドン・パッショーネこと、ジョルノ・ジョバァーナは、僕です。……それが何か?」
とっても素敵な、凄みのある笑みを見せたジョルノは、まさしくマフィアのボスだった。
ご本人登場という、まさかの出来事に言葉を失ったのか、奴らは静かになる。ついでに擬態も解けた。
「……さて。覚悟はいいな?」
「やれやれだぜ。――お楽しみターイム、だ」
「「アッ」」
その後の展開は……まぁ、ご想像の通りだ。
――もしかしてオラ無駄ですかーッ!?
「オラオラオラオラァ!!」
「無駄無駄無駄無駄ァ!!」
――YES!YES!YES!"OH MYGOD"……老ジョセフがこう言いたくなる気持ちが、よく分かったわ。