・男主視点。
・ご都合主義。捏造過多。
・後半、ジョルノの過去について捏造あり。ジョルノが弱ってます。
――空条承太郎だって、弟が欲しいと思う事があるはず。
ロザリオを盗んだ犯人達は、承太郎とディオにボコボコにしてもらった後。SPW財団――なんと、今世では沖縄にも支部がある――の構成員を呼び、回収してもらった。
それから数多くの盗品も、財団の方で持ち主を探してくれるという。それも財団に任せてロザリオを回収した俺達は、ディオが運転する車で別荘まで戻った。
別荘に到着した俺達は、傷ついたロザリオを直してもらうために、仗助に声を掛けたのだが――
「――ぎゃあっ!?ゆっ、志人さん!?何スかその血はぁっ!?」
「あっ」
そういえば服についた血はそのままだったと、仗助に言われて思い出した。ロザリオを直してもらったら、早めに脱いで洗濯しなければ。
仗助の叫びを聞いて集まって来た、ジョースター家の皆さんとその恋人達、それからシーザーも含めて大騒ぎになったが、事情を説明して安心してもらった。
その後。仗助のスタンドでロザリオを修復。……前よりも綺麗になったかもしれない。仗助に頭を下げてお礼を言うと、慌てて頭を上げてくれと言われる。
「……ところで、志人さんの首を傷付けたクズはどこにいるんスか?俺にも殴らせてくださいよ」
「もう財団の人達に回収されたぞ」
「ちっ……!殴って治してのエンドレスやりたかったのに」
怖い。怖いよ、黒柴君。
―――
――――――
―――――――――
沖縄旅行、3日目。さーて、本日の俺のファッションは――
青いグラデーションの半袖サマーニットの上に、五分袖の黒いパーカー。下は真っ白なクロップドパンツ。……1日目、2日目とは違い、男らしさが出ている服装だ。
「……やっと着たな、それ。待ってたぜ」
「待ってたのか」
「ああ。……なんせ、お前は他の男が選んだ服ばかりを着て、一向に俺が選んだ物を着ようとしなかったからなあ」
「おい、その言い方止めろ。上半身裸で言ってる時点でいろいろアウトだ」
「焦らしていたのか、もしくは――浮気か」
「色気を仕舞え、色気を。焦らしてもいねぇし浮気でもねぇし、そもそも俺達はそんな仲じゃねぇだろうが、ダーリン」
「ふはっ!つれないなあ、ハニー?」
「やべえ、そのセリフ超似合うぞお前……!」
「はははははっ!!」
……まぁ、そんな訳で。今日の俺は承太郎コーディネートだ。
朝から馬鹿話を始める程ご機嫌な様子を見るに、俺がこの服を着るのを待っていたのは、本当だったのかもしれない。
「……にしても、ちょっと意外だな」
「あ?何がだ?」
「承太郎がパーカーを選んだ事だよ。お前、普段パーカー着てねぇだろ。だから、それ以外の服を選ぶんじゃないかと思ってた」
私服の承太郎は何度も見たが、こいつがパーカー……フードが付いた服を着ているところは、見た事が無い。おそらく、フードよりもキャップを被る事を好んでいるせいだと思うが。
「……選ばねーよ。パーカー以外は」
「えっ?何で?」
「だって、お前。パーカー好きだろ?」
「…………んん?」
「違うのか?」
「いや、合ってる」
確かに、俺が好んで着る服はパーカーだが……?
「それに、私服は黒とか暗い青系統の服をよく着てるよな?」
「お、おう……よく見てるな?それは俺の好きな色だ」
「だろうな。――だから、選んだ」
「はっ……?」
「最初から、俺は自分好みの服をお前に着せるつもりはなかった。
お前が気に入る服を……旅行が終わった後も好んで身に付けてもらえるような、そんな服を探して、意図的にそれを選んだ。それだけの話だ」
「――――」
「……どうだ?それなら、今後も使いたいって思っただろ?」
ニヤリと。男臭く笑った親友に対して、俺が次に取った行動は……フードを思い切り被って、自分のベッドの枕に顔を沈める事だった。
「ふぐううぅぅぅ……っ!!」
「……シド?」
「――してやられたぞ、くそったれ。ふざけんな、このいけめん」
「あぁ?」
「これからも重宝するっつってんだよ!!」
顔を上げてそう叫ぶと、一瞬目を見張った承太郎は、それはもう良い笑顔を見せる。そんな嬉しそうにすんじゃねぇ!ますます照れるだろうが!!
その後。午前中はそれぞれ自由に過ごしたのだが、午後からはジョースター家+α全員で、琉球村に向かった。
この琉球村は夏のみだが、営業時間後に夏祭りを開いているらしい。事前に予約した人だけが参加できるイベントで、全員が参加できるように、ジョースター家の方で既に予約していたそうだ。
その時間が来るまでは、全員自由行動だ。
「……おい、シド」
「ん?……あぁ。とりあえず、一度は声を掛けておくか」
琉球村に到着し、他の人達がそれぞれグループを作って移動していく中。ポツンと、1人だけ離れた場所にいる人物。……俺と承太郎は、そいつに声を掛けた。
「――ジョールーノ!」
「うわっ」
「どうした?来て早々にへばってんのか?」
「……熱中症にでもなったか?」
「……いえ。大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」
表面上は大したことは無いと微笑みを浮かべるジョルノだが……俺は承太郎と顔を見合せ、それからジョルノの頭を撫でた。承太郎も、それに続く。
「なっ、……何ですか?」
「いや、別に?気にすんな」
「……ちゃんと水分取れよ」
それだけ言い残し、ジョルノを置いて立ち去る。……うん、布石はこんなもんだな。
「……本当に、あれだけで良かったのか?」
「あぁ。むしろ、最初はあれだけに留めておいた方がいい。ジョルノの場合は下手に構うよりも、"こっちはお前の事を気にしてるんだぞ"っていう意思を仄めかす程度で良いんだ。
ジョルノは賢いから、あれだけで俺達があいつの異変に気づいている事を、理解したはずだ。
……後は俺達に話すのか、それとも別の誰かに話すのか、自分1人で解決するのか……そこはジョルノが決めるしかない」
「そうか……」
「まぁ、だからといって、放置するわけじゃねぇぞ?あいつを見掛けたら観察して、さらに変化が無いかどうかを確認する。……今できる事は、それぐらいだな」
「……分かった。……俺は人の機微とかそういう話になると、てんで役立たずになっちまう。だから、お前の判断に任せるぜ。シド」
「おう」
俺達が、ジョルノを気に掛ける理由。……それは、午前中に俺達の下へ訪ねて来たディオが、ジョルノの異変について相談しに来た事がきっかけだった。
「――昨夜から、ジョルノの様子がおかしいのだ。……声を掛けても反応が遅い。上の空になる事が多い。それから今朝の様子を見るに、あまり眠っていない。
私が知る限り、あの子がああなったのは初めてだ。何があったのか聞きたいが……素直に話すとは思えん。
だが、もしかすると……私やジョナサンではなく今世では同年代で、仗助や徐倫よりも関わりが深いお前達であれば、あの子も事情を話す気になるかもしれない。
お前達3人は、数ヶ月前から急に仲良くなっただろう?……何故分かったか、だって?私はジョルノを、ジョナサンは承太郎の事を特に気にしていたからな。
互いに無関心だったジョルノと承太郎が、互いに関心を持つようになった。そして2人は、園原がいると3人で話している事が比較的多かった。……気づくのも当然だ。
とにかく。ジョルノの事を気に掛けてやってくれ。やり方はお前達に任せる。それと何か協力できる事があれば、私かジョナサンに声を掛けるといい」
……という、ディオの話を聞いた俺達は、しばらくジョルノの様子を見て、確かに何かおかしいなと判断した。それが、先ほどの声掛けに繋がっている。
「承太郎は家族4人で一緒に回るんだろ?じゃあ、この辺で一旦別れて、」
「何言ってやがる。お前も行くんだよ」
「はぁ?いやいや家族水入らずの邪魔をするわけには、」
「今さらだろうが。来い」
「えぇー……?」
承太郎に引きずられ、空条家と合流。そこでも俺は邪魔だからと離れようとしたら、徐倫とホリィさんにまで捕まり、結局5人で回る事になった。
既に面識がある3人はともかく、この旅行で初めて会った貞夫さんにとっては迷惑じゃないかと心配していたが、そんな事は無かったらしい。
貞夫さんは物静かな男性だ。俺が合流した時も、一言"構わない"と言っただけで、反対する事は無く。俺達が歩いている時はいつも最後尾にいて、静かに家族を見守っている……そんな人だった。
しかし、一度だけ。承太郎達が側にいない時に、俺に声を掛けて来た事があった。
「――君は、承太郎の事をどんな人間だと思っている?」
それは、たまに会話の途中で話が飛ぶ承太郎のように、脈絡の無い問い掛けだった。
今まで話し掛けて来なかった人が、突然そんな事を言ったから驚いたが、その分何か意味があるのだろうと思って、俺は正直に答えた。
不器用だけど優しい、普通のいい男だ。
……俺がそう言うと、貞夫さんは目を大きく見開いて固まる。あれ?何か既視感があるぞ?と思った次の瞬間、彼は大笑いしていた。
以前何度か見た、承太郎の大笑いとよく似ている。……それから彼は、"承太郎は良い親友を見つけたな"と呟いて、満足そうな顔を見せた。
それ以降。俺を見る貞夫さんの目が、優しくなった気がする。
やがて、琉球村の営業時間が終了し、夏祭りが始まった。いろいろ屋台が出ていて楽しい。
食事も遊びも楽しんで、完全に日が落ちた頃。最後のイベント……ホタルと星座の観察ツアーが始まる時間になった。普段都会で見られない物を見るために、俺も承太郎も参加するつもりだったが……
「――志人さん、承太郎さん……ちょっと、いいですか?」
と、ジョルノが声を掛けて来たので、そちらを優先する事にした。……どうやら、彼は俺達に話す事を選んだらしい。
先にジョナサンとディオに声を掛けて、俺達3人が抜ける事を他の人達が気にしないように、上手く言い訳して欲しいと頼んだ。
人気の無い場所まで移動し、ジョルノを間に挟んで、3人並んで座った。例のごとく、イージスに防音バリアを張ってもらう。
「……昨日。前世ではパッショーネに所属していたという男と接触して、自然と、当時の事を思い返したんです」
なんとなく、予想はしていた。様子がおかしくなるきっかけらしき物は、それぐらいしか無いだろうと。
「僕はギャング達の活動によって腐ってしまった街を変えるために、パッショーネという1つの組織を乗っ取った。……その事に後悔はありません。失った物は多かったが、それと同時に得る物もあった。
しかし、問題はその後。……僕が新たにボスになった経緯は上手く隠しましたが、今まで素性を隠していたボスの正体が、こんな若造だった事に勝手に失望し、僕のやりたい事に反発する者、足を引っ張る者が大勢いました。
それらを統率して、足並みを揃えて……一枚岩にするために、何年も費やした。これでようやく、本格的に街の浄化に着手する事ができる。……そう思っていましたが、それも難航しました。
前世のヨーロッパは僕の予想以上に、腐りきっていた。
政治家や警官の汚職に、麻薬の温床。犯罪の増加……それらは、パッショーネの力でも押さえきれない程だった。
それどころか一度は統制したパッショーネも、末端から再び腐っていき、そちらも制御しなければならない事態となりました。
昨日の、元パッショーネ所属だという男。あのように腐りきった人間が増えたんです。
……そして結局。僕は前世で生きている間に全てを浄化する事ができずに、今世に転生した。
今までは前世は前世、今世は今世と割り切っていました。ジョルノ・ジョバァーナではなく、ジョルノ・ジョースターとしての人生を新たに始めた。……その、つもりだった」
そこで一度言葉を切ったジョルノは、深く、ため息をつく。
「……でも僕は昨日、1つだけ、未練がある事を自覚してしまったんです。
――何もかも中途半端なまま、転生してしまった。……それが、僕の未練だ。
前世のパッショーネやヨーロッパを浄化しきれなかった事で、助けられなかった命が多かった。……多過ぎた。
僕は1つの組織の上に立つ人間として、失われた命を背負い、全てを浄化しなくてはならない責任があった。……彼らから受け継いだ物を、さらに"先"へ進めなくてはならなかった。
それなのに……僕は一度背負った物を下ろす事も、受け継いだ物をさらに先へ受け継ぐ事もできていない。……ほら。何もかも、中途半端だ」
ジョルノはそう言って、自嘲する。……その疲れきった表情が、以前海辺で見た承太郎の表情と重なった。
「……そんな事を昨日から、ぐるぐると考え続けていたんです。無駄な事は嫌いなはずなのに、どうしても考える事を止められなくて……」
「……なるほど。それは――確かに、無駄な事だ」
「おい、シド」
承太郎が視線で俺を咎めるが、それに構わず続ける。
「お前の前世は終わった。……終わった人生は、もう二度と始まらない」
「…………そう、ですね」
「既に今世の新たな人生が始まっている以上、前世には戻れない。ジョルノの言う通り、前世の未練についていつまでも考え続ける事は、無駄な事だぜ。
はっはっは。馬鹿だなぁ、お前。考え続けて1日無駄になっちまったぞ?ほら、空を見ろ。もう真っ暗だ!」
「……ふふ。全くですね。あーあ、1日無駄にした!」
「そうそう、笑え笑え!はははっ!!」
「ふ、ふふ、あはははっ!!」
「……お前ら、どうした……?」
1人困惑する承太郎には悪いが、とりあえず、ジョルノの話を笑い話にしてやる。
こいつの場合は承太郎とは違い、励まされるよりも、あえて思い切り笑い飛ばしてやった方が気分も晴れるのではないかと、そう思った結果だ。
笑いが収まった頃。次に口を開いたのは承太郎だった。
「……重いよな。責任ってのは」
「……承太郎さん?」
「俺もそうだ。自分1人で、何もかも背負わなければならないと、無意識にそう思っていた。
俺の周囲の人間は、俺の事を勝手に最強のスタンド使いだと言い始めた。……そんなわけあるか。俺が最強でも無敵でも無い事は、無力な人間である事は、俺自身が一番よく分かってるのに……
だが、俺は。それでも無意識に、周りから勝手に背負わされた責任を、そのまま背負い続けようとした。
……まあ。そんな俺の胸ぐらを掴んで"馬鹿野郎"と、"そんな事してたらいつかお前の心が死んでしまうぞ"と、叱ってくれた奴がいてな。それのおかげで、体も心も大分軽くなったよ」
……俺の事じゃねぇか。あの時は胸ぐら掴んですみません。
「……そうですか。承太郎さんでも、そんな事があったんですね」
「当然だろ。俺は普通の人間なんだぜ?時には弱音を吐く事もある。……お前も同じだ」
「……僕も?」
「そう――ジョルノも、普通の人間だ。……そうだよな?シド」
「……あぁ。ジョルノは普通の人間だ。お前も、承太郎も、現実で生きている等身大の人間なんだ」
「僕が、普通」
きょとんとしている顔は、年相応だ。そうそう。今世のお前は普通の中学生なんだよ。もう、ギャングスターじゃない。
「そう。……それでも、どうしても前世の未練が気になるっていうなら、それを今世で果たせばいいじゃねぇか」
「え?」
「おいおい、シド。今世でもギャングスターになれ、とでも言うつもりか?」
「んなわけねぇだろ。……俺が言いたいのは、前世で助けられなかった分だけ、今世の誰かを助ければいいんじゃねぇか?って話だ」
「今世の、誰かを?」
「あぁ。極端な話になるが、前世で助けられなかった人が100万人いたとして、今世では同じ数の人を――いや、その倍の人数を何らかの形で助けられたとしたら、前世の未練なんてどっかにすっ飛ぶだろ。きっと」
「――――」
「……もっとも、今のはただの一例だ。他に何か、前世の未練に決着をつける方法を思い付いたら、それをやればいい、」
「ふふ、」
「ん?」
「――そうか。……そうすれば良かったのか」
と、晴れやかな笑みを浮かべたジョルノは、自らの両手を見て、それから手を握る。
「志人さん、承太郎さん。ありがとうございます。……これなら、前世の未練に決着がつきそうです」
「おう。……良かったな」
「良い顔になったじゃねぇか」
承太郎はジョルノの頭を撫で、俺は背中を軽く叩く。ジョルノは照れ臭そうに笑い、
「――
そう、呟いた。
「……んん?何だって?」
「
「はい。承太郎さんはイタリア語も分かるんですね。……志人さんと承太郎さんは、僕の兄のような人達だなと、そう思って……だから、
「ははっ!そうか。俺達にとっても、お前は弟みたいなものだな。なぁ?承太郎」
「弟……ちょうど欲しかったんだよな」
「おや。可愛い弟ができて良かったですね?」
「自分で言うな」
「お前は可愛いより、あざといの方が似合うんじゃね?」
「……お兄ちゃん達、ひどい」
「あざとい。以上」
「顔と態度をまるっと別人にしてからやり直せー」
「本当にひどい」
……そんな訳で、俺達に元ギャングスターの弟分ができました。
どうやら今世のジョルノは末っ子属性だったらしく、これ以降、3人でいる時は俺と承太郎によく甘えるようになる。……やっぱり可愛いかもしれない。