空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。

・オリキャラが登場します。


 ――空条承太郎だって、親友からの好感度を無意識に爆上げさせている時があるはず。




空条承太郎の友人は、宣言する

 

 

 

 俺が王子扱いを受ける不本意な事があった日から、数日。この学校では、おかしな出来事が多発している。……この前ジョルノが話してくれた、噂の通りに。

 

 最近、この学校内で破局する恋人同士や、友人同士が増えているらしい。

 

 それも、徐々に仲が悪くなって関係が壊れるのではなく、直前まで仲良く会話していた人達が突然口喧嘩を始めて、最終的に絶交状態になるとか。

 いくらなんでも、おかしい。俺も、承太郎も、ジョルノも。そう結論付けた。俺達だけでなく、学校に通う前世の仲間達の中でも数人、この件については怪しいと睨んでいる。

 

 ――もしかしたら、俺達以外のスタンド使いの仕業ではないか、と。

 

 という訳で、この件については目下調査中だ。犯人や、スタンドを持たない学生と教師達に怪しまれないよう、慎重に事を進める必要がある。

 学校に通う前世の仲間達には漏れ無く知らされ、もし何か手掛かりを見つけたら、学校の裏番――もとい、情報通であるジョルノに報告するようにと、指示されていた。

 

 

 だが。今の俺は、そんな調査をする余裕が無い。

 

 

「――園原くん!」

 

「あ、お姫様が来たぞ。王子様」

 

「行って来い、リア充め!!」

 

「いや、だから俺は、」

 

「そう恥ずかしがるなよ、園原」

 

「そうだそうだ!さっさと行け!水野さんが待ってるだろ!?」

 

「…………はぁ……」

 

 

 有無を言わさない周りの空気に負けて、俺は長い黒髪の女子生徒……水野さんの元へ向かった。……ここ数日、彼女からの猛アタックを受けている。

 

 水野さんは、数日前に俺が助けた同学年の女子生徒だ。彼女は俺が助けた日の翌日から、別クラスだというのにわざわざ俺のクラスまでやって来て、とにかく俺と話そうとする。

 頬を赤らめて上目遣いで話す様子は、元の顔が可愛いので男連中にもそれなりに人気だ。……彼女に好意を寄せられているな、というのは察する事ができた。

 

 ただ、今のところ今世では誰とも付き合う気が無い俺にとって、彼女の猛アタックは困る物だ。

 むしろ最近は、周囲の人間が囃し立てて来る元凶でもあるので、迷惑な存在になりつつある。……承太郎が言っていた通り、俺は優しくし過ぎたのだろう。

 

 追い払えるものならそうしたいが、周りの反応が怖い。

 

 他の生徒達は、俺と水野さんの動向を面白半分に見ている。水野さんはそれなりに人気のある女子生徒であるため、彼女を拒否すれば、酷いバッシングを受けるだろう。

 例え俺が被害者側になったとしても、問題を起こして教師に目を付けられて、特待生の学費免除が水の泡になったら、貧乏学生である俺が泣きを見るだけだ。

 財団からたまに仕事を依頼されて、それのおかげで前よりも金が貯まっているが……できれば、それは貯金しておきたい。

 

 ――父親から解放された事で、俺には新しい目標ができた。それを達成するためにも、金が必要だ。

 

 

「……ねぇ、園原くん?聞いてる?」

 

「っ、ああ、聞いてるよ。遊びに行く話だよね?……ごめん。俺、一人暮らしでバイトしながら生活してるからさ。

 最近、放課後は特に忙しくて時間が無いんだ。悪いけど、それは遠慮させてもらうね」

 

「えー?……じゃあその代わりに、これからはお昼一緒に食べようよ!もっと園原くんとお話したいの」

 

「い、いや。俺、いつも友達と食べてるから、」

 

「何言ってんだ園原。それぐらい気にするな!」

 

「そうだぞ。こっちの事は気にせず、水野さんと一緒に食べればいい」

 

「お前は水野さんとイチャイチャしてりゃいいんだよ!!」

 

「やだ、イチャイチャなんて……!でも園原くんの友達もああ言ってるし、いいよね?」

 

「…………うん、いいよ」

 

 

 またこの流れだ!事を荒立てないためにも、俺は棒読みで許可するしかない。あー、憂鬱。……また承太郎に愚痴聞いてもらおう。もしくは、旧図書館組のグループでも――

 

 

「――マリちゃん。そろそろ準備しないと、移動教室の授業、間に合わないよ」

 

「あ、ほら。お迎えが来たよ、水野さん。授業に遅れないようにしなきゃ」

 

「…………もう、しょうがないなぁ。じゃあ、園原くん!お昼休みにまた呼びに来るね!」

 

「あぁ、うん、はいはい」

 

 

 助け舟が来た!これ幸いと、昼休みにまた来るという言葉は適当に聞き流し、水野さんを送り出す。

 しかし、マリちゃん?……あぁ、そういえば水野さんの下の名前はマリエだか、マリコだった気がする。漢字は全く覚えていないが。

 

 と、水野さんをマリちゃんと呼んだ女子生徒……火宮幸恵がこちらに振り向き、ジェスチャーで謝って来る。俺は苦笑いで手を振り、それに応えた。

 

 火宮さんの名前は、すぐに覚えた。水野さんが階段から落ちた時に一緒にいた彼女の友人で、その繋がりで何度も顔を合わせているし。

 何よりも、今回のように俺から水野さんを引き離してくれる、ありがたい存在だからな。……見た目が華やかな水野さんの陰に隠れてしまっているが、個人的には火宮さんも美人だなと思う。

 

 何はともあれ、やっと解放された。早く中に戻、

 

 

「――っ!?」

 

 

 勢いよく、振り返る。

 

 

(今、気味の悪い視線を感じたような……?)

 

 

 財団から任された仕事をやっているうちに、少しずつ不穏な気配を感じられるようになった気がしていたが……それも確実では無い。

 あまり過信しない方がいいだろう。気のせい、という事にしておく。

 

 

 ……その日の昼休み。俺を呼びに来た水野さんと2人きりで昼食を取る事になり、何かと距離を縮めようとする彼女の猛攻をかわしながら、昼食を終えた。

 それから、水野さんと共に教室がある階まで戻って来た俺は、生徒達が行き交う廊下を歩いている途中で――シャキンッ!という音を聞いた。……あ?

 

 

「――もういいわ!あなたと付き合ってた私が馬鹿だった!」

 

「あぁ、ボクもそう思うよ!君を好きになったのは間違いだった!」

 

「!?」

 

 

 その時。後ろからそんな声が聞こえて振り向くと、女子生徒と男子生徒が言い争いをしていた。その周囲も、彼らを見ながらざわざわと話し合っている。

 そんな言い争いの現場の奥に、目立つ男がいた。……承太郎だ。隣に花京院もいる。

 

 承太郎は俺が見ている事に気づいたようで、しばらく騒動に目を向けてから、再び俺と目を合わせた。ゆっくりと、瞬きをする。

 

 

(……分かってるぜ、承太郎)

 

 

 例の噂の突然の仲違いが、目の前で起こっている。俺達以外のスタンド使いに関する手掛かりがないかどうか、よく観察した方がいいだろう。

 

 

「……園原くん。教室戻らないの?」

 

「え?……あぁ。彼らの事が、ちょっと気になってね」

 

「あの状態ならどうせ別れちゃうよ。それよりも時間ギリギリまでお話しよ!ほら、行こう行こう!」

 

「あっ、ちょっと水野さん……!?」

 

 

 彼女に手を引かれ、振り払ってでもその場に留まるかと一瞬考え……結局、止めた。

 既に男女のいざこざが起こっているこの場で、新たな騒動を起こして目立つ訳にはいかないと、冷静に考えた結果だった。

 

 後に、昼休みが終わる直前に承太郎にメッセージを送り、先程の事を謝る。……すると、あいつはむしろ俺の事を心配してくれた。親友の優しさが心に染みる……!

 

 

 さらに。俺はその日のうちにジョルノにもメッセージを送る。

 

 あの言い争いが起こる前に聞いた音について、念のために報告した。まるで――鋏で何かを切ったような、あの音。

 最初は気のせいかもしれないと、半信半疑だったのだが……ジョルノによると、あの場にいた承太郎と花京院も同じ音を聞いたらしい。

 

 という事は、偶然ではない。……しかし、承太郎達がその場にいた人達にさりげなく聞いてみたところ、俺達が聞いた音と同じ音を聞いた人間はいなかったそうだ。

 

 まさか……スタンド使いにしか聞こえない音?もしそうだとすれば、あの音はスタンドから出た音なのか?だが、俺はスタンド像を見ていない。

 承太郎達も、あの男女が言い争いを始める瞬間を目撃したそうだが、スタンド像は見えなかったという。

 

 ようやく手掛かりを掴んだと思ったが、肝心のスタンド像は同じスタンド使いでも見えず、そして使い手も不明。……一筋縄では行かない、か。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 そんな、ある日の事。

 

 

「――園原くん!私と、付き合って欲しいの!!お願い、恋人になって!」

 

「…………は?」

 

 

 出会ってからまだ間もないというのに、水野さんから告白されました。――放課後、クラスメートがまだほとんど残っている、教室内で。

 

 

(――正気か?この女)

 

 

 脳内が宇宙猫状態の俺は、クラスメートが一斉に囃し立てる中。この状況をどう打開しようか、必死に考えている。

 

 水野さんは俺に脈があると思っているのか?俺は彼女のアピールに全く反応していなかったはずだ。

 いや、俺が彼女を無視する事を諦めていた時点で、勘違いされていた可能性もあるか?俺が普段よく一緒にいるクラスメート3人が、俺が彼女に対して照れていると勘違いしているように。

 

 しかし……水野さんの、やけに自信満々な様子が気になる。

 

 

「……ここで答えないと、駄目かな?」

 

「うん。この場で答えて!」

 

「園原、うじうじすんなよ!」

 

「男ならびしっと決めろー!」

 

「女の子に恥掻かせるな!!」

 

 

 何だか偉そうな彼女と、さらに盛り上がるクラスメート。……そんなクラスメート数人の言葉と、いつの間にか俺と水野さんを囲むように立っている男子生徒達。

 

 

(…………あぁ、なるほど理解)

 

 

 こいつら、謀りやがったな。

 

 俺は充分この女に優しくしてたし、クラスメートと争わないように我慢した。

 だが、承太郎やジョルノが言うように、俺がお人好しだったから結果的にこうなってしまったのだろう。自業自得だ。

 

 仕方ない。ここではっきり、宣言しよう。お人好しが過ぎる自分から脱却するための、第一歩だな。

 

 

「……水野さんに恥を掻かせないために、別の場所に移動したかったんだけど、仕方ないね」

 

「え、」

 

「君には悪いが、その告白は断らせてもらう」

 

 

 すると、クラスメート達が一斉に俺を非難する。だが俺は怯まずに、大声でこう言った。

 

 

「――俺が逃げられない状況を作った君達に!非難される謂れは無い!!」

 

 

 普段は猫被って大人しくしている俺が、初めて怒った事に驚いたのだろう。彼らは静かになった。

 

 

「……最初に言っておくよ。俺はこの先、誰かと恋人関係になるつもりは全く無い。なぜなら、今の俺には目標が――将来の夢があるから。

 その夢を叶えるために、俺は大学に行くつもりだ。そのために勉強してるし、バイトしてお金を貯めている。凄く忙しいんだ。

 

 俺の事を想ってくれる水野さんには、本当に悪いと思ってるけど、今の俺には恋愛をしている余裕が無い。だから、君の告白は断らせてもらう。……本当に、ごめん」

 

 

 下げたくない頭を無理やり下げて、誠心誠意謝罪しているように見せ掛ける。

 

 

「でもね。これだけは言わせてもらうよ、水野さん。――告白するなら、自分1人の力でぶつかって来て欲しかったな、俺は」

 

「っ!?な、どうして、」

 

「どうして分かったか?……分かるに決まってるじゃん。クラスメート達は不自然なくらい囃し立てるし、いつの間にか男子達が俺と水野さんを囲むように立ってるし?

 これ、どう考えても俺を逃がさないようにするための包囲網だろ?」

 

 

 そう言って男子生徒達や水野さんを一人ひとり見つめると、全員が目を逸らした。ほら、やっぱりな。この下衆共が。

 

 

「……そういう訳で、俺はそろそろ帰らせてもらうよ。じゃあね」

 

 

 通学鞄を持って歩き出すと、クラスメート達はおどおどした様子で道を開けた。……廊下に出ると、野次馬がたくさんいる。

 

 

「……お騒がせしました!うちのクラスがうるさくしちゃって、本当にごめん!……俺も、みっともなく怒鳴っちゃったし……」

 

 

 潔く謝罪し、次いで申し訳なさそうな様子を見せると、彼らは口々に気にするなと言い、むしろ面白半分で見ていた事を謝って来た。

 ……よし。これなら、俺の方が被害者であると印象付ける事ができただろう。他クラスから非難される事は、これで回避できるはずだ。

 

 あとは、クラスメートや水野さんが教師を巻き込むような騒動にしない限り、俺の学費免除は安泰……と、思いたい。

 最後に彼らの罪悪感を刺激したつもりだし、それでこれ以上俺を悪く言う事も無い……と、いいなぁ。

 

 まぁ、何とかなるさ!

 

 

 早歩きで昇降口に向かい、靴を履き替えていると、後ろから声を掛けられた。……火宮さんだ。髪を揺らしながらこちらに駆け寄って来る。

 

 

「園原くん。マリちゃんが、ごめんね」

 

「あぁ。別に、もういいよ」

 

 

 作り笑顔で、そう言った。……俺を罠に嵌めようとした事を許すつもりは、さらさら無いけどな。

 

 

「そっか……優しいね、園原くん」

 

「そうかな?」

 

「うん。そうだよ」

 

 

 火宮さんは、俺の真意を見抜けなかったようだ。俺は"許す"とか、"気にしてない"とか、そんな類いの言葉は一言も言って無いのだが。

 

 

「あ、もしもマリちゃんがまた何か言って来たら、良かったらわたしに言って!園原くんに迷惑掛けないように、何とかするから」

 

「あはは、ありがとう。助かるよ」

 

 

 と言いつつ、彼女に期待はしない。……確かに、水野さんよりは大分マシだが、火宮さんには水野さんをコントロールする力が無いと思う。

 もしもそんな力があったら、今日の出来事を未然に防ぐ事ができたはずだ。

 

 それに、火宮さんが本当に水野さんを止める気があるなら、あの場ですぐに止めるべきだった。……彼女は野次馬の中にいたが、何もしないで見物しているだけだった。

 

 

「……じゃあ、俺はバイトがあるからお先に失礼するよ」

 

「あ、うん。バイバイ!また明日ね」

 

 

 火宮さんと別れ、学校の外に出た。……バイト終わったら承太郎に電話するか、旧図書館組のグループで愚痴を聞いてもらおう。

 

 今日は絶対に吐き出さないと気が済まねぇ!!

 

 

 

 

 

 

 

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