・男主視点。
・オリキャラとオリジナルスタンドが登場します。
・後半、シリアス。承太郎が弱っています。
・ご都合主義。捏造過多。
・またもや念のため。not腐向けです!
空条承太郎は、大切な存在を護るためなら、自らを犠牲にする事を躊躇わない。
いつだって、誰かの前に堂々と進み出て、自分が護りたい人達には背を向ける。
……そうやって、誰かを護る事には慣れていた。彼の前にはいつも、誰もいなかった。誰かの背中を見る事はなかった。
だから――
――空条承太郎だって、目の前に突然、自分が護りたいと願う、大切な存在の背中が現れたら、愕然とするはず。
「――俺の手で!承太郎を護る!!イージス・ホワイトは、そのために目覚めたスタンドだ!!」
今までの大人しそうな顔とは打って変わり、醜悪な笑みを見せた火宮さんは、自分の前世について語った。
生まれつきのスタンド使いだった事。病弱だった事。自分の人生への諦めと絶望。
使用人に恋をしたが、相手には既に恋人がいる事を知り、その関係に憎しみを抱き……その時、スタンドの能力が判明した事。
それ以来、他人の不幸を見るのが楽しくて仕方なかった事。
ついでに、鋏のスタンドの大体の能力が分かった。……このスタンドはやはり、人同士の縁を切る能力を持っているようだ。
人同士の縁は赤い紐状の物となって、互いの胸から伸びた物が絡み合い、1本の紐になっている。それが細いと縁も浅いが、太いと縁が深く、絆も強いという。
紐は互いに対して好意的であればある程、複雑に絡み合っているらしい。
細い紐は簡単に切る事ができるが、太い紐は切りにくい。時には鋏が弾かれて、失敗する事もある。……失敗すると、紐で繋がっている者同士の心臓に、激痛が走る。
俺と承太郎が感じた心臓の痛みは、これが原因だったのか。……俺達は紐じゃなくてワイヤーだったようだが、その場合はどうなんだ?
おっと、それは後で聞くとしよう。
火宮さんの動機を聞いて、承太郎達が殺気立っているため、今はそれを聞ける状態ではない。
「な、なんて女だ!根っからの悪かよ!?」
「兄貴、あいつイカれてるぜぇ!」
「ちっ……!言われなくても分かっている」
「そんな理由で、無関係の人間を巻き込んだんですか……どうしようも無い人間ですね」
「全くね……とんでもないクソ女だわ」
「…………」
口々にそう言い、怒りを露にする仗助達と、さらに目を冷たくして火宮さんを睨む承太郎。……もちろん、俺だって怒っていた。
「……君が俺の後を付けて、電話中に攻撃してきた事も、それが理由だったのか!」
「……いいえ。園原くんの時だけは、理由が少し違うわ」
「何?」
つい、眉間にシワを寄せた。俺の時は違うって、どういう事だ?
「だって――だって!園原くんがわたしを裏切ったから!!」
「は……?」
「マリちゃんに告白された時。誰とも付き合うつもりは無いって言ってたから安心してたのに、だから鋏も使わなかったのに――電話で誰かと凄く仲が良さそうに話してたじゃない!
どうせ相手は女なんでしょ!?わたしに隠れて知らない女と恋人同士になってたのね!?
見た目が細くても切れない縁の紐なんて初めてだった!大して太くないのは、まだ出会って間もなくで縁がそこまで深く無いんでしょ?
それなのにわたしの鋏で切れなかったって事は、余程お互いに好意的で絆も強くて凄く仲が良いって事よねぇ!?
許さない……許さない許さない許さない許さない――!!わたしを差し置いて別の女となんて許せないわ!!」
「おいおいおい、仗助ぇ!これって……!?」
「ああ、そうだな億泰。――由花子だ。この女、康一に対するプッツン状態の由花子と同じだぜ……!!」
億泰と仗助の話を聞いて、納得した。誰かに似ていると思ったら、山岸由花子……広瀬康一の恋人で、ヤンデレである彼女が暴走した時と、よく似ている。
水野さんに引き続き、それ以上にヤバイ女に好意を寄せられていたようだ。どうしよう……って、いつの間にか承太郎とジョルノが俺の側でスタンド構えてる!?
「待て、お前ら…じゃない、君達!ちょっと待ちなさい!!一旦スタンドを引っ込めよう?まともに会話が出来なくなっちゃうから。ね?」
「いい加減、もうぶっ飛ばしていいと思うんだ」
「僕も承太郎さんに激しく同意します」
「待てっつってんだろうが」
「そこを退け、シド。お前は俺が守る」
「大丈夫です。ちょっと終わりが無くなるだけなので」
それなんてレクイエム!?ループはダメ、ゼッタイ!!阻止!!
「はいはい頭を冷やそうね、っと!!」
「いてっ」
「あいたっ」
その時。イージスが杖の先で、スタープラチナとゴールド・エクスペリエンスの頭を叩いた。
軽いダメージが通ったようで、2人が頭を押さえる。……殺気が霧散した。イージス、ありがとう!!
「ほら、志人。今のうちに話を進めなきゃ」
「お、おう。そうだな……あー、火宮さん?まず、君は誤解している。あの時、俺が電話していた相手はこいつ……承太郎なんだ」
「えっ……?」
あの日の俺の行動について、火宮さんに説明し……ふと思い付いて、こう言ってみた。
「なんなら、今この場で鋏のスタンドを出して、確かめてみなよ」
「ちょっと、志人さん。それはいくらなんでも軽率じゃない?そいつ、あんたに攻撃するかもしれないのよ?」
「そうなる前に、俺がぶっ潰す」
「あっ、そうね。問題無いわね。安心したわ」
承太郎の言葉に安心して、あっさり引き下がった徐倫。……うーん。こういう信頼の強さが承太郎の重荷になったのだと思うと、少し複雑だが……今は、それは置いといて。
火宮さんが、無言で赤い鋏のスタンドを出す。……襲撃を受けた時に見た、あの鋏だ。これで、赤い鋏のスタンド使いの正体は、彼女であるという証明になるだろう。
「……本当だ。あの日見た物と、同じ……」
「分かってもらえたかな?俺は嘘は言って無い。俺に恋人はいないし、これから先も誰かと恋愛関係になる予定は無い、」
「なんだ!あは、そうだったんだ!良かった!!――じゃあ、やっぱりいつかはわたしの恋人になってくれるのね?」
「…………は?」
思わず固まった。……何言ってんだ?この女。
「将来の夢を叶えるまでは恋愛するつもりが無いんでしょう?それなら、わたしはそれまで待ってるから!夢を叶えたら迎えに来てね!絶対よ!!」
「…………」
「……シド、気をしっかり持て」
「気持ちは分かりますけど、現実から目を逸らしたら駄目ですよ」
頭痛が痛い、とはこの事だろうか?こめかみに指を当てて、目を閉じる。だが、承太郎とジョルノに肩ポンされて我に返った。
「……ごめん、火宮さん。念のため、一応……うん、念を押して聞いておくね。何故そういう結論に至ったのかな……?」
「えっ?だって、わたしの事が好きだからマリちゃんの告白を断ってくれたんだよね?
わたしに好きって言わないのも、将来の夢を叶える方が先だからでしょ?大丈夫よ!わたしはいつまでも園原くんの事を待ってるから!」
「あ、駄目だこいつ。話が通じねぇ」
「素が出てるぜ、園原」
「黙れ形兆。……そんな同情に満ちた目で俺を見るな!仗助と億泰もだぞ!!」
仗助と虹村兄弟に、憐れみの視線を向けられた。……とにかく、この女の勘違いを正さなくては。
「あのね、火宮さん。俺がいつ、君にそんな事を言った?」
「……えっ?」
「俺が君の事を好きだなんて、いつ言った?夢を叶えたら迎えに行くなんて、いつ言った?何をどう考えたらそんな考えになるんだい?
はっきり言わせてもらうけど、俺は君に恋愛感情は持ってないし、むしろ友人とも思ってない。水野さんと同様に、ただの知り合いに向ける感情しか無いんだ」
「ゆ、志人のアニキ……!」
「志人さん、あまり刺激しない方が――」
「え、」
「――なんで?」
億泰と仗助の焦った様子に目を向けた瞬間、感情が乗っていない声が聞こえ、はっと振り向いた。火宮さんの目からハイライトが消えている……!!
「どうして?なんでそんな事を言うの?園原くんはわたしの物だよ?だからそんな事を言ったら駄目なんだよ?
――わたしの物はわたしの言う事を聞かなきゃ駄目なんだよ!お前は黙ってわたしを迎えに来ればいいんだ!!言う事を聞け、志人ぉっ!!」
「――喧しいっ!!」
「承太郎!?」
と、承太郎が俺を自分の後ろに隠し、叫ぶ。
「志人がてめえの物だと?ふざけるな、クソ女!!こいつは誰の物でもねえ!そもそも、志人を――俺の親友を!!物扱いするな!!
あのクソ野郎といい!てめえといい!何故どいつもこいつも志人を所有物として扱うんだ!?」
「うるさい!わたしの、――わたしの志人を!!返せえぇぇっ!!」
「承太郎さん!!」
「危ねぇ!!」
激昂した女が赤い鋏を握って、承太郎に突撃する。――体が勝手に動いて、気がついた時には承太郎の前に出ていた。
「っ、志人――!?」
「――イージス・ホワイトォッ!!」
「任せろ!!」
咄嗟にイメージしたのは、イージスの名前の由来となった――アイギスの盾!
イメージ通りの丸い盾が、イージスの手の中に現れ、それが赤い鋏の攻撃を防いだ。さらに、
「体が、動かないっ!?」
火宮さんの動きが、鋏で攻撃した状態でピタリと止まる。……神話では、アイギスの盾にはメデューサの首が取り付けられていたという。
それを思い出し、攻撃して来た相手を数秒固まらせるという能力を付与する事を思い付いた。
そして固まった彼女の後ろに素早く回ったジョルノが、その首に腕を回し――ゴキッ。
「なっ、ジョルノぉぉ!?」
「まさかっ、死んで、」
「ませんよ。……殺してはいません。気絶させただけです」
火宮さんが床に崩れ落ちたのを見て、仗助達が騒いだが……彼女は気絶しただけのようだ。ジョルノが殺人犯になってしまったらと、本気で焦った。
元ギャングは人を気絶させる術まで習得しているのか……!?逆らったら駄目だな。コロネ様怖い。
「それよりも……志人さん?」
「ひいっ」
黒いオーラを背負ったジョルノが、笑顔で俺を見る。目が笑ってない!
「……危ないところでしたね。イージスが新たな力を発現させたおかげで何とかなりましたが、それが無かったらあなたは大怪我を負っていたかもしれない。
僕と仗助がいるので、治療は問題ありませんが、あなたの身の危険を間近で見た僕達の心が危機ですよ?何て事をやらかしてくれやがったんですか
「う……その、体が、勝手に動いてしまって、つい……心配させて、すまなかった」
深く、頭を下げる。……確かに、これは俺が悪い。その気持ちが伝わるようにと、すぐに頭を下げた。
「……まぁ。僕はそれで納得しますけど――黒豹さんは何と言いますかね?」
「は、っ!?」
後ろから肩を掴まれて、無理やり振り向かされ、直後に胸ぐらを掴まれた。……黒豹、もとい承太郎がお怒りだ。
「志人……!!」
「……心配させて、悪い。でも……ごめんな。俺はきっと、今後同じ事が起こったら、同じ事をやると思う」
「っ、何を言って、」
「――先に俺を庇ったのはてめぇだろ!?」
俺も相手の胸ぐらを掴み、怒鳴る。怒っているのがてめぇだけだと思うなよ、馬鹿野郎が!!
「その女を怒らせてしまったのは俺だ。俺が不用意な発言をしたせいで、あんな事になった。
だから、お前がわざわざ前に出て、自分に憎しみを向けさせる必要は無かったんだ!お前がそうしたのは俺を護るためなんだろ!?
――俺だって!承太郎の前に出たのは、お前を護るためだった!!」
「……俺を、護る?」
「忘れたとは言わせねぇぞ。俺がスタンド使いとして目覚めたきっかけを!」
あの吸血野郎にやられて、承太郎が俺を護るために犠牲になろうとしていた時。イージスが目覚めた。
「――俺の手で!承太郎を護る!!イージス・ホワイトは、そのために目覚めたスタンドだ!!」
「――――」
「次に同じ状況に陥った時、俺は再び、お前という盾を越えて前に出る。俺の手で護るためにな!」
「……志、人。俺は、」
「俺とイージスがお前を護って、お前とスタープラチナが敵を倒す!適材適所だろうが。それの何が悪い?」
「志人――」
「――いいから黙って俺にお前を護らせろ!俺を頼ってくれよ、承太郎……!!」
前世ではいつも自分を犠牲にして誰かを護っていたお前を、俺の手で護りたい。
……スタンドを発現した日から今日までの間に、いつの間にか、俺はそう考えるようになっていた。
だが。それは、俺の思い上がりだったのだろうか?……ああ、そうか。そうだな。確かにそうだ。
俺が承太郎を護ると言っておきながら、実際は承太郎の方が俺を護っている。……せっかく護る力を手に入れたのに、これでは意味が無い。
「……やっぱり、俺じゃ、駄目か」
「……志人?」
「――俺なんかじゃ、頼りないよな」
「っ!?」
「ごめん、承太郎。無理を言ったな。……悪い。火宮さんの事とか、後は任せる。イージス、帰るぞ」
「…………うん、分かった。……帰ろう、志人」
承太郎達に背を向けた俺を、後ろから包むように、イージスが消えていく。……気を遣わせたか。ごめんな。
「ま、待て、志人!」
「……じゃあな」
呼び止める声を無視して、空き教室から外に出た。
―――
――――――
―――――――――
――と、帰ろうとしたのに。
「……何でこっちに来ちゃったかなぁ」
俺の足は昇降口ではなく、旧図書館の方へ向かっていた。今はちょうど、数日前に襲撃を受けた廊下を歩いている。
気がついた時にはここにいた。……これからは、承太郎がいる旧図書館には行けない。行ったら気まずい思いをする。だから最後に、一度だけ行きたかったのかもしれない。
その時。背後から誰かが走って来る音が聞こえた。
「志人!!」
「っ、」
誰の声かは、すぐに分かった。だから逃げようとしたのに、直前で肩を掴まれた。……絶対、時止めただろ、今。足音からして、大分距離があったはずなのに。
「逃げるな!……逃げないでくれ」
「…………承太郎。何で、俺がここにいると分かった?」
「……形兆のバット・カンパニーが、お前を追跡していた」
「ちっ……あの野郎」
「志人、頼む。俺の話を聞いてくれ!」
「話って、何を?頼りない俺に何の用だ?」
「誰がいつそんな事を言った!?……いや、すまん。まずは、さっきすぐに否定しなかった事を謝らないとな。……本当に、すまなかった。俺は――
――俺はいつも、肝心な時に限って言葉が足りなくなる。何も言えなくなるんだ。
だから前世でも、自分から望んだ事とはいえ、いつの間にか1人になっていた。……妻と離婚した時も、そうだった」
俺の肩を強く掴み、頭を下げるその姿は、まるで……親にすがり付く、子供のように見えて。
話を聞いてやらないと。……そう、思った。
「……志人。俺は……お前がいないと、自分がすぐに壊れてしまいそうで、怖くて仕方ない。
確かに俺は、表面上はお前を頼ろうとしていなかったかもしれない。
だがそれは、既に別の面でお前を頼り過ぎていたから、その分だけお前を護ろうと、お前に頼ってもらおうと考えた結果なんだ。
俺がお前を頼っているのは、精神面だ。……俺の心は、お前の存在によって護られている。
限界に近づいていた俺の心を救ったのは、間違いなく志人だ。お前がいなかったら、俺は今頃笑う事さえできないくらい、壊れていたと思う。
そんなお前に何かがあったら、俺の心は今度こそ壊れるだろう。
友人を、仲間を――ましてや、親友を失う事なんて、大切な人達を失うなんて、二度とごめんだ……!!
だから俺は、お前を護りたい。……そのせいで誤解させた事は謝る。ごめん。ただ、これだけは信じてくれ。
――お前を頼りないと思った事は、お前と出会ってから今まで、一度も無い。むしろ志人は頼り甲斐があり過ぎる。つい、甘えてしまうんだ」
…………なんか、今すげぇ事言われてる気がする。さっきまで落ち込んでいた事も、すっ飛ぶぐらいの爆弾が放り込まれている。
不器用なりに必死に言葉を尽くして、俺を頼っている事、だからこそ護りたいのだという事……大切な物を二度と失いたくないという、強い想いを語っていた。
「……お前の気持ちは、理解できた。でも俺は、承太郎に護られたままでいるのは嫌だ。親友として、お前の後ろじゃなくて、隣に立ちたい」
「……あぁ。俺も、さっきのお前の言葉を聞いて、お前ならそう言うだろうと思っていた。だから――」
「……そう、だな。だから――」
「――志人は俺を、」
「――承太郎は俺を、」
「「護る」」
互いに、護り合う事。……そうするしか無い。
どちらかが自分を犠牲にしてもう片方の前に出るのではなく、どちらも前に出て肩を並べ、互いの身を護るんだ。
「……極端に言えば、死なば諸共、だぜ」
「おい、やめろ。フラグを立てるんじゃない。互いに生きたままで心も体も護り通さなきゃ、意味がねぇんだよ。野郎と心中なんてごめんだ」
「つれねーな、ハニー」
「茶化すな、ダーリン」
……数秒睨み合い、そして笑い合う。こいつとは初めて喧嘩らしい事をしたが、これで仲直りできたと思っていいかな?
「……そういえば、お前。何でこっちに来たんだ?帰るって言ってただろ」
「あー、その……これからは、お前がいる旧図書館に行ったら気まずいよなぁ、もう行けないなぁって思ってたらいつの間にか、」
「あ"ぁ?……何考えてんだてめえ……!!」
凄い形相で睨まれて、両頬を引っ張られた。痛い!
「いひゃい、ひゃめろ、いひゃい、あ、待てこめかみグリグリも止めいててててっ!?」
「これからも来るよな?……俺と会ってくれるよな!?」
「分かった分かった俺が悪かったって!」
「誓え!これからも旧図書館に行くと、俺と会ってくれると、急に連絡を断つ事もしないと、――これから一生、俺の親友として、俺の隣にいると」
「いだだだだぁっ!?分かった、誓います、全部誓うからもうこれ止めろぉぉ!!」
「よーし、言ったな?忘れるなよ」
「はい、忘れませ……んっ?あれ?」
何か今、どさくさ紛れにデカイ要求が入ってたような?……恐る恐る、承太郎を見上げると、それはもう素敵な笑顔でこう言った。
「――全部誓うって、言ったよな?」
「アッ、ハイ」
※園原が立ち去った後(ジョルノ視点。長め。キャラ崩壊あり)
志人さんが出て行ってしまい、それでも立ち尽くしたままの承太郎さんを見て、僕は怒ろうとした。早くあの人を追い掛けろ、と。
しかしそれよりも前に、徐倫が動いた。彼女は承太郎さんの胸ぐらを両手で掴み、こう言ったのだ。
「――何やってんだよクソ親父!!」
「徐倫……?」
「追い掛けろ!追い掛けて志人さんに謝れ!!早く――っ、早く行かないと!前世のママやあたしの時みたいに!手遅れになるだろうが!行けよ、早く!!」
「っ……!!」
前世の娘に発破を掛けられた彼は目を見開き、弾かれたように出口に向かう。
「おい、承太郎さん!……バット・カンパニーが園原を追跡している。そいつが案内するからついて行け」
「……分かった。頼む!」
と、意外な事に形兆さんがそう言って、バット・カンパニーの1体を承太郎さんの前に出す。それを追って、彼は走り去って行った。
「本っ当に、馬鹿なんだから……!」
「……そうですね。本当に。……徐倫が言わなかったら、僕が怒鳴ってましたよ」
「やっぱりそう思う!?そうよね、よくやったわよね、あたし!」
「おう!徐倫、グレートだぜ。あの人達はちゃんと仲直りしなきゃ駄目だ!」
「よく分かんねぇけど、俺もあのままじゃ志人さんと承太郎さんが何かやばいってのは分かってた。徐倫はよくやったと思うぜ!」
僕だけでなく、仗助と億泰も徐倫を褒め称えた。……本当によくやってくれた。あの人達を放って置いたら、余計拗れていたと思う。
全く、世話の焼ける兄さん達め。
「……それにしても、志人さんってすげぇな。あの最強のスタンド使いを守る、だってよ」
「そうだなぁ!さすが志人のアニキ!」
「父さんは守られる必要があるほど弱くはないと思うけど……それでも守りたいと言い切るあたり、さすが父さんの親友というか、何というか……とにかく男前ね」
「そうそう!俺もあの人や承太郎さんみたいなカッコいい男になりたい!」
「俺もなりたい!」
「というか、なってみせるぞ億泰!」
「おぉ!なってやろうぜ仗助!」
「……やれやれだわ」
……最強のスタンド使い。守られる必要があるほど弱くはない……か。
(――何を言ってるんだ、お前達は)
承太郎さんは、志人さんがよく言っているように、ごく普通の人間で、心だってそこまで強いわけじゃないのに。
さっきも表面上はあまり変わらない様子だったが、よく見ればいつもより覇気が無かったし、顔色も悪かった。
志人さんのように完全に見抜く事はできないが、最近承太郎さんを観察し続けたおかげで、僕にも彼の感情の変化がようやく分かるようになって来た。
彼らには、それが分からないようだ。
「……おい。それよりも、その女の処分は?」
「おっと。そうでしたね。――とりあえずこの女には、財団を通じて理由をでっち上げてこの学校から速やかに退学してもらうという事で」
「っは!そいつはいいな。やってしまえ」
「やっちゃえ、ジョルノ!」
「グレートだぜ、ジョルノ!」
「おー!!」
全員からゴーサインが出たので、遠慮なくやってしまおう。
……今日に至るまで、"彼"の仕事が忙しくて協力してもらえなかったから、自力で犯人を突き止めるしかなかったが、今度こそ"彼"――アバッキオのスタンドの力を借りようと思う。
ムーディー・ブルースの力があれば、数日前に志人さんが襲撃された時の状況も、今日の状況も再生する事ができる。
それを元に証拠を作り、理由をでっち上げてこの女を退学させるのだ。その後は、財団の監視下に置かれるだろう。
(――僕の大事な兄達が喧嘩したのは、この女のせいだ)
絶対に、許さない。