空条承太郎の友人   作:herz

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・プロローグの直後の話。

・最初、男主視点。最後に承太郎視点。


 ――空条承太郎だって、友人に愚痴を言いたい時があるはず。




空条承太郎の友人の、素顔

 

 

 

 

 承太郎が作ってくれたお粥は美味しく頂いた。ファンクラブの人間にバレたら極刑物だろうが、今は気にしない事にする。

 

 

「……良い食べっぷりだった。完食できるぐらい元気なら、問題は無さそうだな」

 

「うん、ごちそうさま。美味しかった」

 

「おう。……ところで、お前――」

 

「――え、」

 

 

 何気無い様子で伸ばされた手が、俺の前髪を上げる。

 

 

「……そんな面してたんだな。眼鏡も伊達のようだが、わざと隠しているのか?それは」

 

「……ああっ!!」

 

 

 慌てて承太郎の手を払い、サイドテーブルに置いた眼鏡を掴み取り、それを身に付ける。……おそらく、気絶していた時に見られたんだろう。不覚だ。

 

 

「今さら眼鏡掛ける意味、あるか?」

 

「いや、その……俺と目が合ってると、ずっと睨まれてるような気がしない?」

 

「……そんな気もするが、俺は気にしねえ。お前、本気で睨んでるわけじゃないんだろ?」

 

「それはそうだけど……」

 

 

 眼鏡越しに承太郎の様子を見ると、確かに彼は気にしていないようだ。……そりゃそうか。滅多に動じないこいつが、この程度の事で動揺するわけ無いよな。

 安心した俺は、眼鏡を外して前髪を掻き上げた。承太郎は俺の顔を観察しているようだ。視線を感じる。

 

 

「……随分整った面してるくせに、何故隠す?」

 

「承太郎くんには負けるよ。……それに、顔は良くても目付きはこれ(・・)だからね。高校に入学する前は、いろいろと大変だった」

 

「その、睨むだけで人を殺しそうな目付きの悪さか」

 

「…………君、結構言うね」

 

 

 思わず睨むと、一瞬目を見開いた彼は、わざとらしく両手を上げた。

 

 

 承太郎が言うように、俺の目付きは悪い。とにかく、悪い。"睨むだけで人を殺しそう"というのは、決して言い過ぎでは無い。

 多分、生まれつきだと思う。今世の記憶を辿ると……あぁ、いや、全てを思い出すのは止めよう。嫌な記憶が甦る。小学校も中学校も酷いものだった。

 

  とにかく。今世ではこの目付きのせいでいろいろあったから、せめて高校では普通の学生生活を送りたいと思って、前髪を下ろし、眼鏡を掛けて、口調まで変えた。

 中学生の時、この目や乱暴な口調のせいで教師から悪い意味で勘違いされ、勝手に成績を落とされた事がある。高校でもそうならないとは限らないからな。

 

 特待生入学した以上、学校側からの援助を打ち切らせないために、気を使わなければ。

 せっかく入学試験を頑張って、学費全額免除を勝ち取ったのに、問題を起こしてそれがパアになるのは避けたい。

 

 

「……いろいろと大変だったというと、何もしていないのに教師に目を付けられたり、道を歩いているだけで絡まれたり、周りに怯えられたり……ってところか?」

 

「よく、分かったね?」

 

「…………俺にも、身に覚えがあるからな……」

 

「あっ」

 

 

 つまり不良のレッテルですね?察した。

 

 表情あまり変わってねぇけど、こう、落ち込んでいる雰囲気を感じる。もしかして、原作……前世でも、実はこっそりダメージ食らってたのか?

 でもこいつの場合、未成年で喫煙してたし喧嘩もしてたし、学ランも改造してたし、レッテルを貼られているというか事実、不良だったと思うが……

 

 いや。それは前世の話だな。今世の承太郎の見た目は、前世と全然違うのだ。

 

 

 まず、うちの学校の男子生徒の制服は学ランだ。行き過ぎた改造は禁止されているが、式典以外では着崩す事を許されている。

 とはいえ、前世でも長ランに鎖付けるぐらい好き勝手やっていた承太郎なら、教師に何を言われても改造するはず……と、思うだろ?

 

 ところがどっこい。実はこいつ、学ランを着崩してはいるが、改造は全くしていないのだ。

 

 さすがに現代の流行に合わせたのか、教師に注意されたのか、はたまた前世の仲間達に何か言われたのか……あるいは、何か心境の変化があったのか。

 真実は不明だが、前世よりも見た目が大人しくなっている事と――煙草の匂いが全くしない事は、確かだ。

 

 

 とすると、今世では比較的大人しくしていたのに、それでも素行の悪い不良だと勘違いされている、とか?……もしもそうだとしたら、同情する。

 

 

「……気づいたら番長扱いされてた」

 

「ん……?」

 

「校内で煙草の吸殻が見つかって、俺が犯人じゃないかと担任に疑われた。冤罪だ」

 

「お、おう……」

 

「他校にまで番長の噂が広がって、不良に喧嘩売られる事がよくある。返り討ちにしたら噂にまた尾ひれがついた。ちょっと目が合っただけでも下級生に怯えられる。……つーか、番長っていつの時代の話だ。それに、俺よりも裏から学校を牛耳っているジョルノの方が番長、というか裏番――」

 

 

 その時。はっと、口を閉じた承太郎は、気まずそうに目を逸らす。……どうやら俺の想像以上に、ストレスが溜まっているらしい。

 

 

 なお。"裏番はジョルノ"という、恐ろしい話は聞かなかった事にしたい。

 

 

「……すまん、忘れてくれ」

 

「遠慮しなくても、愚痴吐きたいならいつでも聞くけど?」

 

「……いい、のか?」

 

「友達相手に、そんな気を使わなくていいよ。それで承太郎くんがすっきりするなら、いくらでも付き合う。……その代わり、たまには俺の愚痴も聞いてくれよ?」

 

 

 変に遠慮させないために、わざとニヤリと笑ってそう言えば、苦笑いを返された。

 

 

「さっきもそうだが、お前は気配りが上手いな。相手に気を使わせないための言動が、自然と出てくる……ような気がするぜ」

 

「……何の事かなぁ?」

 

「……あぁ、分かった分かった。そういう事にしておいてやるよ」

 

 

 今度は承太郎の方がニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる。止めろ、からかうな。

 

 ……今世の記憶を思い返すと、最近のこいつは徐々に表情が豊かになっている気がする。

 無表情よりはその方が良いけど、こっちは落ち着かねぇんだよなぁ……慣れるしか無いか。

 

 

「それで?」

 

「え?」

 

「お前がその顔を隠す理由は?」

 

「あ、そっか。ごめんごめん」

 

 

 そういえば、そんな事を聞かれていたな。

 

 

「この目付きのせいで、小学校でも中学校でも苦労したからさ。せめて高校生活は平和に過ごしたいと思って、最初から隠しているんだ。

 特待生入学してるから、先生達に目を付けられるようなトラブルに巻き込まれるのは困る。せっかくの学費免除が無かった事にされたら嫌だし」

 

「そうか……試験、難しかっただろ。外部の入試、それも特待生の試験は相当難易度が高いと聞いた事がある」

 

「まぁね。でも、苦労した甲斐はあったよ。入学する前と比べたら、今の学校生活は凄く楽しい。旧図書館っていう、良い場所を見つけて――不器用だけど、優しい友達とも出会えたからね」

 

「……それは、俺の事か?」

 

「…………違う、と言ったら?」

 

 

 先ほどの仕返しを、と思ってわざとそんな事を言うと、承太郎は困ったような、寂しそうな顔を見せた。えっ?何その表情。初めて見た。

 

 

「――本気でそう言われたら、へこむ」

 

「へ、」

 

 

 へこむ。……こいつが?泣く子も黙る"ジョジョ3部主人公"様が、へこむ?

 

 

「――っ、はっ!はははははっ!!」

 

「…………おい……!」

 

「う、嘘だろ、承太郎、っ、くん!ふふ、ははははっ!!」

 

 

 やばい。笑いが止まらねぇ……!

 

 

「っ、てめえ、いい加減に、」

 

「ふはは、っ、うわ、あ、やば……」

 

「!?園原っ!」

 

 

 突然目眩に襲われ、あえなくベッドに沈む事になった。なんとか仰向けになると、承太郎が上から俺の顔を覗き込む。呆れ顔だが、目を見れば心配されている事が分かった。

 

 

「……やれやれだぜ。あんなに笑うからそうなるんだ。病人は大人しくしてろ」

 

「あはは……ごめん」

 

「もういい。……眠れ」

 

 

 大きな手で目を隠されると、急に眠くなってきた。……眠る前に、誤解を解かねぇとな。

 

 

「承太郎、くん……」

 

「何だ?」

 

「――俺の言う、不器用で、優しいダチ(・・)に当てはまるのは……お前(・・)だけだ」

 

「――――」

 

「……おやすみ」

 

 

 少し冷たい手の平がびくり、と震えたのを最後に、意識が遠退いていく。

 

 

(……確か、手が冷たい人は心が温かい、だっけ――)

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「……寝た、か?」

 

 

 手を退けると、園原はすやすやと眠っていた。あんな爆弾を放り込んどいて、呑気に眠ってやがる。

 言い逃げされたことに腹は立つが……それ以上に、こいつの言葉が嬉しかった事は事実だ。

 

 

「……ダチ(・・)に、お前(・・)、か。……それが、本来のお前か?園原」

 

 

 そういや、たまに俺の事を"君"じゃなくて"お前"と呼びそうになったり、さっきも俺の名前を呼び捨てしそうになったりしてたな。…………いっそ、呼んでくれよ。俺にお前の素顔を見せろよ。

 

 ――お前、何か隠してるんだろ?

 

 高校に入学する前の話を、詳しく聞かせてくれない事。家族の話が全く出ない事。……そして、顔を隠す理由。

 園原は目付きの悪さを隠すため、と言っていたが……俺が"目を隠す"理由ではなく、"顔を隠す"理由と聞いても、否定しなかったしな。

 気のせいなら、それでもいいが……俺の勘は"気のせいではない"と言っている。

 

 

 俺は、園原の存在に救われている。

 

 これからも友人として付き合っていきたいし、こいつが困っていたら、何がなんでも助けてやりたいと思う。できれば、隠している事を明かして欲しいし、俺を頼って欲しい。

 そして、園原にはいつか、俺の前世の話をしたい。……こいつなら、それを知っても変わらずにいてくれるのではないかと、期待しているんだ。

 

 園原は、俺に関する噂やファンクラブの存在を知っていたのに、最初から、俺の事を"普通の人間"として扱ってくれたから。だから、こいつならきっと――

 

 

(…………やめだ。我ながら女々しいぜ)

 

 

 これ以上は、今は考えるな。

 

 ベッドで眠る園原に掛け布団を掛けてやり、粥を食べ終わった皿を片付ける。最後に、サイドテーブルに書き置きを残し、帰る事にした。

 玄関から外に出て、扉を閉める。合鍵なんて持っていない俺では、普通なら鍵を掛けられない。……そう、普通なら(・・・・)

 

 

(――スタープラチナ)

 

 

 心の中で呼び掛けて、自分の分身を呼び出す。スタープラチナの腕が扉をすり抜けて、内側から鍵を掛けた。これで良し、と。

 頭の良い園原なら、自分が寝ている間に俺がどうやって鍵を掛けて帰ったのか、疑問に思うだろう。だが、スタンドの存在を知るはずが無いあいつでは、答えに辿り着けない。

 

 …………そういえば、今まで試した事が無かったな。

 

 

(今度、園原の前でスタープラチナを出してみよう)

 

 

 スタンド使い同士は、ひかれ合う。……これは今世でも通用するらしく、俺達はそれぞれ、あまり間をおかずに、前世の記憶を取り戻したスタンド使いの仲間達と再会した。

 だが、時には前世では出会わなかったスタンド使いと出会う事も、ある。

 

 そいつらとは和解する事もあるし、敵対する事もある。……もしかしたら、互いにスタンド使いである事を気づかないうちに出会っている可能性も、あるかもしれない。

 

 もし、園原もそうだったとしたら?

 

 

(……園原がスタンド使いだから、俺と出会ったのか。それとも、俺と園原の出会いは、本当に偶然だったのか)

 

 

 個人的には本当に偶然だった場合の方が嬉しいが、さて、実際はどうだろうな?

 

 

 

 

 

 

 

 

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