・男主視点。
・ご都合主義、捏造過多。
・承太郎の誕生日は公式では不明ですが、ネットでは2月だと言う話があったので、2月が誕生日という設定でいきます。
――空条承太郎だって、親友に最高のプレゼントをもらったら、満面の笑みを見せてくれるはず。
空条承太郎の友人は、親友を祝う
財団主催のクリスマスパーティーから時が過ぎ、今は既に2月。……1ヶ月以上経過する間に、ディオとジョルノの立場は以前よりもマシになってきた。
財団内部の情報を集めてくれたジョセフによると、俺達の狙い通りディオとジョルノを擁護する職員が増えて、彼らを敵視する一部の職員が静かになったようだ。
パーティーがあった日から数週間後。財団内部で高い役職についており、ディオ達の事を敵視していた一派の中心人物が、突然辞任した。……一部の職員が静かになったのは、それも理由の1つだとか。
辞任した理由は、持病が悪化したのでしばらくゆっくりしたい、との事だが……さて、本当なのかなぁ?その辺りは真相を知るのが怖いから、何も突っ込まないけど。
さらに。ディオが財団側からの疑いを晴らすために、ずっとジョースター邸に留まっていた件だが。
ディオは現在、ジョナサンと同じく大学3年生。今年の4月には4年生になる。……再来年には卒業だ。
それまでの間に、特に大きな問題を起こす事がなかったら――ジョースター邸を出て、1人暮らしをしても構わない。……と、スピードワゴンがそう言ってくれた。
財団トップからお許しが出たという事は、あとは言われた通りに約1年間大人しくしていれば、本当の意味で自由になれる。
ディオは財団の事を気にして、ジョースター邸に10年以上留まっていた。……そろそろ、解放されて然るべきだと思う。
これで、承太郎が責任を負わされる心配も無くなるだろう。
このままディオ達の疑いが晴れなかったら、承太郎も本人の意思に関係なく、高卒後もジョースター邸に留まる羽目になっていたかもしれない。
実際、彼らを敵視していた一部職員の中で、そんな話も出ていたらしい。
どうにかしてディオ達と承太郎を同じ場所に置き、彼らが暴走した時は真っ先に承太郎に動いてもらえるように、と。
ハハハこの駄目大人共め、ふざけんなよ?承太郎もディオもジョルノも、てめぇらのお人形じゃねぇんだよ。勝手にその自由を奪おうとしやがって。
……思い出したら腹が立ってきたが、今日はせっかくの"めでたい日"だ。そんな事は持ち込みたくない。ぱっぱと忘れてしまおう。
今朝。承太郎、花京院と共に学校へ登校すると、いつも以上に賑わっていた。
「――ジョジョ!!誕生日おめでとう!!」
「ハッピーバースデー!!」
「誕生日おめでとう!承太郎さーん!!」
「空条先輩、誕生日おめでとうございます!!」
「ジョジョー!!」
「承太郎様ぁぁ!!」
……あ、そろそろ来るな。
「花京院、耳栓いる?」
「おお!用意周到だな。ありがたく頂くよ」
俺が余分に持っていた耳栓を花京院に渡し、2人揃ってそれを付けて、さらにその上から手で耳を塞いだ瞬間、
「――――喧しいッ!!」
響き渡る承太郎の怒声(大音量)と、その直後の黄色い声多数(大音量)。
という訳で。今日は"めでたい日"――俺の親友、空条承太郎の誕生日である。
この学校では、在学しているジョースター家の誰かの誕生日当日になると、毎回こんな大騒ぎになる。承太郎は学内最大のファンクラブ持ちなので、その中でも一番のお祭り騒ぎになるのだ。
そのせいか、ファンクラブに入っていない生徒も含め、ほぼ全員がジョースター家一人ひとりの誕生日を知っている。
初めてそれを知ったのは、高1の4月にジョルノの誕生日が来た時だったか?あの時は本当に驚いたし、なんなら女子(一部男子)の大音量の歓声で耳が死んだ。
その時、俺は決意したのだ。ジョースター家の誕生日当日は、必ず耳栓を持参しよう、と。
「そんな経緯で用意した物が、こちらの耳栓になりまーす」
と、花京院に説明したら彼は"それが正解"と深く頷く。……承太郎には複雑そうな表情で謝罪された。お前のせいじゃねぇから気にすんなって。
校舎内に入っても承太郎のファンクラブが騒がしく、それがようやく落ち着いたのは昼休みだった。
朝から大音量の歓声を浴びせられた承太郎は現在、ご機嫌斜め。屋上にいつもの面子が集まる中、一言も喋らない。
実は。俺と仗助とジョセフ以外の面子は、承太郎へのプレゼントを持参しているのだが、こいつが"話し掛けるなオーラ"を出しているせいで、それを渡せずにいた。……やれやれだぜ。
こちらに背を向けてあぐらをかき、膝に頬杖をつく、不機嫌を態度で示している男の背後に立ち、学帽を奪って髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き乱してやった。
「ちょっ、ゆ、志人さぁぁん!?」
「この馬鹿ァッ!!何やってんだァッ!?」
後ろから仗助達の恐怖の悲鳴が聞こえ、ため息をついた承太郎がこちらに振り向き、胡乱な目付きで俺を見上げる。
「…………何だよ、シド」
「あ、やっと喋った。先に昼食べるか?それとも皆からプレゼントもらう?」
「…………昼飯」
「よし。……皆さーん、今日の主役は先に昼飯をご所望でーす!プレゼントは後にしましょー」
「……あのオーラをものともせずに……肝が据わってやがる」
「しかも奪った学帽を自分の頭に被せるというその度胸……」
「…………志人さん、ある意味グレートっス」
あれ?ドン引きされてる?……まぁいっか。腹減った。
承太郎の隣で一緒に弁当を食べながら、ひたすらこいつの愚痴を聞く。普段は旧図書館組の面子以外の前では言わないのだが、さすがに耐えられなかったようだ。
先程までずっと無言だった男が饒舌になった事に、他の奴らは目を白黒させて驚いている。
途中で俺がこいつの学帽を被ったままだった事を思い出してそれを返却するまで、承太郎は口を止める事なく愚痴を吐き続けた。
「そろそろスッキリしたか?」
「……ああ」
「じゃあプレゼントタイムだな。おーい、今なら渡しても大丈夫だぜ!」
昼飯を食べ終わり、愚痴も吐き出してストレスを解消したところで、皆からのプレゼントタイムだ。
数多くの誕生日プレゼントをもらったおかげで、承太郎の機嫌も良くなったらしい。屋上に来た時の"話し掛けるなオーラ"はもう無い。
「……あれ?志人。お前はプレゼント持って来てないのか?」
「今は持ってないですけど、俺は後で――っと、すみません。ちょっと待ってください」
俺と仗助とジョセフ以外の全員がプレゼントを渡した後、ポルナレフの問いに答えようとした時。スマホに着信があった。
画面を見ると、バイト先の先輩の名前が表示されている。……嫌な予感。
皆に一言断ってから、少し離れた場所で電話に出る。
「もしもし。……はい、大丈夫ですよ。今昼休み中なので…………え、シフトを代わって欲しい?」
嫌な予感は的中。理由を聞くと、祖母が急病で病院に搬送されたと悲痛な声で訴えて来た。この人が超良い人で、お婆ちゃん子である事も知っていた俺は、彼の頼みを引き受ける。
……電話を切って真っ先にした事は、事情を説明して承太郎に謝る事だった。
「……って訳で、本当に悪い!パーティーにも参加できないと思う。バイト終わったら、プレゼントだけ渡しにお前の家に行くから」
今日の夜。ジョースター邸で夕食兼誕生日パーティーを開くからお前も来い、と大分前から誘われていた。
プレゼントは家族と一緒に、その時に渡して欲しいと言われたから、学校には持って来なかったのだ。
「…………そうか。分かった」
「……本っ当にごめんな」
無表情だが、目と雰囲気で落ち込んでいる事が読み取れる。そこまで落ち込まれるとは思わなかった。何か、本当、すまん……
「……後でパーティーに参加するから、持って来なかった訳か。……つーか、ジョースター家のみのパーティーに参加できる志人って、何者?」
「今さらだな、ポルナレフ。ジョースター家のお気に入りだろう?財団内の噂を聞いたのはつい最近だが」
「そういや、俺も最近そんな話を聞いたような……?」
「――今、ジョースター邸に住んでる奴ら総出で、じわじわと、外堀埋めてる真っ最中!花京院もポルナレフも邪魔しないでねン♡」
「マジかよジョセフさん……」
「うわぁ……って、ちょっと待ってください。総出って事は、まさかディオも……!?」
「おォ。あいつは財団のクリスマスパーティーがあった日以来、積極的に動いてるぜ」
「…………うわぁ」
「志人の逃げ場が何処にもねぇぞ……」
―――
――――――
―――――――――
ようやくバイトが終わったのは、夜の9時過ぎ。放課後にバイト先である本屋へ向かう途中、自宅に寄って承太郎に渡すプレゼントも一緒に持って来たから、このままジョースター邸に直行できる。
自転車に乗る前に、シフトを代わった先輩から連絡が来た。代わってくれた事への感謝と、祖母の命に別状はなかった、との事。良かった、良かった。
……もしも亡くなってしまったらと思うと、辛いもんな。俺は既に母を亡くした身だが、気持ちはよく分かる。
シフトを代わってくれたお礼に、今度俺が代わって欲しい時は自分に頼めと言ってくれた。もしもその時が来たら頼むとしよう。
それから、メッセージアプリを使って承太郎にこれから向かう事を伝える。……すぐに既読がついて電話が掛かって来た。いきなりかよ。
「もしもし?」
「おう、バイトお疲れ。……お前、夕飯は食べたか?」
「いや。まだ食べてねぇぞ」
「それなら、うちで食べていけばいい。お前の分は残してあるから食え」
「え。そんな、わざわざ、」
「じゃあ、気をつけて帰って来いよ。待ってるぜ」
「おい、ちょ、…………切りやがった」
毎度の事ながら、勝手な奴め。……わざわざ俺のために残してくれた物だし、食べ物に罪は無いし、食費は浮くし……仕方ない。ありがたく頂こう。
自転車を走らせ、ジョースター邸に到着。中に入ると、玄関のドアを開けた仗助が笑顔で出迎えてくれる。
「志人さん!おかえりなさいっス!」
「あ、おう。ただいま……」
「今皆で手作りケーキ食べてるんスよ。志人さんも夕飯食べた後にどうぞ!」
「ええー……?パーティーに参加しなかったのに、夕飯頂く上にケーキまでもらうのは申し訳ない、」
「いいから、いいから!ほら、皆待ってるんで!」
「待て待て、押すな」
仗助に背中を押されて、リビングへ向かった。そこにいた承太郎達やホリィさん達にも、"おかえり"と言われる。
最近。俺がジョースター邸にお邪魔する時、仗助達は決まって"おかえり"と言うようになった。
最初は戸惑って何も言えなかったが、あいつらは無言で俺が返事するのを待つものだから、今では"ただいま"と返すのが常となってしまった。
高1の時は誰もいない一人暮らしの自宅に帰るのが当たり前だったから、"おかえり"と言われるのが何だか気恥ずかしい。
あ、それからもう1つ。大きな変化があった。
「おー、志人。おかえり!バイトお疲れー」
「おかえり、志人」
「志人、おかえりなさい。外は寒かっただろう?早く夕飯を食べて温まると良いよ」
この3人……ジョセフとディオとジョナサンが、俺の下の名前を呼び捨てし始めた事。
親しい人達から呼ばれるなら、別にどう呼んでくれても構わないが……その理由を聞いたら、3人揃って"呼びたくなったから呼んでるだけ"、と一点張り。
詳しく聞こうとしても、のらりくらりとかわされてしまうから、早々に諦めた。この前世爺トリオめ。
その後。夕飯を食べ終えた俺は、バックの中からラッピングされたプレゼントを取り出し、承太郎に渡す。
「遅くなって悪い。誕生日おめでとう」
「おう、ありがとな。……開けていいか?」
「どうぞどうぞ」
承太郎が丁寧に包みを開ける手元を、他の主人公ズとディオがじっと見つめる。……大した物じゃないから、そんなに見られても困るんだが。
「おォ?――フォトフレームか!」
「色もデザインも海がテーマ……承太郎さんに似合いますね」
俺がプレゼントしたのは、縦向きのフォトフレームだ。フレームの色は水色で、イルカやヒトデなどの海洋生物がデザインされている。
まだ写真が無いから、中身が寂しい。……実は1枚、ある写真を現像してここに持って来ている。
承太郎に渡すプレゼントを探しに出た時。雑貨屋でこのフォトフレームを見て、ある光景が目に浮かんだ。
フォトフレームを買った後にその光景が見られる場所に行ったら、ちょうど天気が良くて、より一層綺麗に見えて……思わず写真に収めた。
それを、親友にも見てもらいたい。
「承太郎。それを今全部開けて、もう1回俺に渡してくれないか?」
「それは構わねーが、何をするんだ?」
「すぐに分かる」
全部開けてもらったフォトフレームを受け取り、承太郎達に背を向けて、前もって現像しておいた写真を嵌め込む。……思った通り、綺麗だ。それを裏返して、承太郎に返す。
「ほら、ひっくり返してみろ」
俺に言われた通り、フォトフレームをひっくり返し……その写真を見た承太郎は息を呑み、大きく目を見開いた。
「――グレート!綺麗な夕陽っスね!」
「夕陽と海……これ、何処の写真?本当に綺麗!」
「フォトフレームも海がテーマだし、写真とぴったりだ。……額縁に入れられた風景画みたいだね」
「良い写真じゃないか」
水色のフォトフレームとの補色で、夕陽のオレンジ色が良く映える。それが海に反射している様子は、まるで一本の道のよう。
その道は、写真の一番下に映っている階段まで伸びているように見えた。
「…………志人。この場所は――」
「――そう。お前が連れて行ってくれた、あの場所だ」
承太郎が、前世の事も何もかも忘れたくなった時に訪れるという、あの海辺の写真。
「このフォトフレームを見つけた時に、あの場所の夕陽を思い出してさ。これに入れたら似合うかもしれないって思った」
「…………」
「で。それを買った後に行って……あまりにも景色が綺麗だったから、思わずスマホで1枚撮った。
現像してそれに嵌めたらもっと綺麗に見えるだろうと、そう思って。……あ、もちろん俺が勝手にそう思っただけだから、それはもう外してもいいぜ」
「いや、このままが良い。……志人」
「ん?」
「――俺は、お前とあの場所に行って以来。あそこに行きたいと思う事が無くなった。……今この写真を見て、久々に思い出したぐらいだ」
今度は俺の方が驚いた。それって、つまり。
昔の自分よりも、今の自分を見て欲しい。……そんな願い。あの日、俺に打ち明けるまでは1人で抱え込んでいた、複雑な感情。
それを考えるあまり、心が疲れて、辛い思いをして。……昔の事も、何もかも、忘れたくなってしまう時がある。
そんな時、承太郎はあの海辺に夕陽を見に行く。そうすれば多少は心が軽くなるから、と。
だが、こいつはあの場所に行きたいと思う事が無くなったという。それどころか、写真を見て久々に思い出したらしい。
それは――今の承太郎が辛い思いをしていないという、何よりの証拠だ。
「……もう、大丈夫なのか?」
「ああ。……少なくとも今は、あの事を気にしなくなった。そうなるぐらいに、お前らと馬鹿やったりする日常が楽しい」
「そうか……良かった。承太郎が辛い思いをしていないなら、それで良い」
「……ああ。――ありがとう。今日一番の、最高のプレゼントだ」
「――――」
なるほど――お前の満面の笑みは周りの時を止めるのか、とか。
時止めを使えるスタンド使いは全員(といっても2人だけ)笑顔のみで時止め可能なのか、とか。他人事のようにそう思った。
……俺達が一切動けなくなった事に気づいたのか、笑顔を引っ込めて訝しげに首を傾げる。
「……何だ?どうかしたか?」
「――っ、どうかしたかじゃねェェッ!!」
「何スか今の何スか今の何スか!?今の顔!!」
「父さんもう1回!もう1回見せろよ!!」
「
「……ン?志人、それは?」
「そろそろ来そうなので、準備を……」
「あ、僕にもちょうだい。ディオも付けた方が良いよ」
「……分かった」
ジョナサンとディオに、バックの中から取り出した耳栓を渡す。3人揃ってそれを付けて、さらにその上から手で耳を塞いだ。
「――――喧しいッ!!」
まぁ、そうなるよな。