空条承太郎の友人   作:herz

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・前半、男主視点。後半、六車(オリキャラ)視点。

・オリキャラとオリジナルスタンドが登場します。今回、承太郎は登場しません。

・ご都合主義、捏造過多。今回から始まる園原誘拐編は特に注意。いろいろおかしな点があると思いますが、見逃してくれるとありがたいです。


 ――園原志人は、覚悟を決めた。

「承太郎に伝えてくれ。――イージス・ホワイトの奥の手を使う。後は頼んだ、と」




空条承太郎の友人の、最終手段

 

 

 

 

(――言ってる事が分からない。イカれてるのか?この状況で)

 

 

 と、6部承太郎のセリフを言いたくなる程に、俺は混乱していた。表面上はポーカーフェイスと無言を保っていたが。

 ディオの命令で俺を捕らえた、だと?――ふざけるな!今世のあの人はこんな馬鹿な真似はしない!!

 

 しかし、感情的になれば相手の思う壺だ。今は少しでも、情報を入手する事を優先しよう。

 

 

「……で?何のために俺を捕らえたんだ?」

 

「ほう?冷静だな。まるで、ディオ様が貴様らを裏切る事が分かっていたかのような態度だ」

 

 

 裏切る……って事は、こいつは今のディオがジョースター家や財団側の人間である事を分かっている?

 さらに、俺の個人情報まで知っている……まさかと思うが、財団に登録しているスタンド使い?だから財団関係者しか知らないような情報も……

 

 いや、それにしては俺について詳し過ぎる。スタンドとの完全同化の事も、承太郎との模擬戦の事も。……それを指摘しても、ディオから聞いた、と答えられて終わりそうだな。

 

 この男の真の立場が分からない。本当にディオの信者で、何らかの理由でディオに命令されたと思い込んでいるのか。

 それとも信者を演じており、ディオに罪を擦り付けたいのか。

 

 ディオが本当に俺達を裏切ったという可能性は考えない。俺は自分の目で見て、言葉を交わしたディオ・ジョースターの事を信じる。

 

 

 ならば。次に確かめるべき事は……

 

 

「勘違いすんなよ、クソ野郎」

 

「……何?」

 

「俺はあの人が……ディオさんが裏切ったなんて微塵も思ってない。前世のあの人は承太郎達が倒した大悪党で外道でクズだが、今世のあの人はそんな奴じゃ――」

 

 

 ――ガンッ!!

 

 

「っ!?」

 

「――このクソガキがああぁぁっ!!あのお方を!我が王を侮辱するとは!!余程命が惜しくねぇようだなぁ!?

 その上ディオさん(・・)だと!?あの方の名を気安く呼ぶんじゃねぇ!ディオ様と呼べ!!」

 

 

 豹変したトリスタンは、憤怒の表情でイージスのバリアを殴り、そう叫んで俺を睨んだ。殺意を感じる……!

 だが、挑発した甲斐はあった。この反応は演技とは思えない。……どうやら、本気でディオの事を崇拝しているようだ。

 

 つまり。何らかの理由で、ディオが奴に俺を誘拐しろという命令を下したと思い込んでいる。

 ……この男自身が勝手にそうだと勘違いして動いているのか、それとも別の誰かがそう勘違いさせて利用し、裏で糸を引いているのか。

 

 

「……志人、あまり刺激しない方がいいんじゃないか?」

 

「……そうだな。挑発はもう止めておく」

 

 

 イージスと小声で話していると、ようやく怒りを収めたのか、トリスタンの荒い息が整っていく。

 

 

「……くく。まぁいい。その余裕は、もう1人ゲストが来れば、すぐに消えるだろう」

 

「ゲスト……?」

 

 

 俺が眉をひそめた、次の瞬間。離れた場所にいる数人の男達の隣。何も無い場所に突然、洋風の扉が現れる。俺の足元にも現れた、あの扉だ!

 

 扉の中から人間が2人と、まるでドアマンのような格好をしたスタンドが1体出て来た。

 スタンドが扉を閉めると、その扉が消える。……扉を生み出す事で、何処かと何処かを行き来できる能力なのか?

 

 人間2人は、どちらも日本人。1人は茶髪の知らない男。……しかし、もう1人は――

 

 

「――六車さん……!?」

 

 

 知らない男に拘束されている、六車さんだった。

 

 

「トリスタン様。六車の自宅に向かわせた奴らは、ちゃんと働いたようです。俺がそこへ扉を繋いだ時には既に済んでいたようで、拘束してそのまま連れて来ました」

 

「ご苦労。……おい、待て!そのまま動くな。それ以上こちらに来ると、園原のバリアの射程距離内に入る。そいつをバリアで守られてしまっては意味が無い。

 そして、六車から離れるな。貴様が六車の近くにいる限り、園原は六車の周りにバリアを張れない。その状態でバリアを張れば、貴様までバリアの内側に入ってしまうからな」

 

「は、はっ!失礼しました」

 

「ちっ……!」

 

 

 思わず舌打ちした。……バリアの射程距離や、バリアを張る事ができない条件を具体的に知っているなんて、これはいよいよおかしい。

 

 俺は東京支部の訓練場で、何度かスタンド能力の検証をしている。その時に財団の研究者達にスタンドの能力を分析されたが、それらのデータは全て、財団で厳重に管理されているはず。

 俺以外のスタンド使いも、スタンド能力の検証のために訓練場を利用する事がよくあるらしいが、もちろんその情報も管理され、外部に漏れる事は無い……その、はずなのに。

 

 それに。六車さんを拘束している奴は、六車さんの自宅の事を口にしていた。

 財団職員の住所に関しても秘匿されるべき個人情報だ。何故こんな奴らが六車さんの自宅の場所を知っている?

 

 

 ――まさか。財団内部にこいつらの協力者が紛れ込んでいる?

 

 

「園原さ――っ、うぐ!?」

 

「なっ!?おいてめぇ!その人に何しやがる!?」

 

 

 その時。六車さんを拘束している男が、彼の首にナイフを当てた。慌てて声を上げると、奴らの不快な嗤い声が聞こえる。

 

 

「ははははっ!!やはり、貴様のようなタイプには人質を取るのが効果的なようだな!」

 

「このクソ野郎……!!」

 

「くくくっ!……六車拓海に手を出されたく無ければ、バリアを解け。スタンドも出すな。抵抗も許さない」

 

「……俺に何の用がある?人質を取ってまで、俺に何をやらせようとしているんだ!?」

 

「ふっ……違うな。別に貴様に何かをやらせるつもりは無い。

 ――貴様の存在自体が、ディオ様の空条承太郎への復讐と、ジョースター家への宣戦布告に役立つのだ!!」

 

 

 復讐は分かる。間違いなく前世の事だろう。しかし、宣戦布告?……何を言ってるんだ、こいつは。

 

 

「それよりも、ほら。早く解け。さもないと……六車はどうなるかなぁ?くく、くくく……っ!!」

 

 

 六車さんを人質に取られた状態では、下手に動く訳にはいかない。…………やむを得ない、か。

 

 

「イージス」

 

「駄目だ……っ、駄目だ志人!このままじゃ、君が何をされるか分からないだろ!?」

 

「あぁ、そうだろうな」

 

「俺は護るためのスタンドなんだぞ!?」

 

「でもこのままだと、俺は護れても六車さんの事は護れない」

 

「っ、」

 

 

 大事な半身が、泣きそうな顔で俺を見つめている。……ごめんな。我が儘言って。

 

 そんな彼に、小声でこう伝えた。

 

 

「――時を待て。……六車さんを助けるチャンスが来たら、すぐにお前を頼るから」

 

「…………分かった」

 

 

 最後に俺を強く抱き締めたイージスが、バリアと共に消える。

 

 

「……さぁ。これで良いんだろ?」

 

「…………ふん」

 

 

 無言でつかつかと、俺の目の前までやって来たトリスタンは、

 

 

「っ!!」

 

「くくっ!ははははははっ!!この、クソガキ!さっきはよくも!我が王を!侮辱して!くれたなぁ!!」

 

 

 好き勝手に俺を殴り、床に倒れた俺の体を思い切り蹴る。六車さんの、俺の名を必死に呼ぶ声と、この男の仲間達が大笑いする声が聞こえた。

 ……まぁこの程度なら、あの父親からの暴力や不良との喧嘩で慣れてる。大丈夫。

 

 

「……あぁ、そうだった。貴様にとっては私よりも、この男(・・・)が相手になった方が効果があるのだったな」

 

 

 そう言って、奴は一旦俺を蹴る足を止めた。……俺が顔を上げると、奴の背後にスタンドが出現する。マネキンのような見た目のスタンドだった。

 

 その姿はぐにゃぐにゃと歪み――ある男(・・・)の姿へと、変化する。

 

 

「――――っ!!」

 

「……くく、くくくくっ!ははははははっ!!良いぞ!顔色が変わった!イイ顔じゃないか、なぁ?」

 

 

 どう見ても、あのクソ野郎……今世の父親と、そっくりだった。

 

 

「私のスタンド、イミテーション・ドールの能力だ。私が記憶している中の誰か、あるいは何かに変身する事ができる。

 例えば。相手の恐怖の対象に変身し、そのまま攻撃を仕掛けて恐怖を煽る事も可能だ……今から何が起こるのか、もう分かったな?」

 

「あ、」

 

「拘束はあえてしないが……抵抗するな。そして逃げるな。もし少しでもそんな行動に出れば……おい、やれ!」

 

「はい」

 

 

 六車さんの悲鳴が聞こえた。すぐに体を起こしてそちらを見ると、彼の腕に切り傷が付き、そこから血が流れている。切られたんだ!

 

 

「六車さん!!……っ、てめぇ……!!」

 

「くく……あのように、貴様が抵抗したり逃げたりする度に、六車の体には傷が増えていくぞ?――それが嫌なら、大人しく自分の父親からの暴力を受ける事だ。

 いや、親から子への教育的指導と言うべきか?貴様は幼い頃からそれを受けていたそうだな?ふふふ……!!」

 

 

 また1つ、情報が増えた。……俺の父親の事、そして暴力を振るわれていた事を知っているのは、ジョースター家の人間と、財団職員ぐらいだろう。

 ジョースター家の皆が、誰かにそれをバラす訳がない。という事は、財団職員の中の誰かから得た情報。

 

 やはり、財団内部に俺の情報をリークした奴がいるようだ。

 

 

 そこまで考えて、拳を振りかざす父親……に化けたスタンドの姿が見えたので、目を閉じる。――地獄の時間が、始まった。

 

 

(だが、諦めない。……チャンスが来るまで、耐えてみせる)

 

 

 きっと、俺を護りたいのだろう。勝手に出ようとするイージスを心の中で抑えながら、俺は改めてそう決意した。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「――くははっ!はははははっ!!」

 

 

 嗚呼、何故俺のスタンドは非戦闘タイプなんだ。空条さんのような戦う力があれば、こいつらと戦う事ができるのに!

 園原さんのような守る力があれば、あなたを守る事ができるのに……!!

 

 ――俺が人質になったせいで、園原さんは理不尽な暴力に抵抗したくても、抵抗できない。

 

 あの男のスタンドが園原さんの父親に化けた時、彼の表情は一気に青ざめた。

 以前、トラウマはディオさんのおかげですっ飛んだと言っていたが……あの表情は、未だに父親への恐怖が残っているという証拠だ。

 

 だが、園原さんは……まだ一度も抵抗していないし、逃げてもいない。そのおかげで俺は、傷付けられる事なく守られていた。

 俺はSPW財団の職員だ。ジョースター家や、その仲間の方々のサポートをする事が役目だ。……それなのに、俺がその足枷になってしまってどうする!?

 

 

 ……事の発端は、今朝。俺がまだ自宅にいた時の事。

 

 その日の仕事が始まるのは午後からで、俺に用があるからと、従兄弟の大星兄さんが自宅に来る予定だった。

 家のドアホンが鳴ったので対応すると、予想通り相手は大星さんだ。そして、彼を招こうとドアを開けた瞬間――横合いから大柄な男達が出て来て、彼を人質に取った。

 

 俺のスタンドは少し特殊で、俺が普段裏で遂行している任務……内部監査にはもってこいの能力なのだが、戦闘では役立たずとなる。

 攻撃手段がほとんど無いので、戦闘は基本的に他のスタンド使いに任せるしか無いのだ。

 

 奴らはスタンド使いで、スタンドの手で大星さんの首を締めようとしたため、慌てて止めて要求を聞いた。

 

 

「――てめーは、ジョースター家のお気に入りに言う事を聞かせるための人質だ」

 

「大人しくついて来やがれ」

 

「っ、お前ら、園原さんに何をするつもりだ!?」

 

「余計な口を利くな!いいからついて来い!このオッサンがどうなってもいいのか!?」

 

 

 抵抗せず、大人しくついて来れば大星さんに危害は加えないという。……仕方なく奴らについて行く事にしたが、何も出来なかった訳ではない。

 

 

「拓海!!」

 

「……兄さん。――兄さんの図書館の常連さん達に、よろしく言っておいて欲しい」

 

「――――」

 

「頼んだぞ」

 

 

 あの人ならきっと、俺の言葉に隠された意図に気づいてくれたはず。

 

 "兄さんの図書館の常連さん達"とは、旧図書館の存在を知っている空条さん達の事だ。

 ブックフェスでの一件の後。俺と大星さんは、空条さん達5人と連絡先を交換した。その日、大星さんは彼らが俺と同じ"へんてこな力"……スタンドが使える事を知った。

 

 今回はそれ絡みだと察していると思うし、俺が連れ去られた事や園原さんの話も合わせて、空条さん達に知らせてくれるだろう。

 そう信じて大柄な男達について行くと、今度は何も無い場所に扉が現れ、そこから茶髪の男とスタンドが出て来た。

 

 大柄な男達は、俺の身柄を茶髪の男に引き渡した。茶髪の男は俺の両手を後ろ手錠で拘束し、扉の中に連行する。

 

 ……そして。扉をくぐった先の部屋には既に園原さんがいて、俺は彼に対する人質にされたのだ。

 

 

 奴ら……というより、トリスタンという男の目的は何だ?何故ディオさんの名前が出た?……あの人が裏切ったのか?いやいや、そんな馬鹿な。

 

 俺は実際にあの人と話して、今世のあの人に害は無いと確信した。

 園原さんの事を、まるで本当の弟のように扱っているあの人が、彼にこんな酷い事をする訳がない!ディオさんは我々の信頼を裏切らない。絶対に。

 

 しかしだとすれば、こいつらは誰の指示で動いている?

 

 

「……ふー……一旦休憩しよう。今貴様に死なれたら困るからな」

 

 

 と、奴のスタンドの手が止まる。……今のところ、園原さんを殺す気は無いという事に、安堵した。

 彼の体はボロボロだった。何度か血を吐いてしまったのか、床には赤色が飛び散っている。……歯を食い縛り、耐えた。感情的になるな、落ち着け!

 

 

「…………じゃあ、聞きたい事が、あるんだが……」

 

「何?」

 

 

 園原さんの声が聞こえた。まだ意識を保っているのか!あれほど暴力を振るわれていたのに、何という精神力……!

 

 

「結局、てめぇらの目的は、何だ……?俺の存在が、復讐やら、宣戦布告に役立つ……とか、何とか言ってたよな……?」

 

「……まぁいいだろう。休憩がてら、教えてやる。……まずは復讐の事だが、我らが王は前世で空条承太郎に敗北した。

 その復讐として、空条承太郎の大切な存在を壊す事にした。しかし、奴の大切な存在といえば複数いる。……その中からディオ様がターゲットに選んだのが、貴様だった」

 

 

 確かに、空条さんにとっての大切な人は他にもたくさんいるだろう。

 例えば、前世の旅仲間である花京院さん達。例えば、ジョースター家の人達。特に、スタンドも波紋も使えない人達は狙いやすいはず……

 

 そんな中、あえて園原さんをターゲットにした理由は?

 

 

「理由は様々だ。貴様が一人暮らしをしている事や、普段はジョースター家の人間から離れた場所にいる事。城戸……そこで六車を人質に取っている男の事だが、そいつに誘拐させるのは簡単だったぞ。

 そして、スタンド使いとしてはまだ未熟。さらにスタンド自体の攻撃力がほぼ皆無である事。防御特化だが、人質を取ってしまえば無力化する事ができる。今のようにな。

 

 しかし何よりも大きな理由は、貴様が空条承太郎と関わったのは今世が初めてであり、その上親友と呼ばれる程に親しい存在となった事だ」

 

「……どういう、事だ?」

 

「くくく……っ!そんな貴様が、自分と関わったせいでこんな目に遭ったのだと奴が知ったら……どう思うだろうな?

 ――間違いなく、自分を責めるだろう!前世ではジョースター家とディオ様の因縁に全く関係が無かった貴様が、今世では自分の親友になったせいで、その因縁に巻き込まれたのだと!!」

 

 

 ……な、何て事を考えやがる!?あの屑野郎!!

 

 奴の狙いは精神攻撃だ。空条さんの心を傷付けようとしている!いくら最強のスタンド使いでも、これはさすがに大ダメージになるだろう。

 

 

「ジョースター家への宣戦布告も、これと似たようなものだ。ジョースター家のお気に入りだが、本来なら因縁とは無関係である貴様を狙う事で、奴らの罪悪感を煽る。

 そして再び、ジョースター家と敵対するという意思を表明する!ふふふ、素晴らしいだろう?ディオ様はジョースター家の人間全員と戦うつもりなのだ!さすがは我が王!!

 

 きっと奴らはディオ様に敵わない!それを確信したからこそ、今まで影で活動していた私に声を掛けて下さったのだ!今こそ空条承太郎とジョースター家を、打倒する時が来たのだ!!」

 

 

 …………いや。それはむしろ、ジョースター家の敵意を煽るだけだと思うのだが……?

 分かってはいたが、やはりこれを考えたのはディオさんではないな。彼が考えたにしては、余りにも無謀過ぎる。

 

 ジョースター家のお気に入りに中途半端に手を出せばどうなるか、それが分からない人ではないし、そもそもあの人は手を出した奴に報復する側だし。

 今世のジョースター家は、ディオさんやジョルノさんも含めて、ジョースター家だからな……つまり、園原さんは彼ら2人のお気に入りでもある訳だ。

 

 

「……話はそろそろ終わりにして、続きといこう。手加減はしてやるし、ある程度私の気が済んだら終わりにしてやる。同志の話では、いずれディオ様も我々に合流すると――」

 

「――同志(・・)、だと?」

 

 

 今まで黙っていた園原さんが、顔を上げた。……彼の目は、まだ輝きを失っていない。

 

 

「……ふふ、ははは。あぁ、なるほどなぁ。いろいろ繋がったわ」

 

「…………何を言って、」

 

「その同志ってやつはSPW財団の職員だろ?」

 

「っ、」

 

 

 園原さんの言葉に、奴は分かりやすく動揺を見せた。……正直、その可能性はあまり考えたくなかったのだが、やはり財団職員が関わっていたのか!

 

 俺の家を知っていた事や、園原さんの父親の顔と、その父親に暴力を振るわれていたのを知っていた事。それらの情報は財団で厳重に管理しており、外部に漏れる事はあり得ないはずだった。

 しかし実際は、こいつらに情報が漏れていた。……財団職員の誰かが、こいつらに情報を渡したのだろう。

 

 

「今話した事や、俺の個人情報とかは全て、その同志から聞かされた事だな?」

 

「……だったら、何だ?」

 

「いや、別に?尚更馬鹿やったなぁ、と思っただけだ。きっと知らないんだろうけど――財団職員が、他でもない六車さんを誘拐しちまったら、なぁ?後が怖い」

 

 

 ……そうか。俺がスピードワゴン様の"耳"として動いている事を言っているんだな。確かに、あの方は俺のスタンドの能力や、俺自身の人柄を買ってくれている。

 俺が誘拐されたと知ったら、他にも財団内に数名いる内部監査役を動かし、こいつらに情報を流した財団職員を探してくれるだろう。

 

 そして何よりも、ジョースター家のお気に入り、それもスピードワゴン様まで好意的に思っている園原さんの誘拐に協力した相手を、あの方が許す訳がない。

 

 

「――いっ……!?」

 

「クソガキが!何を訳の分からん事を……!」

 

 

 不安を煽ったせいだろう。再び奴のスタンドによる暴力が始まったが、先ほどよりも勢いが強い。……俺はただ、それを見ている事しかできなかった。

 

 

(……何故逃げない?何故抵抗しない!?)

 

 

 何度殴られても、蹴られても。園原さんは一度も逃げず、抵抗もしなかった。

 間違いなく俺のためだろう。あんなに体が震えているのに、俺が傷付けられないように、俺を守るために恐怖を我慢している!

 

 本人がどれだけ乗り越えたと言っても、記憶に刻み込まれた幼少期のトラウマを、完全に消す事はできないはず。

 このまま父親に化けたスタンドによる暴力が続けば、それがまたトラウマになる可能性だってあるのに!それでも、園原さんは……!!

 

 

「――っ、園原さん、もういい!頼む、逃げてくれ!!抵抗してくれ!!俺はどうなってもいいから……!!」

 

「……くく。だそうだが?どうする、園原?」

 

 

 思わずそう叫ぶ俺を見て、トリスタンがニヤニヤと嗤う。対して園原さんは……俺と目を合わせて微笑むと、そこから打って変わり、奴を強く睨んだ。

 

 

「――だが断る!!俺は逃げないし抵抗しない!ほら好きにしろよ、トリスタン・ウッド!!」

 

「くくくははははははっ!!良い度胸だが、それがいつまで続くかなぁ!?」

 

 

 そう言って、奴のスタンドが再び拳を振り上げた時――下の方から轟音が聞こえ、建物が僅かに揺れた。

 

 

「な、何だ!?」

 

「何が起こった!?」

 

 

 トリスタンも含め、奴らの仲間に動揺が広がった瞬間、

 

 

「――イージス・ホワイトォォッ!!」

 

「待ってたよ、志人!!」

 

 

 園原さんの叫びと共にイージスが現れ、園原さんの体にイージスが溶け込むように消えていき――完全同化を果たす。

 さらに翼を広げ、俺がいる方に猛スピードで飛んで来る!

 

 

「六車、屈め!!」

 

「っ!!」

 

 

 指示通りに屈むと、白い杖が俺の頭の上スレスレを通り、俺の真後ろに立っていた城戸に直撃した!

 

 

「ぐあっ!?」

 

「っ――この間抜けがあぁぁっ!!」

 

 

 トリスタンの叫び声が響くと同時に、俺は園原さんの手に引き寄せられ、彼と共にイージスのバリアに包まれる。……園原さんとイージスの同化が解かれ、彼は床に跪いた。

 

 

「志人!!」

 

「園原さん!大丈夫ですか!?」

 

「まぁ、何とか。……誰だか知らねぇが、奴らの隙を作ってくれた事に感謝しないと。……あ、そうだ。

 六車さん、すみません。俺とイージスの力だと、手錠は破壊できないし怪我の治療もできないので、しばらくそのままになってしまいますが……」

 

「そんな事気にしませんよ!!」

 

 

 ああ、もう、このお人好しめ!!本当に仕方ない人だな!!

 

 

「あと、もう1つ。……このバリアですが、長くは持ちません」

 

「えっ?」

 

 

 囁かれたその言葉に、耳を疑った。……今、トリスタン達のスタンドが総出で破壊しようとしているにも関わらず、びくともしないこのバリアが?

 

 

「俺の体力と……精神力的に、そろそろバリアにヒビが入る頃だと思います」

 

「あっ……!」

 

 

 そうか、そうだよな……この人は偽物とはいえ、先程まで父親からの暴力を受けていた。表面上は涼しげな顔をしているが、精神的にも肉体的にもかなりきつくなっているはず。

 よく見ると顔色は悪いし、体もまだ震えている。……申し訳ありません。私が人質になってしまったせいで……!!

 

 

「だから――最終手段を、使います」

 

「最終手段……?」

 

「志人……本当に、いいの?それを使った後にどうなるかは、俺でも分からないんだよ?」

 

 

 と、イージスが不穏な言葉を口にする。……イージスでもどうなるか分からないような、危険な事をするつもりなのか!?

 

 

「それって、まさか命に関わるような事じゃ……!?」

 

「使った直後にそうなる訳ではありませんよ」

 

「つまり、後々そうなる可能性があるんですね!?」

 

「…………さぁ?それは俺にも、イージスにも分からないので、賭けですね」

 

「園原さん……!!」

 

「使った後に俺達が戻って来れるかどうかは――承太郎次第、かな」

 

 

 ……何故、そこで空条さんの名前が出る?

 

 

「……っ、まずい、ヒビが入り始めた!時間が無い、イージス!」

 

「志人……」

 

「もうこれしか無い!俺と六車さんがまた人質になったら、最後に傷付くのはきっと承太郎達だ!!俺は嫌だぞ、そんなの!」

 

「俺だって嫌だ!」

 

「なら、分かるよな?……他でもない俺が責任を押し付けるなんて、あいつには本当に申し訳ないけど――承太郎を、俺達の親友を信じるしかねぇ!イージス・ホワイト!!」

 

「――――分かった」

 

 

 ヒビが入る音と、奴らの勢い付く声が聞こえる中。園原さんは最後に、俺に伝言を頼んだ。

 

 

「承太郎に伝えてくれ。――イージス・ホワイトの奥の手を使う。後は頼んだ、と」

 

 

 バリアが砕けて、消える。奴らの歓声が響いた、その刹那――新たなバリアが張られた。

 

 それは、いつもの緑色のバリアの上に、イージスの顔にある金の刺青と似た模様が張り巡らされ、キラキラと輝いている。

 さらに下を見ると、バリアの円の中に緑色の魔法陣があった。これは……五芒星か?

 

 その時、園原さんとイージスがふらりと、床に倒れ込んだ。慌てて声を掛ける。

 

 

「園原さん!?イージス!?」

 

 

 近づいて大声で呼んでも、2人の目は固く閉じられたまま。

 ……イージスの不穏な言葉を思い出した。恐る恐る、園原さんの心音を確認する。……良かった、ちゃんと動いてる……!!

 

 だが、これはまさか――眠っている?一体どういう事だ?

 

 

「――いってぇ!?」

 

「何だこれ、さっきのバリアよりも固いぞ!?」

 

「何をやっている!?早く壊せ!!」

 

「だ、駄目です!攻撃が効かない!!」

 

「ちいっ!城戸!!貴様の能力でバリアの中にドアを!」

 

「さっきからやってますけど、出来ません!!」

 

「この役立たず共が!!」

 

 

 バリアの外では、奴らが騒いでいる。どうやら、今度のバリアはより強固になっているようだ。これがイージス・ホワイトの奥の手か……これなら、この中にいれば安全だろう。

 

 しかし、園原さんとイージスの様子が気掛かりだ。息はしているし、眠っているだけとはいえ、いくら呼んでも目を覚まさないのはおかしい。

 それに。わざわざ俺に、空条さんへの伝言を頼んでいる。ただバリアを張って眠って起きるだけなら、あんな覚悟の決まった表情で"後は頼んだ"なんて伝言は残さないはず。

 

 ……覚悟の決まった表情?後は頼んだ?

 

 

(…………おい、ちょっと待ってくれ園原さん)

 

 

 ――あなたはちゃんと、目を覚ましてくれるんだよな……?

 

 

 

 

 

 

 

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