空条承太郎の友人   作:herz

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・最初、長い会話文が入りますが、承太郎視点です。

・オリキャラが登場します。

・ご都合主義、捏造過多。園原誘拐編は特に注意。いろいろおかしな点があると思いますが、見逃してくれるとありがたいです。

・キャラ崩壊あり。

・念のため。not腐向けです!


 ――空条承太郎だって、形振り構っていられない時があるはず。




空条承太郎は、その信頼を裏切りたくない

 

 

 

 

「――イージス・ホワイトの奥の手?」

 

「そう。……万が一、どうしようもない事態に陥った時に使う最終手段。切り札が欲しいと思ってな。大分前からそれを考えていたんだが、最近になってようやくイメージが固まったんだ」

 

「へえ?そんなものを考えてたのか。……どんな技だ?」

 

「……イージスのバリアは、俺の意思次第でどんな攻撃でも防ぐ。だが、バリアの強度は俺の体力や精神力によって強くもなり、弱くもなる。

 俺はその不安定さをどうにか安定させて、より強いバリアを作りたいと考えた。本当に、誰にも破る事ができないバリアを」

 

「…………」

 

「で、それなら単純に、俺の意思に関係なく全てを防ぐような効果にすればいいかなと思った。それなら、俺自身の体力や精神力が不安定でも問題ない。ただし……」

 

「……ただし、何だ?」

 

「……その技を使った後。敵がいなくなって周りが安全になった後でも、バリアが解けるかどうかは分からない。

 ――俺達が目覚める事ができるかどうかも、分からない。……イージスはそう言っていた」

 

「はあ!?目覚めないって、まさか死ぬとか言わねえだろうな!?」

 

「さすがにそれは無い。俺とイージスが眠るだけだから」

 

「眠る?……いや、それにしたってバリアも解けずに眠り続けたら後々死ぬんじゃねえか!?」

 

「…………あ、その可能性があったか」

 

「おい!?」

 

「でも、もうイメージ固まっちゃったしなぁ」

 

「眠り続ける以外に方法は無いのか?何故そんなイメージにした?」

 

「そもそも意識が無い状態なら、まず精神的に不安定になる事は無いだろ?

 それで、眠った状態なら体力も回復していくはずと考えて……そういえば、睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠っていう2つの種類があったなぁ、と思い至った」

 

「……レム睡眠は浅い眠り、ノンレム睡眠は深い眠りだったな?

 特に、ノンレム睡眠の方は脳が休息状態となり、誰かの声や音に反応する事がなくなり、疲労回復も促進させるという。

 

 ――バリアを張った後にノンレム睡眠に入れば精神が不安定にならずさらに体力も回復するし一石二鳥じゃんとか考えてそんなイメージにした訳だなこの馬鹿野郎!!」

 

「今の息継ぎどうなってた?」

 

「話を逸らすな!!」

 

「すみませんでした謝る、謝るから頭ぐりぐりは止めてください本当にお願いします親友様いたたたたたたっ!?」

 

 

 

 

 

 

「……で?本当に、それ以上どうにかならねえのか?その奥の手は」

 

「……あぁ。どうにもならない。これ以外に良い切り札は思い付かなかった。……でも、イージスとも話し合ったんだけどさ……」

 

「ん?」

 

「――承太郎。……お前なら、どうにかできるかもしれない」

 

「俺が?」

 

「うん。……この切り札は、例えどんな攻撃であっても必ず防ぐし、バリアを張る前からその内側に入っている人以外は、例え誰であってもバリアをすり抜ける事はできない。

 だが、承太郎だけは……もしかしたら、例外にする事ができるんじゃないか、と」

 

「……俺なら、切り札のバリアを張った後でも、その中に入れる?」

 

「あぁ、多分」

 

「何故だ?」

 

「…………あー、」

 

「?」

 

「その……イージスのバリアの色は、何も意識してない時は白だけど、基本は緑色だろ?あれはジェダイトっていう、緑色の宝石をイメージした結果なんだ。

 その宝石は衝撃への耐性が強くて、宝石の中では1番割れにくい石と言われている」

 

「ほう……その宝石と俺に何の関係があるんだ?」

 

「ジェダイトは、日本語で言うと翡翠。――お前の瞳の色だ」

 

「――――」

 

「お前の目にはいつも、意志の強さを感じている。不安とか、寂しさとか、悲しさとか……ネガティブな感情で揺れる事はあっても、濁りはしない。お前の根本的な部分は、折れない。

 その意志の強さが、何でも防ぐというイメージとぴったりだった。……あのバリアはジェダイトだけでなく、お前の目をイメージして作られたものだ。

 

 だから、イージスのバリアと承太郎には深い縁がある。……そんなお前なら、外側の全てを拒絶するバリアの内側に入れるんじゃないかと、そう思う。確証は無いけどな」

 

「…………責任が重い」

 

「すまない。俺もそう思った。……俺だけはお前に責任を負わせはしないと、そう決めていたんだがな……本当に、ごめん」

 

「いや。他でもない、志人から負わされる責任なら……お前に頼られるなら、それは悪くないものだ」

 

「!」

 

「もしも万が一、お前が切り札を使わなければいけない状況になった、その時は……遠慮なくそれを使え。

 全部終わって安全になったら、俺がバリアの内側に入って、お前とイージスを起こしてやる」

 

「……本当にお前がバリアの中に入れるかも、俺達が目を覚ますかどうかも、分からないんだぞ?」

 

「ああ、知ってる。正直に言うと、俺もそれが怖くて仕方ねえ。……だが、それでも俺はやってみせる。――お前が、俺ならやれると信じてくれるなら、な」

 

「……分かった。お前を信じるぜ、承太郎。万が一その時が来たら――後は頼んだ」

 

 

 ――――その信頼を、裏切るわけにはいかない。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 その事件は、ジョナサンの下に掛かって来た電話から始まった。

 

 電話の相手は、旧図書館管理人の三谷。……ブックフェスの時に連絡先を交換して以来、電話を掛けて来た事はこれが初めてだったため、ジョナサンはすぐに電話に出た。

 この判断は、正解だった。――六車がスタンド使い数名によって、拐われたらしい。

 

 さらにそいつらが六車を誘拐した理由は、ジョースター家のお気に入り……シドに対する人質にするためだった。

 

 三谷からそれを聞いたジョナサンは、自宅にいたスタンド使い6人を集めて簡潔に事情を説明。

 それから全員でシドの自宅へ向かったのだが……そこで、荷物が入れられたまま横に倒れている、シドの自転車を発見した。

 

 どう見ても、既に誘拐された後だった。

 

 

「クソッ!何処の誰だよ志人さん拐った野郎は……!!」

 

「……電話でアバッキオを呼んで、状況を再生してもらいます。志人さんが誘拐されたと話せば、すぐに来てくれるはず」

 

「よし、頼んだぞジョルノ」

 

「はい!」

 

「それなら、俺は財団の方に連絡を、」

 

「ジョセフ、待て」

 

「え?」

 

 

 シドの自宅アパートの前にて。アバッキオを呼ぶというジョルノに続いて、財団に連絡しようとしたジョセフを止める。

 

 

「……六車を誘拐したという奴らは、何故六車の住所を知っていた?それに、シドに対する人質として利用できると考えた理由は?」

 

「あん?――っ、そうか!財団職員の個人情報が、そんな簡単に漏れるはずが無い……」

 

「そうだ。……財団に連絡するのは、まずいかもしれねえ」

 

「どういう事っスか!?」

 

「2人だけで納得しないで、教えて!」

 

「――財団職員の中に、裏切り者がいる可能性……お前達は、それを危惧しているのだな?」

 

 

 と、ディオが険しい表情でそう言った。隣にいるジョナサンも、似たような表情をしている。仗助と徐倫が驚いた。

 

 

「財団の中に、裏切り者!?」

 

「……そっか。そうよね!財団職員の個人情報もそうだけど、その六車という人は志人さんの担当職員なんでしょ?

 そういう情報だって外部に漏れるはずが無いから、そもそも志人さんと六車さんが知り合いだって事を知る人は、基本的に財団職員ぐらいよね」

 

「……あ、なるほど!つまり、六車さんを志人さんの人質として利用できる事を、財団職員の中の誰かが犯人に教えた……!?」

 

「そういう事だね。……もちろん、財団職員を脅して情報を手に入れたとか、何らかのスタンド能力によって手に入れたとか、そんな可能性もあると思うけど……」

 

「もしも本当に裏切り者がいた場合、今財団に連絡すれば、こちらの情報がそいつの耳に入ってしまう」

 

「……ン、財団への連絡は無しだな。とりあえず保留!」

 

 

 そこへ、電話を終えたジョルノが戻って来た。アバッキオはちょうど近い場所にいたらしく、すぐに駆け付けてくれるという。

 また。ジョセフがシドの自転車から、ハーミット・パープルの念写で何か読み取れないかと確かめたところ……

 

 

「――扉?」

 

「……洋風の扉、だな。何故そんなものが?」

 

 

 アパートの敷地の地面に、洋風の扉が描かれた。……六車を拐った奴はスタンド使いだったらしい。この扉も、もしかしたらスタンドの能力に何か関係がある?

 すると、ようやくアバッキオが到着した。さっそく、シドの身に何があったのかを再生してもらう。

 

 

「……えっ!?」

 

「お、落ちた?今、落ちたっスよね!?」

 

「落ちたなァ。……どういう事だ?」

 

「……これ以上は追えないのか?」

 

「あぁ。ムーディー・ブルースの挙動を越えた動きまでは再生できない……」

 

「そして、人やスタンドの行動を再生する事はできますが、その能力自体は再生できません」

 

「何?……もしや、さっき俺が念写したあの扉……」

 

「ええ。あれがスタンドの能力だったとしたら、志人さんの足元に出現して扉が開けば、そこに落ちる」

 

「……2つの場所を、扉で繋ぐ能力かしら?」

 

「可能性はありますね」

 

 

 シドの身に何があったのかは分かったが、これでは追跡は不可能だな。……ならば、次だ。

 三谷に連絡して、六車の自宅の住所を教えてもらった。ジョナサンが運転する車に乗り、全員でそこに向かう。

 

 六車の自宅前から、ムーディー・ブルースの能力の再生を行った。……しかし。六車の動きを追って行くと、彼は途中で消えてしまった。

 

 

「……志人の動きを再生した時と同じだ。これ以上は追えない」

 

「ええっ!?八方塞がりかよ……!」

 

「いや、まだだ。……これがスタンド能力だった場合、その能力を使ったスタンドや、その本体を再生すれば何か分かるかもしれねえ」

 

「それから、三谷を人質に取ったという大柄な男達の方も、だな」

 

「ああ。……とりあえず、スタンドから再生するか」

 

 

 その後。スタンドが、ホテルのドアマンのような格好をしている事。スタンドが扉を開くような動きをした事から、あの洋風の扉がスタンド能力である可能性が高まった事。

 スタンドの本体が茶髪の男で、音声の記録から、トリスタンという名前の人間から指示を受けていた事が分かったが、六車が何処に連れて行かれたのかは分からなかった。

 

 しかし。三谷を人質に取った男達のうちの1人を再生すると、そいつらが車で拠点に向かおうとしている事が分かった。その先に、シドと六車がいるかもしれない。

 

 

 ……大柄な男達を追跡して行くと、都心から離れた場所にある大きな廃ビルにたどり着いた。物陰に隠れて様子を窺う。

 

 

「扉が閉まってるし、遠目からじゃ中の様子は分からねェが……周りが静かだからか、声はよく聞こえるな」

 

「結構ガヤガヤしてない?」

 

「……確かに、そうですね。どうやらそれなりに人数が多いようだ」

 

「全部スタンド使いっスかね?」

 

「……さあな。だが、それを想定して動いた方がいいだろう」

 

 

 俺がそう言うと、後ろから肩を捕まれた。……アバッキオだ。

 

 

「……その言い方、まさかこのまま突入する気か?」

 

「ふふ……そうだよ、アバッキオさん。僕達は最初から、そのつもりでここに来ている。志人と六車さんの事が心配だからね」

 

 

 ジョナサンの言葉に、ジョースター家の全員が頷く。……中ではシド達が何をされているか分からねえ。早く救出しなければ。

 

 

「……俺だって志人の事は心配だが、いくらなんでもこの人数で行くのは無謀だろ。財団に応援を、」

 

「それなんですけど、アバッキオ」

 

「あ?」

 

「あなたは先にここから離れて、財団に連絡して事情を説明し、応援を呼んでもらえませんか?それから、応援が来るまでは何処かに身を隠してください。その間に、僕達が突入します」

 

「はあ!?」

 

「応援が来たら、ここまでの道案内をお願いしますね」

 

 

 なるほど。既に敵の拠点に到着したし、もう財団に連絡を入れてもいいだろう。裏切り者がそれに気づく頃には、俺達は襲撃を開始している。

 

 

「待て!ジョルノ、」

 

「お願いします」

 

「…………はあぁ……分かった分かった。言われた通りにしてやるよ」

 

「ありがとうございます」

 

「ったく、相変わらずクソ生意気なガキめ……おい、承太郎。志人拐った奴、俺の分まで殴っておけよ!」

 

「ああ、任された」

 

 

 最後に俺にそう頼んでから、アバッキオが離れていく。…………さて、

 

 

「――これで、もう我慢しなくてもいいな」

 

 

 全員で顔を見合せ、笑う。……だが、互いに目は笑っていない。

 

 ここに来るまで我慢し続けた怒りを、ようやく奴らにぶつける事ができる……!!

 

 

「突入する前に、1つだけいいかな?皆にお願いがあるんだ」

 

「お?何スか?ジョナサン」

 

「中にいる奴らが全員スタンド使いだったら、スタンドが見えない僕は、サポートに回るしかなくなってしまうよね?」

 

「……まァ、そうだな。それで?」

 

「だから――最初の一発だけは是非、僕に思い切りやらせて欲しいんだけど……どうかな?」

 

 

 いっそ怖いくらいの、満面の笑み。それを見たジョセフ、仗助、徐倫が、ビクリと体を震わせた。

 どうやら、今のジョナサンは腹黒い一面を隠す気が無い程に、怒っているらしい。

 

 

 ……廃ビルの閉ざされたドアの前まで全員で静かに近づき、それからジョナサンが前に出る。

 

 

「……それじゃあ、いくよ。全員、準備はいいかい?」

 

 

 ジョナサンの言葉に、全員が頷いた。何が起こっても対応できるように、それぞれスタンドを出す。ジョナサンは俺達に背を向け……構えた。波紋の呼吸音が聞こえる。

 

 

「……山吹色の(サンライトイエロー)――波紋疾走(オーバードライブ)

 

 

 落ち着いた声とは裏腹に、その拳の威力は桁違い。――たった一発の拳が扉にめり込み、轟音と共に外れた扉が、建物内に吹き飛ぶ。

 

 ……あ、数人が扉の下敷きになった。ご愁傷様だぜ。

 

 

「…………今、建物がちょっと揺れたわね?」

 

「ぐ……グレートッ!ジョナサンすげえ!!」

 

「俺が生身で同じ事やっても、あの扉はあんなにぶっ飛ばせねェなァ……」

 

「僕達の前世のご先祖様、さすがに強過ぎですよね。生身なのに」

 

「おそらく。スタンドが目に見えていれば、こいつなら生身でも互角にやり合えるだろうな……」

 

「……やれやれだぜ」

 

 

 会話しながら全員が中に入ると、敵は既にスタンドを構えている。……おお、ぞろぞろと出てきやがる。これは全員スタンド使いと見ていいか?

 

 

「て、テメーら!何処から来やがった!?」

 

「何者だ!?」

 

「……ああ、そういえば。派手にノック(・・・)する事に気を取られて、ちゃんと挨拶してなかったね。ジョセフ」

 

「ははははッ!!そうだなァ、ジョナサン!んじゃ、俺が代表してご挨拶しちゃおうかな!

 

 ダイナミックお邪魔しまァァす!!ジョースター家でェェす!!でもって――

 

 

 

 

 

 

 ――うちの子返せよクソ野郎共ォッ!!」

 

 

 ジョセフの叫びを合図に、戦闘が始まった。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

「「――オラオラオラオラァ!!」」

 

「「無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」」

 

「ドラララララララァ!!」

 

波紋疾走(オーバードライブ)!!」

 

「……いいなぁ、皆スタンドが見えて……あ、こらこら。逃げちゃ駄目だ、よっ!!」

 

「ぎゃあああぁぁっ!?」

 

「ジョナサン!右に飛べ!」

 

「了解!」

 

「っ、くそ!スタンド見えねえくせに避けるなぁ!!」

 

 

 ジョナサン以外は敵を速やかに倒していき、戦意を失って外に逃げようとする奴はジョナサンが倒していた。

 スタンドが見えない彼の側では、ジョセフが彼に指示を出し、スタンドの攻撃を回避させる。

 

 

「……敵は、これで全部倒したのかしら?」

 

「下っ端はそうかもしれませんが……おい。お前達のボス、トリスタンというやつは何処にいる?」

 

「だ、誰がお前らなんかに、教えてやるか……!」

 

「まぁ、そう言わずに。……ほら。この怪我を治してあげますから」

 

「へ?――っ、いだだっ、痛い痛い痛いぃぃっ!?」 

 

「あ、すみません。言い忘れてました。僕のスタンドによる治療って、要は麻酔無しの手術なので、結構痛いんですよ。

 

 で、ボスは何処にいる?それを止めて欲しかったら、さっさと言え」

 

「うう上だぁ!さ、最上階にいるぅ!!」

 

「ありがとうございます。……だ、そうですよ。早く行きましょう」

 

「…………ジョルノ。お前って、綺麗な顔してやる事えげつねーな……」

 

「そうですか?今さらですよ、仗助」

 

「やれやれだわ……そういえば、ジョルノは元マフィアのボスだったわね……」

 

 

 ジョルノのおかげで、こいつらのボスの居場所が分かった。全員で最上階まで駆け上がると、1つだけ、何やら騒がしい部屋があった。

 

 その部屋の扉を、スタープラチナの拳で破壊。全員で中に突入する。

 

 

「っ、今度は何だ――なっ、貴様は……!?」

 

「空条さん!!」

 

 

 金髪赤目の目立つ男と、アバッキオのスタンドで再生した時に見た、茶髪の男。それ以外のスタンド使い達。

 その奥に、いつもと違うバリアで守られている六車と――バリアの中心で倒れている、ボロボロになった志人とイージス。

 

 それを見てしまえば、形振り構っていられなくなった。

 

 

「スタープラチナ――」

 

「「――ザ・ワールド!!」」

 

 

 時を止める声が、重なる。……隣にいたディオと一瞬目を合わせ、その直後に二手に分かれた。

 

 

「オラオラオラオラオラオラァ!!」

 

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!」

 

 

 それぞれの目の前にいる敵に、1人残らずスタンドの拳を叩き込み――

 

 

「「――そして時は動き出す」」

 

 

 再び、時が動く。

 

 

「……あ、えっ!?」

 

「あーーっ!!俺も殴りたかったのに!!」

 

「承太郎、ディオ!!お前らなァ……!!」

 

「……駄目ですね。全員ノックアウトされてます」

 

「ちょっと父さん!あたし達が殴る分も残しとけよ!?」

 

「んな事言ってる場合か!?志人があんなにボロボロになってんだぞ!?」

 

「その通りだッ!治療できる奴!早く志人を治療しろォ!!」

 

「ああっそうだったァ!!お、俺が行くっス!志人さん!!」

 

 

 敵は全員、俺とディオで倒した。ディオの治療しろという声に仗助が即座に反応し、シドの下へ走る。

 

 

「あっ、待ってください東方さ――」

 

「――いってェッ!?」

 

「仗助!?」

 

「……通れないかもしれないと、言おうとしたのですが……」

 

「もっと早く言って欲しかったっス……!!」

 

「申し訳ありません……!」

 

 

 バリアに激突した仗助が、頭を押さえて仰向けに倒れてしまった。

 

 

「……っ、駄目だわ。通れない!」

 

「イージスのバリアって、味方は自由に通れるはずだろォ!?どうなってる!?」

 

「志人さん!ここを通してください!……志人さん!?」

 

「意識が無いのか……!?」

 

「六車さん、何があったんだ!?志人は無事なのか!?」

 

 

 他の奴らもバリアまで駆け寄るが、誰も通れないようだ。……シドとイージスは倒れたまま動かない。それに焦ったジョナサンが、六車にそう聞いた。

 

 

「……園原さんとイージスは、このバリアを張った後に眠ってしまったんです。それで……っ、そうだ!伝言!!空条さん、園原さんから伝言があります!」

 

「伝言?」

 

「――イージス・ホワイトの奥の手を使う。後は頼んだ。……園原さんは、そう言っていました!」

 

「――っ!!」

 

 

 その伝言を聞いた途端、脳裏を過ぎる、数ヶ月前の会話。

 

 

 

 

 ――……分かった。お前を信じるぜ、承太郎。万が一その時が来たら――後は頼んだ。

 

 

 

 

(――その信頼を、裏切るわけにはいかない)

 

 

 数ヶ月前、シドと話したイージスの奥の手について。ジョナサン達にも簡単に説明した。

 

 

「……じゃあ、承太郎さんならここを通れるかもしれないんスね!?」

 

「文字通り"全て"を防ぐ……否、"拒む"と言うべきか?そして、その代わりに眠り続ける。……随分、リスクの高い奥の手だな」

 

「それを使わざるを得ない程に、追い込まれてしまったんだね……」

 

「……ねぇ。六車さんはそこから出られないの?」

 

「それはまだ試していません。今、やってみます」

 

 

 後ろ手に手錠を掛けられた六車が立ち上がり、バリアの前に。……一歩踏み出すと、すり抜ける事ができた。

 

 

「出られた!」

 

「あ、怪我してるじゃないスか!治します!」

 

「手錠も壊すぜ」

 

「ありがとうございます……」

 

 

 バリアの外に出て来た六車の怪我をクレイジー・ダイヤモンドが治し、スタープラチナの腕力で手錠を破壊する。

 

 

「……ちなみに、六車さんは外から中に入れますか?」

 

「えっと……あ、あれ!?」

 

「通れなくなった……!」

 

「……やっぱ、承太郎に賭けるしかねェようだな」

 

 

 バリアの中にいた人間でも、一度外に出てしまうと中には入れないらしい。

 

 

「父さん……!」

 

「承太郎さん、お願いします!」

 

「……行って来る」

 

 

 俺はバリアの前に立ち、ゆっくりと片手を伸ばす。……頼む。通してくれ!

 

 

 

 

 

 

「――あ、」

 

「……と、通った!!」

 

「承太郎、行き来はできるか?」

 

「……ああ、出来るぜ。中からも外からも、バリアをすり抜ける」

 

「僕達は先程と変わらず、通れないままですね……やはり、承太郎さんは例外みたいです」

 

「……あとは、志人とイージスを起こせるかどうかだ。頼んだぜ、承太郎!」

 

 

 ジョセフに言われるまでも無い。すぐにシドとイージスの下へ向かう。……近くで見ると、彼の怪我の多さが分かった。

 

 足蹴にされたのか、服には誰かの靴跡がついている。さらに切り傷も無いのに服に血が付いている事から、もしかすると血を吐いたのかもしれない。

 整った顔は、大きく腫れている。口から血が流れていた。顔色も悪い。……この分だと、服の下も酷い事になっているだろう。

 

 一体、何があったのか。……それを聞くのは、こいつが目を覚ましてからだな。

 歯を食い縛る事で、志人をこんな目に遭わせた奴らへの怒りを、なんとか呑み込んだ。俺が志人の体を、スタープラチナがイージスの体を抱き起こし、呼び掛ける。

 

 

「……志人、イージス。起きろ」

 

「…………」

 

「……いつまで寝てるんだ。外はもう安全だぜ。起きていいぞ」

 

「…………」

 

「――っ、なあ早く起きろよ親友。俺を信じるって言ってくれたじゃねえか!志人!!」

 

「…………」

 

「起きろ!目を覚ませ!!」

 

 

 怪我人の体を強く揺らすなんて、本当はやりたくなかった。だが、死んだように眠る志人を見て、堪らず冷静さを取っ払う。

 

 俺ならどうにかできるかもしれないって、先に言ったのはお前の方だろうが!!

 

 

「最高の司書になるって夢も叶えずに!そのまま眠り続けるのか!?おい!!」

 

 

 だが……嗚呼、分かってる。数ヶ月前、万が一の時は遠慮なく奥の手を使えと言ったのは、お前達を起こしてやると言ったのは……俺だ。

 その後に、俺を信じると言ってくれたのが、お前だ。俺を信頼して、後の事を任せてくれた。

 

 

 ――その信頼を、裏切りたくない!!

 

 

「っ、お前が俺を!俺がお前を!互いに護り合うと言っただろ!?

 

 ――どっちか片方が欠けたら意味がねえんだよォッ!!目を開けろ!園原志人!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう叫んだ刹那――バリアが、消えた。

 

 

「なっ、」

 

「……はは、」

 

「!?」

 

「そうだな……片方が欠けたら、意味が無い」

 

 

 視線を下ろすと、相も変わらず睨んだだけで人を殺せそうな目が、俺を見上げていた。

 

 

「お前を信じて正解だったぜ――おはよう、親友」

 

 

 そう言って呑気に笑うそいつを見たら、涙が勝手に溢れる。

 

 

「――――こんの寝坊助が!!遅いッ!!」

 

「ごめんって」

 

「あはは、大寝坊だねぇ志人」

 

「そうだなぁイージス」

 

「てめーら……っ、ああ、もういい……お前らが笑ってるならもう何でもいいぜ、俺は……」

 

 

 涙を拭い、背後から家族がバタバタと駆け寄って来る音を聞きながら、深く、安堵のため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

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