空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。

・オリキャラが登場します。

・ご都合主義、捏造過多。園原誘拐編は特に注意。いろいろおかしな点があると思いますが、見逃してくれるとありがたいです。

・キャラ崩壊あり。


 ――ジョースター家だって、身内のためなら過激な尋問……という名の拷問をしたくなる時があるはず。




空条承太郎の友人は、黒幕を知る

 

 

 

 

 

「――よかったあ!ゆきとさァァん!!」

 

「あのまま起きなかったら、起きなかったら、ぐすっ!う"う"……!!」

 

「承太郎はよくやったぞォ!!さすが親友だなァ!!」

 

「分かったから、っ、止めろ、くっつくな!!」

 

「ま、待て待て、俺潰され、」

 

「あっ、シドすまん!」

 

「はいはい!皆さん解散ですよ、解散!!」

 

「こら!またうちの子を潰す気か!?」

 

「志人、こっちだ。避難しろ!」

 

「あ、ありがとうございますディオさん……死ぬかと思った……」

 

 

 

 

「…………お前ら、何やってんだ?」

 

「アバッキオ!」

 

「おう。無事か?志人」

 

「承太郎達のおかげで何とか……」

 

「そうか、なら良い」

 

 

 承太郎のおかげで目が覚めた後。仗助のスタンドのおかげで怪我が完治した俺は、仗助と徐倫に泣きながら抱き着かれ、ジョセフにぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。

 その次に、ジョセフは承太郎にくっついて、まだ承太郎に抱えられていた俺ごとぎゅうぎゅう詰め。

 それを見て手を叩き、解散を告げたジョルノと、ジョセフ達を叱るジョナサン。俺を救出してくれたディオ。

 

 そして、一連の流れを見て呆れた表情でツッコミを入れるアバッキオ。……彼は財団職員達と共に、後からやって来たようだ。

 

 

 財団職員達によって、まだ気絶しているトリスタン以外の奴らが回収されていく。

 トリスタンには後でいろいろ聞きたい事があるため、拘束してこの場に残す事になった。今は財団職員数人に加え、承太郎達が見張っている。

 

 奴が目覚める前に、俺達はそれぞれ情報を交換する事にした。まずは、六車さんが誘拐された時の話から。

 三谷さんが人質にされたと聞いた時は驚いた。それから、六車さんが機転を利かせて密かに承太郎達に連絡するようにと頼んだらしい。そのおかげで、承太郎達はいち早く事態に気づく事ができた。

 

 俺は六車さんに、三谷さんに電話して無事だと伝えた方がいいと提案した。六車さんはそれに頷き、財団職員の1人に携帯を借りて、一度この場から離れる。

 

 

「……ところで、さっきからずっと聞こうとしてたんだけどよォ。その三谷って奴とお前らはどういう知り合いなんだ?六車の従兄弟とは聞いたが……」

 

「確か、アバッキオさんが六車さんの行動を再生した時。"兄さんの図書館の常連さん達"って言ってたっスよね?」

 

「で、その常連さんが父さん達の事なんでしょう?どういう事?」

 

「すみません。それは内緒です」

 

「三谷さんとの約束があって、教えられないんだ。ごめんね?」

 

「えー!?」

 

 

 三谷さんとの関係性を気にしたジョセフ、仗助、徐倫の疑問はのらりくらりと回避。その間に六車さんが戻って来たので、これ幸いと次の話へ。

 皆は俺に何があったのかを聞きたがったが、それは一番最後に回してもらう。……聞いたらさすがに怒って話どころじゃなくなるだろうなぁ、と。俺でも予測する事ができたからだ。

 

 という訳で、次は承太郎達がどうやってこの場所を突き止めたのか。

 

 三谷さんから連絡をもらってすぐに俺の自宅に向かった承太郎達は、荷物が入れられたまま倒れている俺の自転車を発見。俺が誘拐されたと判断し、アバッキオを呼んで状況を再生してもらった。

 さらに。六車さんの自宅に向かい、六車さんや彼を拐った犯人の動きを再生。その再生された犯人を追跡し、ここまでやって来たという。

 

 その後の戦闘については、苦笑するしかない。下にいた敵スタンド使い達は運が悪過ぎたな。ジョジョ主人公ズと元ラスボスによる襲撃とか、それなんて災害?

 しかも、最上階に来た後も承太郎とディオが実質0秒で戦闘終了させたって……嘘だろチートコンビ。いや、マジでやったらしいけど。

 

 また。イージスの奥の手についても、どんな状況だったのかを聞いた。

 

 防御力に関しては、大成功。六車さんによると、奴らがどんな攻撃をしても破れる気配が無かったようだ。

 ただし。俺とイージスが予測した通り、承太郎しか通る事ができなかった。バリアの中にいた六車さんは外には出られたが、再び中に入る事はできなかったという。

 

 ……本当に、承太郎には感謝しかない。こいつが必死に呼び掛けてくれたおかげで目が覚めたからな。

 

 

(できれば、この奥の手はもう使いたくねぇな)

 

 

 片方が欠けたら意味が無いという、悲痛な叫び。目覚めた時に一瞬見えた、承太郎の真っ青な表情。今まで見た事が無い程に青ざめていた、あの顔。

 あれがどうしても忘れられなくて、罪悪感に襲われた。……あの時は呑気に笑って誤魔化したが、そうでもしないと泣いて謝るところだった。

 

 承太郎には、これ以上の責任を負わせたくないし悲しませたくない。互いに護り合うと約束したのに片方が……俺が欠けたら意味が無い。その通りだ。

 親友のためにも。あの奥の手は、俺に極端な負担が掛からない形で使えるようになりたい。

 

 できれば使いたくないが、今後も未来で何が起こるか分からねぇ。今のうちにどうにかして改良を――

 

 

「――シド、おい!」

 

「あ、え?……わ、悪い。聞いてなかった。何だ?」

 

 

 承太郎に肩を揺さぶられて、我に返った。……周りを見ると、俺に視線が集まっている。

 

 

「次はお前から話を聞こうとしたんだが……やっぱりいい。ちょっと休んでろ。話は六車から聞く」

 

「いや、話すだけなら平気、」

 

「いいから、静かに休め!……これ以上心配させないでくれ」

 

「……分かった、そうする。六車さん、とりあえず奴の目的に関わる話は抜いて、俺の身に何があったのかだけを話してください」

 

「それは構いませんが……何故?」

 

「あの話まで全部一気に話したら、絶対にとんでもない揉め事になるでしょう?それに、人払いもしないといけないし……後回しにした方がいいと思います」

 

 

 最悪の場合、ディオ1人が責められる事になるかもしれない。それから、財団内部に裏切り者がいると分かった今、他の財団職員が話を聞いている時に全部言ってしまうのはまずい。

 ……という話を、六車さんだけを側に呼んでひそひそと話せば、彼は納得してくれた。

 

 承太郎達には横になってもいいと言われたが、さすがにそれは遠慮して、壁に寄りかかって座るだけにする。

 仗助曰く。クレイジー・Dの能力で怪我を治したが失った血は戻ってないし、疲労も"直した"わけではないため、安静にした方が良い、との事。

 

 ……言われてみれば、確かに体がだるい気がする。今は治っているが、何度か血を吐いたし内臓に損傷があったのかもしれない。あと、骨も折れてたかも。

 

 

 そして六車さんの口から、俺が六車さんを人質に取られ、トリスタンに暴力を振るわれていた事が語られると――

 

 

「…………スタンドが、あのクソ野郎に化けた?」

 

「そいつに暴力を振るわれた、だと?」

 

「六車さんを守るために、抵抗するのも我慢してずっと殴られてたんスか――よし、あの金髪殴って直してのエンドレス決定」

 

「オラオラの刑にしてやるわ」

 

「無駄無駄の刑も追加しましょう。その上、僕のスタンドの能力で麻酔無し治療ですね」

 

「それで完全に治ったら、今度は俺の波紋疾走(オーバードライブ)ぶち込んでやるぜ」

 

「僕も付き合うよ、ジョセフ!」

 

「待て待て、ちょっ、待って!全員待って!アバッキオと六車さんも止めるの手伝ってくれ!!」

 

「いや、無茶言うなよ!?」

 

「無理です無理です無理です!!」

 

「……つーか、そもそも志人の父親に何かあるのか?」

 

「あ?……そうか。アバッキオは知らねーのか。今世のシドは、幼い頃から父親に暴力を振るわれ、父親のせいで母親が自殺に追い込まれ、いろいろあって父親から逃げる形で一人暮らしを始めたんだよ」

 

「は、」

 

「その父親は財団を通して説得、というか脅迫したおかげで、もう二度と志人さんの前に現れる事はありませんが、それでもトラウマは残っています」

 

「――俺も混ぜろ!!」

 

「混ざるなぁ!!」

 

 

 暴走ジョースター家にさらに物騒な人が加わろうとしている!止めて兄貴!あんたは元警官だろうが!?その後マフィアだけどさぁ!?

 

 ……その後。俺1人で必死に全員を止めようとしたのだが、立ち上がった瞬間。立ち眩みした俺が倒れそうになったのを見るや、心配し過ぎて全員怒りが収まったらしい。急に大人しくなった。

 

 

「えーと、とにかく。もう1つ話したい事があってだな……あ、六車さん。人払いお願いできますか?」

 

「分かりました」

 

 

 六車さんに他の財団職員の人払いをお願いして、トリスタンの見張りは俺達全員でやる事に。

 さらにイージスの防音バリアを張ってから、奴が俺を誘拐した目的と、財団内部に裏切り者がいる事を説明。

 

 話し終えると、承太郎達の視線がディオに集まった。……ディオはこめかみを押さえて、ゆっくりと首を横に振る。

 

 

「……念のために断言するが、今世の私はそのような愚かな真似をするつもりは無いし、何よりも志人に危害を加えるなど、あり得ないぞ」

 

「ああ、分かってる。……今世のあんたは、そんな事をする奴じゃねえ」

 

「本気でやるとすれば、ディオはもっと上手くやるはずだよなァ。そもそも志人をターゲットにしねェだろ。無駄に敵を増やす事になる」

 

 

 承太郎とジョセフが言うように、理由はそれぞれだが、ディオ以外のジョースター家はディオの事を疑っていない。

 今世のディオと直接話して、彼の人となりを知ったアバッキオと六車さんもそうだ。

 

 

「ディオさん。トリスタン・ウッドの名前に聞き覚えは?」

 

「…………前世では腐る程に部下を増やしたからな。もしかしたら、その中にそんな名前の奴がいたかもしれんが……さて、どうだったか」

 

 

 つまり。覚えていない、と。

 

 

「……とりあえず、さっそく奴に吐かせようぜ。シドと六車の情報を漏らした奴の名前を」

 

「あぁ。じっくりと、聞かせてもらおう。一体誰が私の名を騙ったのかを、なァ」

 

「――ちょォッと待ったァ!!」

 

 

 承太郎とディオが、トリスタンの下へ向かおうとした時。ジョセフがそれを止めた。

 

 

「承太郎とディオ!お前らは尋問に加わるの禁止!」

 

「あ"ぁ?」

 

「何だと?」

 

「さっき俺達の殴る分を残してくれなかっただろうがァ!!」

 

「確かに、そうですね」

 

「父さんもディオさんも大人しくしてて」

 

「ここは俺達に譲ってください!」

 

「あと、できれば君達が近くにいない方が良いと思うんだよね。トリスタンが恨んでる相手と崇拝している相手だから、2人が目に入ったら話が進まなくなると思う」

 

 

 他の主人公ズに反対された承太郎とディオは、渋々引き下がった。

 

 ……そんな彼らは今、座っている俺を間に挟んでいる。承太郎は俺の隣に片膝を立てて座り、ディオは壁に寄りかかって立っていた。

 端から見ると凄い状況だな。片方は3部主人公、片方は1部と3部ラスボス。そして間に挟まれる俺……

 

 

「で、どうやって起こすの?軽くあたしが殴ろうか?」

 

「いや。波紋で軽くショックを与えて起こすよ。ほら」

 

「うぎゃっ!?……な、なん、えっ!?」

 

「ハロォー?ご機嫌いかがァ?……よくもうちの子狙ってくれたなァ、クソ野郎」

 

「なァ、尋問は1回俺がボコボコにして全部直した後でもいいか?」

 

「駄目ですよ。仗助にやらせたら、なし崩しにエンドレスに突入するでしょう?」

 

「あ、バレた?」

 

「何故バレないと思った?……それに、直すのは僕のスタンドがやった方が効果的ですよ。痛みを伴うので」

 

「…………随分、物騒な家族だな」

 

「空条さんとディオさんが加わって無い分、まだマシだと思いますよ……」

 

 

 俺達から少し離れた場所で、不穏な会話をするジョースター家。それを聞いてドン引きするアバッキオと、苦笑いを浮かべる六車さん。……六車さんの言葉には激しく同意する。

 

 

「さァて、正直に答えろよトリスタン。……てめえに志人と六車の情報を渡したのは、財団職員の誰なんだ?」

 

「……ふん!誰が言うものか。他でもないジョースター家の人間に、ディオ様を慕う同志を売るような真似はしない!」

 

「へえ、仲間思いね。……それがいつまで続くかしら?」

 

 

 そして始まる、ジョースター家による尋問。たまにアバッキオによる脅迫も加わり、聞いているだけで恐ろしい。

 俺がイージスと一緒に小さく震えている中、両脇にいる承太郎とディオは平然としていた。今も小声で会話している。

 

 

「……結構粘るな、お前の信者」

 

「私は志人に手を出した奴を信者だと認めない」

 

「……分かった、訂正。自称信者だな。……何であそこまで頑ななんだ?」

 

「そうだな……ジョースター家への反抗心。それから、私への忠誠心だろうか?同志とやらの名前を言えば、私に迷惑が掛かる……とでも思っているのかもしれん」

 

「実際は、今世で奴が信じる"王サマ"なんざ何処にもいないってのに……可哀想な奴だぜ」

 

「ククッ……本心は?」

 

「――ざまあみやがれ」

 

「ふはっ!」

 

「お前こそ、自称信者に何か言ってやらないのか?」

 

「――さっさと黒幕の名を吐け」

 

「っは!」

 

 

 ……あーあ。こっちも悪い会話してるぞ。俺を間に挟んでその会話は止めて。トリスタンに同情したくなっちゃうから。

 

 

「……しょうがないな、質問を変えよう。君は今世でディオと会った事があるの?」

 

 

 と、ジョナサンがそんな事を問い掛けた。何故、今そんな話を?

 

 

「……同志を通して、ディオ様から命令を受けた」

 

「じゃあ直接会って無いんだね。……それって、本当にディオからの命令だって、自信を持って言えるかい?」

 

「何だと、」

 

「何故、ディオは君と直接会って命令してくれなかったのか。そして、その同志の言葉は本当に信用できるのか。

 

 ――君が尋問されている中、何故ディオはそこで平然と傍観しているのか」

 

「は、」

 

「それも、誘拐された被害者である志人と、その親友の承太郎も一緒にいるんだけど?」

 

 

 

 

「…………おい、こっちに飛び火したぞ」

 

「承太郎達が目に入ったら話が進まなくなるって言ったのはジョナサンなのに……!」

 

「……いや。あいつの事だから、もしかすると最初からこちらに話を振るつもりだったのかもしれんぞ」

 

「あ、確かに」

 

「腹黒ジョナサンがやりそうな事だな」

 

「聞こえてるよ?承太郎」

 

「すまん」

 

 

 まさかの飛び火に驚いたが、ディオが言うように、今世のジョナサンならそんな事を考えそうだ。奴が口を割らなかったから、この手段を取ったのかも。

 今までジョナサン達が壁になっていたせいか、俺達がいる事に気づいていなかったのだろう。トリスタンの顔色が悪くなった。

 

 

「…………あ、えっ?……ディオ、様?」

 

「――ああ、そうだ。トリスタン・ウッド。全く馬鹿な真似をしてくれたものだ。ジョースター家だけでなく、このディオの"お気に入り"でもある志人を狙うとは……」

 

「っ、」

 

 

 今、ディオのスイッチが切り替わった気がする。声音で分かった。これは、支配者の声だ。

 どうやらディオも、ジョナサンの無茶振りを利用してトリスタンを揺さぶるつもりらしい。……しかし、何故わざわざ床に膝を突いてまで俺の頭を撫でる?

 

 

「今は仗助のスタンドのおかげで綺麗に治っているが……治す前は酷いものだった。あんなにボロボロになって……可哀想に」

 

「ディオ様が、そうするよう命令したのでは……?」

 

「……志人の話では、承太郎への復讐と、ジョースター家への宣戦布告のためにこの子を誘拐したとの事だが、」

 

「そ、そうです!私はそのために、ディオ様のためにそのガキを誘拐したんです!あなた様の命令で――」

 

「――俺がいつ貴様に命令した!?このマヌケがァ!!」

 

「ひいっ!?」

 

 

 俺も悲鳴を上げたくなった。いきなり豹変止めてください怖い怖い。……と、また頭を撫でられた。

 

 

「すまなかったな志人。お前を怖がらせたかった訳ではないのだ」

 

「は、はい……」

 

 

 何だその子供に掛けるような甘ったるい声は。その差も怖い。……トリスタンへの当て付けか?

 

 

「ところで――貴様は一体誰だ?」

 

「え……?」

 

「前世でトリスタン・ウッドなどという名前は聞いた事がない。イミテーション・ドールというスタンド名も聞いた事がない。……貴様の存在に、全く覚えが無いのだよ」

 

「ま、まさか、そんな……!わ、私は前世では失態を犯したせいで、ヴァニラ・アイス様のスタンドによって始末されましたが……」

 

 

 前世の死因は"ガオン"かよ!?そりゃ、ご愁傷様……

 

 

「そうなるまでは、ずっとあなた様のために働いていました!!」

 

「失態を犯して始末された?……ふむ」

 

 

 少し考える様子を見せたディオは、パッと表情を明るくして、満面の笑みを浮かべた。おや?もしかして何か思い出した――

 

 

「――ならば、私がわざわざ思い出す必要は無いな。アイスも取るに足りないからと、私に報告しなかったのだろう。忘れてしまったのも当然だな」

 

「――――」

 

 

 あ、奴の心にヒビが入る音が聞こえた気がする。

 

 

「…………お綺麗な顔して、やる事えげつねえな……さすがジョルノの今世の兄」

 

 

 承太郎が俺の隣で、ぼそっと呟いた。なるほど血は争えない、と。

 しかし、ここで終わらないのがディオ様だ。彼は先程とは打って変わり、優しい声で奴の心をくすぐる。

 

 

「だが……貴様の行動次第で、その名前を覚えてやってもいい」

 

「……ほ、本当ですか……?」

 

「この私を疑うのか?」

 

「い、いえ!そんなつもりは……!!」

 

「では、私の問いに答えろ」

 

 

 と言いつつ、先程から俺の頭をずっと撫でている。何故?……ついには俺の髪に指を絡めては解かし、絡めては解かしを繰り返す。

 さすがに気になってそちらを横目で見ると、ディオは既に体をこちらに向けて、トリスタンから目を外していた。

 

 その状態で、話を続けるつもりらしい。……マジかよ、あんた。

 

 

「志人と六車の情報を漏らした相手――このディオの名を騙り、貴様に私のお気に入りを誘拐しろと指示した財団職員は、誰だ?

 それを明かせば、貴様の名前を覚えてやってもいい。……私の僕を自称するなら躊躇うな。早く言え!」

 

「っ――否笠(ひがさ)(あつし)。それが、同志の名です」

 

「!」

 

 

 ……否笠陸。ディオとジョルノを敵視していた一派の中心人物……財団内部で高い役職についていたが、数ヶ月前に突然辞任したという男の名前だ。

 俺は咄嗟に六車さんを見る。目が合った彼は一瞬、口の前で一本指を立てた。あぁ、分かってる。今この場では、余計な話は口にしない。

 

 

「……そうか、よく分かった。ご苦労」

 

「お、お役に立てましたか?」

 

「ああ、もちろんだとも。約束通り、貴様の名前は覚えておくぞ、トリスタン・ウッド」

 

「ディオ様……!!」

 

 

 目を輝かせるトリスタンに対し、ディオは満面の笑みを見せて、続けてこう言った。

 

 

「――ただし。覚えているのは、今日1日だけだがな」

 

「え、」

 

「明日以降は綺麗さっぱり忘れてやろう。このディオの記憶に1日だけでも残してやるのだから、ありがたく思え」

 

「――――」

 

 

 あ、奴の心が完全に折れる音が聞こえた気がする。ボキッと。

 

 

「おい、六車。それ(・・)はもう用済みだろう?他の財団職員を呼んで、片付けさせろ」

 

「は、……はい……」

 

 

 顔を引きつらせた六車さんは、人払いしていたところに財団職員を呼び寄せて、トリスタンを回収させる。……奴は抵抗する事もなく、無言で連行されて行った。

 

 

「……ディオ、お前。意外に大人しいと見せかけておいて、実は相当怒ってたんだな?」

 

「ん?……ああ、まァな。奴は志人を使って、ジョースター家に精神攻撃をしようとしていたようだから、逆にこちらが精神攻撃してやろうと決めていたのだ」

 

「何だそれ最高かよ」

 

「ハハハハッ!!もっと褒めていいのだぞ?承太郎」

 

「…………結局ディオに全部持ってかれたぜ、くそォ」

 

「予想以上に口が固かったから、ディオの方に話振ったけど……もう少し尋問時間を長く取るべきだったかな?」

 

「殴って直してのエンドレス、結局できなかった」

 

「ストーン・フリーの糸でもっと強く縛って置けばよかったわ。まだちょっと仕返しし足りない」

 

「……黒幕も分かりましたし、足りない分はそっちにぶつけましょうか」

 

「お前ら、あれでもまだ足りねーのかよ……」

 

「言っても無駄かもしれませんが、できる限り自重して欲しいです……」

 

 

 相変わらず物騒なジョースター家。さらにドン引きするアバッキオ。諦めたように笑う六車さん。

 ……トリスタン・ウッド、か。特に惜しくもない奴を失ったな。最後の心が折れた瞬間にはさすがに深く同情したが。

 

 

 さーて。そんな事よりも、ようやく黒幕が分かったぞ。元々、あんな事をやって得をするのはディオに敵意を持っている人間ぐらいだろうと予想していたが……

 

 

「……で、否笠陸ってのは何者だ?財団職員だって事は分かったが」

 

「あァ……そうだな。アバッキオと仗助と徐倫は知らないよなァ……ここまで巻き込んでるし、こいつらにも全部話しちゃう?」

 

「うん。ここまで来たら、何も説明しない訳にはいかないね」

 

 

 ディオとジョルノが財団の一部職員に疑われていた事、承太郎がその抑止力として扱われていた事に関して、事情を知らない3人に説明。

 さらに。クリスマスパーティーの裏側と、否笠陸が何者なのかも説明した。……仗助と徐倫は驚き、アバッキオは深くため息をつく。

 

 

「面倒な事に巻き込まれちまった……」

 

「……何か、ごめんな。アバッキオ。俺のせいで、」

 

「誰がお前のせいだって言った?……結果的に、俺のスタンドが志人を助けるのに役立ったんだ。それなら別に、巻き込まれても構わねーよ」

 

「アバッキオが優しい……」

 

「俺はいつでも優しいだろうが」

 

 

 ぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。……ツンデレ兄貴、とか思ってごめんな。

 

 

「……ところで、お前。それは放っておいていいのか?」

 

「え?何が?」

 

「髪の毛。――一部が三つ編みにされてるぞ」

 

「えっ!?」

 

「「ぶふっ……!!」」

 

「ふふ……!」

 

 

 慌てて髪を触ると、確かにそれっぽい感触がした。そして同時に噴き出す、承太郎とディオ。クスクスと笑っているイージス。

 なんか髪いじられてるなぁ、とは思ったけどさ!まさか尋問中に三つ編み作られてるとは思わないだろ!?

 

 

「っ、ディオさん!!何やってんだよあんた!?承太郎とイージスも気づいてたなら言えよ!?特にイージス!お前、俺のスタンドだろうが!?」

 

「はははははっ!!ふは、っ、ははは!」

 

「クククッ!ハハ、ハハハハハハ……ッ!!」

 

「あはは、っ、ふふふふ!ご、ごめん、ね、志人……!!」

 

「おい、てめぇら!!」

 

「いいじゃねえか。似合ってるぜ?」

 

「アバッキオもニヤニヤすんな!!」

 

 

 そう怒りながら、三つ編みを解いていく。……それから、真面目な話に移った。

 

 

「否笠陸については、こちらで上に報告します」

 

「……上に(・・)?」

 

「はい。上に(・・)

 

 

 六車さんは財団トップの"耳"だ。上とはつまり、そういう事になる。……これはすぐに動きそうだなぁ。

 

 

「トリスタンの証言は既に録音済みですから、それを上に報告し、先に拘束してから詳しい証拠を集める形になるでしょう。その際は、アバッキオさんにもご協力を願う事になると思います」

 

「ああ、分かってるぜ。予定はできる限り空けとく」

 

「ありがとうございます」

 

 

 アバッキオは大忙しだな……ムーディー・ブルースって本当に便利な能力。

 

 

「……おい、六車」

 

「はい。何ですか?空条さん」

 

「――否笠を拘束する時は、もちろん、俺達も同席していいんだよなあ?」

 

「あっ、いや、あの、」

 

「――なあ?」

 

「うぐっ…………て、手荒な真似をするのは、否笠が抵抗した時のみにしてください……」

 

「あ"ぁ?」

 

「そっ、そこだけは譲れません!それを許したらおそらく相手が死んでしまう可能性が高くなるので……!どうか、お願いします!!」

 

「…………ちっ……仕方ねえな。おい、お前ら。それでいいか?」

 

「……まァ、しょうがねえよな。その場への参加禁止を言い渡されるよりはマシだろ」

 

「殴って直してのエンドレス……」

 

「駄目だよ、仗助?」

 

「うう……我慢するっス」

 

「よし、偉い偉い」

 

「……糸で縛るぐらいなら、」

 

「駄目ですってば、徐倫。全員が我慢するんですから、抜け駆けも禁止です」

 

「ちっ……」

 

「お前ら……いや、もう何も言わねえ。……おい、志人。こいつらの手綱、ちゃんと握っておけよ」

 

「え、無理」

 

「そんな簡単に放棄しないでください園原さん!あなたが頼りなんです……!」

 

「いや、無理だって」

 

「ククッ……責任重大だなァ?志人」

 

「あんたが言うな」

 

 

 

 

 

 

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