空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。

・オリキャラが登場します。

・ご都合主義、捏造過多。園原誘拐編は特に注意。いろいろおかしな点があると思いますが、見逃してくれるとありがたいです。

・キャラ崩壊あり。


 ――空条承太郎だって、苦手とする人間がいるはず。

 ある男は、"空条承太郎は普通の人間だ"と思った。

 ある男は、"空条承太郎は英雄"だと主張した。

 ――今世の空条承太郎は、前者には全幅の信頼を寄せ、後者には苦手意識を抱く。




空条承太郎の友人と、相容れない黒幕

 

 

 

 

 

 他にも仕事があるからと言って先に帰って行ったアバッキオを除き、全員で廃ビルの1階まで下りる。……激しい戦闘の跡が残っていた。

 

 

「……これだよな?ジョナサンが吹っ飛ばしたっていう扉は。……うわ、拳の跡が残ってる。めり込んでるじゃねぇか」

 

「さ、さすがですね……確かにこれなら、上の階まで響く轟音が聞こえてもおかしくない」

 

「そのおかげで、俺が六車さんを奪還する隙が生まれたんだよな……ジョナサン、本当にありがとうございました。助かりましたよ」

 

「ふふ。結果的にそうなったなら、扉を吹っ飛ばした甲斐があったね」

 

 

 マジで助かった。……あの時はトリスタンに大口叩いたけど、実はそこまで余裕があった訳じゃなかったからな。

 

 

「む、六車!ちょっと来てくれ!」

 

「今行く!……すみません、ちょっと失礼します」

 

 

 と、六車さんが他の財団職員に呼ばれて、俺達から少し離れた場所に移動した。……そこでは財団職員達が集まっていて、何やら小声で話し合っている。

 

 

「……何かあったのか?」

 

「もしかして、否笠の方に何か動きがあったとか?」

 

「ふっ……もしも逃走した、とかだったら願ったり叶ったりだぜ。抵抗したと見なして、ボコボコにできるじゃねえか」

 

「怖い怖い」

 

 

 凶悪な笑みを見せる承太郎とそんな会話をしていたら、向こうに動きがあった。何故か、六車さんが他の財団職員達に押されるようにしてこちらに戻って来たのだ。

 

 

「六車さん?」

 

「……どうした?顔色が悪いぞ」

 

「何があったんですか?」

 

「えっと、その……あー……」

 

 

 冷や汗をかいていた彼は何やら言い淀んでいたが、意を決した様子で話し出す。

 

 

「皆さんにとって、残念なお話がありまして……」

 

「残念なお話、っスか?」

 

「はい――否笠陸が、東京支部に自首して来ました……何も、抵抗せずに」

 

「――あ"ぁ!?」

 

「ひっ!!」

 

 

 そして彼は、一気に殺気立つジョースター家全員に問い詰められる事になった。……哀れ、六車さん。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ジョナサンが運転する車に乗って、東京支部に向かう。……ジョースター家が全員揃ってやって来る事は滅多に無いらしく、東京支部にいた財団職員達がざわついていた。

 否笠は既に、ある人のスタンドによって無力化され、東京支部内にある取調室で拘束されているという。今はそのスタンド使いが、そのまま見張りをしているらしい。

 

 否笠がいる取調室の前の廊下で、そのスタンド使いが佇んでいた。

 

 

「――プッチさん!」

 

「志人君。……誘拐されたと聞いたよ。大丈夫かい?」

 

「はい。承太郎達に助けられたので」

 

「そうか。無事で何よりだ」

 

 

 6部のラスボス、プッチ神父。……今世の彼はディオと同じく無害であり、俺達と同様に前世と今世を区別しているタイプだと、ディオとジョナサンから聞いた。

 

 以前、ディオとジョナサンと共にいた彼と遭遇した日以来。互いに東京支部で見掛けたら、声を掛け合う程度の仲である。

 今世の彼の職業は、前世と同じ神父。今はごく普通の教会に勤めているようだ。あまり表情が変わらないがとても穏やかな人物で、前世よりも神父らしい。

 

 そんな彼に近づこうとすると、右腕を徐倫に、左腕を仗助に取られ、さらに俺の前にジョセフが立つ。

 

 

「あんな奴に近づいたら駄目よ、志人さん」

 

「そうっスよ。……俺は詳しくは知らないっスけど、前世の承太郎さんと徐倫を殺した男だって話は聞いてるっス」

 

「うちの子に近づくんじゃねーぞ、プッチ神父。……志人。いつ知り合ったのかは知らねェが、あまりこいつと関わらない方がいいぜ」

 

「……おやおや」

 

 

 プッチは困ったように、苦笑い。俺も多分同じ顔をしている。……そこへ、俺達の後ろから前に出た男が、何気ない様子で彼に近づいた。

 

 

「おい、プッチ。否笠は?」

 

「あ、あぁ。……この部屋の向こうにいるよ。小窓から見えるだろう?拘束されている、白髪の男だ」

 

「……へえ、あの男か。スタンドDISCはちゃんと抜いたんだろうな?」

 

「もちろん、抜かりなく。……ほら、ここにあるよ」

 

「ん。……抵抗されたか?」

 

「……私を見た時は、強い憎しみが籠った目で睨んで来たが……抵抗はしなかった。不思議な事に」

 

「そうか……財団職員からも否笠の様子は聞いたが、よく分からん奴だな」

 

「――って、父さん!?」

 

「なに普通に会話してんだお前は!?」

 

「承太郎さん!そいつに近づいちゃ駄目っスよ!?」

 

 

 前世でプッチに殺された承太郎がそんな様子だったので、徐倫達が焦っている。……まぁ、そうなるよな。

 

 

「……大丈夫だ。今世のこいつは、ディオと同じで無害だからな」

 

「はァ!?」

 

「そうそう。今世のプッチはディオだけじゃなく、僕の友人でもあるんだよ」

 

「ジョ、ジョナサンの友人!?」

 

「プッチさん、こんにちは」

 

「やぁ、ジョルノ」

 

「ちょっと!ジョルノまで……!?」

 

 

 ん?ジョルノは既にプッチと会っていたのか。それは知らなかった。

 

 実は、プッチと初めて遭遇した日。俺は承太郎と一緒にいた。

 最初は承太郎もプッチの姿を見た途端、今のジョセフのように俺を背に庇ったのだが、いろいろあって今世の彼が無害である事を知り、警戒を解いたのだ。

 

 

「……そういう訳で、特に問題無いから離してくれよ、2人共」

 

「駄目!」

 

「駄目っス!」

 

「…………参ったな」

 

「クク……ッ!その2人が安心するまで、そのままでいてやったらどうだ?志人」

 

「えっ」

 

「「それ採用」」

 

「えっ!?」

 

 

 ディオの余計な一言により、俺は"両手に花"ならぬ、"両手に4部6部主人公"状態で取調室に入る事になった。

 今から取調するって時に何やってんだろうな、俺もこいつらも。

 

 ジョースター家と俺とプッチが取調室に入ると、中にいた数人の財団職員達と、拘束されたまま座っていた白髪の男が顔を上げてこちらを見る。白髪の男は、柔和な笑みを浮かべた。

 あいつが否笠陸……この状況で、何故笑っていられるのだろうか?

 

 

 ちなみに。スタンドDISCを抜かれたのに衰弱していない理由は、プッチのスタンド……ホワイトスネイクの能力が改良されたおかげだ。

 今世で試行錯誤して、スタンドDISCを抜いた後でも死なずに済む方法を編み出したという。

 

 抜かれたDISCの代わりに、生命力の塊である別のDISCを入れれば、その後も生き続ける事ができるらしい。……なお、スタンド能力は抜いたDISCを再び入れない限り、永久に失う事になるという。

 これを利用して、あの縁切り事件の犯人である火宮幸恵も、スタンドと記憶を抜き取られてごく普通の一般人になったと聞いた時は驚いたな……

 

 

 閑話休題。

 

 

「ジョースター家の皆様――この度は、このような騒動を起こしてしまい、大変申し訳ありませんでした。ご迷惑をお掛けしました」

 

「あ?」

 

 

 開口一番、否笠が謝罪の言葉を口にしたので、誰もが困惑した。……自首した時点でそうだろうとは思っていたが、否笠はこの騒動の黒幕が自分であると、認めているのか。

 

 

「……あんたはトリスタン・ウッドを利用して、志人と六車を誘拐した件の黒幕が自分だと、認めるんだな?」

 

「はい。全て、私が計画した事だと認めます」

 

 

 俺達を代表してジョセフがそう聞くと、否笠はあっさりと認めた。

 

 

「まさかとは思うが――最初から、自首するつもりでやったのか?」

 

「……はい。そのつもりでやったので、お恥ずかしい事に計画自体も杜撰な物になりましたが……」

 

 

 確かに、あっさりと黒幕にたどり着いたのは上手く行き過ぎてるなと思っていた。だが、そもそも自首する事が前提の計画なら、そうなるのもおかしくない……か。

 

 

「……じゃあ、さっそく聞かせてもらうぜ。何故こんな事をやった?財団職員の話では、俺達が来た時にその理由を話すと言ったらしいが」

 

 

 そう。否笠は自首した後、ジョースター家が来た時に理由を話す、の一点張りでずっと黙秘していたという。

 

 

「てめえはディオとジョルノを敵視する一派の中心人物だった。……ディオに罪を擦り付けるためにやったのか?」

 

「…………そうですね、どこから話すべきか……やはり、この騒動を起こすと決めたきっかけから話すべきでしょうか」

 

 

 ほんの一瞬。目付きを鋭くさせた否笠は、ジョセフの問いに答えず、勝手に話し始めた。

 

 

「きっかけは、財団主催のクリスマスパーティーです。……あの日、スピードワゴン様はディオ・ブランドーとジョルノ・ジョバァーナの事を、ジョースター家の一員として認めてしまった。

 そして空条博士や、他のジョースター家の方々もそれを認めている。……そう聞いた時、私はこのままではいけないと思いました」

 

 

 否笠のディオとジョルノの呼び方を聞けば、奴が今世の2人をジョースター家の人間だと認めていない事は明らかだ。

 なるほど。この騒動を起こした罪自体は認めているが、ディオとジョルノに敵意を抱いたままだという事か。

 

 

「私は以前から、ディオ・ブランドーとジョルノ・ジョバァーナの存在について、財団内部で警鐘を鳴らして来ました。

 最初は私に同意する者が多かったのですが……数年前からそれが徐々に減っていき、あのクリスマスパーティーを機にほとんどいなくなってしまった。むしろ、2人を擁護する声が強くなったようだ。

 

 財団創設者の意向に逆らう訳にはいかないので、そこは仕方ない事だと思います。財団職員達は悪くない。

 悪いのは――そんな流れになるように全てを仕組んだ、ディオ・ブランドーだ」

 

「……何だと?」

 

 

 ディオを睨む否笠に対して、睨まれた本人も眉を寄せる。……酷い言い掛かりだな。

 

 あのクリスマスパーティーでの出来事のきっかけになったのは、スピードワゴンだ。ディオとジョルノの立場を改善するために、彼が自ら動いてくれた。

 そのスピードワゴンが動いたのは、六車さんがディオ達と直接会って話をした方が良いと進言したから。……ブックフェスでの出会いは間違いなく偶然だし、ディオは何も企んでいない。

 

 

「ディオ・ブランドーは前世で、ジョースター家を乗っ取る事を計画した。……今回は前世よりも長い時間を掛けて、同じ事をやろうとしたに違いない」

 

「……なるほど。前科がある事は認める。確かに、私は前世でジョースター家を乗っ取ろうとして失敗した。だからこそ、今世ではそれを成功させようとした……そう思われても、おかしくないだろう」

 

 

 言い掛かりを付けられても、ディオは冷静だった。相手の主張を聞いて理解を示し、その上で"だが"と続ける。

 

 

「今世の私に、その気は無い。現代ではわざわざジョースター家にこだわらなくても、上を目指す方法が他にもあるからな。……今通っている大学に進んだのも、そのためだ」

 

 

 おや、それは初耳。そして言っている事はもっともだ。

 いろんな意味でハイスペックなディオ様なら、ジョースター家に固執しなくても別の場所で何処までも上を目指せるはず。

 

 

「それに……ジョースター家の人間の強さは、前世で深く理解した。今世ではジョナサン、ジョセフ、承太郎だけでなく、その前世の息子や娘まで身近にいる。

 そんな状況でジョースター家の乗っ取りなど、いくらなんでも無謀だ。こいつらを敵に回しても得が無い。むしろ共存した方が良いと思っ――」

 

「――黙れ、この化け物!!そうやって、前世の息子と共に彼らを油断させようとしているのだろう!?私は騙されんぞ!!」

 

「おい!」

 

「大人しくしろ!!」

 

 

 徐倫、仗助と共に思わず肩を震わせた。……いきなり鬼の形相で叫ぶなよ。驚いた。

 椅子を蹴り倒す程の勢いで立ち上がった男を、財団職員達が慌てて取り押さえ、再び座らせる。

 

 

「……全く、とんだ言い掛かりだ。僕と兄さんは間違いなく人間だというのに、化け物だなんて」

 

「体は人間だろうが、心までは変わらないだろう!?ジョースター家に、空条博士に仇なす邪悪共め!!」

 

「あー待った待った!ちょっと落ち着け。……ディオとジョルノはしばらく黙ってろ。相手を興奮させるな」

 

「……ちっ」

 

「分かりました……」

 

 

 ジョセフが間に入ってそう言うと、不満そうにしながらもディオとジョルノが引き下がる。

 

 

「……で?クリスマスパーティーがきっかけになったのは分かったが、それが何で志人と六車の誘拐に繋がるんだ?

 特に。俺達の身内である志人は、てめえの計画のせいで酷い目に遭ってる。六車もそうだ。……俺達全員が納得できる説明をしてくれよ。なァ?」

 

「はい、もちろんです。――私は、他でもないジョースター家の皆様のために、この計画を実行したのですから」

 

「あ"ァ?俺達の身内に手を出したくせに、それが俺達のためだと?ふざけてんのか!?」

 

 

 そう言ったジョセフだけでなく、承太郎達やプッチ神父も無言で殺気立つ。落ち着け、待て、特に仗助と徐倫!俺の腕を掴む手に力が入り過ぎてるって!痛い痛い。

 

 

「……クリスマスパーティーの後。私は今回の計画のために、まず辞任する事にしました。持病が悪化したのでゆっくりしたい……という理由を作って。

 そうする事で、ある程度の自由を手に入れたのです」

 

 

 あの辞任は本当に自分の意思だったのか。上から圧力が掛かったんじゃないかと、勝手に想像していたが……違ったんだな。

 

 

「ある程度自由になった後は、財団の目を盗んで1人で動きました。私の計画に利用する、ディオ・ブランドーの信者を探すために。

 

 そして数ヶ月探し回って偶然見つけたのが、あの愚かな男……トリスタン・ウッドでした。

 

 私は自分がディオ・ブランドーの信者であり、同志であると偽って奴に近づき、ディオ・ブランドーが空条博士への復讐と、ジョースター家への宣戦布告を計画しており、その実行犯にトリスタンを指名していると嘘をついた。

 あぁ、もちろん。計画の目的自体はデタラメですからね?私には、ジョースター家の方々を害する意思はありません。

 

 あの愚かな男はそれを信じて、私の言った通りの行動を取りました。……それが、園原志人と六車拓海を誘拐させた経緯です。ここまではよろしいでしょうか?」

 

 

 淡々と話す否笠に対して、俺達はただ頷くしかできなかった。……なんか気味が悪いな、この男。

 

 

「それでは、私がそんな計画を実行した理由を説明します。その全てはジョースター家……特に、空条博士の目を覚まさせるためでした」

 

「あ?……俺の?」

 

「――そうです!私はジョースター家の方々の中でも特に!あなたのためにこの計画を実行したんですよ!」

 

 

 急にテンションが上がった。否笠は承太郎を一心に見つめて、目をキラキラと輝かせている。まるで、子供のように。

 それは今の状況と釣り合わなくて、不気味だった。……承太郎もそう思ったのか、訝しげな表情で否笠を見る。

 

 

「あなたも、ジョースター家の方々も。皆がその化け物に騙されている。

 空条博士。あなたは、ディオ・ブランドーとジョルノ・ジョバァーナをジョースター家の一員であると認めてしまった。それは大きな間違いだ!

 

 今はまだ大人しくしているかもしれない。しかしこの先、その化け物が私が起こした計画と似たような真似をしてもおかしくないのですよ!

 私が実行した計画は謂わば、その時のためのデモンストレーションです。いずれ来る未来の戦いに備えてもらうために、警鐘を鳴らしたんです。

 

 ――あなたは油断し過ぎている!ディオ・ブランドーは敵だ!あなたの宿敵だ!そいつはまんまと空条博士の懐に入り込んだんですよ!?騙されないでください!!」

 

「…………何を、言っている?宿敵だったのは前世の話だろ。今世では俺も、ジョースター家の人間達も、その因縁から解き放たれたんだ。

 ディオやジョルノと直接話し合った事で、俺は今世の2人に俺達に対する敵意が無い事を確信した。今世のこいつらは、ジョースター家と敵対しない」

 

「目を覚ましてください!あなたはディオ・ブランドーに踊らされている!!」

 

 

 ……駄目だ、このクソ爺。話が通じない。年を取って頑固になり過ぎたんじゃねぇか?そして何故か、承太郎に固執している。

 それに。おそらくこの爺は、今世よりも前世を極端に重視するタイプだと思う。俺や承太郎とは正反対で……承太郎が、苦手とする人間。

 

 

「……仗助、徐倫。ちょっと離してくれ」

 

「え?」

 

「いいから早く離せ」

 

「わ、分かったわ……」

 

 

 両脇で未だに俺の腕を掴んでいた2人にそう言って、解放してもらう。……苛立ち混じりに催促してごめんな。

 解放されてすぐに向かったのは、承太郎の隣。……今も一見冷静に否笠の言葉に反論し続けているが、こいつの目と雰囲気から感じ取れるのは……不安と動揺と、僅かな恐怖。

 

 

「とにかく空条博士!もっとその化け物を警戒して、できる限り近くで見張るようにしてください!いずれそいつが暴れ出した時に止められるのは、あなたしかいないんです!!最強の――」

 

「――はいはいはい!ちょっといいですかねぇ?せっかくベラベラと妄想垂れ流してるとこ遮って悪いとは思うけど、かなり話がズレてるんで、そろそろ戻してもらえません?」

 

「っ、シド……?」

 

 

 危ねぇ。奴が承太郎の地雷を完全に踏み切る前に、割って入れて良かったぜ。

 承太郎の背中に手を伸ばして、俺がいる方とは反対の、高い位置にある右肩に手を置く。そのままゆっくりと叩くと、承太郎は左手をそこに伸ばして俺の手の上に置いた。

 

 揺れている翡翠の瞳が、俺を見る。……目を合わせて、1つ頷いた。大丈夫だ、俺がいる。

 

 

「もう少し詳しい事が知りたい。……まず、何で自首する事を前提とした計画を立てたんです?こういうのって、普通はバレたくないものだろ?」

 

「……ふん。空条博士やジョースター家の方々に、ご迷惑を掛けないためだ。事件をすぐに解決できた方が、この方々の手を煩わせないで済む」

 

 

 急に偉そうな態度になったな。俺はてめぇが起こした事件の被害者の1人なんだが?

 ……ふーん?この爺、ジョースター家以外は眼中に無い感じか?その中でも特に固執している相手が承太郎、と。

 

 

「じゃあ、もう1つ。……何故承太郎1人にこだわる?万が一、ディオさんが前世の時と同じような事をやらかそうと暴走した場合、承太郎に相手をさせようという魂胆は分かってるんです。

 

 ですが、承太郎たった1人にその責任を負わせようとする神経は理解できない。今世には大勢のスタンド使い達が転生しているんですよ?

 別に、その役目は承太郎1人じゃなくてもいいはずだ。他のスタンド使いに任せてもいい。承太郎には拒否権がある。

 

 前世でずっと戦い続けてくれたスタンド使い1人を休ませてあげようと、そんな事を少しでも考えなかったのか?」

 

 

 ――空条承太郎は普通の人間だ。

 

 二次元のヒーローなんかじゃない。現実で生きている人間なんだ。……俺の親友にばかり、重い責任を押し付けるな!

 

 

「……全く、君は何も分かってないな。空条博士にそんな心配はいらないのだよ。

 

 ――空条承太郎は英雄だ。

 

 前世ではさすがに40過ぎまで生きて年を重ねたせいか、スタンドの力も衰えてしまったが、今世の彼は全盛期の肉体とスタンドを手にしている!

 最強のスタンド使いであり、無敵のスタープラチナがいる空条博士に敵う者はいない!化け物退治は彼に任せるのが確実なんだ!

 

 貴様のその心配は、最強の戦士に対する侮辱だぞ!?やはり私の判断は間違ってなかった!貴様は空条博士にも、ジョースター家にも相応しくない!

 彼の事も、その家族の事も何一つ理解していない貴様が、空条博士の親友?ジョースター家のお気に入り?烏滸がましいにも程があるぞ、若造!!」

 

「――――はぁ?」

 

 

 おい何だよ、その主張は。ふざけるな。……だが、ぶちギレた俺が怒鳴ろうとした時。奴が次に吐いた言葉には耳を疑った。

 

 

「だから貴様を空条博士とジョースター家から引き離すために、その心を折るために!!わざわざターゲットに選んだというのにトリスタンめ!中途半端に失敗を――」

 

 

 そして一気に空気が重くなった瞬間、俺は咄嗟に叫んだ。

 

 

「――イージス・ホワイトォォッ!!」

 

 

 イージスを呼び出し、即座に否笠の周りにバリアを張った。

 

 

 ――そこに殺到するスタンド6体の拳と波紋疾走(オーバードライブ)から、否笠を守る。

 

 

「あ……危ねぇぇっ!!間一髪ぅぅっ!!イージス、よくやった!!」

 

「い、いや……俺は志人の指示に従っただけだし、これは志人の判断のおかげだよ!よくやった本体!!」

 

 

 さらにそう叫び、互いに褒め合った。……本っ当に危なかった。マジで危うく1人死人が出るところだった。

 ……正直、こいつらのスタンドと波紋使いの攻撃を一気に防ぐバリアを張ったまま維持するのはきついけど、解除するとまた攻撃するかもしれないから、それはできない。

 

 一度深呼吸して心を落ち着かせてから、周りを見る。

 

 スタープラチナ、ザ・ワールド、G・エクスペリエンス、クレイジー・D、ストーン・フリー、ホワイトスネイク。

 それから、まだ波紋を纏っている男がいる事を確認して、ため息をついた。

 

 

「あんた達、揃いも揃って何やってんだ!?今の攻撃、全部そいつを殺せるぐらいの威力だったぞ!?」

 

「そりゃそうだろ、殺す気でやったんだからな。……シド。早くバリアを解け。

 そんな下らねえ理由で、俺の親友を狙ったクズを許す訳にはいかねえんだ。そいつは殺す。絶対に、殺す」

 

「俺の親友とその家族に人殺しなんてやらせるかぁっ!!バリアは解除しない!」

 

「……志人君。いい子だからそのバリアを解いてくれないか?ホワイトスネイクの能力で、その男の肉体を溶かしてやりたいんだ」

 

「溶か…っ、何ですかその能力怖い怖い!」

 

 

 知ってるけど。原作で知ってるけど!今世の俺はDISCを抜き取る能力については聞いているが、相手を眠らせてから溶かす能力についてはまだ聞いてないので、知らないふり!

 

 

「というか、そもそもそんなクソ爺!承太郎達が殴る価値もねぇだろ!?そいつのせいで人殺しの罪を被る必要は無い!!

 ……お願いだから、スタンドと波紋を引っ込めてくれ。俺は大事な親友にも、ジョースター家の皆にも、プッチさんにも、人殺しなんて馬鹿な真似はやらせたくない!」

 

「…………仕方ねえな。全員、スタンドと波紋を仕舞え。こうなったら俺の親友は、梃子でも動かねえぞ」

 

 

 承太郎がそう言って真っ先にスタープラチナを引っ込めると、それに続いて全員のスタンドと波紋が消える。……もう、誰もスタンド出してないな?波紋もないな?よーし、

 

 

「バリア解除…っ、は、」

 

「シド!?」

 

「志人!?」

 

 

 解除と同時に、膝から崩れ落ちる。そんな俺を承太郎とイージスが支えて、倒れ込むのを防いでくれた。……その周りに、ジョースター家とプッチが集まって来る。

 

 

「廃ビルであんな強力なバリア使ったその日にまた強いバリアを張ったら、そりゃそうなるっスよね!?しかもあの大怪我を俺が治した後だし……!」

 

「無茶しないでくださいFratello(兄さん)!!」

 

「全くだわ。安静にして!」

 

「……その無茶を、させたのは……何処の、誰だと、思ってやがる……」

 

「あっ……す、すみませんでした」

 

「ごめんなさい」

 

「すみません、反省します……」

 

 

 んん、素直でよろしい。……年下組の謝罪に続いて他の奴らも口々に謝ったから、それで良しとしよう。

 

 ……これで全員の怒りが収まったのだと、俺は安心して……油断していた。だから、気づくのが遅れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ある人物が、否笠に向かって拳を突き出した事に。

 

 

「ぐがあっ!?」

 

「え、」

 

「っ!?」

 

「――――ジョ、ジョジョ……?」

 

 

 否笠の悲鳴が聞こえる。……ディオは珍しく、震えた声でその人のあだ名を呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 






 今回登場したプッチ神父は、シリーズの番外編から逆輸入されています。
 男主とプッチ神父の出会いが気になる方は、こちらをご覧ください。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17389275


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