空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。

・オリキャラが登場します。

・ご都合主義、捏造過多。園原誘拐編は特に注意。いろいろおかしな点があると思いますが、見逃してくれるとありがたいです。

・キャラ崩壊あり。特にジョナサン。


 ジョナサン・ジョースターの主な"武器"は、その肉体や身体能力、そして波紋。

 だがしかし。……今世の彼は、それ以外の新たな"武器"を磨いていた。

 ――ジョナサン・ジョースターだって、口が悪くなる時があるはず。……ただし、確信犯である。




空条承太郎の友人は、黒幕を哀れむ

 

 

 

 

 否笠はスタンドDISCを抜かれ、さらに拘束されて座っていた。ろくに抵抗できずに殴られ、床に倒れる。

 その否笠を殴った、まさかの人物――ジョナサン・ジョースターは、追撃を加える事なく静かに否笠を見下ろしていた。

 

 俺達からは、彼の大きな背中しか見えないが……否笠の近くにいた財団職員達が、恐る恐るといった様子で離れていく。

 彼から発せられる威圧感と、殺気。……ジョナサンが怒りを露にしている事は、明白だ。

 

 

「…………なァ、ディオ。もしかして、俺の前世のお祖父ちゃん……本気で怒ってる……?」

 

「……わざわざ俺に聞かなくても分かるだろう?ジョセフ。それ以外に何がある?」

 

「ですよねェ……!」

 

 

 ジョセフとディオの小声の会話が聞こえた。周りを見ると、ジョースター家とプッチ神父。その全員の顔色が悪い。

 ちょうど全員俺の周りに集まっていたので、なんとなく皆で身を寄せ合って、ジョナサンの様子を窺う。

 

 ……また殴りそうになったら、否笠をバリアで守る必要があるかもしれない。イージスは外に出したままで――

 

 

「――志人」

 

「はっ、はい!?」

 

 

 いきなりジョナサンに呼ばれた。心臓が飛び出るかと思った。

 

 

「ごめんね。せっかく君が守ったのに、僕が殴ってしまって……」

 

「あ、い、いえ……別に、それは気にしませんが……?」

 

「そうか、ありがとう。……あと、もう1つ謝りたい事がある」

 

「……何ですか?」

 

「以前。志人は僕の事を、誰かの心を本気で傷付けるような言葉は絶対に使わない人……誰よりも優しい人と、そう言ってくれたよね?」

 

「はい。……それが、どうしました?」

 

 

 母親と祖母の墓参りに行った時、俺はジョナサンの事をそういう人だと紹介した。その話の事だろう。

 

 

「誰よりも優しいかどうかは、ともかく。確かに君の言葉は当たっている。……でも、ごめん」

 

「?」

 

「――今回だけは、それを破らせてもらう」

 

「えっ?」

 

 

 それは、どういう事だ?

 

 

「さて。そろそろいいかな?否笠さん。僕はあなたと、少し話がしたくてね……」

 

「は、はい……」

 

 

 なんとか体を起こした否笠に対して、ジョナサンがそう声を掛ける。……俺と話していた時と比べて、明らかに冷たい声だった。

 

 

「最初に、あなたの話を整理しようか。あなたは、僕達の大事な家族の一員であるディオとジョルノが化け物で、いずれジョースター家と敵対する……と言っていたね?間違いは無い?」

 

「は、はい。ありません」

 

「では、次に。志人と六車さんを誘拐する計画を立ててトリスタンに実行させたのは、ディオに騙されている僕達ジョースター家の……特に、承太郎の目を覚まさせるためだった。これにも、間違いは無いかな?」

 

「はい、もちろんです」

 

「次に……ディオが万が一、暴れ出した時。それを押さえる役目は、あなた曰く、英雄だという承太郎しかいないと思っている。

 だからできる限り近くで、ディオの事を見張ってもらいたい、と?」

 

「ええ、そうです。間違いありません」

 

「最後に、志人を誘拐した理由について。……志人は承太郎にも、ジョースター家にも相応しくないから、彼を僕達から引き離すためにトリスタンに狙わせた?」

 

「はい。……その若造のトラウマを利用して恐怖を煽り、心を折れば、ジョースター家からすぐに離れるだろうと考えました。

 誘拐された理由を知れば、怖い目に遭ったのは自分が空条博士の親友を自称していた上、ジョースター家のお気に入りと呼ばれていた事が原因だと、頭の足りない若造でも理解できたはずですから」

 

「――あ"ぁ?」

 

「っ、バリア展開!」

 

「はいはい!」

 

 

 承太郎のドスの効いた声と共に、再び殺気立つ主人公ズと元ラスボス2名に気づき、俺達の周りにバリアを張った。

 これで、承太郎達はバリアの外に出られない。……承太郎達の物言いたげな視線が、俺に刺さる。

 

 

「…………シド」

 

「駄目だ、外には出さない。……それに、ほら」

 

「あ?」

 

「ジョナサンが"邪魔をするな"って目で訴えてるぜ。……逆らわない方がいいんじゃないか?」

 

「…………」

 

 

 こちらに振り向いたジョナサンの表情は、珍しく無表情。しかし、目はギラギラと輝いていた。非常に怖い。

 それを見たのだろう。承太郎達が急に大人しくなったので、バリアを解除する。

 

 

「……失礼。話を続けようか。……ちなみに、僕達の目を覚まさせる事と、志人を僕達から引き離す事。そのどちらが一番の目的だったのかな?」

 

「もちろん、一番の目的はディオ・ブランドーに騙されてしまっている、ジョースター家の皆様の目を覚まさせる事でした。

 しかしそれに失敗しても、せめて園原志人の心を折り、ジョースター家から引き離す事ができればそれでいいと思っていました。

 

 今のうちに引き離す事ができれば、皆様の心の傷は浅いもので済む……そう考えました。

 

 おそらく最初のうちは、お優しいジョースター家の皆様であれば、自分達のせいで園原志人が酷い目に遭い、そのせいで離れて行ったのだと、罪悪感を抱くでしょう。

 ですが。皆様ならきっと、それは一時の気の迷いだったとすぐに気づいて、園原志人の存在を忘れる。

 

 何故なら、まだ付き合いの短い今であれば――その若造の存在に、価値などありませんから。

 

 父親に暴力を振るわれていたという過去や、六車拓海という人質を上手く利用すれば、若造の心など簡単に折れて、すぐにジョースター家から離れようとするはず。

 ……そう予想していたのですが、当てが外れてしまいました」

 

 

 …………長々と語られても、理解できなかった。むしろ、俺の心と頭がこのクソ爺の主張を理解する事を拒否している。

 

 

「……俺の存在に、価値が無い――?」

 

「――そんな訳あるか!!」

 

「っ!?」

 

 

 承太郎が大声で叫んだ事に驚き、勝手に肩が跳ねる。俺の両肩をガッと掴んだ承太郎は、顔を上げてジョナサンを呼んだ。

 

 

「あんたの邪魔はしないから、少しだけ、そのクズ野郎に俺が言いたい事を言わせてくれ」

 

「……いいよ、分かった。言ってみて」

 

「おう。……否笠。てめえが言う志人の評価は、全て間違っている。勘違いも甚だしいぜ。

 

 園原志人は……俺の掛けがえの無い親友は!価値があるか無いかで測れる程度の男じゃねえんだよ!!

 俺にとっても、ジョースター家にとっても!志人の存在は価値があるどころの話じゃねえ!その存在は、必要不可欠だ!!」

 

「――――」

 

「――俺の親友を!ジョースター家の身内を!侮辱するなァッ!!」

 

 

 承太郎の言葉が、その信頼が。涙腺を刺激する。……頑張って涙を我慢した。

 

 俺の存在が必要不可欠、か……本当にありがたい言葉だ。きっと、一生忘れられない。

 

 

「そうだそうだァ!よく言ったぜ承太郎!」

 

「父さんの言う通り、志人さんはジョースター家の大事な身内なんだから!」

 

「志人さんが俺達から離れるなんて、そんなの考えられねえ!そうならないように、今後は俺達の手で絶対に守ってやる!!」

 

「僕のFratello(兄さん)に、志人さんに価値が無いなんて、もう言わせない!」

 

「っは!貴様程度の男では、志人の存在の尊さを一生理解できないだろうなァ!……いや、むしろ理解するな。下手に近づかれたらこの子が穢れてしまう」

 

「……以上だ。ジョナサン、もういいぜ」

 

「うん。……皆、ありがとう。志人の存在価値について、僕が言いたかった事をほとんど言ってくれた」

 

 

 ジョナサンの声が柔らかくなった。もしかしたら、機嫌が少し直ったのかもしれな、

 

 

「今の聞いたかい?否笠さん。僕達にとって、志人の存在はちゃんと価値があるんだよ?……志人の事を侮らないでくれ」

 

 

 ……そんな事はなかった。相変わらず、否笠と話す時の声は冷たい。

 

 

「……そうでしたか。――もはや、手遅れだったんですね。出会ってから短期間でここまで取り入るとは……若造め。一体どんな卑怯な手を使ったんだ!?」

 

「取り入るとか、卑怯な手とか……そんな事、人付き合いをする上で考えた事も無いんだが」

 

「何だと!?そもそも取り入っている自覚さえ無かったのか!」

 

「いや、自覚があるとか無いとかの話ではなく、」

 

「黙れ小僧!口答えするな!!」

 

 

 あぁ、駄目だ。分かってはいたが、この爺とは相容れないな。人の話を全く聞いてない。

 

 

「大体貴様は、」

 

「否笠さん」

 

「あ、はい!何でしょう?」

 

 

 ジョナサンが呼ぶと、鬼の形相からころりと変わり、穏やかな表情になる。何だ、あの変わり身は。気持ち悪い。

 ジョースター家の人間が相手だと、本当に対応が大きく変わるんだな。

 

 

「――口答えしているのはあなたの方だろ」

 

「え、」

 

「承太郎達も言ったはずだよね?志人を侮辱するなって。

 

 年を取ったせいかな?耳が遠くなったようだね、ご老人。補聴器でも着けたらどうだい?」

 

「――――」

 

「…………ジョナ、サン?」

 

「え、待って。あの人ってあんなにズバズバ言う人だったかしら……?」

 

「いやいやいや徐倫……普段は滅多にあんな事言わねェし、前世のエリナ婆ちゃんの話でも、そんな話題出なかったぜ?」

 

「そっ、そうよね……」

 

 

 仗助、徐倫、ジョセフが驚いている。……それ以外の面子は、プッチも含めて今世のジョナサンが腹黒属性である事をよく知っているため、平然としていた。

 

 しかし……何というか。いつもの毒舌よりもかなり刺々しいような気がするんだが……気のせいか?

 

 

「あなたの話の整理は済んだし、次はそれらを1つずつ否定していくとしようか。……前世でディオ・ブランドーと戦った男の言葉だ。よーく聞いて、頭に叩き込んでくれよ?」

 

「…………」

 

「返事は?」

 

「は、はい」

 

「よし。ちゃんと聞こえているね?それなら、これから話す事も聞こえるはずだよね?

 さっきは補聴器が必要じゃないかと思ってたけど、そんな心配はいらなかったわけだ。良かった良かった!」

 

 

 今、さりげなく言質を取ったな。これで否笠には、ジョナサンの言葉がしっかり聞こえている事になる。……聞き逃した、なんて言い訳は使えない。

 

 

「まずは、ディオとジョルノがいずれ僕達と敵対する、という話の事だけど……特別に、あのクリスマスパーティーの裏側について説明してあげるよ。

 あ、そちらの財団職員さん達も聞いてもいいですが、他言無用でお願いしますね」

 

「はいっ!」

 

「誰にも言いません!」

 

 

 あーあ。同席していた財団職員達も、すっかり怯えてしまっている。

 

 ジョナサンは、例のクリスマスパーティーの裏側について。そもそものきっかけである、ブックフェスでの六車さんとの偶然の出会いから、懇切丁寧に説明した。

 六車さんが、スピードワゴンの耳役である事も。俺が護衛任務を任された経緯についても。全てだ。

 

 

「……と、そういう訳だから、あのパーティーでスピードワゴンがディオとジョルノの事を認めてくれた事は、彼自身がそう判断した結果なんだ。

 僕達、ジョースター家の人間が2人の事を認めたのも、僕達が自分の目で彼らを見て、話した結果。そう判断しただけの事だよ。

 

 彼らは何も仕組んでいない。ディオとジョルノは、今世では周りの信頼を得るために、ずっと努力し続けた。その行いが実を結んだから、皆が彼らを認めてくれた。

 ……特にディオは、前世の記憶を取り戻してから10年以上。SPW財団に積極的に協力して、ジョースター邸という籠の中に自ら留まり、大人しく監視されていたんだよ」

 

 

 ジョナサンは肩を震わせ、拳を強く握る。……必死に、怒りを抑え込んでいる。

 

 

「僕はずっと、そんなディオの姿を見続けた。時に挫けそうになりながらも、信頼を得るために努力し続ける彼の事を、彼の一番近くで見て来たのだと自負している。

 ――そんな僕が、ジョナサン・ジョースターが……っ、ディオ・ジョースターの心の友が!彼の弛まぬ努力と!その存在を認めているのだッ!!

 

 ディオの事をよく知ろうともせず!前世の行いだけで化け物と決めつけて唾棄するお前を!僕は一生許さないぞッ!!否笠陸!!」

 

 

 隣で、息を呑む音が聞こえる。……そちらを見ると、ディオの琥珀色の瞳が潤んでいるのを目にした。

 彼は唇の動きだけで"ジョジョ"と呼び、それから歯を食い縛る。……泣くのを我慢してるんだなぁ。気持ちはよく分かる。

 

 

「……そんな……っ、そんなはずは!」

 

「おっと、口答えは止めてくれ。あなたの耳は正常なんだろう?僕が話したクリスマス・パーティーの裏側は、全て事実だ。……承太郎。そうだよね?」

 

「ああ。……ジョナサンの話の中に、嘘は1つも無かった」

 

「ほら。あなた曰く英雄である、承太郎がそう言ってるんだよ?……僕だけでなく、承太郎まで疑うのかい?」

 

「い、いえ!あなた方を疑うなんて、あり得ません!!」

 

「なら、分かるだろう?ディオとジョルノは、今世ではジョースター家の乗っ取りどころか、それ以外にも何も企んでいないんだよ」

 

「ぐ、……うう……っ!」

 

 

 すげぇ。逃げ道を全部潰して、否笠を黙らせた!……今世のジョナサンは肉体だけでなく、言葉という"武器"も磨いたらしい。

 

 

「さあ、次だよ。志人と六車さんを誘拐して、ディオが僕達と敵対した場合のデモンストレーションを行い、僕達の目を覚まさせようとした……という話だけど。

 

 ――これはディオが何も企んでいない事が分かったし、あなたがやった事は全て無意味だね!」

 

「むっ、……無意味?」

 

 

 おおう、グサッと来る一言……!

 

 

「むしろ。僕達ジョースター家の敵意を煽りまくってるし、財団のトップであるスピードワゴンにとってもお気に入りである志人と、彼と繋がりがある六車さんに手を出した時点で、あなたの処罰は相当重くなるという事が簡単に予想できる!」

 

「……あ、」

 

「志人と六車さんにスピードワゴンとの繋がりがある事を知らなかったとはいえ、手を出してはいけない相手に手を出してしまったね。あはは、ご愁傷様!」

 

 

 おそらく、わざとだろう。明るい声で、楽しそうに、否笠に対して現実を突きつけている。……邪ナサンもといジョナサンが、怖い。

 否笠の顔色が悪くなっていく。ようやく、自分の立場の不安定さを理解したようだ。

 

 ここに来て俺も、理解した。……ジョナサンが俺に言った言葉の意味を。

 

 

(俺は以前。ジョナサンの事を、"誰かの心を本気で傷付けるような言葉は絶対に使わない人"だと言った。……彼は、"今回だけはそれを破らせてもらう"と言った)

 

 

 つまり。ジョナサンは――誰かの心を本気で傷付ける言葉を使い、否笠を精神的に攻撃するつもりなのだ。

 

 

「では次に……承太郎の事は最後に回して、志人を誘拐した真の理由について話そうか。

 あなたは志人の心を折り、僕達から引き離そうとした。志人は僕達に相応しくないから、と」

 

「そ、そうです!その若造は、空条博士とジョースター家に取り入り、我が物顔で振る舞う身の程知らずだ!」

 

「……僕も承太郎達もさっき、志人を侮辱するなと確かに言ったはずだよね?

 

 ――それでもまだ、僕達の大事な大事な身内を、侮辱するのか……へえ?これで二度目なんだけどなあ?」

 

「っ、ひっ……!」

 

 

 今度は一気に冷たい声になった。……後ろ姿しか見えないが、きっと目も冷たくなっているのだろう。落差が激し過ぎる!

 

 

「……トリスタンは、スタンドを志人の父親の姿にした上で、志人がその暴力に抵抗したり、逃げたりすれば、その度に人質の六車さんの体をナイフで傷付けると、脅したらしい。

 しかし。志人は一度も抵抗せず、逃げる事もしなかった。ずっと父親からの暴力に耐えて、恐怖と戦っていたという。……六車さんを、守るためにね。

 

 そのおかげで、彼が怪我をしたのは志人を脅した時の最初の一回だけだった。

 さらに、志人は隙をついて六車さんを奪還し、それ以降は僕達が助けに来るまで、自らの命を危険にさらすリスクの高い力を使ってまで、護り通した。

 

 そんな偉業を成し遂げた子のどこが、頭の足りない若造なんだ?」

 

 

 偉業……?それはさすがに言い過ぎじゃないか?俺は確かに六車さんを護るためにトリスタンに従ったが、あれは自分のためでもあった。

 

 俺はずっと、母さんに護られて来た。母さんは、父親による暴力に怯える俺の事を、自分を犠牲にして護ってくれたんだ。

 ――だから。今度は俺が、自分以外の誰かの事を理不尽な暴力から護りたいと思った。ただ、それだけの話。

 

 

「……そういえば。以前、ジョセフから良い言葉を教えてもらったよ。この言葉はきっと、志人の偉業に似合う言葉だ。

 

 ――正義の輝きの中にあるという、黄金の精神。

 

 それから前世で僕の師匠が言っていた、人間讃歌という言葉。それも当てはまるだろう」

 

「――――」

 

 

 ――"ジョジョの奇妙な冒険"の世界観において、正義の心の象徴とされている言葉、黄金の精神。

 

 それが、俺に似合う?そんな事を黄金の精神の大本のような存在であるジョナサン・ジョースターに言われるとか、光栄過ぎて体が熱くなる。1人だったら絶対泣いてた。

 

 

「こんな素晴らしい男が、承太郎にも、ジョースター家にも、相応しくないだって?……そんな訳無いだろう?

 というか。僕達に相応しいかどうかなんて、どうしてあなたが勝手に決められるのかな?……そもそも、僕達なら相手が自分達に相応しいかどうかなんて、偉そうな事を言ったりしないし。

 それで……あなたは一体誰の許可を得て、僕達に相応しいか否かを決めつけているんだ?

 

 ――本当の身の程知らずとはッ!黄金の精神をその身に宿す園原志人ではなくッ!お前の方だろう!?」

 

 

 ……あ。否笠の表情が、ディオによって心にヒビが入った時のトリスタンと、全く同じ表情になった。

 

 

「……次で最後、だね。あなたは承太郎の事を、英雄と評した。……前世で僕の代わりにディオを倒してくれた事には、僕も承太郎に感謝している。

 その功績を指して英雄と呼んでいるなら、承太郎は確かに英雄なんだろう。……でもね。その評価を本人に押し付けるのは、正直どうかと思うよ」

 

「……押し付ける?違いますよ。私はただ事実を言っただけです。私は空条博士に敬意を表して、」

 

「敬意?いいや、違うね。あなたのそれは――レッテル貼り、と言うんだよ?……承太郎が大っ嫌いな、あのレッテル貼りだ」

 

「…………え?」

 

 

 信じられない事を言われた、って顔だな。やっぱり自覚が無かったのか。

 

 

「きっと世の中には、英雄と讃えられたら喜ぶ人もいるんだろうけど……承太郎は違う。そう呼ばれて喜ぶどころか、嫌悪感を抱く。

 だって、自分でちゃんと分かっている……いや、思い知ったんだ。

 

 ――自分は、その器では無い、とね。……もしも自分が本当の英雄なら、守りたい物を全部守れたはずだから、と」

 

 

 承太郎が、息を呑んだ。……ジョナサンを凝視して、目を見開いている。

 

 

「……なーんて、ね。今の承太郎なら、そんな事を考えるんじゃないかなあと思ったんだけど……承太郎、合ってる?」

 

「…………ああ。心を覗かれたんじゃないかと思うぐらい、ぴったりと一致してたぜ」

 

「あはは、そうか。ただの勘だったんだけど……それはともかく」

 

 

 承太郎を見て苦笑いしたジョナサンは、再びこちらに背を向けて、否笠を見る。

 

 

「承太郎はきっと、大袈裟に讃えられる度に、自分の無力さを思い知って、神経をすり減らしていたんじゃないかな。

 つまり。あなたの言葉は承太郎の心に傷を付けて、その傷口に塩を塗っていたのさ。

 

 それから、あなたは志人が承太郎を心配した事を、最強の戦士に対する侮辱だと言っていたね?

 さて。それは本当に侮辱だったのかな?……承太郎。正直に言ってみて。志人の心配は君に対する侮辱だったのか、否かを」

 

 

 俺を含め、全員の視線が承太郎に集まる。彼は不敵な笑みを浮かべ、俺の肩に腕を回した。

 

 

「――全然、全く、これっぽっちも、侮辱じゃねーな」

 

「なっ、」

 

「むしろ、俺の事を心から心配してくれているのだと思うと、嬉しくて仕方ない。……さすがは俺の掛けがえの無い親友にして理解者だな。

 俺の事を最も理解している人間は、間違いなく園原志人だ。……それに比べたら、否笠。てめえの理解はこいつに遠く及ばねえよ」

 

 

 承太郎を見つめて、真っ青になっている否笠。……最初よりも老け込んでいる気がする。

 

 

「これで、もう分かったね?あなたが散々侮辱した園原志人こそが、承太郎の真の理解者だよ。

 

 そんな志人の事を否定し、的外れな持論を展開して!悦に入っていたお前こそが――空条承太郎という人間を!最も理解していない男だったんだッ!!」

 

「あ、……っ、そ、そんな――」

 

「――例え何度生まれ変わろうとも!お前は一生、承太郎を理解する事ができないッ!!承太郎の前世の先祖である、このジョナサン・ジョースターが!そう断言するッ!!」

 

「――――っ!!」

 

 

 ジョナサンの言葉の刃によって止めを刺された否笠は、声にならない叫びを上げて……倒れた。

 

 

「お、おい!?どうした!?」

 

「…………き、気絶してるぞ……」

 

「……嘘だろ」

 

 

 否笠を取り囲んだ財団職員達が、ざわざわと話し合っている。……そんな彼らに背を向けたジョナサンが、俺達に向かって微笑む。

 

 

「あんなに偉そうにしてたのに、呆気ないね」

 

「……そう、だなァ……呆気なかったなァ……」

 

「ぐ、グレート……っスね、はは……」

 

「最初は黒幕ボコボコにしたいと思ってたのに……もう、そんな気も失せたわ」

 

「……人間って、言葉だけで気絶させる事ができるんですね……勉強になりました」

 

「ジョルノ。あんな事は勉強しなくていい。あれができるのはジョジョたった1人でいい。速やかに学んだ事を忘れなさい」

 

「は、はい、兄さん」

 

 

 ジョルノの肩を掴んで訴えるディオの様子が必死過ぎる。……そうだよな。確かに、ジョナサンみたいな規格外は1人いれば充分だろう。

 

 

「あ、そうそう。プッチ」

 

「な、何だい?ジョナサン」

 

「僕から後でスピードワゴンに相談してみるけど――後日。否笠さんの記憶DISCを、前世の分も今世の分も全部抜いて、何も知らない一般人になってもらおう。

 

 ジョースター家とその身内に、二度と関わらないようにしてもらわないと、ね?」

 

「…………分かった」

 

 

 邪ナサン降臨。……口は笑ってるのに、目が笑ってない。あのプッチ神父が気圧されている……!

 

 

「…………やれやれ、だぜ。……ジョースター家の家訓に一筆加えておこう――ジョナサン・ジョースターだけは怒らせるべからず、ってな」

 

 

 そう言って深く帽子を被り、目元を隠した承太郎の手は……よく見ると、震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

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