空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。

・ご都合主義、捏造過多。


 ――空条承太郎だって、嬉しい偶然があればご機嫌になるはず。




最後の高校生活
空条承太郎の友人は、進級する


 

 

 

 

 否笠陸は、俺が誘拐された日の翌日にプッチのスタンドで記憶DISCを抜かれ、財団から除籍され、一般人になったらしい。

 ジョナサンがスピードワゴンに相談した事もそうだが、今回の事態を重く見た彼は、除籍という処分を躊躇わなかったという。

 

 財団職員と、財団に登録したスタンド使いの個人情報が外部に漏れてしまったのは、財団側の不手際。

 今後。同じ事を二度と起こさないようにするために、否笠だけでなく、彼に同調していた数人の協力者達にも厳しい処分を下したようだ。他の財団職員達への、見せしめのために。

 

 しかし。そのせいで、ジョースター家のお気に入りと呼ばれる俺が今まで以上に腫れ物のように扱われた事は、ちょっと納得いかない。

 俺に回す任務も安全性の高い物ばかりにしようか、という話が財団内で上がったらしいが、そこは六車さんを通して、今まで通りにして欲しいとお願いした。

 

 

 ……あ、その六車さんの事だが。

 

 実は一度、財団側から六車さんを担当から外そうか、と打診された。とある財団職員が、俺の家に直接相談しに来たのだ。

 彼が人質にされたせいで、俺がトリスタンから暴力を受けざるを得ない状況になったのだから、その責任を取らせるとか。六車さんよりも優秀な担当者を用意するとか言われた、が。

 

 ふざけんなよ、と一蹴させてもらった。

 

 六車さんには何も落ち度が無い。むしろ、彼も俺と同じく今回の事件の被害者だ。俺に対する人質にされたから、俺に迷惑を掛けたから、なんて理由で解任されたら堪ったもんじゃねぇ。

 それに、彼よりも優秀な担当者だと?俺は六車さんこそが優秀な担当者だと思っている。

 

 彼は俺に依頼を持って来る時。俺が求めている情報を前もってまとめてくれたり、依頼の同行者がどんな人物なのかを詳しく調べて、相手とのコミュニケーションを取り易いようにしてくれたりする。

 そして何よりも人柄が良い。六車さんは真面目過ぎるのがちょっと困る時もあるが、その分誠実な人だ。俺は優秀か否かよりも、その人柄を気に入っている。

 

 だから、六車さんは担当者継続でお願いします。……そう言ったのだが、俺に相談しに来た財団職員曰く、六車さんの方が担当を外して欲しいと財団側にお願いしたとか。

 

 俺はその時点で、何かがおかしいと思った。六車さんなら、財団側にお願いするよりも先に俺に話を通すはずだ、と。

 それに。俺に相談しに来た財団職員は、所々傲慢というか、そんな気質が見え隠れしていて……

 

 と、その財団職員を怪しんでいた、ちょうどその時。六車さんと数人の財団職員達が、慌てた様子で俺の家にやって来た。

 

 俺が怪しんでいた財団職員は、俺を通してジョースター家と"お近づき"になろうとしていた人間の息が掛かっていたという。

 六車さんを担当者から外す、という打診は全くの嘘。財団側ではそんな話は上がっていなかったらしい。

 

 最初にやって来た財団職員は拘束され、後に財団側で処罰したそうだ。……しかし、念のため。俺から財団側に意思表示しておいた。

 人間関係の悪化など余程の事が無い限り、俺が六車さんを担当者から外す事はあり得ない、と。

 

 後日。そんな俺の言葉を聞いた六車さんに、泣きながら感謝された。あんたって真面目な顔してるくせに、本当に涙脆いよな。

 そしてそれ以来。六車さんは俺がちょっと褒めたり感謝したりする度に、表情はキリッとしているが目だけはキラキラさせて喜ぶようになった。幻覚の犬耳と尻尾が見える。

 

 

「――という訳で。六車さんはシェパードだなって思ったんだ」

 

「くくっ……!なるほどな。確かに似ているかもしれない」

 

「だろ?」

 

「僕はその六車さんという人に会った事が無いから分からないが……園原君の例え方は面白いな」

 

 

 春休み明け、最初の登校日。今日から高校3年生になる俺は、承太郎、花京院と共に学校を目指し、承太郎ファンクラブにキャーキャー言われながら、六車さんの話をしていた。

 

 去年最高学年だったジョセフやポルナレフ、シーザーは卒業したため、高校には来ない。

 それがちょっと寂しいが、代わりにジョルノ達、前世の護衛チームの若者組とトリッシュが高校に入学するため、賑やかさは変わらないだろう。

 

 

「ところで、僕は君からすれば何に見えるのかな?」

 

「花京院は……うーん、そうだなぁ」

 

 

 普段の花京院の様子と、見た目から判断すると――

 

 

「――コリーだね。ラフコリー」

 

「ラフコリー?……えっと、どういう犬だっけ?」

 

「……こういう奴だ」

 

「ああ、そうだったそうだった。茶色の大型犬だね」

 

 

 承太郎がスマホで調べたらしく、2人で画像を見て頷き合っていた。

 

 

「それで、どうして僕がラフコリー?」

 

「うん。……ラフコリーは、人の気持ちを汲み取るのが上手いらしい。花京院もそうでしょ?

 

 周りの人をよく観察していて、人と人の間を取り持つために積極的に動いてくれる。でも、その気遣いを周りに気づかせない。相手に気を使わせないために、いつもさりげなく行動する。

 それから、コリーって賢いイメージがあるからさ。見た目も気品があるし、頭が良くて観察眼もある花京院にはぴったりかと思って……

 

 ……あれ?どうかしたの、花京院?」

 

 

 顔を覆い、小さく呻き声を上げていた。……やがて顔を上げた花京院は、承太郎と小声で何かを話し始める。

 

 

 

 

「…………これは確信犯か?無自覚か?」

 

「無自覚だ。……うちではこれを"無自覚砲撃"、あるいは"人たらし爆弾"と呼んでいる。ジョセフ曰く、シドは"愛すべき爆弾魔"だとか」

 

「愛すべき爆弾魔って、何だその字面。言いたい事は非常によく分かるが」

 

「……ちなみに。この無自覚砲撃に対して、うちの中で一番耐性が低いのがディオだ。簡単に動揺するし、被害に遭った時はよく固まる」

 

「えっ、意外過ぎる……!」

 

「奴は純粋な好意に弱い」

 

「へ、へえ……本当に意外だな」

 

 

 

 

「おーい。先行っちゃうよ?」

 

「あ、ごめん」

 

「今行く」

 

 

 ゆっくり歩きながら、小声で話し続けていた2人に声を掛けると、駆け足で合流して来る。

 

 

 学校に到着し、廊下に貼り出された新しいクラスの名簿を確認……したかったのだが。人が多過ぎてよく見えない。

 仕方ないので、周りよりも一回り大きい身長の承太郎に、俺達の名前を探してもらう事にした。

 

 

「承太郎、見える?」

 

「今探して――おお?」

 

「ん?」

 

 

 承太郎が珍しく、声をワントーン上げた。……それから、これまた珍しく嬉しそうに笑い、俺を見てロータッチを求めて来た。

 人前なのに、ご機嫌なのを隠そうとしないしロータッチも求めるとは。本当に珍しい。隣で花京院がビックリしてるぞ。

 

 

「――1年間、よろしく!」

 

「んっ?……あ、あぁ!そういう事か。やったね!」

 

 

 俺と同じクラスになったのを喜んでいたらしい。それは俺も嬉しいので、ロータッチには喜んで応じた。

 

 

「で、花京院は?あと、ついでに形兆の名前も探して」

 

「ついで、とか言うな」

 

「あ、形兆。おはよう」

 

「おはよう、形兆君」

 

「よお」

 

「どうも」

 

 

 そこへちょうど、形兆もやって来た。噂をすれば何とやらだ。

 

 

「……花京院と形兆は、同じクラスだぜ。俺とシドのクラスの隣だ」

 

「おや、そうか。あと1年、よろしくね」

 

「……必要以上に関わるつもりは無いぞ」

 

「はいはい」

 

 

 形兆がツンデレ気味だという事は、高校生組なら誰もがよく知っているため、花京院も軽く流している。

 彼はさっきも言ったように、人の気持ちを汲み取るのが上手いから、形兆とも何だかんだ言って仲良くなれると思う。

 

 新しいクラスに向かい、花京院と形兆と別れ、教室に入る。……中にいた女子生徒達(と、一部男子生徒)が、承太郎を見て大歓声を上げた。相変わらずの大人気である。

 出席番号の関係で、承太郎の席は窓側の一番後ろ。俺の席はその隣だった。席に座ると、黒板に貼られた出席番号と生徒の名前が記された紙が見える。

 

 

 それを確認した俺は、"ある事"に気がついた。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 登校初日から、数日後。既に通常授業が始まっている放課後に、旧図書館で承太郎、ジョルノと共に過ごしていた時。ふと、初日に気づいた"ある事"を思い出した。

 

 

「なぁ、ジョルノ。……承太郎でもいいんだが、ちょっと教えて欲しい事がある」

 

「はい?」

 

「……何だ?」

 

「俺は新しいクラスに初めて入って、黒板に貼られた名簿を見た時に――高2で同じクラスだった奴らが、誰もいない事に気づいたんだ」

 

「………」

 

「………」

 

「もしかして、教師側に何か働き掛けたのか?……去年、俺がいじめを受けていた件で」

 

 

 そう問い掛けると、承太郎とジョルノは顔を見合わせる。

 

 

「……いや。何もやってないぜ」

 

「僕もです。さすがにクラス替えには干渉できませんよ」

 

「…………そうか。変な事を聞いて悪かったな」

 

「いえ、構いませんよ。……ところで。受験生のお2人は、もう行きたい大学が決まっているんですか?」

 

「ああ……決まってる」

 

「俺も決まってるぞ」

 

 

 話を逸らすジョルノに合わせて、何事も無かったかのように次の話題へ移る。

 2人共、聞いて欲しく無さそうだったからな。クラス替えの話題はもう出さないようにしよう。気になるが、追及したくなる程の事では無いし。

 

 

「志人さんはどんな大学に行くんですか?」

 

 

 ジョルノに聞かれて大学名を答えると、隣に座っていた承太郎にガッと両肩を掴まれた。

 

 

「おい。それは第一志望か?」

 

「そ、そうだけど」

 

「よし、もう変更するなよ。あとお前なら心配いらねえだろうが、絶対合格しろ」

 

「はぁ?」

 

「…………承太郎さん。まさか、あなたが決めた大学は――」

 

「――シドと同じ大学だ。俺もその大学の海洋学部が第一志望なんだよ!」

 

「えっ!?」

 

 

 何という偶然!!

 

 あれ?あの大学って海洋学部あっ……たな、そういえば!でも、待てよ?

 

 

「承太郎の成績なら、もっとレベル高いところに行けるんじゃねぇか?」

 

「確かにそうだが、そこの大学院に海洋学研究で気になる論文を出した教授が、1人在籍しているんだ。それに興味を持ってな。

 入学後にその教授の講義を聞いたり、直接話ができればと思っている」

 

「なるほど、そういう理由でしたか」

 

 

 そんな理由なら、確かにレベルなんて気にしないか。俺も承太郎と同じく、司書養成科目が取れる大学ならレベルに関係なく何処でも良かったし。

 

 

「お前こそ、もっとレベル高いところに行けるはずだろ?学年1位」

 

「……お前、地味に根に持ってるな?」

 

「うるせえ」

 

 

 去年のクリスマスパーティーの前。期末試験で勝負して負けた事を、未だに気にしているらしい。承太郎は、俺と一点差で学年2位だった。

 

 

「……で?何でその大学が第一志望なんだ?」

 

「司書養成科目がある、っていうのが一番の理由だが、スカラシップ制度の授業料全額免除がある」

 

「……確かに、志人さんにとってお金の問題は重要ですよね」

 

「……財団からの依頼で金を稼いでいるとはいえ、シドはスタンド使いになってからまだ1年も経っていない。バイトで稼いだ金を合わせても、充分では無いだろうな」

 

「苦学生は辛いんだよ……」

 

 

 思わず遠い目になった。……大学入学に合わせて引っ越す予定だし、まだまだ稼がないと。途中で受験勉強に集中するために、バイトは辞める事になるだろうが。

 

 

「……あと、もう1つ理由がある」

 

「ん?」

 

「――その大学、元々住んでいた場所に近いから。……母さんと婆ちゃんの墓参りにも行きやすい」

 

「……そうか。お前は本当に家族想いだな」

 

 

 微笑ましいものを見る目で見られた。その目は止めてくれ、元父親。なんか照れる。

 

 

「とりあえず、来年からもまたよろしく頼むぜ、親友」

 

「はは、こいつめ。もう互いに合格するつもりでいやがる……」

 

「当然だろ。去年の学年1位と2位だぞ、俺達は」

 

「はいはい、分かったよ」

 

 

 新しいクラスが分かった時のようにロータッチをして、ニヤリと笑い合う。……俄然やる気が出て来た。絶対に合格してやろう。

 

 

「……いいですよねえ、Fratelli(兄さん達)は。大学も一緒になりそうで……承太郎さんも卒業後は一人暮らしを始めるようですし。家で愚痴大会を開けなくなります」

 

「……確かに、そうだな。……まぁ、いつでも電話しろよ。直接会わなくても電話で話せるぜ」

 

「直接会う機会が減るのが寂しいです……その大学、医学部は無いんですか?」

 

「こら、一時の感情に任せて進路を決めるな。……それにお前、もう入学したい医科大学が決まったって言ってただろ?」

 

「そうなのか?俺は初耳だぞ」

 

「はい。高校に入る前に決めたんですが、すみません。志人さんにも言ったつもりになってました」

 

 

 ジョルノから希望している大学名を聞いた俺は驚いて、次にスマホでその大学を調べた。……あぁ、やっぱりそうだ。

 

 

「志人さん?」

 

「……ジョルノ、朗報だ。――俺達が希望してる大学の場所と、その医科大学がある場所はまぁまぁ近いぜ。ほら」

 

「えっ?…………あ、本当だ」

 

「承太郎が何処で一人暮らしをするかは分からないが、場所次第では気軽に会えるようになるんじゃないか?

 あと、俺も今住んでる場所から大学の近所に引っ越す予定だし、上手くいけば定期的に3人で会えるようにな――」

 

「――Fratelli(兄さん達)!引っ越した後はどちらも絶対に住所教えてください!いいですね!?僕も卒業後はその近くに引っ越します!!」

 

「分かった分かった。決まったら真っ先に教えるから」

 

「……やれやれだぜ」

 

 

 可愛い弟分の必死な様子に、俺と承太郎は思わず笑ってしまった。

 ……まぁ。俺達が卒業した後は、ジョルノが卒業するまで2年間合流できない訳だが……水を差さないためにも、今だけは黙っておこう。

 

 

 

 

 

 

 






※本編後。承太郎とジョルノだけが知る、真実(会話のみ)

「……志人さんならいずれ気づくだろう、とは思っていましたが……早過ぎですね」

「……あいつ、前よりも勘が鋭くなってる気がする」

「本当ですか?……それなら、次から志人さんに隠し事をする時は気をつけないといけませんね。すぐにバレてしまいそうだ」

「いや。シドなら気づいても、俺達が本気で隠したい事には突っ込んで来ないだろう。……現にさっきも、俺達が何かを隠していると察していた。あの顔はそういう顔だ」

「……いつもの涼しげな表情にしか見えなかったんですが」

「俺には分かるぜ」

「そのドヤ顔やめてください。ちょっとイラッとします。……とりあえず、これからも志人さんには隠すという事でいいですか?もちろん、この事を知らない他の仲間達にも」

「ああ。――あの日。シドを倉庫に閉じ込めた奴ら以外のクラスメイト達も、あいつが閉じ込められた瞬間を目撃したくせに、見て見ぬ振りをして校舎に戻っていく様子が、校庭の監視カメラに全部映っていた……そんな残酷な真実、わざわざ知る必要は無い」

「本当なら、志人さんのクラスメイト達を、いじめに加担していなかった奴らも含めて全員断罪したかったところですが……いじめに直接加担していない限り、罰する事はできません。教師側ともかなり揉めましたけどね」

「……断罪の対象をそこまで広げたら、倉庫に閉じ込められる以前のいじめ行為を見て見ぬ振りした奴らも、その全員が対象になってしまうからな……学校側にとってはかなりの痛手だ」

「その断罪ができない代わり、教師側には"せめて志人さんと、その元クラスメイト達だけは、3年で同じクラスにならないようにして欲しい"という要求を通した訳ですが」

「……なあ。それって本当に、俺も同じクラスにするように操作はしてないんだよな?」

「はい。"元クラスメイト達を別クラスにする事以外は、変な気は使わなくていい"と、教師側にはそう言いましたから」

「そうか、ならいい。……誰かに操作される事なく、偶然同じクラスになれた。その事実さえあれば、俺はそれで構わない」

「……最近になって分かりましたけど――承太郎さんって、志人さんが関わると急にロマンチストになりますよね」

「うるせえ。……そんなもん、とっくに自覚済みだ」

「ふふ……」
 
 
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