・男主視点。
・ご都合主義、捏造過多。書きたい部分を書いただけ。
・キャラ崩壊注意!!
――空条承太郎だって、子供のような我が儘を言う時があるはず。
「――お前それ……ロザリオか?」
そう言って形兆が目を見開いたのは、旅館で夕食を食べ終わり、大浴場の脱衣所にいた時だった。
奈良での観光を終えた俺達は、他の生徒や教師達と合流し、京都のとある旅館に向かった。修学旅行中は、ここで寝泊まりする事になる。
泊まる部屋は4人部屋で、承太郎、花京院、形兆と同室。
修学旅行が始まる前。いっその事、班だけでなく部屋も一緒にしてしまった方がトラブルにならなくて済むのでは?と考えた教師側から提案された事だ。もちろん、俺達は喜んで受け入れた。
そして、夕食を食べ終わった現在。何部屋かごとに順番で大浴場を利用する事になり、俺達と他の部屋に泊まっている数人の男子生徒達に順番が回って来たところだ。
そこで上半身裸になった俺を見て、形兆が言った言葉が冒頭の発言である。……ロザリオ、部屋に置いてくれば良かったな。
形兆の後ろから花京院も顔を出し、首を傾げる。
「どうしたんだい?それ」
「……まさか、クリスチャンだったのか?にしては、今までそれらしい様子を見せる事は無かったと思うが……」
「…………あー、それは……」
「おっ?園原、何だそれ?」
「おしゃれにしては地味だな。変なの」
と、横から数人の男子生徒に声を掛けられる。彼らは俺と承太郎のクラスの生徒達だ。
俺は水野さんとの一件をきっかけに、必要以上にお人好しになる事や人脈を広げる事を止めたが、そんな今でもクラスメイト達とは当たり障りない交流を続けている。
だから今のように、何気なく話し掛けられるのはよくある事だ。……しかし、その後の行動が良くなかった。
クラスメイトの1人が、ロザリオに触れようとしたのだ。
「――っ、触るな!!」
「うわ!?」
ついカッとなって、その手を強く払ってしまった。すぐに我に返り、慌てて謝る。
「ご、ごめん!つい反射的に、」
「おいおい!こっちはちょっと触ろうとしただけだろ?」
「その態度はさすがに無いんじゃねぇの?」
「いや、本当、ごめ、」
「――おい。……お前はもう謝らなくていい」
その時、承太郎が割って入って来た。……何故か怒った顔をしている。
「……次に謝るべきなのは、てめーらの方だぜ。
シドのロザリオはな――こいつの母親と祖母の、大事な形見だ。
しかも訳あって、こいつに遺された形見はこのロザリオだけで、他には何も遺されてねえんだよ。……文字通り、何も残ってねえ。ロザリオ以外、全て売り払われちまったからな」
「えっ!?」
「何だと……!?」
花京院と形兆が、思わずといった様子で勢いよく俺を見る。……俺は目を逸らし、俯いた。
「……そんな状態で、唯一の形見に無遠慮に手を伸ばされたら、それは振り払うだろうよ。俺だって、もしもシドと同じ立場だったらそうするぜ。……で?謝罪は無いのか?」
「あ、……園原、えっと、……本当に、悪かった」
「いやいや!そっちは知らなかったから仕方ないし、そもそもロザリオを部屋に置いて来なかった俺が悪いし……俺の方こそ、いきなりごめんね」
「おう……」
それから、気まずそうな様子で先に風呂場に向かうクラスメイト達を見送った。……残された4人の間で、沈黙が流れる。
「…………部屋に戻ったら、花京院と形兆にも話すよ。俺の家庭事情ってやつ」
「おい、シド!」
「大丈夫だよ、承太郎。無理はしてない」
「…………」
「あはは、そんなに心配しなくても大丈夫だって!だから、ほら。皆も早く風呂入って部屋に戻ろう」
「…………分かった」
わざと明るく声を掛けると、承太郎達は渋々といった様子で動き出した。
―――
――――――
―――――――――
承太郎達と共に、寝泊まりする和室に戻った俺は、イージスに防音バリアを張ってもらい、花京院と形兆に今世の家庭事情を語る。
……全てを話し終えると、花京院は今にも泣きそうな表情に。形兆は悲しいような、苦しいような、そんな表情になっていた。
「……2人共、そんな顔すんなよ。今の俺は承太郎とジョースター家の人達のおかげで、もうほとんど立ち直ってるんだ。心配しなくても大丈夫だぜ。
それに……承太郎、見ろよ。お前に初めて話した時は手が震えちまったけど、今は全然震えてない。進歩してるぞ。
……だからさ、本当に大した話じゃないんだ。俺のは何処にでも転がってるような家庭事情だし、承太郎や花京院の前世の旅の話とか、形兆の前世の話の方がよっぽど――」
「「「――そんな訳あるか!!」」」
あれ、デシャビュ。
そういえば、以前承太郎に話した時もこんな風に叫ばれたっけ?今回は花京院と形兆も加わって、とんだ大音量だ。防音バリア張っといて良かった。
「本っっ当にそういうところはいつまで経っても学習しねえな、てめえは!?」
「何が"何処にでも転がってるような家庭事情"だ!?そんな重い過去なんて、そうそう無いだろ!?何を言ってるんだ君は!!」
「俺に幸せになる事が償いだとか言ってた貴様こそ幸せになるべきでは無いのか!?この馬鹿め!!」
「?……何言ってるんだ、形兆。今の俺は充分幸せだぜ?」
そう。今の俺は、昔と比べて凄く幸せだ。自分が恵まれている事は分かっている。
「親友がいるし、ジョースター家の皆は俺を心配して頻繁に家に呼んでくれるし、形兆や花京院みたいな友達や、ジョルノ達みたいな可愛い後輩達、アバッキオやブチャラティさんみたいに頼れる大人達……全部引っ括めて、仲間がたくさん出来たし。
あ、それから。財団が仕事を回してくれるから、金もしっかり稼いで安心して生活できてる。そのおかげで大学に行く目処が立った。
承太郎達と出会うまでは、俺の中で眠っていたイージスと2人だけで生きてたし、高校に入学した当初はいろんな意味で余裕なんて無かったしな。
そんな昔と比べたら、今の俺は満たされてる。恵まれているんだ。これ以上幸せを望んだら、バチが当たっちまうだろ?まぁ、俺は神を信じて無いんだけどさ」
笑ってそう言うと……形兆と花京院は唖然とした表情になり、次に真顔で承太郎を呼ぶ。
「こいつは、本気で言っているのか?」
「冗談では無いのかい?……重い過去だけでなく、去年のいじめ騒動で死にかけた事も加えると、園原君はもっと幸せを求めても良いんじゃないかと僕は思うよ」
「……ジョースター家は俺も含め、こいつの中の幸せ指数を上げようとあの手この手でいろいろやって来たんだが……結果は何も変わらず、今もこのままだ」
「嘘だろ、承太郎……」
「ああ、嘘だぜ、と言えればどんなに良かったか……間違いなく、こいつは本気で言ってる。こればっかりは数年掛ける覚悟でいるぜ、俺は」
「……どうしよう。ジョースター家が過保護になる理由がよく分かってしまった……」
「……あんた達が見るからに過剰に構っていたのは、これが理由か?」
「理由はこれだけじゃねえが……まあ、大きな理由の1つだな」
「…………俺の本体が、なんか、本当にごめんね?俺はずっと眠ってるだけで、志人に何もしてやれなかった負い目もあるから、これに関しては強く言えなくて……」
「お前のせいじゃねえよ、イージス。……全てはあのクソ野郎が悪いんだ」
「……うん。……うん、そうだね!全てはあのクソ野郎が悪い!」
……困った。承太郎達の話がよく理解できない。
「……なぁ。俺は何か間違った事を言ってしまったのか?それなら謝るが、」
「謝るな!!」
「君のせいでも無いから謝らないでくれ!!」
「そうだよ、志人!全ては志人の今世の父親が悪いんだからね!!」
「……今は何も気にしなくていい。――例え何年掛かろうとも、俺達がお前に本当の幸せってやつを教えてやるからな」
「は、はぁ……?」
……もしかして、何か勘違いさせた?本当の幸せも何も、今の俺はこれ以上無いくらい幸せなんだが……?
―――
――――――
―――――――――
修学旅行、最終日。朝から、京都での班別行動が始まる。東京に帰る集合時間まで、時間がたっぷりあった。今日は昨日の学年全体とクラス別の観光で行けなかった場所に行く予定だ。
さて。今日始めにやる事は――
「……カウントダウン。5、4、3、2、1――走れ!!」
性懲りもなく俺達を尾行しようとする奴らから、逃げる事!
「あーっ!また逃げられたぁ!!」
「ジョジョー!!どこー!?」
「くそっ!足速過ぎだろ、あいつら!?」
初日と同じ手順で生徒達を撒き、さっさと目的地まで歩き出す。
「……本当に懲りないね、彼ら」
「事務所側からクレーム出したいところだぜ」
「え?そのネタ、まだ続いてたのかよ」
「承太郎さんのイメージのぶれが酷いのだが」
「諦めろ、形兆」
馬鹿話をしながらやって来たのは、伏見稲荷大社。ずらっと並ぶ千本鳥居で有名な場所だ。数え切れない程の鳥居の下を歩く。……神秘的だな。
ふと、俺達の先頭を歩く承太郎の後ろ姿が目に入った。ちょうど、承太郎の前には誰もいない。……足を止めて、スマホを取り出した。
「おい、どうした?」
「園原君?」
「――承太郎!ちょっとこっち見てくれ!」
「あ?」
承太郎が振り向いた瞬間を狙って、1枚撮った。
「ふむ……タイトルは"見返り美丈夫と千本鳥居"ってところか?我ながら綺麗に撮れた」
「おい、こら」
「グループに送信っと!」
「シドてめえ!?」
……後に。承太郎に頭グリグリされる俺の姿を、花京院が写真に撮ってグループに送り、後輩達に笑いを提供するまでがワンセットである。
鳥居を抜けた先にある、奥社奉拝所。そこには、おもかる石という不思議な石が置かれている。
石を持ち上げた時に、予想よりも軽く感じたら将来願いが叶い、重く感じたら願いが叶わない、あるいは叶う日は遠い。そんな事が分かる石だという。
最初にそれを持ち上げたのは、花京院だった。
「ぐっ……!?お、重い……!!」
「あらら」
「……願いが叶う日は遠い、か」
「花京院さんは何を願ったんだ?」
おもかる石を置いた花京院は振り向き、形兆の問いに答える。
「――ポルナレフが静かになりますように」
「はあ?」
「ぶはっ!?ちょ、花京、院、お前……!ははははっ!!くだらねぇー!」
「っふ、くく……!!」
形兆は呆れ顔。俺は爆笑。承太郎は頑張って笑いを耐えていた。なるほど、つまりポルナレフはこれからもうるさ、ゲフン。賑やかなままである、と。これは笑う。
「承太郎もやるかい?」
「ん。……ほらよ」
「待て待て待て待て、スタープラチナは反則!!」
「それは間違いなく軽く感じるだろうが!」
周りに人がいないからまだ良いが、誰かに見られたら"独りでに浮かぶおもかる石"という心霊現象だ。
「ところで、そうまでして叶えたい願いとは?」
「――この4人で、また旅行がしたい」
スタープラチナによる蛮行とは裏腹に、願いは実に可愛らしいものだった。
「ってわけで、絶対にまた行くぞ。花京院は形兆が嫌がったら引きずってでも連れて来い」
「引きずってでもって、あんたなぁ……ガキの我が儘かよ」
「脅しじゃねぇか。もちろん、行くけどさ」
「はいはい、分かったよ。また皆で行こうね」
形兆も否定しなかったし、きっとまた行ってくれるつもりなんだろう。そう信じる。
「……次、俺がやってもいいか?」
「ほう?……珍しいな。いいぞ」
珍しく、形兆がやる気だ。……承太郎が退いた場所に立ち、ゆっくりと石を持ち上げる。
「どうだ?」
「…………軽い。拍子抜けだ」
「おぉ、良かったな。願いは叶うってよ。……で、何をお願いしたんだ?」
くるっと振り返った形兆が、俺を見て――柔らかい笑みを浮かべた。
俺がぎょっとすると、次の瞬間にはその表情が意地の悪い笑みに変わる。な、何だったんだ?今の……
「……っは。教えねえよ」
「ええ?僕と承太郎は言ったのに……!」
「教えろよ、形兆」
「絶対に言わない。それより、次。園原がやれよ」
「……あー……おう。分かった」
ここで神を信じていないからと言って突っぱねたら、願いを祈った3人の行動を馬鹿にするようなものだよなー……仕方ない。やるか。
しかし、願い。願いかぁ……自分の願いは自分の力で絶対に叶えるつもりだから、おもかる石に願う程でも無いし……あっ、そうだ。
「……あ、軽い」
「何を願ったんだい?」
「内緒」
「え、君まで言わないのか?」
「願い事は口にしたら叶わなくなるっていう話を、どっかで聞いたしな。言わない」
「ああ、俺も。それは聞いた事があるから、言わない」
「……じゃあ願い事を口にした俺はどうなるんだよ」
「承太郎のはほとんど脅しだろ?俺達がまた旅行行くって約束したからそれでいいじゃねぇか」
これは意地でも言わない。……特に、承太郎には。
(――空条承太郎が、幸せになりますように)
……なんて、本人に言えるかよ。恥ずかしい。
伏見稲荷大社から出て、花見小路通や本能寺など、いくつかの観光地を巡る。そして、禅林寺永観堂までやって来た。
ここの紅葉の美しさは有名で、秋になると境内は紅葉でいっぱいになるとか。……実際に目にすると圧巻だ。想像以上に綺麗だった。
だがしかし。観光客が多過ぎる。
「……視線が、うぜえ」
「はは、だろうな……」
「承太郎と園原君の顔が良過ぎるのがいけない」
「いや、あんたもだろ。何を他人事のように……」
「一旦人気の無い場所に行って休憩しようぜ」
「賛成」
女性客がキャーキャーとうるさいので、人気の無い場所まで移動。……ようやく一息つけた。周りを見ると、ここも紅葉だらけだ。
「……こんなに背景が赤いと、花京院のハイエロファントとか映えそうだよな。明るい緑色だし」
俺がそう言うと、花京院がハイエロファントを出してくれた。うん。思った通り映える。……指で枠を作り、その中に紅葉とハイエロファントを入れた。
「あー、いいなぁこれ。写真に撮りたいけどスタンドは映らないのが残念過ぎる……!」
「そうだね……ジョセフさんの念写ならやれそうだけど」
「ここにジョセフ先輩いねぇし……」
「……あ。君のイージスも映えるんじゃないか?真っ白だし」
「よーし、イージス!」
「はいはい。何?」
「君とハイエロファントが、紅葉の色に映えるっていう話だよ。……クリスマスカラーだね。とてもよく映えるけど」
「ふはっ!季節違い」
花京院の言葉に、思わず笑った。確かに言われてみれば、赤と緑と白ってクリスマスカラーじゃねえか。
「……イージスと一緒に写真に撮りたかったな。撮れたら良い思い出になるのに」
「……俺も、志人と一緒に映りたい」
「絵なら描こうと思えば描けるけど、僕も写真に残せたら良かったな。ハイエロファントとは付き合いが長いし、せめて1枚だけでも……」
そういや、花京院は前世で肉の芽付いてた時に、承太郎の絵を描いていたな。やっぱり本人も絵が得意なのか。
「……おい、お前ら。しばらくそのまま動くなよ」
「え?」
「承太郎?」
と、承太郎がスタープラチナを呼び、大きめのメモ帳と鉛筆を持たせた。ま、まさか……!
スタープラチナの手が高速で動き、何かを書いている。……やがて、出来上がったそれを俺達に見せてくれた。
「――すげぇ……!写真みたいだ!」
「さすがの精密動作だな……」
俺とイージス、花京院とハイエロファントが、背景の紅葉と一緒に描かれている。白黒だが、リアルだ。スマホでそれを写真に撮って保存した。
「凄いね、俺と一緒に映ってるよ志人!」
「あぁ!……ありがとう、承太郎!」
「ありがとう。僕にとっても良い思い出になったよ」
「いや……礼は形兆に言え。俺にスケッチを頼んだのは形兆だ」
おや、そうだったのか。……俺と花京院がお礼を言うと、形兆は無言でそっぽを向く。照れ隠しか。
「それにしても、よく知ってたね。スタープラチナのスケッチの事」
「……何言ってるんだ。あんたが大分前に教えてくれた事だろう?」
「あれ、そうだったかな?」
「あんたからは承太郎さんとスタープラチナの話を耳にタコができる程聞かされているからな。この前だって、前世の承太郎さんが如何にカッコ良かったのかを延々と――」
「わあわあわあァァー!!もういい!分かったから!!」
「……だってさ、承太郎」
「ノーコメント」
おやおや。こっちも学帽を深く被って照れ隠しだ。前世の相棒同士が仲良しで何より。
―――
――――――
―――――――――
「……修学旅行はもう終わり、か。あっという間だったね」
「次は受験かぁ……」
「止めて園原君。現実に戻さないで。……ああ、そうだ。君と承太郎にも聞こうと思っていたんだ。卒業した後にどうするのか」
観光を終えて、4人で集合場所に向かっている途中。学生らしい話題になった。
「ちなみに。僕は美大に、形兆君は工学部に進学する事を目指している」
「へぇ。美大と工学部か……」
「……絵が得意なのは知ってるが、花京院はゲームも好きだろ?そういう大学には行かないのか?」
「そっちは趣味でもいいし、もしくは将来的にゲームのデザイン系の仕事に進んでもいいかな、と」
「あ、なるほど。そういう道もあるよな」
確かに、美大を卒業した後にそういう道に入る人も少なくない。
「それで……形兆は、何故工学部に?まあ、お前は理数系に強いし、そっちに進んでもおかしく無いだろうが……」
そう。承太郎が言うように、形兆は理数系に強い。あと、俺と承太郎と花京院に続いて試験で学年4位になるぐらいには勉強もできる。
そんな形兆が工学部……あ、
「――もしかして、バッド・カンパニー?……几帳面な形兆の事だ、自分のスタンドについて結構詳しく調べてるだろうし、そのうちにヘリとか戦車とか輸送機器に興味を持った、とか?」
「……さらっと人の心を読むんじゃねえ」
「わーい、当たったー」
「棒読みも止めろ」
やっぱりそういう事か。形兆らしい理由だな。
「……園原は?卒業後にどうするんだ?」
「図書館司書を目指すために、大学に行く」
「司書、か。本が好きな園原君にはぴったりだね。……でも、司書ってどんな大学に行けばなれるんだい?」
「特定の大学に行く必要は無い。司書養成科目っていうのがある大学に行って、必要な単位を修得して資格を取ればいいだけだ」
「なるほど。……承太郎はどうするんだ?」
「海洋学部に進学する」
「前世と同じ職業?」
「…………職業自体は同じ海洋学者だが、前世とは違う物を研究する予定だ」
「そうか……見事に進路がバラバラだね」
俺は図書館司書、承太郎は海洋学者、花京院は美大に進学し、形兆は工学部に進学……それぞれ分野が全く違う。
「当然、通う大学も全員違うだろう?……一緒に過ごせる時間が少ないな」
「……卒業した後だって、会おうと思えば会えるだろう。繋がりが完全に断たれる訳でも無い」
「形兆君からそんなセリフが出るとは思わなかった……!?丸くなったね!」
「…………あんたとだけ連絡を断ってやろうか?」
「ごめん、待って、さっそく連絡先削除しようとしないで!」
「……やらねえよ。さすがに、連絡先が消えたら困るからな……いろいろと」
「僕はもっと困る」
…………あー、
「しんみりした雰囲気のところ、悪いんだが――」
「――俺とシドは第一志望が同じ大学だ」
「「はあッ!?」」
2人に問い詰められたので、4月に俺達が互いの第一志望が分かった時の出来事を話すと、ジト目で見られた。
「……本っ当に偶然なのか?」
「どちらか片方がわざと合わせたんじゃないか?特に園原は、司書養成科目とやらがあれば、どの大学でもいいらしいからな」
「いやマジで偶然なんだって。承太郎から話を聞くまで、その大学に海洋学部がある事をすっかり忘れてたし」
「俺も、興味のある論文を書いた教授がそこにいるから選んだだけで、その大学に司書養成科目があるとは知らなかった」
「…………本当かなあ?」
「疑わしいな……」
「何でだよ」
「冤罪だ」
結局。花京院と形兆には、集合場所に到着するまで疑われ続けた。俺達は無実です。
「いい加減にしろ、貴様ら。この悪ふざけコンビめ」
「冤罪だっつってんだろ。あと、その呼び方は嫌だ」
「親友同士と訂正しろ」
「なるほど。悪ふざけを好む親しい友人同士、略して親友同士だね」
「「違う、そうじゃない」」