空条承太郎の友人   作:herz

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・男主視点。


 ――空条承太郎だって、友人を好き勝手に振り回したい時があるはず。





空条承太郎の友人と、楽しい休日の始まり

 

 

 

 

 それは、俺が梯子から落ちた事件が起こった日から、1週間ほど経過した時の事。

 

 

「先週は本当にありがとう。おかげで怪我をせずに済んだよ」

 

「……お前が無事なら、それでいい。だが、次からは上る前に自分の足場の確認をするぐらいは、しっかりやれ。何かが起きてからじゃ遅いぜ」

 

「……そうだね。君の言う通りだ」

 

 

 1週間ぶりに旧図書館で顔を合わせたので、改めて礼を言えば、そんな正論を返された。ごめんなさい、反省します。

 ただ、その後に承太郎が三谷さんを殴ろうとしたのは、やり過ぎだと思う。なんとか止める事ができたが、あれ以来、三谷さんは承太郎に苦手意識を持ってしまったようだ。

 

 俺に言われて、三谷さんが怖がっている事に気づいた承太郎は、彼に対して丁寧に謝罪していた。……あれが無かったら、三谷さんは承太郎の事を怖がって、旧図書館から追い出していたかもしれない。

 

 

「助けてくれたお礼に、何か俺にできる事は無いかな?」

 

「……お礼、か」

 

 

 なんでも、とまでは言えないが、承太郎のために何かできる事は無いかと聞いてみた。……すると、承太郎は意味あり気な笑みを浮かべる。

 

 あ?……まさかとは思うが、俺がお礼の話を切り出すのを待っていた、とか?この笑顔を見ると、そうとしか思えないんだが。

 

 

「……なら、優しいお友達の園原クンに、お願いがあるんだが」

 

「その言い方、怖いなー……何をお願いする気?」

 

「簡単な事だ。……土日、空いてるか?」

 

「土日?ちょっと待って。バイトのシフト確認する。…………あ、今週の日曜日なら空いてるけど」

 

「分かった。その日、1日空けとけ。――遊びに行くぞ」

 

「はいぃ?」

 

 

 承太郎の口から"遊びに行くぞ"とか、なかなかのインパクトだな――って、それは置いといて、

 

 

「……もしかして、君の仲間達も一緒?」

 

「いや、違う。俺とお前の、2人だけだ」

 

 

 おぉ、それは良かった。ならば断る理由は無いが……

 

 

「何処か、行きたい場所があるの?」

 

「……行きたい場所というか、遊ぶ事自体が目的だな」

 

「それはまた……いきなりだね?」

 

「…………嫌、か?」

 

「嫌じゃないよ!?ただ、今まで一緒に外で遊んだ事が無かったから驚いただけで…あー、だからそのショボくれた目と雰囲気は止めて!?」

 

 

 表情は全く動いてないのに、目と雰囲気が分かりやすい。こいつ不器用なくせして、こういう時は変に器用なんだよな……!

 

 

「よし。じゃあ今週の日曜日、10時ぐらいに学校の最寄り駅に集合な」

 

 

 そして切り替えが早く、強引!

 

 

「待って待って。何処に行くの?」

 

「海側」

 

「よーし、もう突っ込まないよ?とりあえず最寄り駅から電車でどれくらい掛かる?」

 

「大体1時間くらいだぜ」

 

「OK。それで、何して遊ぶの?」

 

「……最後に行く場所は決まっている」

 

「最後……?」

 

「で、その時間が来るまでは適当に遊ぶ」

 

「まさかのほぼノープラン!?」

 

「突っ込まないんじゃなかったのか?」

 

「はっ……!って、今のはさすがに突っ込むよ!?」

 

 

 もしかして、花京院達も毎回こんな感じで、こいつのゴーイングマイウェイに振り回されてんのか?うわ、大変だな……

 

 

「……あぁ、そうそう。言い忘れていたが」

 

「何?」

 

「――当日はその目、隠すな。素顔のまま来い」

 

「はぁ!?」

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 ――そして、日曜日。

 

 承太郎に言われた通り、前髪を上げて眼鏡を外し、素顔をさらしたまま学校の最寄り駅までやって来た。

 思ったよりも早くに着いてしまったせいか、承太郎の姿は見当たらない。

 

 

 数日前に承太郎に言われた時は驚いたが、よくよく考えてみれば、素顔をさらしたままにするのは悪く無いなと思った。

 

 万が一。承太郎と一緒にいるところを、同じ学校の誰かに見られたとしても、素顔のままならファンクラブ関連の問題は起こらないはずだ。

 学校にいる時の俺と、素顔をさらした俺では、容姿が大分違うからな。俺が園原志人である事に気づく奴はいないだろ。多分。

 

 

 待ち合わせ場所に立ち、メッセージアプリに連絡を入れる。……すぐに既読が付き、返事もあった。向こうもあと少しで到着するらしい。

 と、前から数人の男達が歩いて来た。それをちらりと確認して、ぶつからないように距離を取る。

 

 しかし、男達のうちの1人が、不自然な動きで俺の肩にぶつかった。

 

 

「痛っ!てめぇ今わざとぶつかって来ただろ!?」

 

 

 いや、ぶつかって来たのはてめぇの方だろうが。俺は離れたんだよ。……あーあ、ちらっと見た時から嫌な予感はしてたんだよな。だからちゃんと距離を取ったのに!

 小さくため息をついて顔を上げると、絡んできた不良と目が合った。相手は一瞬震えたが、すぐに睨んで来る。

 

 俺の目付きの悪さに怯んだのだ。今まで、何度も見慣れている反応だった。

 

 

「……すみませんね。今、友人と待ち合わせしてるんで、これで失礼します」

 

「はぁ?ちょっと待――っ!?」

 

 

 できる限り穏便に済ませようと、こちらから謝罪し、その場を離れようとする……が、手首を掴まれた。それを素早く払い、相手を無視して離れる。

 そんな俺の前に、別の男が立ち塞がった。周りを見ると、囲まれている。人目がある駅前なのに、随分と大胆な真似をする奴らだ。今度は大きくため息を吐いた。

 

 

「……何の用ですか?」

 

「ちゃんと謝れよ。今なら金を出せば許してやるぜ」

 

 

 あー、カツアゲですか、はいはいはい。

 

 

「俺、貧乏なんですよね。金なんて大して持ってませんよ」

 

「嘘つけ。ちょっと飛んでみろよ」

 

 

 うわぁ、今時でもそんな事を言う奴がいるのか――

 

 

「――そもそも今時カツアゲとか、シンプルにダサい奴らだな」

 

「あ"ぁ!?」

 

「何だと、てめぇ!!」

 

 

 あ、いっけなーい!つい本音が漏れちゃった☆

 

 ……いやいや、そうじゃない。やべぇ。わざとじゃなくて、本当にうっかり本音を言ってしまった。自分から火に油注いでどうするんだよ。

 

 

「――っ、ふ……!」

 

「ん?」

 

 

 何処からか、小さく噴き出す音が聞こえた。振り向くと、俺が背にしていた柱の陰から、誰かの体がはみ出ている。…………おい、てめぇ。

 

 

「……承太郎くーん?いつからそこにいたのかなぁ?というか早く声掛けてよ」

 

 

 マジでいつからそこにいた?気配が全く無かったんだが?

 

 

「……すまん。お前が普段どうやって相手をあしらっているのか、気になってな」

 

「そんなの気にする必要ある?俺、君の事を首を長くして待ってたんだけど?」

 

「悪かった。そう怒るな。今から何とかする、」

 

「おい、てめぇら!!無視すんじゃねぇ!」

 

「喧嘩売ってんのか!?」

 

「「先に喧嘩を売ったのはそっちだろ」」

 

 

 あ、被った。……その時。柱の後ろから出て来た承太郎が、俺の肩に腕を掛けた。重いぞ。

 

 

「なっ……!?」

 

「でっ、でけぇ……!!」

 

「さて――俺のダチに何か用か?てめえら」

 

「「失礼しましたぁ!!」」

 

 

 そう言って、男達は逃げて行った。……最初から最後まで三下キャラだったな。

 

 

「全く、」

 

「やれやれだぜ」

 

「……俺のセリフを取るな」

 

「そんな事より、乗る予定の電車の時間は?」

 

「…………あっ」

 

「えっ?」

 

「――あと1分」

 

「それ早く言ってよ!?」

 

 

 その後。慌てて全速力で走り、なんとか電車に間に合った。

 

 

 

 

―――

――――――

―――――――――

 

 

 承太郎と共に、とある駅で電車から降りた。眼前には海が見える。前世以来、久々に見た海が懐かしく思えた。

 

 

「はー、潮風が気持ちいいねー……で、まずは何処に行く?」

 

「……園原」

 

「ん、何?」

 

 

 見上げると、承太郎はいつになく真剣な表情で、俺を見つめていた。それを見て、俺も表情を引き締める。

 

 

「……ここなら、もういいんじゃねえか?」

 

「…………何が?」

 

「ここならさすがに、あの学校の生徒はいないだろう。――お前の、素顔を見せてくれ」

 

「――――」

 

 

 素顔。……眼鏡を外して、前髪も上げた今の状態が素顔、と言っても納得しねぇよな。

 って事は、だ。俺が梯子から落ちたあの日に見逃された事を、今追及しているのか。こいつは。なるほど、俺の考えは存外甘かったらしい。

 

 

「……聞いてもいい?」

 

「何だ?」

 

「まさか、俺をここに連れて来た本当の目的って、素の俺を知るためだったの?」

 

「……あぁ、そうだ。最後に行きたい場所がある、というのは本当だし、お前と外で遊びたかったのも事実だが、主な目的は園原が言う通り、お前の素顔を知るため」

 

「…………そんな事のために、わざわざ?」

 

「俺にとっては"そんな事"じゃねーな。重要な事だ。……どんな事であろうと、自分のダチの事を知りたいと思って、何が悪い?」

 

「…………」

 

 

 ……正直、承太郎の方からここまで踏み込んで来るとは思わなかった。もしそうなるとしても、大分後になって俺の方から踏み込む事になるのでは?と、そう思っていたんだ。

 やはり原作とは大違い――いや、だから原作と現実を比べるなって!気を抜くとすぐにこうなってしまう。気を付けよう。

 

 とにかく。承太郎がそこまで言うなら、まぁ、ご期待に応えるとしますか。

 

 

「――分かった分かった。素を出せばいいんだろ?……承太郎には、そろそろ見せてもいいかと思っていた」

 

「!」

 

「俺だって、素を隠したくて隠してるわけじゃねぇ。学校じゃあ"真面目な特待生"としてやっていかないと、学費免除がパアになるかもしれないからな。貧乏は辛いぜ」

 

「……分かってる。頑張って猫を被ってるんだろ?」

 

「そうそう、猫被り。ニャーニャー」

 

「ボケが雑だな」

 

 

 俺に素を引き出させた男は、くつくつと笑っている。機嫌が良いようだ。

 

 

「……たまには学校から離れた場所で、普段の自分を忘れてストレス発散といこうじゃねえか。付き合うぜ」

 

「と言いつつ、自分がストレス発散したいだけとか?」

 

「そうとも言う。……ところで、腹減らねえか?」

 

「減った。ちなみに事前の調べによると、この近くにうまい蕎麦屋がある」

 

「決まりだな。……少し早いが、先に昼飯を食おう。何処だ?」

 

「あっちだぜ」

 

 

 俺が先に歩き出すと、承太郎が隣に並ぶ。……楽しい休日の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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