空条承太郎の友人   作:herz

8 / 61

・男主視点。


 ――空条承太郎だって、友人に心配されて思わず嬉しくなってしまう時があるはず。





スタンド使いは、ひかれ合う
空条承太郎の友人は、心配している


 

 

 

 いつものように旧図書館に行くと、今日は承太郎の方が先に来ていたようだ。分厚い本を読んでいる彼に、声を掛ける。

 

 

「よう。……待ってたぞ」

 

 

 そう言って、承太郎は優しく微笑む。……2人で海側まで遊びに行った日以来、こいつがこうやって笑う事が増えた。

 むしろ、無表情の時がかなり少なくなった気がする。さすがに、ある程度は気を許されているんだな、と察する事ができた。

 

 あと、愚痴が増えた。主によく一緒にいる奴ら……3部の旅仲間について。

 

 

「……花京院とポルナレフの、喧嘩という名のじゃれ合いが多過ぎる。2人で喧嘩するだけなら勝手にやりやがれって話だが、何故かあいつらは俺を間に挟もうとしやがる。

 で、あの生徒会長サマは俺達を見てニヤニヤ笑ってるだけだ。身内の俺を助けろよ、あの野郎」

 

 

 承太郎の言う生徒会長様とは、前世はこいつの祖父だったが、今世では親戚であり、ジョナサンの弟でもあるジョセフの事だ。

 あのジョセフが生徒会長って、うちの高校大丈夫か?と思っていたが、そこは前世でジョセフの兄弟弟子だったシーザーが副会長になり、上手く手綱を握っているらしい。閑話休題。

 

 

「花京院とポルナレフ先輩が、喧嘩?」

 

「そうだ。……あいつらは、"喧嘩する程仲が良い"を地で行ってる奴らでな。些細な事で口喧嘩になる」

 

「へぇ。例えば?」

 

「ちょうど、今日の昼にこんな事で喧嘩になってたぜ。――犬と猫、真に可愛いのはどちらか」

 

「ぶはっ!?ちょ、待て待て。あの人ら、本当にそんな下らねぇ事で喧嘩したのか?マジで?」

 

「マジだ」

 

「あっははは!やべぇ、俺の中のイメージが崩れる……!」

 

「……ちなみに、どんなイメージだ?それは」

 

「あー、花京院は王子様、ポルナレフ先輩は騎士って感じかな?

 

 あの邪魔そうな前髪と、電柱みたいな髪型が気になるが」

 

「電っ、柱……!!」

 

「おっと?珍しくツボった?」

 

「ふふ、電柱って、園原、おま……っ、ふは!!」

 

「いや、だってそうとしか思えないだろ。通学路とかで日常的に見てるわけだし」

 

「電柱……っ!!」

 

「……お前、普段ツボに入らない分、入った時はなかなか抜け出せなくなるんだな。今知ったけど」

 

 

 ……と、まぁ。今日は愚痴よりも馬鹿話にシフトしてしまったが、最近の俺達は直接会った時や、電話で話している時は大体こんな感じだ。

 

 しばらく笑い続けた承太郎だったが、笑いを収めると、俺にこんな話題を振ってきた。

 

 

「……隣町で、妙な事件が起こった話を知っているか?」

 

「隣町というと……」

 

「――変死体が出た、という事件だ」

 

「あぁ。やっぱり、それか」

 

 

 数日前。俺や承太郎が住んでいて、今通っている学校もある地域の隣町で、変死体が立て続けに発見されたらしい。

 ニュースでさらっと報道されていたが……承太郎がこの話を振って来たなら、ちょうどいい。こいつの意見も聞いてみよう。

 

 

「それさ、なんか変だと思わないか?」

 

「……変?」

 

「変死体が立て続けに発見される、っていうぐらいだから、どれも似たような死に方をしてるわけだろ?そんなの、マスコミが騒ぎ立てそうじゃねぇか。

 だが実際はそんな事もなく、最初はニュースで報道されていたが、その後はピタリと報道が止まった。気になってネットで調べても、最新情報は入って無さそうだった」

 

「…………」

 

「警察が情報規制をしていたとしても、現場の近所では何かしら噂が出て来るはずだ。ネット社会である現代だからこそ、それがネットで広まっていてもおかしくない。

 しかしこの事件には、そういう規制の漏れが無い。情報規制が完璧過ぎるなぁと思ったんだよ。……なぁ、承太郎。お前はどう思――ん、ぐ?」

 

 

 承太郎が片手を伸ばし、俺の口元を塞ぐ。何だよ、と目で訴えたが、彼が険しい表情をしていたので驚いた。

 

 

「……好奇心は猫をも殺す、という言葉は知ってるよな?興味を持ち過ぎて、厄介事に首を突っ込むのは止めておけ」

 

「……むむ」

 

 

 俺の口を塞ぐ手を軽く叩き、退けろと伝える。大きな手が離れていった。

 

 

「……君子危うきに近寄らず、という言葉は知ってるよな?俺は"お前はどう思うのか"と疑問を口にしただけだぜ?首を突っ込むつもりなんて無いし、そもそも普通に生活してたら関わる事も無いだろ」

 

「……そうか。なら、いいんだ。……悪かった」

 

 

 ほっとしたのか、ため息をついた承太郎は素直に謝った。俺の事を思って忠告してくれたようだ。

 

 

「……だが、隣町の事件とはいえ、油断はするな。夜遅くに1人で外を出歩くんじゃねえぞ。不審者に目を付けられたら危ねーからな」

 

「……へぇ――そんな言葉を口にするという事は、変死体は外で発見されていて、しかもその変死体を作り上げた犯人が存在するわけか。ニュースでは、隣町の何処で死体が発見されたのかすらも報道されていなかったんだが?

 それにお前、さっきから隣町の件を事件(・・)と言っているようだが、報道では警察は事件と事故の両面で調べを進めていると言われていたぞ?それなのに、これが事件だと断定しているんだな」

 

「…………俺はそんな事を言った覚えはねえぞ」

 

 

 ……無表情だが、動揺しているな。滅多に動じない承太郎が一瞬固まった。やはり、こいつは何かを知っている。

 

 

「……悪い。思わず気づいてしまったから口にしたが、これ以上詮索するつもりはねぇよ。

 お前は何かを知っていて、それを秘匿するべき立場にいるのに、それでもバイトで家に帰るのが遅くなる事がある俺を心配して、警告してくれた……ってところかな」

 

「…………」

 

「無言は肯定と取るぞ。……ありがとな、承太郎。警告はちゃんと受け取ったぜ」

 

 

 眉間に皺を寄せて唸っている。顔が怖いぞ。

 

 

「……本当に、気をつけろよ?」

 

「あぁ。バイトの後も寄り道せずに、人通りが多い道を選んで帰るさ。……でも、お前だって気をつけてくれよ?俺は、事情を知っている承太郎の方が不審者に狙われやすいんじゃないかと、心配しているんだ」

 

「……俺を?」

 

「そう、お前を!きっと俺よりも喧嘩は強いだろうが、それでもただの人間だからな。俺が梯子から落ちた時のように、何かがあってからじゃ遅いんだよ。

 はっきり言ってしまえば、俺は見知らぬ誰かよりも、お前に何かがある方が嫌だ。例え誰かが襲われているところを目撃したとしても、その誰かを助けたり通報したりするよりもまず、逃げて欲しい。

 

 ……承太郎は、不器用だけど優しい奴だからな。多分、とっさに襲われている奴を助けようとするんじゃないかと思う。でも、駄目だ。お前の身の安全を優先してくれ」

 

 

 そこまで言って、我に返った。いつの間にか俺は身を乗り出していたし、承太郎は唖然としている。やっちまった。

 

 

「あっ、あー、その……すまん。何か、変な事言ったな。忘れろ……とは言えねぇけど、うん。照れ臭くなってきたから、突っ込まないでくれると助かる……」

 

 

 照れ臭いと言って両手で顔を隠したのは本心だが、それ以外にも顔を隠した理由がある。いろいろと鋭い承太郎に怪しまれないか、心配になったのだ。

 我ながら、今のは踏み込み過ぎたんじゃないか?まるで、承太郎が事件に首を突っ込む事を確信しているかのような口振りだった。

 

 だって、察してしまったんだ。――これ、絶対スタンド使い案件だ、って。

 

 スタープラチナがいるという事は、おそらくこいつの仲間達もスタンド付きだろう。ならば、その仲間達以外のスタンド使いがいてもおかしくない。それこそ、スタンドを悪用する犯罪者とかな。

 変死体が出た事件。完璧過ぎる情報規制。スタンド使いである承太郎が、何か知っている素振りを見せた。……これだけ情報があれば、原作を知っている奴なら誰だって勘づくだろ。

 

 完璧過ぎる情報規制については、今世では全く話を聞かないがSPW財団か、もしくは似たような組織が裏で動いたのではないかと予想している。承太郎は、その組織から情報をもらったんじゃないか?

 

 

 ……と、そこまで考えた上での発言が怪しまれるのではないかと思って、恐る恐る指の隙間から承太郎の様子を伺う。

 

 

「――承、太郎?」

 

 

 おい、何だよその顔は。……心底安心したかのような、気の抜けた表情なのに、何故か泣きそうな雰囲気を感じる。

 しかし次の瞬間。その表情は引っ込んで、穏やかな笑みを浮かべる。……何だったんだ、今の。

 

 

「お前は、本気で俺の事を心配してくれるんだな」

 

「あ?当たり前だろ。自分のダチを心配して何が悪い?」

 

「いや、悪いとは言ってねえ。ただ……俺の身に何かが起こる事を、確信しているような言い方が気になってな。どうせ、"俺なら何かあっても大丈夫だろう"と言われるのではないかと、」

 

「はっ、……はぁ!?お前、まさか自分の力を過信してるのか?冗談じゃねぇ。俺もお前も同じ人間だろうが。だから万が一、何かがあってからじゃ遅いつってんだぞ!」

 

 

 一瞬、見透かされたかと思ったが、違った。何だそりゃ!自信過剰も大概にしやがれ。

 ここは漫画やアニメの世界じゃなくて、現実だ。そこにスタンドバトルなんて危険な要素が混ざれば、いつ死んでもおかしくない。だから心配してるのに!!

 

 なんて事を、馬鹿正直に言える訳もなく。仕方ないのでひたすら"過信はするな"、"俺は心配している"と伝えたところ、この男は何故か若干嬉しそうに話を聞いていた。

 

 てめぇ、本当に分かってんだろうな!?

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。