英雄と饅頭とアカデミア 作:パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ..
この番外編:お花畑な日常は時系列的には原作開始1年前くらいです
「社会の平和を守るために、君の力を貸してくれないか?」
スーツを着た目の死んでいる大人達は、幼い私に手を差し伸べながらそういった
当時の私は純粋に喜んだ。憧れていたヒーローに、
もうなれるんだと。私が世界を救えるんだとそう思った
両親も反対しなかった。多分うちは貧乏だったから。
もう会えなくなるって聞いた時は悲しかったけど、
利口ぶった私は社会のためだと無理やり納得した
それからの日々はなかなかに辛いものだった
毎日早く起きて様々なことを学んだ。何時間も勉強したり、偉そうな人のお話を聞いたりした。
友達と遊ぶ暇なんてなかった
個性の使い方も練習した。入れ替える能力で遠くの物と入れ替わったり、切り離す能力で、正確に切り離せるように練習したり。
1番練習する機会が多かったのは、消す能力。毎日色々なものを消した。パソコンだったり、紙の束だったり
時にはやけに重い旅行バックを消すこともあった
偶に戦闘訓練もあった。本気で避けなきゃ大怪我をするような攻撃が飛んできた。実際に怪我をしたこともあった
それが何年も続いた。他に語ることがないくらいには同じような日々を送った。でも私はまだヒーローになりたかった。
その気持ちだけでこの日々を乗り切った
私は高校生になった。
可能なら雄英高校に行きたかったけど、都内の私立高校のヒーロー科に進学することになった
周りの大人達がそう決めた
私に選択権は無かった
この頃からヴィラン退治の現場に連れていかれるようになった。とは言っても既にヴィランは退治された後で、その後始末を任された
連れていかれた場所で、訓練で消していたようなものをいっぱい消した
このための訓練だったのかな?なんて気楽に考えていた
それが何回か続いたある日、旅行バックを消すことになった時、
旅行バックが動いていることに気づいた
気づいてしまった
動きの周期はまるで人間の呼吸と同期しているようで
その動きはまるで人間が中に入っていることを証明しているようで
真っ白な頭のまま、倒れた旅行バックを起こそうと持ち上げた
慣れ親しんだ重さだった
震える体を抱きしめながら、後ろを振り向く
そこにはいつもと変わらない、目の死んだ大人達が立っていた
「_______________消せ」
「あ、あの、おそらく中に人間が.....」
「_______________知ってる。消すんだ」
「ぇあ..だって....どうして............」
「いつもと同じことをするんだ。夜見れな。今まで何人消してきたと思っている」
「....嘘だ、そんな訳、ない」
「記録も全て残っている。お前は今まで累計..」
そこで私の意識は途切れた
次に目を覚ましたのは、公安ビル内の医療室だった
私の個性で消したものは、この地球上から消失する。
公安に来て最初に調べたことだった
私自身もどこに消えたのか分からない。人に使ってはいけない力だった
少しして、公安の偉い人達がやってきた
私は、今までやってきたことは私の意思じゃないと、知らないでやっていたと、藁にもすがる思いで説明した。信じたく無かった。私の周りの大人がおかしかっただけだと思いたかった
「あなたに証拠及び、死体の処理を命じていたのは我々公安委員会です」
そんな希望は、簡単に砕け散った。
私が長年信じて来たものは、私を育ててくれた大人達はみんな真っ黒だった
ヒーロー社会の表や裏だの、光や闇だの、
そんなことを語っていたが、私の耳には入らなかった
私の目指したヒーローはこうじゃなかった
幼い頃憧れたヒーローは...
なん....だっけ.....
気づいた時には逃げ出してた
私の個性はそれに適していたから
追っ手が私を見失うことはなかった
彼の個性がそれに適していたから
迫り来る羽を躱しながら、夜の街を逃げ続けた
この数年で学んだことは皮肉にも無駄では無かった
それでも、実力は彼の方が上だった
人の通らない路地裏で、とうとう捕まってしまった
「はあ、ようやく捕まえましたよ」
「流石に先輩にはかなわないね...」
「あなたの気持ちは分かります。だからもう少し..」
「無理だよ。私はあなたみたいに強くない。あんなことをして生きていくくらいなら、ここで死んだ方がマシだよ」
「.....そうですか。そりゃ残念だ.....」
私の人生って....なんだったんだろ...
「あのー、何してんのあんたら。てかあんたホークスじゃない?」
「んな!?一体どこから、てかなんでこんなところ通ってんですか、危ないですよ?」
「いやこの先私の家だし、それに、その娘になにしてんの?泣いてるよ?」
私....泣いてるんだ....
「.....こんな時に一体何だってんだ」
ホークスが振動するケータイを取り出し、画面を確認し始めた
「ほら、立てる?何があったら最速のヒーローに押さえつけられんの?なんかやった?」
「....相手は一般人ですよ?.....そうですか」
「っ!危ない!逃げて!」
「はあ?危ないってなんのこ...危ねぇ!?」
咄嗟に、彼の身体ごと、近くにあったゴミ箱と入れ替える
「一体なんのつもりですかホークス!!」
「残念だけど、上からの命令だ。見られてしまったからには生きて返す訳にはいかない」
「....?あんたらもしかして公安かい?」
「..なんでそれに気づける?あなたは何者だ?」
「今はただの喫茶店の店主だよ。その通信機を貸しな」
「..悪いがそれは出来ない」
「あっそ、じゃあ勝手に借りるよ」
隣の男はそう言って消えた。いや、咄嗟のことで目で追えなかったんだと思う
「くっ、ほんとに何者なんだ、一般名ではないな?」
「いやだから喫茶店の店主だけど。てかさっさと貸してくれない?あんた早いから時間かかりそうなんだけど」
「言ってくれますね、負ける気はないって事ですか」
あの男はホークスの翼を見切って、掴み取って、握り潰してる。このまま戦えば負けるのはホークスだ
本当に何者なの?
なんであなたは今戦ってるの?
「あーもうちょこまかと、鬱陶しいな。おーいあんたも手伝ってくれない?」
「えっ....?」
「あんたの個性であれ奪ってくんない?」
「私の...個性...」
「そう!私を助けてくれた個性で!」
「助...けた....私が?」
「ここは一旦ひくしかないか!」
「ちょっ、早く、逃げられる!」
「っ!『入れ替えマジック』!!」
近くにあった石と、ホークスの通信機を入れ替え、彼に渡した
「ありがと!手間が省けたよ!」
「あり...がと...」
最後に言われたのは...いつだったかな....
「あーもしもし?今の委員長って誰だっけ」
『何者だ貴様は、何が目的だ』
「花畑チャイカって言ったらわかる?」
『何..チャイカだと...あの噂は本当だったのか?』
「どの噂か知らねーけど、もう突っかかって来るのやめろって言ったよな?」
『ぐ、偶然なんだ!!お前がそこに住んでるなんて知らなかったんだ!!』
「偶然だとか、そんなのどうでもいいんだよ。さっさと帰らせろ」
『..わかった。この通信機をホークスに返してくれ』
「だってさ。今日のことは誰にも言わねえからさっさと帰んな」
「待て...夜見れなを..」
「聞こえなかったのか?さっさと帰れ。お前んとこのお偉いさんに二度と関わるなって伝えろ」
「....分かった。.....夜見さんを頼んだぞ」
「え?」
ホークスはそう言って、私達の前から姿を消した
「ちょ、頼んだってなんのことぉ...」
目の前の男、チャイカさんはすごく狼狽えていた
◆◆◆◆◆◆◆◆
「....で、あんたはどうしたい?」
あの後、チャイカさんに連れられて、彼の店に来た。何故か奥で1人寝てるけど、チャイカさんは気にしていなかった
「どう...したい...」
「そう。正直あんたをどうすればいいのか分からん。
だから、あんたがしたいことを私は尊重するつもりだ」
「分からないんです....どうしたいか..どうしたかったのか..」
そのまま私は今までのことをチャイカさんに話した
チャイカさんはそれを黙って聞いてくれた
それがどこか心地よくて、私は表情を保てなかった
私の感情とは関係なく、目から涙が溢れてくる
私の体なのに制御ができない
私の意思では涙を止めれなかった
話し終わってから、チャイカさんはコーヒーを1杯淹れてくれた
ミルクと砂糖がたっぷり入ったそれは、とても暖かかった
「なるほどねぇ..それでもヒーローであろうとするあんたは偉いよ..」
「...え?」
「さっき咄嗟に私のこと、助けてくれたろ?
それがヒーローじゃなかったら何がヒーローなんだ?」
「私...まだヒーローに...」
「何言ってんだ。お前はもう、ヒーローだろ?」
私....まだ....
「あー、チャイカさん女の子泣かせてるー」
「あ?いつから起きてたんだてめー」
「チャイカさんがその娘口説き始めたとこらへんからっすね」
「ねーよそんなとこ」
いや...私は...
「盗み聞きは感心しないぞ椎名。人には聞かれたくないことがあるんだ」
「いや聞いてませんて」
「チャイカさん...」
「お?」
「私、みんなを助けたいです。''ヒーロー''にはもうなれないかもだけど、だれかの''ヒーロー''として、救いたい」
「....そうかい。じゃあわたしの知り合いに..」
「いえ。チャイカさん。私はあなたと人を救いたいです」
「...はあ?なんで私と」
「尊重してくれるんですよね?私は今人間不信です。
でもチャイカさんなら信用できます。だから、よろしくお願いします」
「いや、だからなんd」
「夜見さん!いい話があるんすけど!」
隣で聞いてた椎名さんが、私の腕をとった
「レジスタンス、興味ないすか?」
何レジスタンスにしよう..