英雄と饅頭とアカデミア 作:パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ..
(アカン!!今んとこバフしかできてない!!思ってた倍師匠が優秀だったおかげで助かった!!)
エクスは焦っていた。試合前にアルスにあれだけ啖呵を切っていながら、今だ目立った活躍が爆豪に靴を当てたことぐらいしかないからである。
騎馬戦の残り時間はちょうど半分を切り、後半戦へと差し掛かっていた。緑谷達の周りには轟の騎馬をはじめ、複数の騎馬が集まりはじめる
「今だ、上鳴」
「わかってるぜ!しっかり防げよ...」
「ッ!アルスさん!」
「任せて!」
こちらへと近づきながら上鳴に指示を出す轟を見て、緑谷は即座にアルスに指示をだした
「無差別放電130万V!!」
「『マジック・チェンジ』!」
上鳴の個性によって周囲の騎馬は感電し、短時間ではあるが強制的に動きを封じられた。対する緑谷達はアルスの魔法によって電気を防ぐことに成功していた
「んな!?何でもありかよ!?」
「電気はぼくが1番得意な魔法属性だからね。普段の逆をすればいいだけだから何も問題はないのさ!」
「なら、これはどうだ!」
轟が個性を発動し、周囲の騎馬の足元が一気に凍った。
そのまま動けなくなった騎馬達からハチマキを回収し緑谷達に近づいてくる
「師匠やばい!動けない!てか素足だとめっちゃいてえ!?」
「落ち着いてエビ先輩。何度も同じ攻撃にしてやられるぼくではないよ!『フレイムフィールド』!!」
アルスが魔法を唱えると、足元に炎が広がり氷を溶かしていった
「ぼくはこう見えて負けず嫌いなんだ。最初のヒーロー基礎学で氷漬けにされてからずっと対策を練っていたんだよ!」
「さすがに一筋縄じゃいかねえか」
「エクスくん、距離をとるよ!」
アルスが溶かしたのは自身の足元の氷のみで、周囲は依然として高い氷の壁に囲まれていた。それ以上溶かしてしまうと、他の騎馬も復活してしまうからである
「エクスくんあの壁は超えれそう?」
「なんの妨害もなければ問題なく飛び越えれますが、何かしら妨害は飛んでくるかと思います」
「...だったらこの場で凌いでしまった方が得策かな、みんなエクスくんにしっかりつかまって!残り5分しのぎきるよ!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「おー!レヴィくんの言う通り彼らなかなかやるじゃないか。学生にしてはいい動きをするねえ!」
ギルザレン達はたこ焼きを頬張りながら、エクス達の戦いを眺めていた
「正直周りを氷で囲まれた時点で、1000万ポイントを奪われるのは時間の問題かと思ってましたが、なんだかんだ逃げれてますね」
「.......」
エクス達の戦いぶりを好評する2人とは対照的に、レヴィは頬を膨らませ不機嫌そうにたこ焼きを頬張っていた
「どうしたんですか?何か嫌なことでも?....たこ焼きにタコ入ってなかった?売店員ぶっ飛ばしてこようか?」
「違いまス!...なんだかエクスくん手を抜いてるっていうカ、全然本気じゃないかラ...」
レヴィの発言に2人は目を丸くし首を傾げた。彼女から見たエクスの動きは全然本調子では無いらしい
「あの頃のエクスくんならもっと早く動けたシ、あんな壁、全身鎧でも飛び越えれてたの二...」
「まあまだ成長途中だからじゃないのかい?レヴィくんの言うあの頃っていうのはもう少し大人になった頃だろう?」
「....でもボクは問題なく動けましたヨ?」
「うーむ....」
「まあ考えていても仕方がないんじゃないですか?彼には彼なりの考えがあるのか.....あるいは本気を
「....出せなイ?」
「...まあまだ体育祭は続きますから、ゆっくり考えましょう」
夕陽は気づいたことを誤魔化すかのように、既に冷めたたこ焼きを口へ運んだ
◆◆◆◆◆◆◆◆
(まずいな..常に距離を取りながら左側にまわられてる....これじゃ最短で凍結させようとしても飯田が引っかかる...まわりこもうにもその間に飛んで逃げられそうになる...残り1分...!)
「皆...残り1分弱、俺は使えなくなる。頼んだぞ」
「..飯田?」
「しっかり掴まっててくれよ...トルクオーバー!
『レシプロバースト』!!」
突如轟達の騎馬が超加速しエクスたちへと肉迫した
レシプロバースト、それはトルクと回転数を無理やり上げ爆発的な加速を生み出す飯田の隠し玉であった。
実際緑谷は飯田の急激な加速に対して全く対応が出来ていなかった。自身の額に巻かれたハチマキを奪われるのは確定した未来であるかのように思われた
しかし、轟の腕はあと一歩のところで緑谷のハチマキには掛からなかった。轟がミスをしたのでは無い。
緑谷の騎馬がそれを避けたのだ
「....エクスくん!?」
「やっぱりまだ切り札持ってたか!危ねー!」
「んな!?...すまない!」
「エクスお前...なぜ今のが読めた?」
轟はエクスが飯田の加速に対応したことが信じられなかった。自分でさえ直前に話しかけられたことでギリギリ対応できた加速を、エクスが見てから躱したとは思えなかった。
つまり、エクスは飯田の隠し玉を読んでいた
「確信はありませんでしたけどね...隠し球がある人はだいたい目で分かります。飯田さんはまだ何か残してる目をしてたので警戒していたんです」
エクスは答え終えると高く跳躍した。飯田が動けない今、氷の壁を登り、壁の外へと逃げることに決めたのだ
対する飯田は自身の切り札が通じなかったことで、強い自責の念に囚われていた。自身の表情から行動を読まれたこと、切り札のデメリットで残り時間個性を使えないことがそれに拍車をかけていた
「みんな...本当にすまな____」
「まだ諦めんな!」
飯田の溢れた謝罪を止めたのは、騎手である轟であった。
轟チームは既に持っているポイントだけでも上位4チームには食い込んでいるため、最終種目へ進むことは出来る。だが1000万ポイントを取ることに関しては絶望的だと誰もが思っていた。
轟ともう1人を除いては
「反省は後だ!まだ時間はある!それに...
チャンスもちょうど今転がって来た!」
「1000万寄越せやコラァ!!」
爆発音と共に氷の壁を突き破り爆豪達の騎馬が乱入してきた。
それにより場は一気に混沌と化した。
跳躍中の緑谷達を確認した爆豪は騎馬から飛び立ち1000万ポイントを奪いに向かった
続いて轟達も足元に氷を盛り続けることでそれに続く。
爆豪の突撃で崩れた緑谷からハチマキを奪うつもりであった。
緑谷達に届いた後、大きな隙が出来るこの氷の足場は、自分達をピンチにし得る諸刃の剣であったが、既にそんなことは関係ない。
なぜなら、
『さあ残り時間は10秒だ!カウントダウン行くぜ!』
「まずいっ!アルスさん妨害を!」
『10!』
「させるかよ!お前らシート被れ!ありったけ食らわせてやる!『200万V』!!」
『9!』
「っ、『プロテクト』!」
『8!』
「こっちががら空きだ!寄越せやデク!!」
『7!』
「さ、せるかよ!!守り切ってみせる!!」
『6!』
「やっと追いついたぞ!緑谷!」
『5!』
「俺を忘れないでもらっていいですか?
『4!』
ハチマキは絶対に取らせない!」
『3!...2!...1!...TIME UP!!』
「...『ウィンドクッション』!」
時間が切れたのと同時にアルスが個性を使い3チームともゆっくりと着地した
『ナイス判断だアルマル少女!それじゃあ結果を確認していくぜ!』
『1位.....緑谷チーム!!』
「いよっしゃああ!!!!あちいぃぃぃ!!!」
「か...勝った!!」
「やったねデクくん!!」
「危なかったああああ!!」
1人は飛び跳ね、1人は目から放水し、1人は騎手を称え、1人は安堵に胸を抑えていた。緑谷達はラスト数秒間ハチマキを守り切ることに成功していた。最後はどのチームが1000万ポイントを手にしていてもおかしくないギリギリの戦いであった
『2位!轟チーム!』
「...わりい、最後も掴み損ねちまった」
「いや、最後俺たちを引っ張ってくれてありがとう。反省こそすれど、後悔は少しもないよ」
「ウェーイ...ウェイウェイ、ウェーイ!」
「えぇ!結果は2位ですが、得られたものはそれ以上の価値があると思いますわ!」
『3位!爆豪チーム!』
「ク、ソ、があああああああああああああああ!!!」
「おい落ち着けって爆豪、最終種目には出れんだから切り替えよう、なっ?」
「お前はよく頑張ったよ爆豪」
「でもやっぱり悔しいよー!次は絶対勝とうね!!」
『そして4位....心操チーム!?いつの間に?!』
「ご苦労。助かったよ」
「......!?」
「え....?」
「な、何が....」
『以上の上位4チームの生徒が最終種目に出場するぜ!』
プレゼントマイクのアナウンスに、会場からは雷のような歓声と拍手が降り注いでいた
『それじゃあ昼休憩を挟んで午後の部だ!リスナー達は昼食を済ませて置くように!』
◆◆◆◆◆◆
「いやー、めちゃくちゃ危なかったですね師匠」
「ほんとだよ、最初に聞いてた話だと楽勝だったはずなんだけどね」
エクスとアルスは会場近くのベンチにて昼食を取りながら、先程の競技の話をしていた。初めは食堂に行くつもりであったエクスだったが、OBなどが懐かしの味を楽しみにくることにより食堂はパンクしていた。普段穏やかなランチラッシュが暴言を吐きながら料理していたと言えばどんな状況だったか想像がつくだろうか
仕方が無いのでアルスを誘って昼食を取れそうな場所を探してようやく見つけたのである
「いやー、思ってた以上に皆実力がありましたね...いや、1番驚いたのは師匠の強さですけど」
「..うぇっ!?僕?!」
評価の矛先が自分に向くと思っていなかったアルスは不意をつかれ驚いた
「はい。正直個性の強さで言ったらこの学校の誰よりも強いんじゃないですか?しかもゴリ押しじゃなくてちゃんとコントロールできてるし、判断力も悪くないと思います。
普通それだけの手札があったら選んで出すのにもっと時間がかかると思うんですよ。でもほぼノータイムでそれができるあたりすごく努力してきたんだなと、素直に尊敬しました」
「ちょ、おま、おまえ、そんな一気に褒められたら恥ずかしいだろぉ!?」
普段自身をバカにしてくるばか弟子が、一切の曇りのない瞳で自身を見つめ、褒めまくったことに対して、アルスは思わず赤面してしまった
「あれ?嫌でしたか?」
「いや、嬉しいけど!急だったから..あつー...え、えーと、えび先輩も凄かったよ!僕たちにエネルギー流しながら走り回ってたし....あとあれ!飯田くんの必殺避けたやつ!目でわかったって言ってたけど、どこでそんなの覚えたの?」
「どこなんでしょうね、気づいた時にはできてたので」
「...うわぁ、天才かよ。気づいた時にはって、いつぐらい?」
「えぇーっと...確か12歳だから...小6ぐらいですかね?」
「うえぇ!?そんな小さい頃から!どんな小学校生活送ってたら身につくんだよ」
「ほんとにどんなことしてたんですかね」
「...え?」
ただ恥ずかしさを誤魔化そうと適当に変えた話題の中で、とてつもない違和感が生まれたことをアルスは感じた。
エクスは今自分の幼少期を他人のことのように話した
「それって...どういうこと?えび先輩」
「....ん?あれ?言ってませんでしたっけ。俺、12歳より前の記憶がないんですよ」