【完結】ウマ漢 〜燦々レーシング〜   作:プレブレム

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今回は内容があっさりしちゃいました。
許してくださいなんでもしますから


9R 知るための『敗け』

 九月後半,ヒノマルたちは北海道札幌市に来ていた。連日の晴れ続きながらもトレセンよりはるかに涼しい大地で二人はバ場を眺めていた。

「阪神とはまるで違うな。直線に坂がない」

「よく気づいた。そもそもここは高低差が少ない。つまり体力の消耗が少ないレースになる。それを考えろ」

 ウマ娘の勝敗の要因としてバ場適性がある。どれだけ強くともバ場があってなければ惨敗,逆に一着と言ったことが起きるのだ。このレースはヒノマルの適性を測るにも充分役立つのだ。

「そういえばグラスワンダーが先日デビューで勝ったそうだ。やつもリギルにいるだけ強いな」

 グラスは学園最強のチーム『リギル』に属している。そこにはかの皇帝や女帝、怪物などの勢揃いだった。そこに入れるほど彼女は強いのだ。

「こっちだってもう一人すげーやつが控えてんだ。今に見てろよ東条」

 木場はリギルのトレーナー,東条ハナと学生時代の同期であり,今でも時々高めのバーでグラスを交わすほどのだった。そんな彼女を見返すため,今はエルを魔改造中だった。

「エルも調子を上げているみたいだしな。デビューはいつ頃なんだ」

「ああ,十一月を予定してる。まあ今はそっちよりも目の前のレースだ。もう一度言うが期待はしない」

 ヒノマルは黙って頷きそのまま控え室まで歩いて行った。

 

◆◆◆

 

 木場はなぜ期待をしなかったのか。それは以下のことに危惧しているからだ。

 ジュニア級のウマ娘は身体がまだまだ未熟なためレースは2000m以下の距離しかない。普通ならその距離があっている。しかし,ヒノマルにはその距離では足りないほどの大量のスタミナが宿っている。そして,この距離で使い切ることができるのか。

『ジュニア期の重賞の一つ,この札幌ジュニアS。どの娘が勝つか楽しみですね』

 ヒノマルは問題なくゲートに入る。

『スタートしました』

 木場の一抹の不安を消し去るように好スタート。デビューと同じように後方からのレースをしていた。そしてしばらくすればコーナーを曲がり向正面。レースは淀みなく進んだ。本当に問題なく進んだ。だがそれが違和感を呼んだ。

 

 あれ,今何秒経っている?俺はどこにいる?

 まずい,まだ温まってないぞ!

 

 ヒノマルのスパートが入った。しかしその調子はどう見ても良くない。しっかりトレーニングしたとうりに全身を使って前に進もうとしている。懸命に前に進もうとしている。それでもスピードに乗り切れていない

「……しくじったな。やっぱりもっと距離いるんだろうな。あいつの作戦で行くとこのタイミングでは遅すぎるし、しかしあいつの身体的には早すぎる」

 ヒノマルの体にはようやく熱が入ってきた。しかしそれでは遅いのだ。直線に入る前から最高速度出ない限りもう先頭には成れない。周りは以前と違ってほんの少し余裕がありそうだった。ヒノマルは苦しい顔をしながら必死に必死に食らいついた。

『先頭が今ゴールイン!』

 その声はヒノマルがゴール板を横切る前に聞こえたのだった。

 

◆◆◆

 

 今回のレース,結果は負けだった。

「負けた。追いつけなかった」

「いや,充分おまえはやってたぞ。いかにも調子悪そうだったのに四着。良くやった」

 木場は今回のことは重く考えてなかった。最初から言っていたとうり期待はしていなかった。どれだけ走るウマ娘が優れていても適性距離というのは本当に辛く当たってくる。しかしヒノマルに非がないわけでもない。

「今回の反省点言ってみろ。まさかわからないなんてことには言わないよな」

「わかっている。適性云々の前に俺はマイル戦だっていうのにデビューと同じ感じで進めていた。そこから冷静さを失いコーナーも無様になってしまった」

 ヒノマルは的確に自分のレースを振り返った。しかし木場はまだ不服そうだった。

「後一個,忘れているぞ。おまえ,バ場の特徴考えずにレースしただろ」

「うっ,」

 完全に図星だった。

「俺は一応言ったつもりだったが、今回の舞台,札幌は高低差が少なく直線の坂もない。そして今日は良バ場だ,前のレースは稍重だ。そこが全然違う。もし,今回のレースで芝が少しでも重けりゃ,直線が坂なら,周りは疲れておまえは勝っていたかもしれない。しかし現実はそう甘くない。そういうこと考えてやっとすげーレース勝てんだよ」

 完全に言われてしまった。自分の浅ましい思考が全て見透かされた気分で嘆きたくなってしまった。もちろんヒノマルも相手を舐めていたわけでもバ場について考えて無かったわけでもない。ただそれの重要さが理解しきれていなかったのだ。ヒノマルの夢にはまだまだ遠かった。

「ヒノマル,だから今回の反省を活かせ。どんな結果も努力も次に繋げる糧にしなくちゃいけない。次は京都ジュニアSだ。」

「……距離は?」

「2000。そして直線に坂はない。だが,第三コーナーにならある。情報も勝利のための道具だ」

 木場は期待をしてなかった。それはあくまでこのレースでありヒノマル自身ではない。今のヒノマルがなすべきことはたった一つ。この失敗をいかに次へと進めるかだった。

 道を歩くのは困難だ。障害は突如としてやってくる。課題だってどこからでも湧いてくる。

「トレーナー,ありがとう。だからしっかりみててくれ。俺が勝つところを」

 木場は静かに頷く。

「ああ,任せたぞ。それと俺はこいつを吸うからちょっと待ってろ」

 タバコに火が灯る。流れる紫煙は大地の風に揺られて飛んでいってしまう。

 その日の風はどことなく強かった。その風は東の方へ誰かを導くように強く,吹いていた。

 

「お母ちゃん,行ってきます」

 




 最後にとあるウマ娘が出てきましたが次はエレジーの例のあれについて書いていきたいと思ってます。
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