目標は完結ですが、投稿は遅いですがよろしくお願いします。
1R そのウマ娘,『漢』である。
──産まれる前からこの人生は決まっていたのかもしれない。俺のせいで両親は返ってこず,この傷は罪を忘れないためのものだと信じてきた。
研究施設に送られた俺はただぼんやりとした日々を過ごして罪を背負ってきた。でも,もし、許されるなら少しでいい,ほんの少し、俺が生きていたことを誰かに知って欲しい。
そんな意識が芽生えて数ヶ月たったある日のこと──
「君はこれからトレセン学園に編入することになった、センジンヒノマル」
「えっ……。本当ですか、それ」
ガラス越しの面会、センジンヒノマルことヒノマルは驚愕した。今までこの施設から出たことのないヒノマルは外の世界などよくわからない。それにトレセン学園はあらゆるウマ娘が集まる場所、端的に言えば女子校である。そこに男であるヒノマルが行っていいのかと考えている。
「問題ない。いつかの君が外に出たいといったのもあるし,わざわざここにいてもらうにも時間が経ちすぎた。」
そう所長はいった。ヒノマルはそれ以外の問題についても聞きたかったが所長は口を止めない。
「君には酷いことをした」
「どういうことですか?」
「君は十数年、この施設にいてもらった。そして一切外に出ることはなかった。これを酷いと言わず何という。
だから謝罪をさせてほしい。君の父親にも──」
長い間の軟禁状態とも取れる状態。だがヒノマルは気にしてなかった。むしろ感謝したいくらいだった。
ヒノマルは物心つく前に両親を失った。その内の父親が頼ってヒノマルを預けたのが所長だ。この事実は数ヶ月前に聞かされた話だ。そのときあたりからヒノマルは外に出たいと明確に思い始めた。
「顔を上げてください。俺は大丈夫ですから。それでいつから編入するんですか」
「ああ,それは一週間後の予定だ。そして──」
それからヒノマルたちはしばらく会話を続けた
◆◆◆
某日、トレセン学園正門前、所長のおさがりの学ランに身を包んだヒノマルはこれから始まる新しい人生に期待を胸に息を飲んでいた
「それでは、行ってきます、所長。今までありがとうございました。あなたは俺のもう一人の父さんだ」
こうしてヒノマルはトレセン学園の門をくぐった。
「先にホームルームを始めるから待っててね」
「はい」
緊張してきたな。そんなことを思いながら軽く担任と会話をして扉の前で待機している。
ヒノマルは今まで決まった人間としか会話したことがない。した場面など事務的なもの、教育のとき、などぐらいしか思いつかない。ある意味これが最初の他者とのふれあいになるだろう。
(落ち着け、大丈夫だ)
「では入ってきて」
「はい!」
ヒノマルはここ数日自己紹介の練習をしてきた。抜かりはない。しかし、
「ぶへっ!」
ガチガチになった体が僅かな段差に引っかかってしまった。ヒノマルは若干顔を赤らめながらも黒板に名前を書き終え教卓の前にたった。
「見苦しいところを見せてしまいました。名前はセンジンヒノマル、男です。よろしくお願いします」
「はい、ヒノマルさんありがとう。それじゃ席はあそこね」
担任の指さしたところはマスクをつけたウマ娘の隣であった。すぐさま移動して腰をおろすと安堵の息を吐き出した。
「さっきは大丈夫デスか?」
隣のウマ娘が心配してきてくれた。他人に話しかけられることにびくついたヒノマルだったがすぐに冷静さを取り戻した。
「ああ、ありがとう。あれは我ながら酷いと思っている。えぇと君は、」
「アタシはエルコンドルパサー!エルとお呼びください!」
快活な片言で喋るウマ娘、エルコンドルパサーことエル。彼女の明るさにはまだ慣れない。
「うん、それじゃあこれからよろしくエル」
ヒノマルは右手を差し出して握手をした。以前握手が友達の証と聞いたからだ。
こうしてヒノマルは友達第一号にして親友となるウマ娘ができた。そしてエルもはじめての男の友達であった。
◆◆◆
「あれ、どうしよう。生徒会室はどこだ?」
編入から数日、ヒノマルは学園の雰囲気にも慣れてきたが迷子になってしまった。トレセン学園はとても広大である一室に行くだけで一苦労だ。
それはさておきヒノマルは急いでいた。用事は早く終わらせたいし相手を待たせるのも申し訳ない。と地図を片手に頭を捻っていると、
「おや、どうしたんだい?」
「いえ、生徒会室に行きたいのですが」
「それならそこからは上に上がって右でよ」
「そうですか、ありがとうございます。」
ヒノマルは親切なウマ娘に感謝しつつも焦っていたのですぐさま去ってしまった。しかし親切なウマ娘はヒノマルのことをまじまじと見つめては不穏な笑みを浮かべた。
「……ふぅん……」
◆◆◆
「失礼します。センジンヒノマルです」
ヒノマルが扉を開けると一人のウマ娘がいた。そう、あの無敗三冠ウマ娘、シンボリルドルフだ。
「ひとまず座るといい。しかし、久しぶりか」
「俺と面識ありましたか?」
「ああ、過去に君を見たことがあったね。まあとりあえず座るといい」
ヒノマルは焦っていたため息が乱れていた。言葉に甘えて座って少しくつろいだ。だいぶ落ち着いた様子だと確認したルドルフはヒノマルにいくつか問答をした。
「さて、センジンヒノマル。君はこの言葉の意味がわかるか?」
『Eclipse first,the rest now where』
トレセン学園のスクールモットー。その意味は
「『唯一抜きんでて並ぶ者なし 』ですよね、会長さん」
「ああ、そうだ。君も切磋琢磨をして頑張ってほしい。そこでもう一つ,質問だ。」
──君はなぜここに来た
走る理由。それはさまざまだろう。
楽しいから。憧れたから。最強を示したいから。日本一になりたいから。
それぞれが背負う理想と思いがある。なぜ走るのか、ヒノマルの示す答えとは
「俺が生きたことをのこすためです。」
別に一生を施設で暮らしてもよかった。自分が自由なんて烏滸がましい。役に立ってさっさと骨を埋める。それができることだと思っていた。
だが、あまりにつまらないと気付いてしまったのだ。せめてこの身体で産まれた意味を別に持ちたくなった。親に誇れる息子でありたくなった。
「それが俺がここに『
ルドルフは満足げに微笑むと手を差し出した。ヒノマルは力強くその手を握り返した。
「では、学園の案内をしようか」
「ならばその役,わたしが引き受けてもいいかな」
ルドルフの声を遮るようにドアが開く。そこには栗毛の,先程の親切なウマ娘がいた。
「アグネスタキオン,なぜ君が?」
ルドルフが強めに問い詰める。
「おいおい,よしてくれ。わたしは別に怪しいことは何もしない。君が最初に依頼したものにもちゃんと許可はとっている」
親切なウマ娘ことタキオンは変わらず不敵な笑みを浮かべている。
その様子に観念したのかルドルフは大人しくタキオンに任せた。
「すまない,センジンヒノマル。彼女の案内について行ってくれ。アグネスタキオン、君は何もするなよ」
「くく,ああ勿論だよ。わたしは何もしない」
案内が始まった。
タキオンはとても怪しげな雰囲気を放っていた。彼女の魂胆が見え隠れする。しかしヒノマルは人付き合いなどあまりなく多少怪しみながらも彼女について行った。
そうしたまま案内は進んだ。彼女の放つものに対してそれ自体は何事もなく進んだ。ただ、ヒノマルには引っかかるものがあった。
──なんなんだこの匂いは?薬品の香りなのか?それにしても鼻につく
違和感を覚えつつも黙々と進んでいく。そしてヒノマルはとうとうその疑問を口にした。
「タキオンさん,さっきから匂うこの匂いはなんですか?それにこのあたりからも──」
「勘が鋭いねぇ。だが」
その瞬間景色は暗転する。周りから二人ほどの気配が漂っていた時には
「もう遅い」
袋に詰められていた。
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