【完結】ウマ漢 〜燦々レーシング〜   作:プレブレム

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とりあえず書き溜めている分は出来ました。
少なくとも一週間以内には毎日投稿は出来なくなると思います。


4R 謎の仮面、『ハリボテエレジー』先輩

 時にウマ娘は半端ものが産まれてしまうらしい。いや,半端ものというかネタに走ってしまったというかなんとも言えないいる。

 異様に身長がデカいやつ,角が生えたやつ,フェロモンを撒き散らすやつ,縞々なやつ。

 他にもたくさんいて,全員おかしいが彼女たちには才能があった。

 

 わたしだけが一切ないのだ。

 

 なぜだ,なぜだ。わたしだけこんなことになるなんて,おかしいだろ

 恨み節はなんこも溢れた。

 許せなかった。

 呪わずにはいられなかった。

 ──でもそれだっていいじゃないか

 そんなことを考えれたのは二人のおかげだ。

 

◆◆◆

 

 ヒノマルが編入してはや数ヶ月。もうチームの一員として打ち解けていた,彼女を除いてだが。

 ──ハリボテエレジー

 彼女だけはなにを考えているかわからなかった。その素顔は全く分からず、返事も少ない。

 なぞの被り物はどこかで見たことがあるようなデザインで段ボールで構成されていた。そこに描かれた真っ黒な瞳は見たものを虚無へと誘う。

 ひたすら寡黙な彼女とタキオンを比べてどちらの方が接しやすいかと聞かれたらヒノマルは後者を選ぶ。タキオンは狂っているが、コミュニケーションが取れる。取れない相手など人間性以前の問題になる。

「それじゃあ,ヒノマル。今日はエレジーと組んでやってくれ。俺はタキオンとエルのデータの集計してるからわかんねぇことがあるなら連絡しろ」

 はっきり言って難しいと伝えたかった。

 しかし,木場の行動は早い。

 連絡ツールとメニューを置くと駆け足で逃げていった。その時の表情がなんとも爽やかで余計に殴りたくなった。

 「えーっと,エレジー先輩。やりましょうか、」

「……んっ」

 あんたはなんか言えよ

 それを喉の手前で引っ込めてトレーニングを始めた。

 

◆◆◆

 

 喋ったことのない人と同じ空間にいることはとても苦しい。友達の友達と二人きりになったことがある人ならわかるが,まさしくそんな状態だった。

 当然そんな状態ではトレーニングも捗るわけがなく、ヒノマルは途方に暮れていた。

 だからと言ってトレーニングをサボるわけにもいかない。なんとかして会話を絞り出したかった。

「あの,エレジー先輩」

「んっ?」

 しかし,相手は「んっ」の一点張り。

 そして,ヒノマルとて人と話すのが苦手だ。彼がトレセンに来るまでに関わった人間など数えられるぐらいしかいない。特定の人間の間で伝わったことは他人にはあまり通用しないのだ。

「……はぁ,一体俺にどうしろと,」

「んんっ」

「あなたも何か言ってくださいよ」

 大きなため息が漏れる。

 そして今日の練習は終わった。

 

◆◆◆

 

 その日のヒノマルは行動が早かった。

 授業が終わると昨日の木場と遜色のない素早さでトレーナー室に向かった。

「んで,エレジーについて教えろと」

「頼む,でなければ俺がトレーニングに集中できない」

 木場は相変わらずタバコを吸っている。

 今日はそれを消さずに語り出した。

「俺はタキオンを担当してから色々変わった。こう性格もタキオンを担当してからかね。そしてその次に契約したのがハリボテエレジーだ。あいつは顔隠すにはそれなりに理由があってな。

 ヒノマル,『変異種』ってしってるか」

「いや,聞いたこともない」

 木場は意外そうな顔をした。

「マジか。まあ簡単に言えばおまえみたく普通のウマ娘にはない特徴を持つウマ娘だ。性別が違うおまえも変異種とも言えるだろう。

 これを知ったのはタキオンを担当して数ヶ月,世界でごく稀に一世代限りで生まれてくる種類だ。その特徴はまさに千差万別。中にはこの世界に存在する生物と類似した特徴を持つ奴もいる。

 そして,エレジーもまたその一つ。あいつは変異種の中でも物珍しい,名付けるなら『半バ娘』とかだろうな。人間を超えるスペック,しかしウマ娘を超えることは絶対にない。

 変異種のほとんどは外見に特徴が現れるがエレジーは身体能力に大きく影響した。おまえもいつかの練習で見てたろ。エレジーの速さを」

 ウマ娘の変異種は世界でも報告されている。決して未知なる出来事ではないのだがエレジーだけが特殊すぎた。

 その特徴から彼女は幼少期の頃から友達も少なかった。そして,かつてはその運命を恨み,憎み,呪った。

 エレジーの走る理由──それは皆が抱くような美しいものではなかった。

「そうだったのか,そんなことが」

「まあ,これ以上のことは本人に聞け。今日も俺たちはいないが,頑張り!」

 そこまできてそれはないだろう。

 ヒノマルはまた,伝えることが出来ずにエレジーとの練習を始めなければならなくなった。

 

 

 

◆◆◆

 

「エレジー先輩,今日もよろしくお願いします」

「んっ」

 気まずい沈黙は再び襲いかかってくる。

 しかしその沈黙は無言からくるものではない。エレジーの境遇に自分に似た何かを感じてしまった,いわば『同情』というのが一番近いところだろう。

 ヒノマルは理解できなかった。木場はあんな話をされた直後に話題になっていたやつと二人だけで練習しろというのだ。

 自分のトレーナーに対する不信感は出会った時に近いものとなっていた。

「あの人,本当にトレーナーとして大丈夫なのか」

 思わず愚痴が漏れてしまう。

 するとエレジーはおもむろに立ち上がり顔を近づけてきた。

「いや,エレジー先輩,近い……です」

 これでもかとエレジーは顔を押し寄せた。

 とうとうエレジーの被り物が鼻に当たった

 その瞬間──

 一つのメモ帳が目に入った。

「トレ……ナーは,しん……らいでき、る。

『トレーナーは信頼できる』?」

 エレジーは首を大きく振った。鼻が当たって少し痛い。

 それに気づいてないのかエレジーはそのまま筆談を始めた。

「トレーナーはわたしの恩人だ。彼は,誰からも見向きされなかったわたしを見捨てずに契約をしてくれた。

 そして彼は区別などしなかった。他の普通の娘と変わらず同じだけのトレーニングをさせてくれた」

 そして最後にこう書かれていた

 

 彼は,わたしと同じ夢に駆ける

 

 エレジーのその瞳は虚無を表していなかった。ただひたすらに燃え上がる曲がることなどない,夢への『印』

 ヒノマルはそれがわかった。

「君が彼に,そしてわたしになにを思っているのかはわからない。しかし,どうか彼を信じてほしい。彼のお陰でわたしの呪いは夢へとなった。君も自ずとわかるだろう」

 エレジーはそう書いたページをデコに押し付けた。

 呆気に取られたが直ぐに正気を取り戻すとヒノマルは彼女を追いかけていった。




とりあえずあと三話以内にメイクデビューは済ませます。
明日には設定を載せようかと考えています。
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