86-エイティシックス-新人類への置手紙   作:Gfish

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共和国軍には2人の若い士官がいた。

1人は存在を秘匿され、もう1人は問題児と言われても仕方のないやんちゃ坊主だった。


共和国の若き士官

共和国北部、レギオンに拉致されたと思われる廃人が大量に発見された地下鉄ターミナル跡に、黒ずくめの集団が視察に来ていた。皆、白髪だった。

 

黒ずくめの集団は瓦礫の山を眺める。その集団の1人が口火をきった。

 

「よろしかったのですか?共和国領内だから我々の手で確保できたものを..」

 

集団の筆頭は無感情に答える。

 

「あんなじゃじゃ馬は連邦の手には負えない。並みの人間が乗れば動くだけで意識がなくなる。」

 

集団の筆頭はさも当たり前であるといわんばかりだった。今度は集団の別の男が筆頭に聞く。

 

「しかし、あれを捕獲するよう命令が下ってますがね、まさか連邦に忍び込むなんていわないでしょうね?」

 

筆頭はまだ返事しない。まだ言い終わっていない様子だった。

 

「それに、ヴラディレーナも仕留め損ねた以上、大統領の機嫌も...」

 

「問題はない。これでやっと動けるからな。」

 

「どういうことです?」

 

 

 

 

 

視察の前、黒ずくめの集団の筆頭は共和国暫定大統領と1対1で面会していた。

 

「あの黒い機体、見覚えがあるそうだな。」

 

「GAT-X370、レイダー、私の旧所属先の機体です。」

 

「なら捕獲は造作ないはずではないか?」

 

「隠れ蓑は必要です。モルフォのときも我々に動かないよう命令されていたはずですが。」

 

「貴官の言う通りだ、忘れていないようで安心した。」

 

暫定大統領は続ける。

 

「しかし、今後はどうする?あれで連邦が勢いづくとわが国の立場はますます危ういぞ。」

 

大統領の懸念の通り、一連の対レギオン戦を通して共和国に対する各国の世論は悪化の一途を辿っていた。86区の件が図らずも明るみに出たことがかなり大きく影響した形だ。

 

しかし、国内世論はあくまでもコロラータに対してさらに態度を硬化させている。

自分では戦わないくせに、である。

 

 

「幸いにもどの勢力でもないと思しき機体が暴走してくれました。」

 

暫定大統領は大いにうなずく。それは時が満ちたといわんばかりだった。

 

「スウェン・カルバヤン特務大尉、例の機体の使用を許可する。何も知らない僚機が誤って攻撃したら躊躇なく潰して構わない。」

 

何も知らない僚機、これは「無人機」のコロラータに他ならなかった。

 

 

 

 

一方、別のところでは1人の士官が「無人」であるはずのジャガーノートに乗り込もうとしていた。

 

「少佐ともあろうお方が『無人』の棺桶に乗ることなんてありませんよ!」

 

共和国士官の制服を着た人間がジャガーノートに乗るなど、天変地異があってもありえないことだった。(とはいいつつ共和国士官の制服を着た人間が前線に出てくる事例はあったが)

 

「ええ、いいじゃん別に!」

 

メカニックはただ苦笑いするだけだったが、周囲の制服組は失望感の混じった呆れ顔になっていた。

 

「だめです!偵察任務で少佐が死んだなんてなったらスキャンダルもいいところです!」

 

「大丈夫大丈夫、死なない、死なない!」

 

「大丈夫じゃないです!第一、仕事さぼりたいだけじゃないですか!?」

 

「書類やるより前線に出た方が仕事じゃない?」

 

周囲の制服組は遂にうなだれる。このやんちゃな少佐はデスクの上が大惨事になっていることで有名だ。無論、それだけじゃない。

 

無人機が有人機とばれるのは都合が悪いので公には知らされていないが、軍の一部の人間には彼が「86」達と共にジャガーノートを駆って戦場を駆け巡っていたことは知られていた。

 

「まぁまぁそう悲しまない!このお出かけ終わったら海に連れてくからさ、ね、許して!」

 

少佐にしてはなんともみっともない有様だが、それはあくまでも表の顔。ハッチを閉じて格納庫を飛び出すと表情はまるで別人に変わった。なんというか、企み事をしているときの不敵な笑顔である。

 

「世界を作り直せたらいいんだけどね」

 

独り言を言うとパラレイド越しに僚機に伝達を始めた。

 

「本作戦で指揮を務めるアグニカ・カイエルです。どうぞお見知り置きを。」

 

少佐の名は、アグニカ・カイエル。彼は偵察の名目でとあるプロジェクトの進捗確認を行うところだった。

 




次回:赤髪の少年
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