少しだけ独自展開ありです。
私はワールド11をクリア出来てません、ルート2がむずいんじゃあ…
インヴェーダーの大侵攻からしばらくの後、レジスタンスベースはこれ以上にないほどの昂りを見せていた。
侵攻してきたインヴェーダーの大部隊を撃退した事にある。
今まで負け戦ばかりだったレジスタンスがようやく掴んだ勝利、そしてガーディアンの帰還が彼らを奮い立てた。
そんな賑わうレジスタンス達とは裏腹に女騎士はレジスタンスキャンプの外れに1人でいた。
「貴方…こんな所でなにをしているの?」
声がした方に振り向くとそこにはレジスタンスのリーダーであり10年後のちび姫様もとい未来姫がいた。
ただ巡回をしていただけだと未来姫に伝える。
「巡回?たった1人で?」
女騎士からの返答に未来姫は冷ややかな視線になる。
「貴方、自分が1番敵に狙われている立場だと分からないの?まだ残党がいるかもしれないこの状況で1人で出歩いて襲われたらどうするつもり?」
未来姫の言葉に落ち込んだ様子の女騎士。
「別に怒ってないわ、でも貴方は私達の希望なの、もっと自重してもらわないと困るわ」
未来姫は落ち込む女騎士をキャンプへと連れて帰る。
(はぁ…またやってしまった)
1人になった未来姫は静かにため息をつく。
大進行を防いだあの日、女騎士との関係は10年前とはいかなくてもそれなりに良くなった、だが実際に彼女と一緒にいるとどう会話をしていいかが分からず結局は出会ったばかりのような態度で接してしまうのだ。
その度に女騎士は少しだけ悲しそうな表情をして、それを見た未来姫も後々になって自己嫌悪してしまうの繰り返しである。
(10年…この時間はあまりにも長すぎた、そう簡単に昔みたいにはなれないのね)
別の日、女騎士がキャンプ内を歩いているのを見かける未来姫。
その様子は妙に不審で、周りを気にしながら何処かへと向かっているようだった。
(何をしているのかしら…)
気づかれないようにこっそり着いていくと、あるテント内に女騎士は入っていった。
(ここは?)
未来姫はそっと入り口からテントの中を覗く。ファビと女騎士が話をしていて、さらに誰かもう1人が簡易ベッドの上で眠っていた。
(あそこにいるのは…まさか!?)
未来姫が見たのはベッドの上で眠るユズの姿だった。
「はい、呼吸も安定して体そのものには異常はありませんが意識はまだ戻ってません」
ファビと女騎士がユズを見る。
「やはり魔力を使い果たしているのが原因かと、治療するには生気を渡す事ですが、意識が戻らない以上はやはり他のサキュバスを通じて生気を渡してもらうしかありません」
それは出来ないと女騎士はファビに言う。
「そうですよね…あのセラピーの受けた方や関係者が今もユズさんを探しているとなると迂闊に協力を求める事は難しいでしょう」
報告は聞いていた、キャンプ内で失踪者が多発していたという事。
そして原因はユズが自分の力ととある薬物を使い、絶望の中死ぬのならせめて幸せな夢を見たまま人生を終わりにしようとしていた事を。
大侵攻から少し前に失踪者達は戻ってきたが皆虚ろな表情を浮かべ、代わりにユズ1人がこのキャンプから消えたのだ。
それが今ここにいる。先程言っていたユズを探す人達から騎士が守るために秘密裏に連れて来たのだろう。
一通りの治療が終わり、ファビがテントを出た後1人残った女騎士はユズに話しかける。内容はここ最近の出来事や思い出話だ。
しかしユズは眠ったままで返事が無い。それでも会話をしていかのように話を続ける女騎士。
それを見ていた私は…少しだけユズが羨ましく感じた。
騎士が倒れた
その話を聞いたのは作戦会議を終えた直後、傭兵団の1人、マッドパンダから告げられた。
気づいた時、未来姫は医療テントの前にいた。
「ぜぇ…ぜぇ…おかしら、待ってくれぇや…」
後ろからはマッドパンダが必死に追いついてきたがそれを待たずにテントへ入る。
「騎士は無事!?」
部屋を見渡すとファビと傭兵団の2人、そして頭に包帯を巻いた女騎士がベッドの上で座っていた。
女騎士はこちらを見ると頬を掻きながら苦笑いをする。
「頭部が少し腫れてますが問題はありません、少し休めばすぐに治ります」
ファビが未来姫に容態を告げる。
「一体何があったの?」
「そ…その前に少し休ませて…」
傭兵団のリーダーが走り疲れたマッドパンダにコップ一杯の水を渡す。
「ご苦労さん、姫様にはアタシから説明するよ」
-数十分前-
「アンタがもっと早くここに戻ってくれれば家族は死なずにすんだんだ!」
「そうよ!急に現れて英雄気取りのつもり?」
その日は一部の難民たちが女騎士に詰め寄り、女騎士はそれをただ黙って聞いていた。
「アンタ達、何を言ってんだい!」
「ワシらはコイツやおかしら達のおかげで勝てたんやぞ!」
「騎士、悪くない!」
たまたま近くにいたマットパンダ傭兵団の3人が女騎士を庇う。
「うるさい!ガーディアンがいなかったせいで何人死んだと思っている!」
「どうせ今まで逃げてたんだろ!この弱虫め!」
容赦のない、悪意の篭った罵声が飛び交う。小規模な暴徒のようになっていた。
「いい加減にしな!アンタ達!」
「こいつが黙ってれば好き放題言いおって!」
「デニー、怒った!」
憤慨した傭兵団が難民達に対して武器を構えようとするが女騎士はそれを制止する。
「アンタ…何で止めるんだい?」
女騎士は何も言わず首を横に振った後、リーダーの目を見る。
「…分かったよ、アンタが良いっていうならそうするさ」
傭兵団が武器を下ろしたその時、誰かの投げた石が女騎士の頭に当たる。
「おい!しっかりせい!!」
マッドパンダが倒れた女騎士に駆け寄り状態を確認する、気を失っているようだ。
「アンタらよくも、誰だい…誰がやったんだい!!」
リーダーとデニーが難民達を睨みつける、その気迫にたじろぐ難民達、当然ながら名乗るものなどいない。
「ちっ…お前達、さっさとコイツを診療所に運ぶよ!」
今すぐにでも犯人探しをしたいが、リーダーは女騎士の容態を優先させた。
「了解や!」
「デニー、急ぐ!」
こうして3人は女騎士を担いで診療所へと向かった。
以上が事の顛末である。
「なにそれ…」
女騎士が倒れた理由、それを聞き終わった未来姫の感情は怒りで染まっていた。
気づけば憤怒の表情で
「ま…待ちぃやおかしら!それを持って何をする気や!」
「姫さま、落ち着きな!」
「姫さま、止まる!」
傭兵団が止めに入るが振り切る未来姫。
出口へ向かう彼女に女騎士が立ち塞がる。
「なんのつもり?」
こちらを見据え、動かない女騎士。
「貴方、自分が何をされたか分かっているの?守ろうとしている存在に危害を加えられたのよ!それをただ黙っていろと?」
肯定するように女騎士は頷く。
「…これは命令よ、そこをどいて、どかないなら無理矢理にでもどかすわ」
女騎士は動かない。
「私は本気よ」
「…っ!!」
未来姫は
「騎士様!」
ファビが目を瞑り悲鳴をあげる。
しかしいつまで経っても何かしらの音はしない。
ファビは恐る恐る目を開けるとそこには寸止めの状態で
長い沈黙の後、未来姫はゆっくりと武器を下ろす。
「なんで…私が…私がどれだけ心配したと…」
俯き震える未来姫を見て、女騎士はファビと傭兵団3人に目配せする。
「騎士様…分かりました、貴方任せます」
「しょうがないね…アンタ達行くよ」
4人はテントの外に出る。
2人きりになったテント、女騎士が未来姫の手を引き、ベッドに座らせ自分も隣に座る。
「なぜ貴方は私を止めたの?」
涙目の未来姫は女騎士に問いかける。
『皆を救うって決めたから』
女騎士は迷わずにそう答えた。
「皆を救う…?それで自分が犠牲になっても?貴方いなくなったら誰も救われないわ!死んでった仲間達も、私もみんなも!」
未来姫の言葉に『ごめん』と謝る女騎士。
「許してほしいなら約束して、皆を救う…その皆の中に貴方も加えて」
女騎士は頷くと、腕を上げて小指を立てる。
「…?」
女騎士の行動に疑問を浮かべる未来姫、しばらく考えあと理解する。
「ゆびきりしようって言うの?私もそんな子供じゃないわ」
素気ない態度に悲しそうな顔をする女騎士。
「分かったわよ…するからそんな顔をしないでちょうだい」
ゆびきりの約束をする2人、とたんに女騎士は笑顔になる。
そのヘラヘラした表情を見て、少しだけだが昔に戻れた気がした。
「もう戻るわ、貴方はしっかり休みなさい」
立ち上がり出口へ向かう未来姫。ふと足を止め、こちらに振り向く。
「ねえ…最初の頃、過去に戻るかどうかの話をしたの覚えてる?」
覚えていると頷く女騎士。
「今もう一度聞くわ。貴方はどうしたい?」
まだこの選択が正しいかは分からない、でも答えは決まっている、自分はーーーーー
「そう…貴方のことだからそう答えると思ってた。近いうちに大規模な反抗作戦を開始するわ、それまでには怪我を治しておきなさい」
外へ出る未来姫の背中を見送る女騎士。
その数日後、レジスタンスの全勢力を注いだ大規模な作戦が行われ、女騎士はそこでたった一度きりの決断しなければならなくなる。
そしてこの物語がどうなるかは来るべき時が来るまでは語らないでおこう。