ブランシュを壊滅させた後の始末は、克人が引き受けてくれた。
秋水は達也たちが戻ってくる前に自らの制服についた血を魔法で取り除き、合流するのを待った。
あまりの惨状に達也と克人が何か言いたげな顔をしていたが、言及してくる様子はなかった。
十師族の介入がなければ、秋水たちは無罪放免とはならなかった。
既に数十人殺害している秋水は、平穏でいられることなどない。
だが、それを何とか出来てしまうのが十師族だ。
彼らは権勢は、司法当局を凌駕する。
現代魔法の才能が先天的素質によって左右されるものだと分かってしまえば、当然の帰結として、血縁による強化が図られる。
それは日本以外、魔法を研究するだけの国力がある国でも、既に行われている。
結果として、この国の魔法界には強大な力を持った一族が集まり、一団となった組織がある。
それが十師族。
彼らは表舞台には立たない。
その代わり、兵士、警察、行政官――表舞台には立たないようにして、彼らは日本を支えている。その力を国のために使うという前提もあって、政治の裏側で、不可侵に等しい権勢を得ている。
故に、普通の警察が、十師族の一人が関わった事件に、関与できるはずもないのだ。
紗耶香はエリカとの戦闘で右腕を亀裂骨折をしていた。その治療と、ブランシュのリーダーが光波振動系魔法・邪眼の使い手だったこともあり、マインドコントロールの影響が残っていることも考慮して、しばらく入院することになっていた。
司甲もまた同じように、マインドコントロールの影響下にあった。彼もまたその治療のために入院している。一応、退学ではなく、休学扱いで長期の治療を受けているが、恐らくは自主退学することになるだろう。そもそも、彼は魔法師志望ではなかったようだ。霊子放射光過敏症ではあったが、それも日常生活に支障が出るほどのものではなかった。
司一がそれに目をつけ、マインドコントロールで操り、第一高校に入学させたそうだ。その目的は組織の役に立ちそうな魔法を見つけ出すことにあった。奴がアンティナイトを必要としないキャスト・ジャミングを欲しがったのも、合点が行く。
有志同盟の生徒たちが起こした行動は、学校側によって隠蔽された。放送室が占拠された事件も無かったことになり、紗耶香のスパイ未遂も最初から無かったことになっている。
学校側は生徒に鍵を盗み出されたという事実を隠蔽したいという意図は、事件を顛末を把握している者からすれば、丸分かりだった。
五月に入り、ブランシュの一件が終わってから、今のところ穏やかな生活をすることができている。
午前の授業を自主休講にして、学校の屋上でのんびりとしている秋水は、達也と深雪が何か話しながら何処かへ向かっているのを見つける。
そういえば、今日は紗耶香の退院日らしい。これといった接点を持たない自分がお祝いに行ったとしても邪魔になるだけだろう。
「平穏なのは、ウチにとってありがたいことだけどね」
何事もないのは、平和の証拠でもある。
できることなら、この平穏を存分に謳歌したいものだ。
「そういえば、司波さんにつけた式神は処理されちゃったみたいだけど……まあ、いいか。一日経てば剥がすつもりだったからいっか」
処理してくれたおかげで、達也には古式魔法に精通している人間が知り合いにいると分かっただけいいだろう。恐らく、達也たちは自分のことを警戒しているかもしれないが、こちらから手を出すことはほとんどない。
「このまま平和だったら、何も心配しなくていいんだけどね……」
とはいえ、ブランシュでの一件があった以上、他の組織が攻撃してくることはかなり現実味を帯びている。秋水ができることはかなり限られてくるが、備えておくことはできる。
未知の脅威に備えておくのも確かに必要なことなのだが、その前に――
「あ、九校戦、もうすぐだっけ」
九校ある魔法科高校から選出された魔法科高校生たちが集い、魔法勝負を繰り広げる催しが開かれることを思い出した秋水は、まずは目の前のことに気を配るべきだったな、と先のことばかり考えていた自分に苦笑した。
アイス・ピラーズ・ブレイク、一条将輝戦。原作で特に記載がないため、優勝、準優勝のどちらをとっても問題ないと解釈。ので、一条将輝に勝つか負けるか、悩んでいるのでアンケートで決めることに。
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主人公らしく勝つ
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僅差で負ける
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大敗する