【ライダー】負けたら陵辱される変身ヒロインものエロゲーの世界の竿役モブに憑依した挙句、忍者の仮面ライダーになっていた【助けて!】   作:ヌオー来訪者

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 キバットリビア風に、2008年にまつわる音楽系のお話をひとつ。

 一部界隈の間において非常に有名なクォDA PUMPには大別して1996年からいる古参メンバーと2008年からいる新メンバーの2種類が存在している。しかしその古参メンバーの脱退などもあり現在リーダーを除く全員が2008年に加入したメンバーとなっている。

 OQのラストでソウゴと対話していた彼ら(SOUGOに次の主役と持ち上げられていたクォツァー構成員)は2008年の新メンバーのみとなっていることを考えるとちょっと寂しいものを感じますね……


「ちょっと見てみたいかな、本に書いてない――お前の未来」


Kの襲来/オレたちのスタート2008

 それからと言うもの、何か得られるものもろくすっぽ無いと判断したか意外とあっさり真太郎は釈放された。

 が、当然の如く今置かれていた仕事は取り上げられ現在絶賛社内ニートだ。

 表向きは体調不良。という事になっている。

 

 当たり前だ。

 不安要素の塊を無理してでも運用したいとは上弦衆も思うまい。

 

 けれども全てを取り上げられた以上、どうしようもなかった。

 スマホ(もうご存知だろうが、この世界の人間にはガラケーに見えるらしい。何故だ)も瓢箪も失った以上、彼らからの助力は受けられないし手持ち無沙汰となったまま街中を彷徨っている。

 

 

 もう気づけば陽は沈みきっており、居酒屋(おそらくぼったくり)の客引きが暇そうな通行人を狙って声をかけている。

 

 ふと視線を変えると街中に置かれたデジタルサイネージが仰々しく輝き、その輝き中で2008年当時の女優が意味ありげに微笑んでいた。

 学生たちの今日の部活について愚痴る声、サラリーマンが電話しながら目の前にいないはずの相手に「申し訳ございません」と頭を下げている。

 

 

 真太郎はただ歩く。

 通り過ぎゆく、この町が蜃気楼が見せる幻のようにも見えた。

 2022年を生きていたのに2008年の町中を歩いている。その事実が現実と意識をひどく乖離させていくのだ。

 今はここに生きているのに、まるで他人事のように。

 

 2008年の頃の自分はどんなふうに生きていたのだろう。

 昔タイムカプセル埋めたような気がする。

 その時の手紙は確か未来はどうなってますか、とか元号はどうなってますか。なんてことを書いた気がする。

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 まぁいい。

 もしも。もしも2008年の幼い頃の自分が今の自分の境遇を聞いたとしたらどんな顔をするだろうか。

 

 並行世界の過去に飛んで放送前の仮面ライダーに変身してますなんて言おうならどこかのトランザ様と同じ病院へ行くことを薦められるに違いない。

 まぁそれももう無いわけだが。

 

 

「……ん?」

 

 人混みの合間に誰かの姿がふと見える。

 しばらく人混みのノイズで判然としないものだったが、歩を進めれば進めるほど見知ったものとなっていく。

 赤みがかった黒髪の青年。見知った顔に真太郎は一気に肩から力が抜けた。

 

「散歩ですか」

 

「えぇ。現在絶賛社内ニート中なんで」

 

 戦部タカマルだ。

 タカマルの問いかけに真太郎は冗談めかして言い返した。事実何もやることを失った。

 なんやかんやで異世界同然の場所で自分が自分でいられたのは『役割』があったからだ。

 シノビとしての『役割』と、上弦衆の忍びとしての『役割』。

 そしてスレッドと虚無僧という『導き手』。

 

 これらがあったからこそ、この異世界同然の2008年を走ることができたのだ。

 これは命綱だったのか、補助輪だったのか。

 

 それらを失えば後は何もない。

 元の世界、元の時代ならば会社という居場所がある。友達がいる。

 けれども今の斉藤真太郎にはそれが殆ど失われている。そんな真太郎はタカマルと街の中を再び歩き出す。

 

「いいじゃないですか。ニート。これまで頑張ったんですから休んだっていいじゃないですか」

 

 休んだっていい。

 が、そうは言っても一人でハルカに丸投げなんてしていいのかという躊躇いが待ったをかける。

 特に向こう側。ノロイ党が仮面ライダーの力を行使してしまった以上は。

 

「定年迎えたお父さんみたいですよ、それ。俺はまだ社会人歴一桁なんスけどね……」

 

「お父さん、定年までご苦労様。赤いちゃんちゃんこ用意しましたよ」

 

「おい」

 

 明らかなボケに真太郎はツッコミを入れる。

 シノビの正体がどうであれ変わらず接してくるタカマルに真太郎の先程までの疎外感はいつの間にか薄らいでいた。

 先日までシノビとしての日々の活動やら何やら根掘り葉掘り問い詰められていたこともあってどれだけ気を楽にしたか。

 

「あんな事があったにも関わらず、頭領殿はいつも通り。普通ビビったりしないんですか?」

 

 恐れ畏まったりする様子はカケラも見当たらないタカマルに真太郎は苦笑いで投げかける。

 勿論一番楽な態度ではあるが、理由が知りたかった。

 するとタカマルは一瞬だけきょとんとしてから、口を開いた。

 

 

「それはまぁ、色々考えたりはしたけどこれまでの戦いから見てもやっぱり俺の知る須藤さんだし。()()()()()()()()()()()()。必要なら変えるけど」

 

「斉藤です。いつも通りにして貰えるならばそれはそれで良いんスけど……」

 

 その大らかさと胆力は何処から来るのだろう。頭領となる運命を抱えた存在だからか。

 戦部タカマルが常盤ソウゴと存在がダブって見える。

 ただ決定的に違う点がある。

 常盤ソウゴは幼少期から望みとしていた()()()()()()、戦部タカマルは望まずに頭領となった。

 だから、その連想はきっと間違いだ。

 

 

 常盤ソウゴの姿を脳裏から振り払うと、思考でややぼやけていた現実への意識が少しクリアになり、周りの景色が視界にはっきりと映し出される。

 とっくに街から離れ人の数はまるっきり減っている。そんな中でタカマルが真太郎に向き直った。その時の彼は──いつもの彼とは違って見えた。

 

 

「でも。これだけは。これだけはいつも通りではなく頭領として。そして個人的に一つ訊きたい事がある」

 

「……?」

 

「貴方はどうして違う世界から訳もわからないままなのに戦おうと思ったんですか。ハルカさんを──助けようと思ったんですか。貴方は一体、何を求めてそこにいたんですか」

 

 そこにいたのはこれまでの斉藤真太郎と向き合ってきた普通の高校生、戦部タカマルではない。

 上弦衆頭領戦部タカマルがそこにいた。

 

 はぐらかそうとしたもののあっという間に判決を待つ被告人のような心境に落とし込まれた真太郎は──

 

「それは──」

 

 答えに窮した。

 この力が何かを救えると思ったから、そして何か意味があるからと思い、そして街が、知人がノロイ党に蹂躙されるという現実が嫌だから戦おうと思った。

 いつものような文言で返せばよかったものの、今置かれている仮面ライダーという存在が世界に害を成そうとしているのではないか、そんな怯えが真太郎から言葉を奪う。

 

 言葉に詰まり、思考も覚束ない。

 街頭の少ない街中に溶けてしまいそうな感覚に襲われる。

 矢先だった──

 

 

 

 

 

「あのっ、助けてくださいっ!」

 

 セーラー服の女の子の声が沈黙の闇を引き裂いた。

 悲痛な声色に咄嗟に真太郎もタカマルも反応すると真太郎は腰を低くして女の子に目線を合わせる。

 

「なに? どした? 何があった?」

 

 問いかけるが女の子はまるで何かに追われているかのような、切羽詰まった顔持ちだった。

 真太郎の肩を掴み、指さす先は閂山の丸子寺方面だ。丸子寺は駅からしばらく走ってから少しばかり長い階段を駆け上がることでたどり着くやや寂れたお寺だ。

 

「とにかくきてください……大変なんですっ……!」

 

「ごめん、大雑把でいいから何があったか教え……あっ、ちょっ!」

 

 逃げるように丸子寺方面へと走る女の子。ここまで詰められて放置できる性格などタカマルも真太郎も持ち合わせてなどいなかった。

 ここで見失おうものなら何が起こったのかも分からないし、最悪の事態が脳裏を過る。

 

 あの様子から察するに何か危機的状況に陥っているに違いないのだ。

 真太郎とタカマルは女の子の背中を追う。生温い風を受けながら人の波を掻い潜り、掻き分けるように街を通り抜ける。長い石階段を踏みつけるようにして駆け上がる。

 そして──

 

 一心不乱に女の子の後を追ってみれば堂内の一室に上がり込んでいた。

 部屋の中を見渡す真太郎は不安げに声を漏らす。

 

「こうして突貫したのは良いが、大丈夫なんですかねこれ……ずけずけ靴も脱がず上がったけどバチ当たるんじゃあ……?」

 

「不法侵入でまずかったら後で謝りましょう。それより──」

 

 その辺のタカマルの胆力は所構わずハルカと致しているが故のものか。それとも生来のものか。

 先程まで大人顔負けのスピードで走っていた女の子の足がだだっ広い部屋のど真ん中で真太郎たちから背を向けたまま立ち止まっていた。

 

「本当に何があったんだい? 血相を変えて……」

 

 タカマルが前に出て女の子の背に近づく。

 室内には危機的状況に陥っている誰かもモノも見当たらない。

 それなのに女の子はこんな所で止まっている。

 閉所、そして──。

 

 今思えば疑うべきだったのだ。

 

 それが、彼らの──

 

 

 

 

 

 

 

 ひゅんっ。

 

 

 一筋の白銀が閃いた。

 

「なっ……に……」

 

 タカマルは頬を掠め取るその白銀を目で追っていた。後方でそれを目の当たりにしていま真太郎が咄嗟に叫ぶ。

 

「おいっ!」

 

 その白銀の正体はナイフだった。

 一撃を外したことを悟った女の子は咄嗟に次の一撃を振るう。寸前の所をバックステップで避け目の前で狂ったようにナイフを振るうその様相は山姥が修羅であった。

 

「キェェェェェェアァァァァァァァッ!!」

 

 喉をあっという間に壊しかねないような甲高い奇声を上げ逆手持ちにしたナイフを持ち飛びかかる。

 流石に道場で普段から鍛えてきただけのことはある。タカマルの対処は非常に的確で女の子の腕を掴みそのナイフを振るう動きを封じた。

 

「なんなんだ……なんで急にこんなことを!」

 

 ナイフは周囲に立てられた蝋燭の光に充てられ、鈍い光を放っている。

 彼女は──本気だ。

 

「くっ、ごめん!」

 

 取っ組みかかる女の子からその身を謝りながら突き飛ばすように引き剥がしたタカマル。

 その腕を真太郎は掴み出口に向かって投げるようにして引っ張り出した。

 

「うおっ!?」

 

 前のめるようによろけながら開け放たれたままの戸に向かっていくそれを見て狙い通りの立ち位置になったことに真太郎は笑う。

 これでも警護担当だ。ここで仕事をしなくてはこの上弦衆に居る意味がない。

 

「何を目論んでんのか知らないが、次の相手は俺だ! だから戦部君は早く逃げて!」

 

 入れ替わるように前に出た真太郎は女の子のナイフを止めながらタカマルに逃げるように促す。

 

「しかし!」

 

「もともと頭領の護衛っていうお仕事だ! まぁこれ以上給料泥棒はまずいんで!」

 

 当然戦部タカマルの生来の性格が許しはしない。とはいえキングとポーン、王と歩兵どっちを捨てるか選択を強いられたらポーンと歩兵という後者が選ばれるのは当たり前の話だ。

 

「あと応援呼んで貰っていいですかねぇ! なんか……ヤバい気がする!」

 

「分かりました……仁藤さん、気をつけて!」

 

「さーいーとーお!!」

 

 と、多少強がってはみたものの女の子の筋力は思いの外強かった。

 まさか大の大人の腕力と互角な力の入りようだ。今真太郎は女の子の腕を掴んで動きを封じているが一瞬でも力を抜けばたちまちミンチ確定だ。

 

「……くっ、閉じ込められた!」

 

 が、背後からタカマルの苦虫を噛み潰したような声がしたことで真太郎は目を見開き、その出口となるはずの戸に視線を移す。すると固く閉じられたそれはタカマルの腕力を尽く拒み続け1ミリたりとて微動だにしておらず、その現状が全てを物語っていた。

 

「ノロイ党か……」

 

 これら全てが真太郎とタカマルを誘い出すための罠だった。そんな事小学生でもわかる事だ。

 けれどもそれに、女の子の追い詰められた顔にホイホイと釣られてしまった。

 

 ──なんて間抜けなんだ! 俺は! 

 

 そう、間抜けだ。

 疑似餌に騙された魚そのものな現状に真太郎は派手に舌打ちした。

 

 

 

 

「人を操るなんて人形繰りよりお手軽ね、ジョー」

 

 何処からともなく、少女の声がした。

 

「えぇ、そうですともルリー。ノロイ様のため彼らを連れ帰りましょう」

 

 次は青年の声だ。

 

「そのためには半殺しにしてもかまわないわ……死にさえしなければそれでいいもの」

 

 少女の声。

 まるで従者と令嬢のようなやり取りに気を取られていると眼前に拘束から離れた女の子が放つナイフの切先が真太郎の腹目掛けて迫る。

 最低限の動きで避けた真太郎は構え直すと、女の子のすぐ後ろに──異形が現れた。

 

 一言で表すならばピエロだ。

 まるで骨だけのような腕やその身を紫色の執事服で包み、顔は白い仮面で覆われている為その素顔はない。

 特に目を引くのはゴシックロリータ調の衣服を着た肘と膝の球体関節剥き出しの首無し人形がピエロの前でカラカラと動いていた。

 そのゴシックロリータ調の服はひどく緩いのか、胸元はおろか先端が見えてしまっている。

 

 で、首無し人形の首から上は一体どこにあるのか。それは──ピエロの胸に縫い付けられる形でそこにいた。

 

 あまりにも前衛的なフォルムをした正真正銘の化け物に真太郎もタカマルも言葉を失った。

 

「あら、驚いているようね。ジョー、よろしく」

 

 胸元でしゃべる人形の生首に促されピエロは名乗りを始めた。

 

「はい、ルリー。我々はノロイ党が1人妖門操異ルリー・ジョー、お見知り置きを……」

 

 ノロイ党らしからぬ紳士的な自己紹介に気を取られがちだが、それよりも人形と思しき奴の方が、露骨に操り手であろう者に指示を出しているカオスな主従に、真太郎の頭がバグを起こしそうだった。

 慌ててタカマルがポケットに収めた携帯電話を取り出し、ハルカの番号を叩くが反応はない。

 ノロイ党のことだ、結界でも貼って通信妨害でもやっているのだろう。

 

「まさかこうにも簡単に引っかかってくれるとはね。お馬鹿さん」

 

 人形側、つまりルリーが嘲笑う。

 腹は立つが言い返す言葉もない。

 事実女の子を追わなければこうして窮地に陥ることはなかった。

 こうしてタカマルを巻き込むことも。

 

「既にこの丸子寺は我々の結界で覆われている。抜け出すことも横槍を入れることも不可能です」

 

 ピエロ側……ジョーが淡々と述べるように今この現状を一言で言い表すなら袋のねずみだ。突破口はどこにある。必死に目を動かそうにも女の子のナイフがそれを邪魔してくる。

 

「そしてこの娘は私たちの手足そして、餌となって貴方を誘い出し追い詰めていく。限界以上の力を持ってね。貴方に勝てるかしら!」

 

「……チッ!」

 

 まずはこの女の子を無力化するしかない。次に放ってきた攻撃は真太郎の肩を狙った突きだ。

 咄嗟にそれを避け、手の甲目掛けて掌底を叩き込んだ。

 

「ギャッ!?」

 

 威力は大したことはない。但し武器を落とすには充分すぎる衝撃が女の子の手を襲う。

 カランカランと音を立てて落ちたそれを部屋の隅っこ目掛けて蹴り飛ばし、そのまま首筋目掛けて手刀を思いっきり叩き込んだ。

 流石に耐えきれなかったのだろう、糸の切れた人形のように頽れそのまま倒れ込み気絶した。

 

「ふぅん。案外やるじゃない、深紫の忍びさん」

 

 一連の動きを小馬鹿にしたような口調で真太郎を褒め称える。既にシノビの正体がバレているようだ。

 

「……舐めんなよガラクタめ。戦部くん、この娘を頼む」

 

 嫌味たっぷりに真太郎は吐き捨てながら構え直す。その傍らでタカマルは女の子を起こし肩を貸すような状態でルリー・ジョーから離れていく。

 そんな絶望的な状況で抵抗してくる2人がよほど滑稽に見えたに違いない。

 ルリーの哄笑が部屋中こだました。

 

「クククッ! 生身でどうしようというのかしら!? 化身すらせずにまさか私たちを殴り殺せるとでも?」

 

 これまでの行動で看破していたらしい、そのルリーの物言いに真太郎は息を呑んだ。

 シノビに変身できれば殴り倒すことも出来ただろう。だが生憎人間の中では多少強くても所詮ただの人間。

 ただの人間の拳では怪忍を砕くことは適わない。

 

 脂汗が滲む。

 腹の奥が震え、下手すれば一瞬でバラバラにされるだろう現実に怯えていた。

 とはいえここで逃げたらタカマルがやられる。タカマルがやられたらこの世界が終わる。

 本来この世界はタカマルと閃忍が守るべき世界なのだから。

 

 自らを鼓舞するかのように真太郎は無理くり組み立てた言の葉を紡ぐ。

 

「……何とでもなるさ」

 

 なるわけあるか。

 痩せ我慢もいいところの返しにくつくつと嗤うルリー。真太郎は自らの足場を確かなものとするように摺り足で僅かにその身を動かす。が。

 明らかに不利な状況に追い討ちをかけるように足が思うように動かなくなった。

 

「なにっ!?」

 

 足回りの明らかな異変に咄嗟に顔を下に向けるとひんやりとした空気が頬を撫ぜる。

 青く透き通るような塊が真太郎の足を包み、木の根のように床へと広がっていた。

 

 ──氷の術!? 

 

 こんな芸当をする者は直近で思い浮かぶ奴はただ1人。

 即座に連想ゲームで出てきたのは言わずもがな──

 

「時間をかけ過ぎだルリー・ジョー。だが生憎瓢箪を奴は持っていないらしい。……無駄足を踏んだな」

 

 その時、ルリー・ジョーの背後から黒い渦が浮かび上がりそこからぬるりと女が現れる。

 真太郎の想像通りだった。黒髪を揺らしながら逆手持ちの刀を持つ漆黒のポニーテールの女──スバルだ。泣きっ面に蜂、ならぬ泣きっ面にスバルだ。

 

 一言で言えば最悪だった。スバルの力は前回の戦いで思い知らされている。パワーもスピードも技量もあちらの方が圧倒的に上であった。

 倒れた女の子を壁にもたれさせるように端へ置き、タカマルが駆け寄り床に接着されたその足の氷を一心不乱に蹴り壊し始めた。

 

「駄目だ! こっちに来るんじゃあない!」

 

 自分からスバルに近づく間抜けがいるか。真太郎は慌てて彼を振り払おうと腕を懸命に動かすがタカマルはその手を振り払い意地で氷を蹴り続ける。

 

「あんたも逃げるんだ! このままだと……!」

 

「よせ! このまま俺に構ってたら君までやられる!」

 

「そうはさせない……!」

 

 梃子でも動かず削れる兆しのない氷を蹴るタカマルに痺れを切らし血を吐くようにまくしたてる。

 

「分かっているだろ! 頭領と女の子に対して、その辺にいる代わりの利くトーシロ、天秤にかけてみろよ! 優先するべき命は……!」

 

 例え一人あきらめたとしても誰もタカマルを責めやしない。

 主人公だとしてもそんな都合のいい神様なんかじゃないのは知っているし求めてなどいない。一番帰りを望まれているのはタカマルの方だ。

 

「……ざけるな」

 

「え?」

 

 かすかに聞こえてきたタカマルの声に、真太郎は素っ頓狂な疑問符を浮かべる。そして――タカマルははっきりと、真太郎に叩きつけるように口を開いた。

 

「ふざけるな! 何が優先だ! 優先していい命なんてあるもんか! 俺のための犠牲なんて認めないぞ……俺は……認めない!」

 

「……ッ!」

 

 あまりにも真っ直ぐな目だった。

 真太郎と出会う以前、ノロイ党たちを相手に生身で立ちふさがったことがあったのだという。後先考えず誰かに手を差し伸べる行為は美徳とは限らない――頭領ならば猶更だ。

 

「バッキャロウ!」

 

 ここまで怒鳴ったのは人生でもきっと初めてだ。

 その真太郎の怒声は一瞬ながらもタカマルをたじろがせた。

 

「俺は許さないからな……! そうやって無暗に手を伸ばした結果全部失うなんてことは! ボンボンとはいえ代わりの利くモブ野郎のためにあそこにいる女の子をほっぽって攫われてみろ! 鷹守さんや四方堂さん、スズモリ先輩、黒鉄さんを残して居なくなってみろ! 俺は死んでも四肢を引きちぎられ腕だけになっても承知しないからな……!」

 

 いつもなら唾が飛ぶことを考慮して抑えたしゃべり方をしていただろう。けれどもそんなことを気にかけてやれるほど今の真太郎には余裕もなければ、遠慮もなかった。

 だが──するとタカマルが真太郎の胸倉を掴んだ。そして今にも頭突きがさく裂しそうな距離まで詰めて真太郎を睨みつける。

 

「じゃあ、俺も許さない。あんたが──友達が諦めたような自己犠牲をして勝手にやられるなんてこと、俺は許さない! 何がモブだ……利く代わりなんてあるものかッ!」

 

 最早年齢も立場もなかった。頭領なぞ知るか、大人子供なぞ知るか。ただただお互いを救おうと吠え続けている。

 あとは男二人の意地の張り合いだ。

 

「あぁん!?」

 

「おぉん!?」

 

 真太郎が逆切れスレスレのガンを飛ばすと、タカマルも真似して同じようにガンを飛ばす。互いに不良ムーヴが慣れていないのか必死に背伸びをしている不格好さだけが目立つシュールな喧嘩となり果てていた。

 

「続きは無限城で続けるんだな」

 

 余りにも間抜けかつ呑気にみえたのだろう、小馬鹿にしながらスバルがじりじりと迫る。それに気づいて我に返った真太郎とタカマルは同時にスバルの方を見て「やべっ」と溢した。

 スバルの術で編み出された氷は特別製だ。たかだか男1人の蹴りで壊せるほどヤワな作りではない。このまま2人とも連れ去られてしまうのが一番最悪な事態だ。

 真太郎がタカマルを突き飛ばそうとしたその時だった。

 

「む?」

 

 突如、スバルが上を見た。そこには何もない、木造りの天井だけだ。釣られてルリー・ジョーも見上げているが特に何もなくジョーが首を傾げている。だが、その答えはまもなくして形となって現れた。

 

 ごうっ、と短い轟音から木片が飛び散る音が木霊する。

 何かが空から天井をぶち抜いてルリー・ジョーとスバル。真太郎とタカマルの二組の間に落雷したのだ。立ち込める煙が風に流され濁流のように押し寄せる。

 

「なっ……なんだあっ!? 上から……何がっ!」

 

 タカマルの叫びはこの場にいた全ての者が思ったことだった。ルリー・ジョーからすれば結界をぶち抜いて何かがやってきたことに対する驚愕が。タカマルと真太郎からすれば何が起こったのかさっぱりわからないことに対するひどい混乱込み込みの「なんだあっ!?」であった。

 その中で必死に細目で爆心地にいる何かの正体を探ろうとする。

 見え始めた黒い影は人型の影であった。ぱっと見だけならただの人間が落ちてきたと思うことだろう。だがしかし、よく見ればその影の頭部からは2本の角がVの字に伸びている。

 

 何者だ。慌ててルリー・ジョーもスバルも、タカマルも身構える。

 敵か味方か。判然としない存在が今この瞬間現れたことにより真太郎もひどく混乱した。

 それが誰なのかは何となく判別は付いたが、煙が晴れ存在が明確になるほど逆に真太郎を混乱させる。

 

 複眼のようなものは丸く赤く輝き、首元からはスカーフのような、もしくはマフラーのようなものがたなびいている。

 不思議だった。閉所にも関わらず風が吹いているのだ。衝撃波が起こした風などではなく、確かに――風が流れている。

 それは最初こそタカマルたちの方を向いていたが、タカマルたちには用はないのかくるりと90度。横を向く。

 風が完全に煙を掻き消すように吹き飛ばし切ったその時、タカマルはその姿に口を開いた。

 

「緑の……戦士!?」

 

 同時だった。ジョーも同じくその姿に声を上げる。

 

「黒の、戦士?」

 

 しかしジョーとタカマルのその食い違う反応にお互い目を丸くさせ見合わせる。

 

「黒? どこに黒の部分があるんだ?」

 

 事実、タカマルから見れば緑色の戦士であった。だがしかし、向かいにいるジョーから見ると黒に見える。おかしな話だ。

 そんなことを言われたら真っ先に相手の目を疑う。

 

 

 だが斉藤真太郎は知っている。

 あれは──そう

 

「お前の目は腐っているらしい! どこを見て緑だと思った! 黒だろうこのヌケサクが!」

 

 ここぞとばかりにルリーが罵倒をし、タカマルは「ちょっと待て誰がヌケサクだ。どう見ても緑だろ!? いい加減にしろよ!」と半ギレ気味に返す。

 この反応に何処か懐かしさを感じたのは、()()()()から十年以上経っているからだろうか。

 

 そう、アレは──そういうものなのだ。

 

「……どっちもだ」

 

 現れたそれは……2人の言葉を肯定してからルリー・ジョーの方へと向いた瞬間、二人の指摘はお互い正しかったことを思い知らされた。先程までルリー・ジョーの方を向いていた左側は黒く、タカマルたちが見ていた右側は緑色。中心に銀色のラインが走っており、左右2色の珍妙奇怪な存在がそこにいた。

 完全に呆気に取られていたタカマルは足も手も止めて「嘘ぉん……」と呟いている。

 

 確かに初見はびっくりした。そんなあしゅら男爵のような仮面ライダーアリかよと。だが現実存在するのだ。そういう奴が。

 

「あなた、怪忍じゃないわね? あなたは何者?」

 

 ルリーの問いにその左右2色の存在が応える。

 

「『仮面ライダー……W(ダブル)」』

 

 一人がしゃべっているはずなのにも関わらず違う男二人の声がする。その異様な光景を真太郎だけは知っている。

 あれは二人で一人の仮面ライダーだ。

 Wはその左手首を、時計でも直すかのようなしぐさでスナップしてからその手でルリー・ジョー目掛けて指さした。

 そして投げかけるのだ。街を泣かせる悪党に、彼()が永遠に投げかけ続けるあの言葉を──

 

「『さぁ、お前の罪を数えろ!」』

 

 

 そのしぐさ、そして吹きすさぶ風がよく似合う、その戦鬼と見まがうようなそのシルエット、闇を追い払い明日の夜明けを告げる鐘のような二つの声。

 間違いなく、正真正銘テレビで見た仮面ライダーWそのものであった。

 

 それはこの時代、世界に決して存在してはいけない存在ながらも、真太郎の心は踊っていた。




 次回『オレたちのスタート2008/変身』
 これで(第一部は)終わりだ(すみません分割します……! 9/29)

 エロゲに詳しいはずのタカマルに「Dark Blueの双子かよ……」と吐かせようとしなかったのは、アレの発売日は2009年の11月と仮面ライダーWが始まって間もない頃で、作中の時代考証的に明らかにおかしなことになるため。
 気になってもグロ耐性ない人と、18歳未満は絶対に調べないように。
 


 tips
:妖門操異ルリー・ジョー
 少女型の人形の主であるルリーと操り師である道化師型の従者・ジョーのコンビの怪忍。『糸』で対象を操る能力を持つ。
 おそらく名前の由来は人形浄瑠璃と、ジョーカー。
 原作におけるハルカの敗北シーンは操られてからのおねショタだったが、2回目はショタが友達を呼んでしまったため一部のおねショタ愛好家は血の涙を流したとか。



:仮面ライダーW(ダブル)
 2009年9月から2010年8月にかけて放送された特撮番組であり、平成ライダー11作品目で主人公が変身するヒーローの名称。

 ハードボイルドを標榜する半熟野郎(ハーフボイルド)・左翔太郎と脳内に『地球の記憶』を有する謎の魔少年フィリップ。この二人の私立探偵が時に戦士・Wへと変身しエコの街『風都』に蔓延る怪人・ドーパントが起こす怪事件に挑む。
 放送終了後もスピンオフVシネマが販売されたり、作中登場人物が客演したり、正当続編漫画が連載されていたり、アニメ化したり舞台化したりと息の長い作品でもある。

 キャッチコピーは「俺たちは/僕たちは、二人で一人の仮面ライダーさ」



・備考
 ルリー・ジョー相手に投入するライダーの候補としてはWの他に同じ二つ以上の人格を持つ電王(良太郎&モモタロス)、キバ(渡&キバット、時々音也)がいた。
 電王には天井から床に頭から落ちてスケキヨ状態にさせてタカマルが引っこ抜いたり、「なんだなんだァ、こいつ。顔がふたつもありやがる……あー気色悪ッ」と自分たちのことを棚に上げてルリー・ジョー相手に言ったり、拾った角材座布団拾い上げてゲシゲシと滅多打ちにするわと滅茶苦茶な喧嘩をさせ、いつもの電王ノリに巻き込んだりと正直あのままお出ししたかったがシリアスになったタイミングがアレなので没。でもいずれは……
 キバもそこそこルリー・ジョー似ている為、Wと張り合ったものの、せっかくの2008年産という美味しいキャラをここで消費するのもということで没。
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