【ライダー】負けたら陵辱される変身ヒロインものエロゲーの世界の竿役モブに憑依した挙句、忍者の仮面ライダーになっていた【助けて!】   作:ヌオー来訪者

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 サブタイトルの糸ノ意図は某スキマの某曲が元ネタ

 少し前に出たはじまりの歌然りぶっちゃけ趣味以上の何者でもないとかなんとか


05 糸ノ意図・弐

 クチオなる人物の話とナリカの様子が変だという話はほぼ同時期によるものだった。

 最近ナリカの帰りが遅い、そう屋敷でタカマルに言われた時は真太郎はてっきり自分が稽古に付き合わせてしまったせいだ、と己を責めた。

 

「いや、ナリカと須藤さんが稽古をしていたタイミングだけじゃないんだ」

 

 だが問題はそこではなかった。

 

「斉藤です。じゃあ、また別の?」

 

「別かもしれない。それにクチオって人が誰かを操っているって話と無関係ではないんじゃないかって。ここ最近、ハルカさんに付きっ切りだったから気づくのが遅かった……!」

 

 とはいえ、ハルカ本人のケアが出来るのはタカマルしかいないのも事実だ。

 あまり彼を責めるのも、という話だ。それにこれを言い出したらそれまで彼女の異変に気付けなかった真太郎も同罪だ。

 

「……あんまり考えたくないんだが。ルリー・ジョーらしき存在がどこかで活動しているような噂を聞けば……な」

 

 ナリカの言動は明らかにタカマルに対して意識したような言動が多いように思える。自分が戦えないでいる事を気に病んでいるのは彼の力になれないからこそだ。

 冗談じゃない。

 

「ん?」

 

 その時、屋敷の通路に人影があった。――ナリカだ。

 安全のため彼女を拘束すべきか、否か。そう考えた真太郎とタカマルはお互いの顔を見合わせて頷き合う。先に口を開いたのは真太郎だった。

 

「四方堂さん、こんな時間にどこへ行くんだい?」

 

「私? お出かけするの」

 

 その瞳には虚ろ。まるで夢を見ながら歩いているように見えた。

 手にはボストンバッグ。先日と同じものだ。チャックを閉め損ねた隙間から黒い布地が飛び出ていた。

 

「どこへ?」

 

「…………」

 

 返事は無い。

 無言で屋敷を出ていく彼女の後ろ姿。拘束は――しない。泳がせる。

 クチオとルリー・ジョーを何とかしなければ根本的な解決になりはしない。単に本当にその辺で出かけているだけならばそれで取り越し苦労だが彼女のことで気を揉む心配はなくなる。

 

「ちょっと行ってくる」

 

「分かった。俺も行く」

 

 靴を履いて玄関を出ようとした真太郎にタカマルも後追いで玄関に入ろうとした所を真太郎は手で制した。それにタカマルが「なんでさ」と言わんばかりの表情を露わにする。

 そりゃそうだ。友達が操られているかもしれないなんて話で冷静でいられなくなるのは。けれどもタカマルは頭領だ。

 ただの一般人ではない。

 

「それは駄目。罠かもしれない。気持ちは死ぬほど分かるけど――な? こういうのは頑丈なヤツの仕事だ」

 

 躊躇すればするほど、ナリカは遠くに行ってしまう。タカマルに選択肢などないも同然だった。

 

「……分かった。気を付けて!」

 

 タカマルの声を背に屋敷を飛び出して夜道一人歩くナリカを真太郎は尾行を始める。

 気配を消すのはこれまで散々やってきた鍛錬で慣れている。電柱を、車を、塀を、あらゆるものを盾に身を隠す。

 だが存外、ナリカも気づいていないのか一つも振り向きもしなかった。

 

――俺、もしかして尾行の天才か?

 

 などという自惚れを一瞬したのがよくなかったのか。それともそれ以前の問題だったか。

 背中をトントンと叩かれた。

 

「ぉい」

 

 振り向くとまるで針――言い方を変えれば骨ばった男がそこにいた。くたくたのシャツをジーンズにinしているのでなおのこと細く見える。

 しまった。そう自らの迂闊さを呪ったも後の祭り。

 

「ボクの――ボクの彼女に何の用だ」

 

「え?」

 

 少し怯えているのか。真太郎をなんとか排除しようと敵意に満ちた目と震えて大きさ不安定な声が男の目から発せられている。

 

「お前……ボクのナリカちゃんに付きまとうストーカーだな!? 警察を呼ぶぞ……呼ぶからな!」

 

 彼がクチオかと何となく察した所だが、ここで懐かしのガラケーを取り出して110番通報を始める。この辺は最悪上弦衆がなんとかするにしてもここで大騒ぎになっては尾行も無駄になってしまう。

 こうなれば成すべきことは一つ。

 

「ごめんなさいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 

 土下座をした。

 発する雰囲気も弱弱しく猫背で目を必死に泳がせまくる挙動不審の駄目な存在を全力で演じてみせる。

 

「ぼっ僕、ナリカちゃんのファンで……まさか彼氏がいたなんてえええええええええ」

 

 その演技が通用したのか、クチオらしき人物は真太郎の事を格下のカスだという認識を始め途端に怯えが消え台所のゴキブリでも見るような目で真太郎を見下ろした。

 

「ふーん。じゃあボクがカレシになっている事は知らなかった、という訳か」

 

「しししししらなかったんです! もうしません! 通報だけは! 通報だけはゆるしてえええええええ!」

 

 この手の演技は体力を使う。

 テンパった時人間は無駄に体力を消耗するとはいうが今この瞬間真太郎は冷静なまま味わっていた。そんな土下座した真太郎の脚をスニーカーで踏みつける。

 

――いてっ

 

「ナリカちゃんとボク――ナカソネ・クチオは運命の糸で結ばれているんだ。お前みたいなストーカーしか出来ないキモオタはアウトオブ眼中だ。そのままキモいままくたばってろよ」

 

――酷くない!? キモオタなのは否定できないけどそこまで言われたらメンタルやるぞ!

 

 今この瞬間夢の中の自分よりダメージ受けている自信がある。

 身から出た錆とはいえなんだこれは。だがこれで全てがつながった。それに真太郎は安堵した。この男を追えば――何とかなるはずだ。

 

「二度と付きまといませんから! なんでもしますから!」

 

 そして安堵のあまりうっかり口走った台詞に慌てて口を噤む。

 なんでもすると言って碌な事になった試しがないというのになぜこんなタイミングで口走ったのか。

 

――このおバカ!

 

 今日の散々っぷりはあまりにも目に余る。

 調子が悪すぎる。

 

「じゃ……じゃあ慰謝料払って貰おっか」

 

 慰謝料(いしゃりょう)。

 それは精神的苦痛、精神的損害を弁償、補償するための弁償金、賠償金の事を指す。

 随分と大きく出たものである。

 

「い、いくらですか……」

 

 恐る恐る聞いてみると、クチオらしき人物は両手でパーを作った。

 

「じゅ、十円?」

 

「十万!」

 

 ポカーン、と真太郎は唖然とした。

 特に理由なくむき身で10万持っているようなのはそうそういない。当たり前だ、なくしてしまった時のリスクが高すぎるからだ。

 強いて言うならば銀行引き出しが面倒な人が横着をして一気に引き出してやりくりする者もいるが話が逸れるので一旦この話はここまでだ。

 

「ありません……これでかんべんしてください」

 

 財布をわざとらしく手を震わせながら取り出し1000円2枚と小銭18円を出す。なお、あるのはこれだけだ。引き出ししなかったのが幸運だった。

 

「はぁ? ガキの小遣いかよ。もしかして中卒のゆとりか」

 

 ピキピキと、青筋が立ちそうになるのを必死に抑える。こっちが下手に出たらここまで態度変わるのかコイツ。

 化石のような暴言だが2008年当時なら現役の罵倒だ。その上真太郎の持っていた財布をひったくりついでの如く免許証をケータイで写真を撮った。

 

「お前の住所これで特定したからな。お前がもしまたボクらの前に出たら警察にも通報するし、ネットにも晒すからな!」

 

「ひーごめんなさいいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ」

 

 と、言った具合に見事なまでにしてやられた訳だが。

 電話番号も控えられた上に土下座している写真まで撮られた。上弦衆でなければ確実に人生が詰んでいたと言えよう。

 

「後払いにしてやるよ。でも遅くなればなるほどもっと請求してやる犯罪者め!」

 

ありがとうございます!(払う訳ねえだろ) ありがとうございます!(払う訳ねえだろ) ありがとうございます!(払う訳ねえだろ)

 

――さて。

 

 ご満悦でその場を去っていくクチオの背中を見ながら真太郎は背後からぶん殴ってやろうかと無意識に作られた拳をもう片方の手で無理やり降ろしその姿を追う。

 ナリカは見失ったが、クチオはまだ見失っていない。

 

 彼の向かった先――それは。

 

 

 

 ロッキーアイランド。

 市内にある唯一の遊園地であり、規模の大きさの海に面した地理的事情もあってデートスポットとしてもかなり『アリ』と言われる場所だ。

 わざわざそんな所に行くとなれば友達と遊ぶかそれとも……といった具合だが、その答えは入り口前で待ち構えているナリカが全てを物語っていた。

 

 いつの間にかいつもの制服からメイド服に着替えている。

 あのボストンバッグに入っていたのはメイド服らしい。

 

――意外と似合うな……

 

 べし。普段溌剌とした彼女にメイド服(厳密にはメイド喫茶でよく見るタイプ)という意外性は少しばかり新たな発見めいたものがあったが自分の顔をビンタして正気に戻す。

 だがしかしスカートが短すぎる。露出が多い。肩出しもそうだ。メイド服とはもっとこう――露出が全然無い方がいいのだ。――というのはどうでもいい。

 真太郎は再度自らをビンタして正気に戻る。物陰から二人の会話に聞き耳を立てた。

 

「クチオ様! 待っていたわ!」

「ごめん、待った?」

「ううん、今着いたところ! さぁ行きましょ!」

 

――おうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおうおう

 

 噂通りである。その小さな体でクチオの腕をぎゅーっとしつつ2人はランド内に入っていく。

 見た真太郎はそのままチケットを買おうと券売機の前に立った矢先、自らの財布が空になっていることを思い出した。

 だがクチオに盗まれなくてもそもそも入場するのに金が足りない。2018円で足りるようなところではない。

 第二の手段として出てくるだろうクレジットカードという選択肢も無かった。そんなもの仕事柄で起きる騒ぎのどさくさになくすことだってあり得るのに本当になくした場合の後処理が面倒過ぎるのだ。

 

 

「やべ……ATM行かねえと」

「内藤殿、これを」

 

 ATMに行かねばと思い立った所で隣から1万円札が差し出される。

 隣にはいつの間にか頭巾に黒装束の男――上弦衆スタッフがそこにいた。執事のような仕事の速さだ。

 

――うーん、カッコイイ

 

「すんません後で返しますんで。あと……自分、斉藤であります」

「――ご武運を!」

 

 無事入場出来たものの、締まらない話である。

 

 

 

「ねーねーママー、変な忍者がいるー!」

「しっ、見ちゃいけません!」

 

 なお、その辺の子供にそのスタッフの珍妙奇怪な衣装に指をさされていたのは、火急の用故に指摘しないでおく。

 

◆◆◆◆◆◆

 

 仏頂面の真太郎のストーキングはしばらく続いた。仏頂面でアトラクションに乗りながらクチオとナリカを追うその姿はまるで輩である。

 流石にもう同じヘマはしない。クチオも既に真太郎という男の生殺与奪を握ってしまっていることで満足してしまったのか一つも警戒してはいない。

 

 まるで永遠のように感じられる尾行もナイトパレードの時間に差し掛かったところで終わりを告げる事となる。

 真太郎は人影に紛れているとベンチに二人は腰かけクチオは彼女の腰に手を回す。

 

「ねえ、ナリカちゃん見てごらん。ナイトパレードだよ。綺麗だねえ」

 

「えぇ、そうね。クチオ様」

 

「ずっと夢だったんだ。こうしてメイド服のナリカちゃんと夜の遊園地に来てこのパレードを見るのが……」

 

 小首を傾げて笑顔を作るナリカの表情の瞳の奥は虚無そのものだった。

 彼女はクチオを見てなどいない。星空を――無を見ている。だがその一方でクチオは感極まったのか目を潤わせて瘦せこけた顔を近づける。

 

「ねえ、ナリカちゃん。キスしてもいいかな?」

 

「えぇ。当然よ。私が心から愛する宇宙一素敵なクチオ様……」

 

 ルリー・ジョーの姿はこれまでの尾行で影も形も無かった。

 だがしかしこれ以上彼に好き勝手させれば取り返しのつかないことになる。もう、なっているのかもしれないが。

 

『私は出来ないから――タカマルの力にはなれないから……』

 

 ナリカの言葉が真太郎の脳裏をリフレインする。その時のナリカの悲痛な顔は忘れられない。

 彼女は切実に彼の事を想っていた。それを踏みにじるというのであれば。

 近づく二人の唇。それに真太郎は人影から抜け出るように二人の前に出た。

 

「よう。クチオちゃん、楽しいか?」

 

「お、お前ッ!」

 

 流石に先ほど見た顔は忘れはしなかったらしい。仇敵の顔を見るや否やクチオは即座にナリカから離れて臨戦態勢を取る。今のクチオには真太郎を破滅させる手札が揃っている。そう本人は信じている。

 

「通報して晒してやるって言ったよな?」

 

「あぁ、言ったな。でもちょっと気になる事があってさ。俺の知っているこの女の子は違う奴を気にかけていた気がするんだよなー」

 

 先ほど見せたあの弱弱しい男が唐突に態度を変えてしまったことにクチオも違和感を覚えたらしい。ナリカを盾にするように回り込むと真太郎はギロリとクチオを睨みつける。

 その眼光に臆したか、クチオの声が震えあがる。

 

「ね、――ねえナリカちゃん、言ってやれよ。お前みたいなキモい奴愛してない、私が愛しているのはクチオ様だけってな」

「えぇ。お前みたいなキモいゆとり野郎なんて愛していないわ! 私が愛しているのはクチオ様だけよ!」

 

 まるで誰かの書いた台本でも読まされているような口調で高らかに言い放つ。完全に言語センスがクチオそのものだ。

 仕掛けを理解した所で真太郎は首を横に振った。

 

「俺じゃねえだろ。違うだろ。四方堂さん。居ただろ? 他に――力になりたい人が!」

 

「は……?」

 

 今のナリカがクチオの意志をそのまま代弁しているというのならば。

 クチオという男は何もナリカの事を知りはしない。それ故に彼女の本来の矢印を向けていた先が誰なのかを答えられるはずもなかった。

 真太郎の言葉を理解出来なかったクチオは鼻で笑う。

 

「言ってる言葉の意味が分かんねえよ! アレかお前! ビョーキなんだろ!」

 

 恐らく掲示板で知ったのだろう精神病名罵詈雑言がクチオの口から次々と吐き出され真太郎を打ち付ける。

――これ名誉棄損で訴えられねえかな……

 と考えながら彼のボキャブラリーが尽きた瞬間に次の手札を切った。

 

「で、糸はどこで手に入れたんだ?」

 

「い、糸? 何の話だよ」

 

 半笑いで誤魔化そうとしているが目が泳ぎに泳ぎまくっている。隠し通すだけの嘘は苦手らしい。まさか糸の存在まで掴んでいるとは思いもしなかったか。

 ナリカそっちのけで後ずさるクチオに真太郎はじわじわと距離を詰める。

 

「人を思うように操る糸。――ピエロみたいな怪人が持っていたよな?」

「ど……どこまで……知っているんだ」

「無論、ぜ ん ぶ」

「ひぃぃぃっ」

「なーんで四方堂さん操ったのか、教えて貰おうか。おん?」

 

 がしっ、とクチオの肩を掴む。

 彼の背後は既にフェンスと海が待っている。パレードの楽し気な音楽をBGMに真太郎はそのままフェンスにクチオの身体を押し付け、顔を近づけガンを飛ばす。

 

「はぁっ……はぁっ……」

 

 輩にガン詰めされ窮したクチオの吐息が真太郎の鼻腔を擽る。

 そしてしばらくお互いガンを飛ばし合っているとクチオの方が先に折れた。

 

「あの娘はボクに優しくしてくれたんだ……声をかけてくれたんだ!」

 

 ぴちゃぴちゃ、と唾が真太郎の顔面に飛散する。

 唾を浴びせられたことに文句の一つや二つも言いたくもなったが、一旦話が脱線しかけるので呑み込んで次のクチオの言葉を待つ。

 

「だから告白したんだ!」

 

「え……あの……この娘、中等……部だけど?」

 

 クチオ本人はどう見ても大人だ。それも真太郎よりも歳は上のように見える。大雑把に30代くらいか。

 その事実が真太郎を困惑させ、怯え半分の言葉が喉奥から漏れ出る。

 

「愛に年齢なんかない!」

「それを糸使って操った奴の言うセリフじゃないよねぇ!!」

 

 クチオの唾を飛ばすがなり声に対して真太郎の素っ頓狂な声のツッコミが夜空に響く。

 先ほどのクチオの言葉は正直ぐうの音も出ない正論だが言う人間によって正当性というものは二転三転するものだ。浅倉威が暴力はいけないと言うようなものだ。

 気づけば周囲に人の姿もなく閉園の蛍の光が聞こえてくる。

 

 その時、プツンと何かが切れる音がした。

 真太郎の怒り――ではない。真太郎の額の青筋――でもない。切れたのは糸のようなナニカだ。

 次に聞こえてきたのはナリカの声だった。

 

「あれ……ここは。って何このカッコ!? というかここドコ!?」

「どうも、おばんです」

 

 自分の置かれた状況が分からないのか、ナリカが自分の恰好に戸惑い遊園地の周囲を見渡す。そんな彼女に真太郎の気の抜けた挨拶とクチオの姿で何も分からずただただ困惑の色を浮かべる。

 

「私に告白してきたおじさん!? どういう事?」

 

「四方堂さん。ちょっと聞いていい?」

 

「え、えぇ……何?」

 

「告白、されたんだよね?」

 

「えぇ。数日前に」

 

「返事は?」

 

「断ったけど?」

 

 あっけらかんと答えてみせるナリカにクチオが「そんな!」と声を上げる。頬にぴちゃぴちゃと唾がまた飛び散る。

 もういいや、とその肩を離すとクチオは一目散に真太郎とナリカから距離を取った。

 

「最初、ものすごく落ち込んでいて車に轢かれそうだったから助けたんだけど。なんか……気に入られちゃったみたいで。告白してきたんだけど。断ったのまでは覚えてる。わかんないけどここ数日記憶が歯抜けみたいに抜け落ちてて、凄くモヤモヤしてて――アンタ、何をしたの!?」

 

 道場でモヤモヤすると言っていたのはそういう事か。

 クチオをフッたナリカは夢遊病のようにクチオの糸で操られていたという。そんな筋書きだ。ナリカが怯えたようにクチオを睨みつける。

 

「何って……ボクのいう事を聞いてくれたじゃないか! メイド服も着てくれて! 何回かデートをしていっぱいキスもしたけど、これからもっと親密になるんだ! 一緒にホテルで大きなお風呂に入って処じ――」

「もう黙れ。マジで頼むから黙れ」

 

 2、3発殴り飛ばしてやろうかと思えど一旦堪える。その代わり精一杯出した低い声で威嚇する。するとクチオは腰を抜かして真太郎を怯えた目で見る。それに真太郎はそのまま距離を詰めて腰を低くして視線を合わせる。

 

「とりあえず一旦ケータイ出せや。俺の番号と黒歴史の写真を削除する。後俺からぶん取った2018円を返せ。い ま す ぐ に だ !」

 

「は、は、はいいいぃぃぃ!」

 

 傍から見れば完全にチンピラに絡まれた哀れな男である。

 何も知らないナリカは自らの口を抑えながら自分のされたであろうことを想像して頽れた。クチオが言うにはまだ貞操は奪われていないようだが、未遂にしてもナリカ側からすればたまったものではない。

 夢の中のタカマルたちをどうこう言えやしない。必死にこみ上げる何かを抑え込む。

 

 無事にカツアゲされたものを取り戻しつつ財布に2018円を納める。

 その時だった。

 

 

 

 

 

「あら――糸が切れたのね」

 

 どこからともなく少女の声がした。

 それは寺で聞いたあの声そのもの。答え合わせの如く真太郎の拘束から解放されたクチオのすぐそばにずもも、と音を立てて井戸の底のような黒い染みが空間から湧き出る。そこから這い出るようにピエロのような異形と、ゴシックロリータの首無し人形(顔はピエロのような異形の腹に縫い付けられている)が姿を見せる。

 

 妖門操異ルリー・ジョー。先ほどのものはルリーの声だ。

 

「本当だ。切れてる……」

 

 クチオが咄嗟に自分の手を見る。見えない糸が彼の手から繋がっていたらしい。気づくや否や這うようにルリー・ジョーの脚に縋りつく。

 

「じゃあまた売ってくれよ! あのチンピラを操って黙らせてやるんだ! 10万だったよね!?」

 

 なるほど真太郎に恫喝した10万円の意味が理解できた。ナリカを操るために失った10万円を取り戻したかった。だから真太郎に10万円を請求した。

 その背景事情も相まって、真太郎は必死に深呼吸して自分を宥める。

 

「いいえ、2本目は100万円よ。2人の分併せて200万」

 

「にひゃくまんんんんんんんんんんッ!?」

 

 クチオの悲鳴が木霊した。

 値段のつり上げ。まるでヤクの売人の取るムーブのそれだ。200万などという大金、その辺の人間がそうホイホイ揃えられるような額ではない。

 

「10倍だなんて暴利だろう! インチキだ!」

 

「暴利でも決まっているの。耳をそろえてもって来なければ糸は売らないわ」

 

「だからって200万は無いだろう!?」

 

「でもここで揃えなきゃ、あのチンピラに指を詰められてコンクリ詰めにされて魚の餌よ」

 

「や、そんな事やんないけど」

 

 真太郎の抗議も虚しくクチオの表情が青ざめる。

 ルリー・ジョーの物言いだと完全に真太郎が指定暴力団の長と化している。クチオは慌てて手持ちの財布の中を漁るように見てから立ち上がった。

 

「ま、待ってろよ! 金はすぐに持ってくるからな! だからその代わり――()()()()()()()()()()()()()()!() ()()()()()()()()()()()!()

 

「……ぁぇー」

 

 目も口もあんぐりと空いていた。もうふさがらない。

 一般人がノロイに殺しの依頼をさせて逃げていくその様に全身が脱力し現場から離れていく彼の後ろ姿をただただ見送ることしか出来なかった。

 

――わぁ……まーじか……こいつ……まーじかぁ……

 

「うふふ……殺してくれだって、ジョー」

 

「えぇ、ルリー。彼の依頼を受ける形になるのは心外ですが、あの化身忍者の始末は優先事項ですから――ここで死んでいただきましょう」

 

 ルリー・ジョーが戦闘態勢に入る中、真太郎は「アイツ……!」と小さく溢してからギン、とありとあらゆるものを切り裂く戦士の目に切り替わる。

 この怪忍には前の寺での戦いと言い散々世話になった。

 

「ちょうど良い。今度こそここで正真正銘のガラクタにしてやる」

 

 ナリカの盾になる形で変身瓢箪を取り出し栓を抜く。いつものように腰にベルトを発生させ、手元に収められたメンキョカイデンプレートをベルトにセット。

 ルリー・ジョーの首無しゴスロリ部分――ルリーの方がその鋭い爪から衝撃波を出した瞬間、真太郎はベルトの手裏剣パーツを勢いよく回し、厳かにたった4文字の呪文を口にする。

 

「変身」

【誰じゃ? 俺じゃ? 忍者! シノービ、見参!】

 

 放たれた衝撃波は寸前で――シノビブレードで弾かれた。

 無人と化した遊園地に独り、深紫の仮面の忍びが黄金色のバイザーを光らせ倒すべき敵を見据える。

 そして小さく「逃げて」とナリカに告げてからルリー・ジョーに向かって走りだした。

 

「はぁッ……!」

 

「おいでなさい、小童め!」

 




 マキオくんの名前が変わったというか別人になった理由としてはオリジナル側よりアレだった面が大きいのです
 モブとはいえ流石に同一人物にさせるには忍びなさすぎると判断したので

 マキオくんもだいぶ所業的にはギルティ―ですが(´・ω・`)
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