【ライダー】負けたら陵辱される変身ヒロインものエロゲーの世界の竿役モブに憑依した挙句、忍者の仮面ライダーになっていた【助けて!】   作:ヌオー来訪者

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11 着飾ったもの

 

「いやぁ嬉しいなぁ、ここ最近誰も私の言う事を聞いてくれないどころか近寄りもしなくて」

 

 そりゃ当たり前だろう。と真太郎は内心突っ込んだ。

 そんな異臭漂わせている人間に誰が好き好んで近寄るものか。最初こそ警戒心マシマシだったが、ナリカが役者顔負けの演技で「皆心配するほどだから心配で心配でぇ……」と甘ったるい喋りで善意の訪問者であるとフクウラさんに信じ込ませることが出来た。

 事実銭湯の店主とは知り合いなので嘘は言ってはいない。

 

 家に上がる事を促されたものの、彼の開けたドアから漏れ出た臭いがそれを拒否した。

 とはいえ存外人間という生き物は環境に適応できるものらしく拒否反応を示していた鼻も肺も今となっては大人しかった。

 

「君も聞いているかもしれないが、会社が倒産した挙句家族に逃げられてね……」

 

 稼げなくなった父親を見限ったのか、それともそれを隠し通そうとしたりした不義理に失望したのか。

 どちらにしてもこの男は全てを失った。

 

「務めて真面目に働いてきたつもりだったし、親が入れなかった名門、城南大学に入り、その名前もあって大企業に入る事も出来たんだけどね。自慢じゃないが嫁も元々いいところのお嬢さんだったんだ」

 

 その言葉には嘘はない。深い失望と絶望が彼の中にはあった訳だ。

 これまで積み重ねた人生が丸々奪われたとしたら、それはどれほどの絶望だろうか。真太郎は自分の胸の中に問いかける。過去の意志は無かった事にしては次ですと人生に邁進しようなんて思えるのか。

 ナリカも思う事があったのか感想を口にすることもなければ、どこか遠い何かを見ていた。

 

「だが……全て消えたよ。あぁ、全て。愛しているという言葉も着飾った嘘だった。娘を頼むと言ってくれていた義父からは二度と顔を見せるな……そういわれたよ。あぁ、何もなくなった。生きる実感も消えたよ」

 

「……」

 

「けどね。ふと訪れた寺である人に出会った。その人は言っていた。人は本来何も持たない生き物であった。無為自然──本来自然のままで生きていく事が人のあるべき姿なんだ、と」

 

 ならば山にでも行って全裸でターザンでもしていろというのは少し言い過ぎかもしれないが、すべてを失った事を逆に肯定されたことはこの男にとって天啓もいいところだったのだろう。

 そんな真太郎の心境を読み取ったのかフクウラさんは続けた。

 

「最初は誰だって最初は形から入るものだと言ってくれた。だから私は生活の半分を捨て、風呂に入る事をやめた」

 

「……その結果がこの生活だ、と」

 

「銭湯の彼らには心配をかけたのは申し訳なく思っているよ。でも……人のあるべき姿ってあぁ言う風に取り繕ったようなものじゃない。彼らは自然じゃない」

 

 気づけば外の景色は暗くなっていた。

 アパートの住人が遠巻きにこちらを見ているのが見える。だがそれが些末な事のように思えた。喉が渇く、風で乾き掠れたような声で必死に真太郎は言葉をひり出す。

 

「何を……言って」

 

 銭湯の彼らは本当に心配していた。

 本当にどうでもいいのならば、ただ取り繕っただけのものならばあんな風に名前を出しちゃいないだろう。それをこの男は──

 

「私は思うんだ。人は誰も仮面を被り偽る。それは果たして幸福なのか。嘘で塗り固められた人生で偽りの幸福に浸って……」

 

「違う! それは──!」

 

 勢いだった。何が違うのか、はっきりとした答えは出ない。けれども真太郎の中にある何かが否定をする。

 だが反駁しようと前に出ようとした真太郎にナリカは手で制した。

 

「とても素晴らしい考えだと思うわ」

 

「なっ──」

 

 思いもしない援護射撃だった。それもフクウラさんの援護だ。

 一体どうしたんだこの少女は。何か痛みを堪えるように言葉を紡ぐ。

 

「私も元カレに裏切られたから……痛いほど分かる」

 

 居たのか元カレ。そこからどうして今に至ったのか気になる所だが今はそんなことはどうだっていい、重要なことではない。

 ナリカがフクウラさんの手を取る。

 

「どんな……人なんですか!?」

 

 その目を輝かせて迫る彼女に真太郎はただただ黙って見ているしか出来なかった。

 何せ割り込もうにもナリカから無言の圧力をひしひしと感じていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こつ、こつ、と靴がアスファルトを叩く音が聞こえる。

 日は完全に沈み、仕事を終えてすれ違うサラリーマンが露骨に嫌な顔をしながらこちらを見てくるがきっと気のせいではない。

 

「どうしてあんなことを……?」

 

 真太郎が切り出す。

 この質問は先ほどすれ違ったサラリーマンの態度への疑問ではない。ナリカが何故あんなことをフクウラさんにしたのか、だ。あの後ナリカは明日フクウラさんが感銘を受けたという僧侶のもとへ案内してもらうように約束までしてしまった。聞いたところによるとその僧侶にはたくさんの門下生がいるのだという。

 元カレとやらに裏切られたのは分かったがこのままでは異臭を放つ変質者の仲間入りでもするつもりなのか。流石にそれは真太郎も看過出来なかった。それを見過ごせばタカマルに顔向けが出来ない。

 

「これで元凶に遭えるかもしれないでしょ」

 

 ぺろっと小さく舌を出す。なるほど猫を被っていたのか。

 心変わりしてしまったのかと思っていたのもあって大きく息を吐いて脱力した。

 

「遭ってどうするんだ」

 

「ムイシゼンの連中が本当にあの銭湯を壊したって言うのなら文句の一つや二つは言うつもり。関係なかったら……有耶無耶にする」

 

「……分かった、付き合う」

 

 一人でやらせるのは危険だ。

 子供に宗教周りの騒ぎにあまり巻き込みたくないがナリカが止まるわけがない。それに彼女も上弦衆の一員なのは確かだ。あんな風に猫を被ることはナリカだからこそ出来ることだ。

 それでも出来るサポートをするのがせめてもの責任だ。

 

「そう言うと思ってた」

 

 完全に中学生に行動パターンを読まれている。その事実に真太郎は内心鼻白む。

 いや、既に手馴れた扱いをそのまま真太郎にフィードバックさせているだけのようにも思えた。

 

 

 

 

 ナリカも真太郎もフクウラさんから発する異臭がこびり付いているであろう事は明白だった。帰り道、バスに乗って帰ろうとは思えずこうして住宅街をとぼとぼ二人歩いている。

 すれ違う人が顔を渋くする程度には臭いが移っているようで、すれ違えばすれ違うほどアパートに帰ったら即シャワーを浴びなければという使命感に駆られる。

 当面臭いも落ちそうになさそうだと思えば気が重くなる。今着ている服もどうしたものだろう。思案に耽っていると着メロが鳴り響いた。

 

「ん? はい斉藤です」

 

 画面に出ている番号は上弦衆の司令部からだ。慌てて出るとアキラの声が耳朶を打った。

 

『工藤! ポイントL-4の市民公園にて怪忍出現の通報あり、すぐに現場に向かってくれ!』

 

 このまま帰ってすっきりしたいところ嫌なタイミングで出てくるものだ。怪忍の出現頻度が上がっているのはもしや街中を覆う封印が弱まっている証拠なのか。

 それに距離が近い。シノビの早駆ならばさしたる時間もかかるまい。

 

「斉藤です、了解!」

 

 察したナリカが真太郎を見上げる。その顔は先日のロッキーアイランドで操られた上弦衆と相対するときのものそのものだった。彼女もまた、戦士だということを思い知らされる。

 

「怪忍ね」

 

「行ってくる」

 

 指定された座標からは遠くはない。

 市民公園につながる道路に躍り出て真太郎は地面を勢いよく蹴った時にはもう、その姿は消えていた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

「ん~~~~~~~~~~~~~~~」

 

 ちょっと重いバッグをベンチに置いて伸びをする。

 女は今、充実していた。

 

 ドカッとバッグの隣に座り露出の多いパーティードレスから零れ出そうな乳房を揺らす。

 充実したパーティーに出て、いい男に出会い、催し物のビンゴには当選する。他の女を出し抜くことが出来たという自負はある。

 男との連絡先は手に入れたし、幸先が良い。

 

 だがしかし、女には気になる事が一つあった。

 今日のビンゴの景品だ。中身が分からない紙袋。その場で開けてはしたない奴だと思われるのも癪なので帰途に就く間中身を気にするような素振りは見せずに済ませてきた。だが本当は気になって仕方がない。

 

 だが会場から離れたこの公園なら多少中を見てもバチは当たるまい。バッグの中に仕舞った紙袋を軽く開けてみる。ここで微妙なものが出てきたりでもしたら、そんな不安が女にはあった。だが──

 

「……これって!」

 

 怪訝だった女の表情が途端に晴れやかになった。白く小さな箱、表にはCHANELと刻印されているそれはかねてより欲しかったシャネルの香水、No5だ。

 下手すれば2万も超えるような代物がただ同然で手に入ったという訳だ。

 

 箱の中は琥珀色に輝く小瓶。その重みが高級感と実感を持たせてくる。

 

「あたしって超ラッキー!」

 

 舞い上がる心のままにぷしゅっぷしゅっと自らに噴きかける

 値段相応の上品な香りが鼻腔をくすぐり、更なる満足感が胸の中を満たす。これを彼とのデートの時に噴いていけば完全にモノにできるに違いない。

 

「きゃーっ、どうしよう! きゃーっ」

 

 傍から見ればベンチで一人身もだえている変な人にしか見えないだろうが、女にとってはそれどころではなかった。気が済むまで身もだえる──

 

「うええええええええええええええ!! くさくさくさくさあっ!! んなんだぁこの悪臭はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 はずだった。

 

「え?」

 

 まるで人間のものとは到底思えないような声。強いて言うなら男なのは確かだろう声に恐る恐る首を真後ろに向ける。回り切らず片目だけが捉えたそれはその声の通り人間とは到底思えない巨躯、それを覆う黒光りする法衣のようなものと、胸と肩を覆う便器を思わせる白い鎧。

 辛うじて僧侶のように見える化け物は女の顔面を蒼白にさせるには充分過ぎる圧力だった。

 

「ぎゃあああああああああッ!? 誰アンタ!?」

 

 最早怪人だ。

 2mをゆうに上回る巨体はこれまで女が出会った人間の誰よりも大きなものだ。誰だコイツ、本当に人間か。

 

「誰? か……拙僧はノロイ党が一人、鬼門法士──誰が呼んだかふんばり入道っ!!」

 

 全く持って一体誰が呼んだのだろう。誰も呼んでないし出来れば帰って欲しいと女は切に願う。

 こんな化け物と極力離れてしまいたいというのにも関わらず体が言う事を聞かない。

 

「そ、その入道がこんな所で何をしているの……?」

 

 震える声で問いかける。こうして言葉を紡ぐことがやっとな今、主導権は向こうの怪人──ふんばり入道が握っていることは明白だった。

 

「自然の摂理に逆らう痴れ者に帰属運動の推進じゃ……」

 

「……は?」

 

 一体何を言っているのか分からない。

 この怪人が発している言葉が日本語である事を女の脳が認めるのに少しばかりの時間を要した。

 

「お前のような低俗なものに分かりやすく言えば、だ。女、お前のような人間を正しているのじゃよ」

 

「何も……して……ないわよ」

 

 本当に覚えが無かった。

 まるで言いがかりのように喧嘩を売られているその不条理さが女の恐怖心を加速させる。

 

「している。さっき噴いたその悪臭じゃ」

 

「どこが!? シャネルの5番よ!」

 

 だが恰も常識のように言い放ったその返事に女は反射で反駁する。

 世界が認めたこの高級品を悪臭と言ったのか。まるで人間の常識が通じていない。

 

「知るか。その匂い、作られたニセモノの香りであろうが。自然の中で生まれた者は自然のままに生きるのが当然至極!! それを着飾ったり匂いを付けたりとけしからんッ! 全く不自然極まりない!」

 

「そ、そうなのかしら?」

 

「そうだともッ!」

 

 まるで常識が根本的にずれている。困惑する女を他所にふんばり入道はその巨躯で後ろから抱きしめた。

 ぎゅむっ、と法衣が女の体を包む。一歩遅れて女の鼻がその法衣の臭いを吸った次の瞬間──

 

「んっ──んむっ、うむうううううッ!! ウェホゲボオオオオッ! ゲホッガホッ、何この臭い!!」

 

 田舎の臭いと野生動物の臭い、加えて剣道部の部室特有の据えた臭いをまぜこぜさせたような臭いだった。体が拒否反応を起こして咄嗟にえずき、力一杯に振り払おうとするがその腕の力は尋常ではない。

 

「拙僧の──数十年の生きざまの匂いじゃあ」

 

 こいつ、生まれてからずっと風呂にもシャワーもしていないというのか。その事実がなおも女の嫌悪感と恐怖を煽り立てる。

 

「はなじでっばなじでぇっ」

 

「我慢せい……拙僧の香りが染み込むまでしばし時間がかかるのじゃあっ」

 

 そんなもの望んでなどない。その前にあの世に染み込むのが先だ。 

 

「おえええええっおええええっ」

 

 だばだばと女の口から酒と半消化状態の食事が流れ出る。

 ばちゃばちゃ、びちゃびちゃと落ちる吐しゃ物、女としてのプライドをズタズタにされている事実よりも先にただこの化け物から離れたい一心でもがく。

 

「離さない……」

 

 朦朧とする意識の中、法衣と法衣の隙間から見える光景には黒ずくめのナニカが公衆トイレを叩き壊しているのが見える。

 何をしているんだこいつらは。困惑していると、その黒ずくめが瞬時のうちに吹き飛んだ。

 

「何奴ッ!!」

 

 何だか分からないままふんばり入道の拘束が甘くなった所でほうぼうの体でその抱擁から抜け出す。口と鼻からとめどなく溢れるものを手で押さえながらただこの公園の外に向かってドレスが汚れはだけることも厭わず這う。

 時折後ろを見ると、そこには深紫のナニカがふんばり入道と対峙をしていた。

 

 手には忍者刀、全身を覆う深紫の装甲、首から伸びるマフラー。

 そうか、あれが。あれが噂の──

 

 

 

 

 

 

「俺だ」

 

 シノビがその拳をふんばり入道の便器のような鎧に拳を叩き込んだ。

 砲弾のような衝突音と共に2mを超えるその巨体をよろめかせた。

 

「今度は便器のスットコドッコイか……スーパー戦隊もびっくりなレパートリーだなホント」

 

 気の抜けた感想とともに手をヒラヒラさせながらシノビはふんばり入道目掛けてその忍者刀を振り下ろした。

 その時、一瞬だけ――一瞬だけシノビの身体にテレビでたまに見るノイズのようなものが一瞬走ったように女には見えた。

 




 ナリカが彼氏持ち(過去形)だったのは原作からなのです……
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