【ライダー】負けたら陵辱される変身ヒロインものエロゲーの世界の竿役モブに憑依した挙句、忍者の仮面ライダーになっていた【助けて!】   作:ヌオー来訪者

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12 Ambush

 

「背後から女に抱きつくなどお坊さんみたいなガワで随分と大胆不埒な真似をする……生臭坊主かただの変質者か──どっちだ、お前は」

 

 駆けつけたのは良かったが、眼前に繰り広げられたのは珍妙奇怪な光景だった。

 ゲニンが集まって公衆トイレをツルハシでガンガンガシガシと叩いて壊し、それを操っていたであろう怪忍はあのバスの隣に座っていた香水臭い女の背後から抱きついていた。

 

 俗に言うあすなろ抱きだ。

 ちょっとしたロマンスめいた文字列に少しときめくものは特にない。2m超えの巨体の化け物がゲロ吐きながら抵抗する女を無視して抱きしめるというあまりにもあんまりな光景にシノビは即座に殴り込まずにはいられなかった。

 

 ゲニンを吹き飛ばし、女が抱擁から抜け出した隙を見計らって斬撃と鉄拳をお見舞いする。

 モロに打ち込まれた怪忍、ふんばり入道が便器のような鎧にヒビを入れながらよろめいたのが今日の奇襲(アンブッシュ)におけるハイライトだ。

 

 

 シノビのマフラーが風に煽られ、揺れる。

 思わぬ闖入者にふんばり入道がその顔を歪めた。存在意義としていた自らの行いを邪魔されたことが許せないことなのだろう。

 

「クソハゲ変質者とは失礼な! 拙僧は──ノロイ党が一人、鬼門法士──誰が呼んだかふんばり入道ぞ! 更生の抱擁を邪魔しおってからに」

 

「あの……クソハゲまで言ってないんですけど……って、というかなにが更生だ。やらせるか」

 

 吐き捨てた途端、ふんばり入道は己の法衣を翻す。ばふん、ブワッ、と煽るように。

 

「んっ!?」

 

 その時、シノビの装甲を貫通して真太郎の鼻腔に忘れかけていたあの悪臭が再び襲いかかった。

 あの獣のような臭い、剣道部の部室のような臭い、あらゆる悪臭の集合体めいたものが本来強固なはずのシノビの装甲を貫通して襲いかかっていた。

 

「くっっっっっっせぇ! 何お前!」

 

「ちっちっちっ、この芳しきふれぐらんすに不快感を見せるとはお前たちにも更生が必要じゃな」

 

 得意げに指を振り宣言してはくるが真太郎の堪忍袋の尾はとっくに切れていた。画面の下で額に青筋を立てながらふんばり入道を指差しながら叫ぶ。

 

「更生が必要なのはお前だよ! 何がフレグランスだよお前! ちくしょう! 馬鹿野郎! ちょっと前に行った滅茶苦茶通気の悪いゲーム屋を越えた悪臭しやがって!」

 

「うーむ、最近の若者は目上に対する口の聞き方を知らん! 実に嘆かわしい! あぁ、実に! 実に!」

 

「お前を目上だと思ってたまるかぁ!」

 

 最臭兵器なるアニメがその昔あったななどというどうでも良い記憶が脳裏を過ぎる。

 ガンジス川か道頓堀に叩き込んでもまだマシになるだろうその悪臭は堪えられなかった。

 

 ふんばり入道は手に携えた鉄の棍棒をゆらりと一振りしてから構えを取る。

 応戦するようにシノビもまた得物のシノビブレードを肩に掛けて身を低くしていつでも反撃に転じられるように身構えた。

 

 スピードは緩慢。パワーもある程度ダメージを与えられる程度にはシノビの力も上がっている。

 初手からアクセル全開で仕留めにかかる。これ以上悪臭と付き合っていられない。

 

「いい加減黙って貰おうか……!」

 

「ふん! 大自然の使者、ネイチャー坊主たるこの拙僧に勝てるものかぁっ!」

 

 ──そんなに自然になりたいなら土にでも還してやる。

 

 大自然の使者。入道当人が意図して言った言葉ではないのだろうが、怒りの炎に油を注ぐような単語だった。大自然の使者を名乗って良いのは仮面ライダーだけである(例外あり)(それでもこの坊主だけは認めない)。

 

「ねええええええええええええいちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 射程。

 シノビがブレードの間合いに入った瞬間、ふんばり入道が鉄の棍棒を横薙ぎに振るう。

 ぶぉんと、振るわれる一撃は当たりどころが悪ければシノビを野球ボールの如くかっ飛ばしてしまうだろうことは想像に難くなかった。

 

 振るわれた一撃に一呼吸遅れて地面の石を転がし、雑草を揺らし、木がガサガサと悲鳴を上げる。

 

 そこに吹き飛んだシノビの姿は──ない。

 

「消えた!?」

 

 シノビの消失にふんばり入道が目を見開きながら左右を見る。だがそこに彼はいない。

 

「背後!?」

 

「消えるのは、お前を消してからだ」

 

 振り向くよりも先にその拳を深々と叩きつける。

 ドムッ、と鈍い音を立ててふんばり入道の身体の方が野球ボールの如く弧を描いて飛ぶ。

 

「糞っ!」

 

 名は体を表すとはこのことか。吹き飛びながらも地面にその脚を打ち込むように踏み締め踏ん張って見せる。

 そして地面を砂煙巻き上げながら悪態をつくふんばり入道にシノビは再び駆けてその距離を詰める。砂煙を裂きながら放たれる斬撃は容赦なくふんばり入道の法衣を裂き、白い便器のような鎧に傷をつける。

 

 ──いけるか

 

 ひとしきり拳と斬撃を叩き込み、アッパーカット気味にふんばり入道を吹っ飛ばす。

 トドメだ。そう言わんばかりにシノビはベルトのメンキョカイデンプレートに手を伸ばそうとしたその矢先だった。

 

「入道様!」

 

 ざざざ、と白い道着の男たちがふんばり入道の前に躍り出た。

 その数は6名ほど。ノロイ党のゲニン……ではない。かと言って怪忍でもない。

 ただの民間人だ。今この瞬間目の前で繰り広げられているものが何なのかは理解できない訳ではないだろうに、彼らはシノビに相対していた。

 

「なんだ……?」

 

 それに今1人が「入道様」と言った。

 あぁ、そういう事か。真太郎の脳裏で組みあがっていく計算式。フクウラさんがおかしくなったのは連中の仕業ということか。ご丁寧に脂ぎった頭と肌、顔からは白と赤のぶつぶつが浮かんでいる。

 

「入道様が倒れたぞ!」

 

「トイレとか水道ぶっ壊しただけだってのに血も涙もねえ!」

 

 口々にシノビを非難し始める。最早突っ込む気力も失せていたシノビが「はいはい……」喉から音を垂れ流すような声で返す。

 とんだ化け物集団である。というかただの環境テロリストもいいところの集団だ。彼らの非難が非難を呼び最高潮まで高まった時、一人のリーダーらしき男が声を上げた。

 

「それでは諸君ご一緒に!」

 

「応ッッッッッ!!」

 

 その力強い掛け声とともに男たちはニチアサ特有の変装をバサァと脱ぎ捨てるときの勢いの如く道着を脱ぎ捨てた。

 

「……は?」

 

 一人残らずふんどし一丁。

 状況が理解できてもその意味合いの理解は到底できない。何故そこで裸になった? 

 

 ──何が始まるんです? 

 

 ふんどし一丁の男たちは杭を打つかのように素足を砂利だらけの地面を踏み、腰を落とし拳を作る。そしてその拳は天にむけて掲げられそして──

 

「せーのっ、ふんばり! ふんばーりっ! ふんばーりっ!」

 

「ふんばーりっ! あそれふんばーりっ!」

 

 何か(何をとは聞くな)を下腹部からひり出すように、拳を腰まで落としてから再び天に掲げられる。

 珍妙奇怪な掛け声とともに放たれる掛け声は静寂に染まった夜空を響かせ、空気をひりつかせる。

 

「は……?」

 

 人間という生き物は理解の範疇を超えた物を前にすると思考も何もかも停止してしまうものらしい。シノビはただただ彼らの奇行を前に茫然と立っていた。

 

 ──ナニコレ

 

「おお、衆生たちの祈りが、願いが、拙僧を呼び覚ますッ……皆の応援でふんばり入道はぁぁぁぁぁぁぁッ! 復ッ活したあああああああああッ!」

 

 彼らの祈りが届いたらしい。彼らの悪臭が、ふんばり入道に力を与えたらしい。地に倒れ夜空を仰いでいたふんばり入道の巨体がゆらりと起き上がる。みるみる内にシノビが先ほどつけたはずの傷も塞がっていくその様に仮面の下の真太郎も開いた口が塞がらない。

 

「「「おおおおおおおおおおおおおっ!!」」」

 

「……マジかよ」

 

 信徒たちの歓声にシノビは頭痛を覚え頭に軽く手を添える。

 仕切りなおしだ。シノビは脚をじゃり、と地面を踏みにじるようにして僅かに距離を取る。

 1回蘇ったらならばもう1回倒すだけだ。まだ体力には余裕がある。思考しながらシノビは地面を蹴った。

 

 あの信徒を避け、肉薄する。

 幸い彼らはただの人間らしい、誰一人もシノビを捉える事は出来ていない。

 

「消えた!?」 「風かッ!?」 「違う! ヤツが通り過ぎた跡だッ!」

 

「貰ったァッ!」

 

 懐に飛び込んだ瞬間、その拳をふんばり入道の身体に叩きつける。このまま連続攻撃でダウンさせる。2撃目にシノビブレードを叩き込もうとした矢先その刃は寸前で止まった。

 

 刀身には巨大な男の手、そう、ふんばり入道の剛腕がシノビの腕を掴んでいた。抜け出すよりも先にふんばり入道はシノビの腕を持ち上げ、軽くスイングしてから遠くへと投げつけた。

 

「ねええええええいちゃあああああああああッ!!!」

 

 ごうっ、と音を立ててシノビの身体が弾丸のように飛んでいく。

 このまま流れに身を任せれば近くのビルの壁に激突するのは自明の理、シノビは咄嗟に自分の手を勢いよく地面に叩きつけた。

 

 ダンッ! と音を立てて叩きつけられた手のひらから砂煙を巻き上がる。

 ガリガリガリガリと腕が悲鳴を上げながら投げ飛ばされたシノビの身体が減速し、やっと止まった所で徐に顔を上げる。

 

 ──消耗戦は禁物ってことか。

 

 1回復活するならば2回倒す。10回復活するなら11回倒せばいい。

 先ほどまでそう考えていた己にシノビは後悔した。力が上がっている。俗に言うウィザードのフェニックス形式だ。もう一度牽制をかけようとシノビは地面を蹴ろうとしたその矢先だった。

 

 

 殺気。咄嗟に得物のシノビブレードを真上に掲げると同時にその腕に強烈な衝撃が伸し掛かった。

 上を見ればゲニンの姿が一つ。真上から強襲してきた格好という訳だ。

 

「ナンジャアアアアア!」

 

 そのゲニンはいつもと姿が違った。普段のゲニンが黒い装束なのに対し今度のゲニンは色が僅かに青く、それでいて聞きなれない鳴き声を放つ。

 ヌンジャの次はナンジャか。シノビが振り払うや否や新手のゲニン──スレ民曰くチュウニンが忍者刀を振り回す。

 

 通常のゲニンとは比較にならないスピードとパワーで振るわれるそれは、シノビの装甲を徐々に傷を付けていく。一方のシノビは得物のシノビブレードで防御に専念しつつ、相手の隙を観察する。

 俗に言うその辺の戦闘員に紛れていくそこそこ強い雑魚だ。勝てない相手ではない。

 

 攻撃の隙を縫ってシノビはチュウニンの鳩尾に掌底を叩きこむ。怯んだ隙に得物のシノビブレードをもう一本虚空から引き抜き、二刀逆手持ちで独楽のように回りながら、その遠心力で斬撃を放つ。

 命中。狙い通りチュウニンが怯むとシノビは得物に意識を集中させる。

 

 イメージする。

 それは、万物を引き裂く風。それは、万物を吹き飛ばす風。

 

【ハリケーン 忍POW!】

 

 刀身が柄から緑色の風が渦巻き始める。そしてその二刀を×の字に振るうとチュウニンの身体が4分割と離れた。

 ゲニンよりは手ごわかったが、怪忍ほど脅威ではない。

 瘴気となって消えていくチュウニンの残骸を踏み越えながらシノビはふんばり入道のもとへと駆け出す。

 

 

 だが、シノビを待ち構えていたものは──

 彼らが既に去った跡だった。

 

 そこには2メートル越えの怪物も、黒装束の怪人たちの姿もない。残っているのは女の吐瀉物と、ついさっきまでトイレだった瓦礫の山。戦の残り香(と言う名の異臭)を夜風が洗い流すように攫う。

 

 

 

 

「ちっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 せっかく会敵したのにここで逃してしまえばまた探さなくてはならなくなる。せめてもの抵抗としてカエル型の小型メカをばら撒き追跡をさせてみるがあまり成果を期待できそうにもない。

 小型メカを見送りながらシノビはメンキョカイデンプレートを外し、役目を終えた装甲が四散する。

 

 すると後ろから聞き覚えのある男の声がした。

 

「おやおや、見事に逃げられたものだねー前編終了って感じだ」

 

「あんたは……」

 

 はっとして振り向く。

 頭をすっぽりと覆う編笠、そして黒い法衣。

 まだ先程の二重の意味で胡散臭いふんばり入道よりはマシとはいえ、この男についても疑念は無いわけではない。

 この男も「歪み」なのか。

 

 タカマルが言うには珍妙奇怪な銃とカードを所有していたという。

 この目では視ていないが真太郎の推測が正しければディエンドライバーだ。じゃあこの男は海東大樹かという結論に行きつく。

 

「……あんた一体何者なんだ。このシノビの力もそうだ、木野アギトといいWだってそうだ。関係あるんじゃないか」

 

 だが海東大樹なら何かしらの思惑があるはずだ。

 シノビの力は海東判定で言うならば『お宝』だ。これをみすみす手放して他人に寄越すなんて真似を何も考えずにやるはずがない。

 

「……それを知った所で意味がないしノイズだ。僕が見たいのは仮面ライダーシノビによる英雄譚だからね」

 

 それは肯定と取ってもいいのだろう。

 シノビの活躍を見てどうしようというのだろう、この男は。

 

「それにしても力が増しているようで何よりだ。あの便器怪人はかなりの強敵な筈なんだがね」

 

「力?」

 

「あの寺での戦闘以降力が増した筈だ。以前に交戦した怪忍以上の力を持つ敵ですら圧倒して見せている。仮面ライダーである事を受け入れた証拠だ。結構結構」

 

 別にこの男の機嫌取りの為にやったつもりはないのだが。

 得も言われぬ不快感を覚えながら真太郎は顔を顰めた。

 

「目的は」

 

「だから言ったろう。仮面ライダーシノビの英雄譚だと」

 

「……だからそれが分からないんだって言ってるんだ」

 

 それを見てこの男に一体何の得がある。

 まさか自分と同じ日曜朝にテレビを見ながら朝飯を呑気に食っていた人種でもあるまい。

 

「まぁこのまま精進していたまえ。今日は仕事をしている君の顔を見たくなってね」

 

「…………」

 

 正体の見えない人間に顔が見たいと言われても喜びよりも気持ち悪さが増すのはきっと人間として自然な感情だと、そう思いたい。それが仮に善意から来る行為だったとしても。

 

「それとこれは――」

 

 おもむろに懐から少し大きな筒のような機械を取り出す。

 何かを収めていたようには見えなかったその懐はまるでドラえもんのポケットのようだ、と思っているとそれを真太郎に投げやった。

 

「ご褒美だ」

 

「うおっと!?」

 

 一度手のひらで弾んでから危うく落としかけながらキャッチしきると、その投げ渡されたそれに慌てて視線をやった。

 

――籠手?

 

 機械仕掛けの籠手。

 折りたたまれたトラクロー*1のようにも見えるそれは俗にいう強化アイテムという奴か。

 多分ゼクトマイザーかパワードイクサー並みの微妙な装備になりそうな気もするがそうじゃないと思いたい。

 

「シノビクロー。忍術の強化デバイスであると同時にクローを展開すれば強力な一撃を放つことが出来る。ブレードとの連動機能もある。有効に活用するといい」

 

「なんでこんなものを……」

 

 顔を上げて虚無僧に問い詰めようとしたものの時すでに遅し。視界に広がっているのは無人の公園だった。夏特有のぬるい風が吹いた。

 

「……どうしよこれ」

 

 瞬間移動でもしたのかとツッコミたい程に虚無僧と思しき気配はなく。

 自分の仕事が無いとでも悟ったかシノビクローは粒子となってさらさらと瓢箪の中に吸い込まれるように消えた。

 

*1
オーズが有するトラメダルの能力であり武器。敵のメダルを奪い取るなどの特殊能力を持つ




 シノビクロー自体完全に無から生み出した武器ではなくアナザーシノビが使用していたカギ爪から生み出された物となっています。
 得物がシノビブレードという直球な名前なら爪だってクローじゃないのかとかいう推測で出来上がった物体だとか。

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