【ライダー】負けたら陵辱される変身ヒロインものエロゲーの世界の竿役モブに憑依した挙句、忍者の仮面ライダーになっていた【助けて!】 作:ヌオー来訪者
「酷いわねこれは……」
ナリカが顔を顰めながら、壊されたゴミ収集車の残骸を見ながら鼻をつまむ。
フクウラとの約束の間、ふんばり入道並びにその一派の蛮行は続いていた。無為自然を謳いながら、銭湯を破壊し、ゴミ捨て場を封鎖。ゴミ収集車破壊ならまだかわいい方だ。
バキュームカーを破壊された跡は目も当てられなかった。
純粋な破壊活動よりも悪質かもしれない。
既にある程度汚れてしまえば不法投棄もしやすい所謂割れ窓理論が起きる訳だ。このまま放置すればあの夢に見た光景が起きる可能性も上がると言うもの。故にこの惨状を目の当たりにさせられる真太郎の心は何一つ落ち着かなかった。
先日の公園での戦闘からは数日。
偵察用のカエルはあえなくふんばり入道の信者に見つかり粉砕。シノビに執拗に追われる事を恐れたのかそれからふんばり入道は姿を見せなかった。上弦衆の索敵網を潜り抜けられるあたり相当警戒しているであろうことは容易に想像できた。あれだけの復活能力を持ってなおシノビが怖いのだろう。
今日にいたるまでシノビはゲニン狩りにとどまっている。
「先日は民家数軒の風呂場を破壊。ホテル、旅館の水回りも破壊。破壊したのは従業員に無為自然の信者が紛れていたとかナントカ……荘子に謝れマジで」
──今度こそ見つけ出して肥料にしてやる
先日に至っては病院も襲われた。非自然的な行為で人間を歪ませていると。未遂で済んだがこれ以上放置すれば死人と糞尿まみれになるのは自明の理だ。
真太郎が内心腕を捲っているとナリカが裾を引っ張った。
「約束の時間近いし、行きましょ」
「へい」
約束の時間──それはフクウラさんとの合流だ。
無為自然について興味があるから見学を、可能であれば入信がしたい。そうナリカは宣ったことで信用してしまったフクウラさんは近所のファミレスで会う約束をした訳だ。
折悪く、横断歩道で足止めを喰らった所で真太郎は口を開いた。
「潜入なら俺一人で良かったろ」
ふんばり入道がいる可能性が極めて高い場所にナリカを連れていくのは危険すぎる。そもそも脳みそが下半身と直結したような化け物連中に女という組み合わせそのものが危険を感じずにはいられない。当然同じ事を思ったタカマルも自分も行くと息巻いていたが当然頭領を敵陣に差し出すわけにもいかないので秒速で却下だ。だが。
「あなた一人だったらフクウラさん警戒させちゃうでしょ? 工藤さん嘘下手だし、それにわたしの方がフクウラさんに信用してもらえてるし」
「…………」
痛烈。あまりにも痛烈。
正し過ぎる指摘に何も言い返せなかった。いつもの名前を訂正する気力もない。
ここでふんばり入道の懐に入り込んで心の臓に一撃を叩き込む千載一遇のチャンスをふいにすることは真太郎も望んではいない。
「タカマルもあなたもわたしのこと心配し過ぎよ。こういう危ないことは──覚悟の上だもの。でもね。……もしもの事があったらお願いね」
人懐っこい笑みでウィンクしてみせる。多分同学年の男子あたりは確実に勘違いを起こしそうだし、自分も子供だったら勘違いしていたかもしれないと学生時代の己を回顧する。
けれどもふと思いを馳せてみれども自分が学生時代どんな奴だったのか漠然としたイメージこそ浮かべられどもはっきりとした記憶までは思い出せなかった。モテていたのか? いや彼女いない歴=年齢の奴がモテてるわけがないだろう。同性の友達と馬鹿をしていたのか? それともぼっちだったか?
──よそう、虚しくなる。
ドツボにハマりかけた思考を振り払いながらナリカの隣を歩く。
行き先は閂駅前ロータリー。そこに行き着いた時、妙に嫌な予感がしていた。
「おぉ! この2人が入信希望者なのですね!」
フクウラさんと白い道着を来たこれまた脂ぎった男がにこやかに目を細める。そんな彼の目にはうっすらと2人を品定めしているように眼光が鋭く光る。真太郎は必死に作った笑顔でナリカ共々首を縦に振った。
露骨に4人から半径10m越えの空白が出来上がる。怪しい男2名の外見に引いているのか、風が運ぶ彼らの臭いを嫌がったからか。はたまた両方か。
「わたし、もう疲れたんです。何かを取り繕ったような生き方は」
縋りつくようにうるうると目を潤ませるナリカを横目に真太郎は大した役者だと感心しながらそのひん曲がった鼻を無理やりもとに戻すように言葉を発した。
「受験競争で体を痛めつけてやっとこさ就職したらリーマンショック*1で会社が潰れて……俺一体何のために生きてんのか分からなくなって、うっう……」
「ピーマン……なんです?」
「え? リーマンブラザーズ……あれ?」
うまく演技できたと思ったらこれである。
全く要領を得ないようなフクウラさんと隣の信者。2008年と言えばこの出来事じゃなかったのか。そこそこテレビでニュースになっていたはずだ。
……と真太郎は混乱しているが、まだ9月にも入らない時期なのでただの失言である。
「マリオブラザーズだか何だか知りませんが貴方も苦しまれていたのですね。この俗世では誰もがそうなのです。貴方たちは決して一人ではありません」
「もう大丈夫です救いの門は開かれました。さあさあ、どうぞこちらへ」
信者の男に促されて真太郎とナリカは黒いワゴン車に押し込められるように載せられる。当然車の中は彼らの臭いがぎゅっと凝縮された肥溜めのような臭いがした。
「んぐっ」
流石のナリカも短い悲鳴を上げる。真太郎は無言でドアを開けた。
外の排気ガス吸わされてる方がまだマシだった。握りしめた拳。掌に爪が酷く食い込む。
一度乗り越えてしまえば一生こんな思いなどするまい。必死に自分に言い聞かせながら流れる景色を見ていると無情にも運転席にその窓は閉じられた。
──くそったれ
窓に映った自分の顔はきっと憤怒に歪んでいるだろう。けれども光の当たり方がよくなかったのかよく見えなかった。
最初こそ窓を見れば車が何かしら並走していた。それが疎らになっていき、自転車をきこきこと漕ぐ学生、犬の散歩をしている老人へと変わっていく。
ビルは一軒家になり、畑となり、最後に山となる。
平坦なアスファルトから整備されていない山道へと変わる。
昔見たジブリ映画でこんな感じに車で山道走る奴あったな、と振り返る。
その映画を見た直近でアギトの映画を見たのは
──99年生まれなのによくもまぁ2歳の頃のこと覚えてんなぁ……
そう、どうでもいい事を考えていないとこの息苦しさは紛れもしなかった。
◆◆◆◆
案の定、というべきか。
真太郎が予想していた光景そのものが広がっていた。
元々閂市にはお寺はどういう訳か沢山ある。そのうちの一つだ。
他の寺に比べて比較的広く、かつては……特に中世権力を持っていたのだろうが今やこの現代、珍妙奇怪な怪しい集団に制圧、私物化されている事に諸行無常を感じる。
当然冷房なぞかかってなどいない。上がり込んだ瞬間、鼻をつく臭いが真太郎とナリカの身に覆い被さるように襲う。
案内された先は広間だった。
戸越しから聞こえる掛け声から内心背けたい気分でいたが信者がその戸を開け放った。
その広さはちょっと広いオフィスの会議室くらい。
埋め尽くしているようでその実規則正しく、学校の朝礼のように並べられた白い服の人間たちが埋め尽くしていた。
スクワットでもする要領で屈伸しながら何かをひり出すように丹田に力を込めている。
「ふんばーり! ふんばーり!」
一度倒れたふんばり入道を復活させた不思議な踊り。
見ているだけでMPでも奪われそうな光景に真太郎とナリカの目は死んでいた。
「ワーナニコレー」
ざっと40人ほどの集団が全く同じ、それも珍妙奇怪な動きをしているのに真太郎の喉奥から言葉が出ていた。
昔見たTVドラマあたりでありそうなシュールを体現した光景が繰り広げられている。
「修練です。無為自然を会得する為にはまず全てを捨て、精神を集中させ気を練り、自然と一体とならなければなりません」
滔々と語る信者。理解が出来ない。自然と無理に一体になろうとする行為そのものが不自然だと思わんのか。そもそもこの動きは自然と言うのか。そんな馬鹿なあり得ない荒唐無稽絵空事フィクションだろう。
隣の真太郎は完全に理解の範疇を超え、彼にまとわりつく時間全てがぴたりと停止した。
真太郎、フリーズ。すかさずナリカがつんつんと真太郎の脇腹をつつく。
「お゛う゛っ゛」
真太郎、再起動。
そんな2人のやりとりを意にも介さず、信者はぱん、と手を合わせた。
「それでは練習がてらお二人もやってみましょうか」
「「え」」
……その後真太郎の尊厳が破壊されたのは言うまでもない。
◆◆◆◆◆
修練。そんな最中でもふんばり入道が姿を見せる事は無かった。
同門の信者たちの話に聞き耳を立ててみたが、彼が今何をしているのか知ることはままならず。なけなしのプライドを傷つけながらふんばり入道が考えたという意味不明な修練を繰り返す。
曰く──
「最初のうちはその身に沁みついた俗世の臭いを断たねばなりません。まずは1週間、泊まり込みで修練をしてもらいます」
とフクウラに告げられて今は一人、待合室に連れて来られている。本格的な修練の準備をするそうだ。
男女は別に扱うとのことでナリカは今そばにいない。流石にここで拒絶しようなら警戒されかねない。
そう判断してナリカも真太郎も取り合えず──そう、とりあえず了承して今の形だ。
やや押し込まれる形で真太郎は白い道着に着替えさせられ、手持ち無沙汰になった所で一人部屋の中で立ち尽くしていた。
床は汗と垢で本来乳白色だっただろうそれがまだら模様の赤茶色になりカビでも生えたのか黒い斑点が飛び散っている。今着ているものが押し付けられた白い道着とはいえ、こんな畳に座る事など断じて出来なかった。
それに部屋の臭いがややかび臭い。──これが無為自然というのならば馬鹿げている。
ただの不衛生じゃないか。
道着の中に忍具を仕込む。一般信者の無力化の為の煙玉、ワイヤー、そして──
その時。
──殺気!?
何かに突き動かされたように真太郎は構えをとった。その何かはきっと原始的な何か。そう、本能だ。
この部屋にいる人間は先ほどまで一人だと思っていた。
だというのに
サマージャケットを羽織り、頭はウェーブが掛かっている。へらっとした顔をしているが目が一切笑っていない。この目には見覚えがある──そう、上弦衆の忍び。殺し屋の、目。
「誰かと思えば──
──今、名前を
もしも。そう、もしも平時ならば。
この世界にやってきて初めての体験にちょっとしたときめきを覚えたのかもしれない。だが今目の前にいるそれに得も言われぬ恐怖というものを感じる。
あのスバルと初めて対峙したときの、原始的な感情──死への恐怖心とはまた違う。
「誰だ、お前」
声は、果たして声になっていたのだろうか。
絞られた喉からわずかな吐息と共に吐き出された言葉に「ハッ」と男は笑い捨てる。
「誰とはご挨拶だな。上弦衆抜けた下々の忍びさんにはご興味がありませんってか」
「抜けた?」
上弦衆をやめた人間の話など数日前出産で子供の為に上弦衆を抜けた女性スタッフのヤマモトさん以外真太郎は知りはしない。一方的に因縁をつけられている現状が面白いはずがない。
「ノロイ党が現れる前、王になるとか息巻いていたが随分と堕ちたもんじゃないか。えぇ? 連中の強さにヤケになって怪しい宗教にでも手を出そうってのか」
「……」
下手にこちらの目的を知られる訳にはいかない。
真太郎は無言で返すとその先ほどまで向けられた殺気がフッと消えた。
「ま、落ちてくれるぶんには大歓迎だが。因果応報って奴だ」
一体何の話をしているんだ。自分が知らないことを相手は知っていて勝手に完結されて。男は懐から無造作に取り出した扇子をバッと開くとそこには因果応報と書いていた。
目の前の男が得体の知れない人の形をしたナニカにすら見えてくる。ヘラヘラしている男に対する恐怖はそのままにだんだん腹が立ってきた。なんなんだこいつは。だが今は任務中だと、必死に感情を飲み込む。
「ここまで言うのならどうしてあんたはここにいる」
「お前らの教義を潰しに来たのさ」
ぞわり、と背筋が震え肌が粟立つ。
たった1人の普通の人間にそんなことができるはずが無い。それを知っている真太郎ですらその常識を揺らがせるだけの凄みがこの男から発せられている。こいつならやりかねない、と。
「あんたは……」
一体なんなんだ。
そう問いかけようとしたその矢先。がらり。そう一斉に戸という戸が開け放たれた。
tips
・ふんばり入道
どうにもこいつにも元ネタがあるらしく、加牟波理入道(がんばりにゅうどう)という厠(よーするにトイレ)にまつわる妖怪がいたのだという。
意外とモチーフがしっかりしているのである。この作品……
原作における所業としては無為自然を謳って銭湯やらトイレを破壊して周り治安を悪化させようとした。どうも同門(多分一般市民)(どうもだけに)がいたらしく敗北した閃忍にスメハラしたりアレを出させたりあんなことやこんなことまでした(詳細はここでは言えないのでゆるして)