【ライダー】負けたら陵辱される変身ヒロインものエロゲーの世界の竿役モブに憑依した挙句、忍者の仮面ライダーになっていた【助けて!】 作:ヌオー来訪者
心細くないと言えば嘘になる。
正直な所、自分がこうして潜入しようとした時必死に止めようとしたタカマルにも、しぶってくれた真太郎にも感謝している。
けれどもここで何もしなかったらタカマルを守れはしないし忍びとしている意味もない。
女信者の長くボサボサの髪の毛を睨むように見据えながら、ついていく。
きっとちゃんと手入れすれば綺麗だったろうに。ここまで痛み切ったならもう切ってしまった方がいいだろうな、などと思いながら。
「こちらへどうぞ」
長ったらしい通路はここで終わりらしい。
どうも突き当たりまで来たところで、女信者が戸を開け放つ。だだっ広い部屋だった。
それでいて何もない。本能的なナニカがナリカの身体を背後に向ける。しかし既にその扉は閉ざされていた。
──罠だ。
「臭うなァ、実に臭う」
それは人間の声と言うにはあまりにも低く。人外の声と言うにはあまりにも人間的な声。それが誰の声なのか頭が回り切るよりも先にぷしゅっ、と音がした。
「ぁ……」
鼻を突く刺激臭。
脳から意識が剥離していくような──感覚。
──しまった
自らの迂闊さを呪うよりも先にナリカの世界は暗闇に染まる。
すべてが遅かったのだ。
◆◆◆◆
夢を──見ていた。
これが夢だって理解していたのはきっと今見ている光景が見覚えのあるものだったからに他ならない。
「ノロイ党はもうじきこの時代に現れることだろう。お前に戦ってもらいたい──ナリカ」
2年ほど前の事。
父親から呼び出されたナリカは自らに課せられた使命を告げられた。いつもの道場で、父と子の二人しかいない静寂の中でずしりと伸し掛かる責務。
それは──閃忍として戦う事。知っての通りノロイ党の持つ戦力はただの力では倒す事すらままならない。だからこそ閃忍の力が必要とされていた。
父親は上弦衆らの武術の師範でもあり、現地の忍を取りまとめる長の一人だ。だからこそ誰が最も優れた資質を持っているのかを知る訳だ。
馬鹿な嘘はつかない。父親はそういうタイプだ。だからこれが馬鹿な冗談なんかではない事はナリカも重々承知の上だった。
──でも
「閃忍って……その上弦衆の頭領と……」
『そういう事』をしなくてはならないわけで。
「できるな?」
何の臆面もなく問いかけてくる父に──四方堂清玄とは正反対にナリカの表情は『そういう事』をする自らを想像し、血液が心臓から頭へと駆け上がる。
「好きでもない相手とHしろって? 父親の言葉とは思えないわ」
普通の父親ならばイカレているとしか言いようのないものだった。
愛する娘の貞操をどこの馬の骨とも知れない男に捧げさせる事を容認どころか、差し出そうとする父親などまともではない。
「奴らと戦う方法はそれしかないのだ。上弦衆としての誇りを持て」
──私、そんなの……嫌だ。
「お前はまだ若い。心の準備、覚悟するには時間がかかるかもしれない。だが強さと適性はお前が一番なんだ。分かってくれ──」
何が上弦衆の誇りだ、何が使命だ。誉だ。
他の閃忍になりたがっている奴にやらせればいいじゃないか。どうして私が好きでもない男に抱かれなければいけないんだ。
でも、じゃあ好きな人はいるのか? なんて聞かれたら「それだ」と言える答えをナリカは持ち合わせてなどいなかった。
初めて──そう、初めて彼氏が出来た時は他人の事が好きだって気持ちがいまいち判然としていなかった。付き合ってみればいずれ分かるんじゃないか、なんて。
だから向こうから告白されたから首を縦に振った。
学校から一緒に帰ったり、デートしたりしても。それでもよくわからないまま日々を過ごしていく。もし彼が頭領だったら、なんてことを考えてみても妙にしっくりこない。
頭の中で父から告げられた言葉頭の中をぐるぐるしている。
そんなある日だった。
その日は酷い雨だった。陽の光が見えず昼とは思えないような空だった。
彼といつものように学校を帰る。交す言葉はいつものように今日の授業の事や部活のこと、そんな他愛のない話をデイリーボーナスの如く交す。
ぐちゃり。
と、灼ける前のハンバーグを握りつぶすような音がした。
そして横を車が通り過ぎる。一体何だろう、と振り返るとそこには赤い血だまりが広がっていた。雨水に流されてじわじわと広がっている。
「何の音?」
「野良猫が車にはねられたみたい」
偶然居合わせたのだろう同じ学校の生徒たちの声の通りその血だまりの中心には先ほどまで生命だったものが転がっていた。本来外には出してはいけない臓器も零れ出ており、目玉も飛び出ていた。
普段車が通らない道だ。だから猫も油断していたのだろう。
野良犬猫が車ではねられて死ぬ、珍しい話ではないが哀れみを抱いた。このまま誰にも弔われず風化していくのだろう*1。
「うえ、きっしょ。行こうぜナリカ」
嫌悪感を露わにしながら彼はナリカの手を引く。
そんな中であるものに目を奪われていた。
学生服の少年が、一人。
手にはコンビニの袋。無造作にカバンの中に袋の中身を押し込み(今思えば多分エロ本*2だろう)。空袋を裏返してその零れ落ちた物をかき集めていた。
こんなことをする奇特な奴がいるんだ、と。興味を持ったのもある。腕を引く彼を振りほどきナリカは少年のもとへと歩み寄る。
「ねえ、それ。どうするの?」
「飼い主がいないとはいえ、あのままじゃ可哀想だろ? ほっとけば車に轢き飛ばされてそのまま誰にも見て見ぬふりをされたまま腐っていく。だからせめてそうなる前に──」
「……手伝う」
不意に出た言葉にナリカ自身も驚いていた。けれどもこの手の野良猫の処理なんて生まれてこの15年にも満たない人生において一度もやった事がない。
「袋とか持ってるか?」
「……ない」
「分かった。じゃあさ、傘。頼めるか?」
言われるがまま傘の中に少年を入れる。すると延々と降り注ぐ雨粒が弾かれて死体が入った袋の中に入り込む水が目に見える形で減っていった。
「おいおい何してんだよお前……ほっとけよ、そんなきっしょいの」
本当ならこれがまともな反応なのかもしれない。けれども聞いてしまった。あのまま見て見ぬふりをして放っておけばきっと脳裏にあの猫がこびり付いて離れない。
「先に帰ってて」
「……お、おう」
そのままナリカの目線は死体を袋の中に搔き集める少年の方を向いたまま。もう帰ったのだろう、死体全て袋に収めて顔を上げた時にはもう既に彼の姿はなかった。
あとはもう流れだ。けれども行政に依頼するにしても相応に時間がかかるのは明白だ。
だから自宅も兼ねるあの道場の庭へと案内した。
流石にテキトーな公園に埋めると少年曰くまずいらしかった。
庭に穴を深く掘り、猫の亡骸を沈めるように埋める。水を含んだ土は酷く、重かった。
全てが終わった時には既に小さく盛り上がった小さな山が一つ。「ふう」と少年は額の汗を拭いながらナリカを見た。不思議そうな顔だった。
「どうして手伝ってくれたんだ?」
その理由を言葉にする術を持ち合わせてなどいなかった。
「……気分」
「そっか。ありがとう」
手を合わせ、弔いをする。せめて安らかに逝けますように、そう願いながら。
きっと少年も同じ気持ちのはずだ。
弔い終えて帰っていく少年の背中をナリカは見えなくなるまで見ていた。
また──会えるかな。そんな事を想いながら。
あの少年が、23代目の頭領──戦部タカマルである事を知ったのはそれから間もなくしてからの事だった。
当人は知らないようだが。道場の新しい門下生としてやって来た。
そして付き合っていた彼とはその後交す言葉を失ったまま別れを告げられた。今思えば本当に付き合っていたのかもすら曖昧で。もう猫の時の時点で新しい女を作っていたという噂だ。だから不思議と悲しさは無かった。──ただ、虚しいだけだった。
バカでスケベで、私よりも弱いくせに。
けれども誰よりも優しくて。だからわたしは『覚悟』が出来た。でもあのノロイ党が宣戦布告をした運命の日に戦場に立っていたのは──
「そろそろ起きて貰おうか。くらえっ、目覚まし臭ッ」
それはもう。
それは本当にもう強烈な異臭だった。腐った卵と田舎の畑の臭いを3週間ほど醸成させてから解放したような臭いがナリカの鼻を突く。
これは一瞬だけで済んだからまだしも意識が覚醒してから据えた獣と剣道部の部室のような臭いが目覚めた嗅覚を苛む。
「くっさ!?!?」
朦朧とする視界の中でもはっきりと分かる異様なシルエット。
ふんばり入道という存在は真太郎の話と監視カメラの映像で知ってはいたがこうしてみるとなかなかどうして強烈なインパクトをくれる。
慌てて身を捩って離れようとしてもその手は後ろで地面から天井へと伸びる柱に縛られ、膝は折り曲げられたまま──いわゆる和式トイレでトイレをする格好で、ガラス張りの台の上でしゃがまされていた。当然そんな恰好なら下着が見える。──いや、履いていたはずの下着がない。中身が丸出しだ。
慌てて股を閉じようにも体が言う事を聞かない。
「うーむ、最近の若い娘は目上に対する口の利き方を知らん! 実に嘆かわしい! 加えて拙僧を迫害するとはけしからん! 臭いでわかるぞ、お前が上弦衆の忍びであるという事はなァ」
完全にバレている。
ミイラ取りがミイラになるとはこのことだろう。
「何が目上よ……アンタを目上だと思ってたまるもんですか。この不潔、悪臭男」
もうバレてしまっているなら偽る必要もない。
舌打ち代わりに悪態をつくとふんばり入道は怒りの感情すら見せずに不敵な笑みで縛られたナリカに近寄り顎をくい、と持ち上げて言葉を紡ぐ。
「ほう、では貴様は全然臭わないとでもいうのか?」
息からは洗われていない公園のトイレの臭いがする。
「当たり前でしょ? 毎日お風呂には入っているもの、アンタなんかと違って!」
「おおう……何たる無惨な」
意外にもその言葉が聞いたのか、ふんばり入道はゆらりと後ずさりながら天を仰ぐようにして片手で手を覆い、嘆く。
「何が無惨よ。その命、神に返しなさいよ」
キャラじゃない物言いなのは分かっている。何が「その命、神に返しなさい」だ。
けれどもこういう時言えと
「貴様が風呂で石鹸やシャンプーでどれだけの細菌が犠牲になっていることか、近代文明に毒された哀れな小娘よ、悔い改めるがよい!」
風呂に入る事そのものが殺人に等しい罪であるかのように。そしてそれを弾劾、断罪する執行者のように歯を食いしばりながらふんばり入道はナリカにその怒りを突きつけた。そして再びナリカに詰め寄るとあの悪夢のような獣臭が鼻腔を痛めつける。
「時に貴様。この湿気と高気温で汗をかいておるな? くんくん、汗臭いぞう」
──アンタに! 言われたくは! ない!
碌に風呂に入らず汚物のような口臭を吐く化け物にお前は臭いと言われていい気分などするはずがない。その言葉の何もかもがブーメランとなって禿げ頭に突き刺さっている。
だがふんばり入道は得意げだった。高校入試過去問を余裕で解いて見せた同級生のように得意げだった。
「所詮貴様も生物。匂うのは当たり前よ。どんなに着飾り偽っても人間は匂うものだと教えてくれる! 集え、同門たちよ! ふんばり入道の辻説法の始まりじゃあああ!」
高らかに宣言すると、周りの固く閉じられた戸が一気に開け放たれる。
バタバタバタバタと音を立てて数十人の男たちがふんばり入道の前に整列を始める。下手な軍隊も真っ青な統制ぶりにナリカの頬は引き攣った。
それでいて誰にも見せたことのない体の一部が剥き出しになっていることを思い出して、ナリカはスッと青ざめた。こいつら、何をする気だ。
「皆の者、ご苦労である」
「ふんばーり! ふんばーり!」
「今日も自然体に生きておるか!」
「おおー!」
「今日も無為自然に暮らしておるか!」
「おおー!」
作戦決行前日。風呂上がりに真太郎はコーヒー牛乳を喉に流し込みながら「老子に謝れってんだ! ケッ!」と謎にキレ散らかしていたのをナリカはふと思い出す。
あの時は真太郎の憤りが見てて面白かったので笑ってしまったが今この瞬間、心の中でしこたま同意していた。
「今日は我らの教えを理解せぬ不届き者を捕えた! この娘は我ら無為自然を足蹴にする上弦衆の女であり、それでいて! 風呂に毎日入っている!」
「「「「「な、なんだってー!?」」」」」
そこ驚くことなのか。同音同句で驚愕する信者たち。
「ゆ、許せねえ、ふんばり入道様の邪魔をするなんて!」
「ただ俺たちは不自然な存在を減らそうとした。薬なんていう不自然な毒同然を持った病院を襲ったくらいで、忍びに仲間がシャイニングウィザードされた! 血も涙もねえ!」
「銭湯ぶっ壊した時もそうだ! 俺の唯一の友が上弦衆の忍びにパロスペシャルされた! アイツら許せねえよ!」
恐らくこのプロレス技で鎮圧したのは真太郎だろう。多分。
病院を襲うなんて許されないだろそれは。下手したら死人出てたろうに自らが虐げられている側に居るとでもいうのか。冗談じゃない。
「皆の者! この娘の天罰はいかに!」
「強制執行だ!」
「そうだそうだ! 強制執行だ!」
「よおおおし! ならば仏に代わってお仕置きじゃああああ!」
するとふんばり入道の合図とともに縛られたナリカに信者たちが集う。
「あーそーこ! あーそーこ!」
「おーしーり! おーしーり!」
ついでの如く発せられる下品なコールにナリカは必死に身を捩って抵抗して見せるもうんともすんとも言いはしない。信者たちは吸い寄せられるようにナリカの下半身に顔を近づける。
「い、いやあああ! 見ないで! 近づかないで! なんで……いやあっ!」
「馬鹿者! 人間は本来自然の姿でいるのが良いのじゃ!」
「馬鹿言わないでよ! 見ない……で……」
言葉が通じるのに通じない。
根本的に思想が相容れない怪物と対峙したときに擁く感情というものは、嫌悪か、恐怖か、絶望か。もしくはそれらすべてか。
少しでも晒された場所を隠そうと体を動かしても、ただいたずらに信者たちを扇情させるだけだった。
「いかん、いかんなあ、毛も全然薄い! そんな事では裸では暮らせんぞ!」
「暮らさないわよ! アンタだって裸じゃないでしょうが!」
「拙僧れべるの悟りを開けば恰好などどうでもよいのじゃ!」
ダブスタもいいところじゃないかそれは。
圧倒的な人外性を曝け出すふんばり入道の振る舞いに晒されていると信者の群れの中から1人、見知った顔がナリカの視界に入った。
「ナリカちゃん……僕はね、君のことを信じていたつもりだったんだ」
「フクウラさん」
「裏切ったんだ。君が、僕の気持ちを裏切ったんだ……」
ゆら、ゆらと体が揺れている。それでいてその瞳の奥は昏い光を宿していた。
失望とそれへの怒りが。
「この同門の士はお前のことを信じていた。それを手酷く裏切ったのだよ、この人間の屑めぇ! だから……救ってやるが良い、同門、フクウラよ!」
救うと言う行為が必ずしもナリカにとって利益になるかと言われたらそうではないのは確かだった。フクウラが白い道着を脱ぎ捨てふんどし一丁となる。そしてナリカの身体を掴む。
「君は昔の妻とそっくりだ。その小さな躰……貧相な胸……」
「ひっ……」
そしてフクウラはナリカにの唇に顔を近づける。ナリカの表情はみるみる深い絶望に染まる。近寄るな、やめろ。
誰にも唇を許したことはないのに。そして純潔だって。目の前の現実が受け入れられずナリカは強く目を閉じる。首を振って対抗しようにもフクウラに顎を掴まれて思うようにはできない。もう終わりだ。
ふと、タカマルの屈託のない笑顔が脳裏を過ぎる。
──ごめんね、タカマル。もうはじめてあげられないかもしれない。
──ごめんね内藤さん。わたし、やっぱ足引っ張ってばっかだ。
そしてその脂ぎった中年の唇がナリカの柔らかい唇に触れる──
なんて事は終ぞ無かった。
いつまで経ってもやって来ない絶望に、ナリカは恐る恐る目を開く。──そこにはフクウラの姿はない。流れるように横を見るとフクウラが恐怖に満ちた顔で先ほどまでいた居場所を観ていた。
今この瞬間、ナリカの前にいるのはフクウラではなく見知った背中。
「ようこのスットコドッコイ共。イカれたカルト立ち上げて随分とまぁこんな山奥でロクでもない真似をして、中学生のガキに寄ってたかって大の大人がセクハラコール……覚悟は出来ているんだろうな? ふんばり入道」
聴き慣れた声。手には忍者刀。咄嗟に殴りかかった信者の拳を直撃受けたもののみじろぎ一つもしない。
そしてその殺気を込めて睨みつけたその瞬間、信者たちがおろおろとふんばり入道の背後に回り込むようにしてあとずさる。
深紫の忍びこと、シノビがそこにいた。ああ、あの合言葉は効果てきめんだったんだ。真太郎に『保険』として入れ知恵された合言葉。ナリカが神なぞカケラも信じちゃいないから、そしてこのあまりにも物騒な合言葉を知る人間は真太郎しか知らないからこそ成立する切り札だった。
「仁藤さん!」
「あの……斉藤です」