【ライダー】負けたら陵辱される変身ヒロインものエロゲーの世界の竿役モブに憑依した挙句、忍者の仮面ライダーになっていた【助けて!】   作:ヌオー来訪者

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キノコ狩りの女……?②

130:一般エロゲ竿役忍者 ID:20sNB2kmn2

 ハルカさんについては独自で調べるとして、事件の話していい? 

 

 

132:名無しの観測者 ID:Dk9spFKrG

 >>130

 なんや事件って

 

 

135:一般エロゲ竿役忍者 ID:20sNB2kmn2

 なんかトラックの事故と運転手の行方不明事件が短日で複数件出てて

 気のせいかもしれんけど、ちょっと事件の香りがして

 

 

136:名無しの観測者 ID:XFqCyMYIA

 トラックが事故って人が消える。この町ではよくあることだ……

 

 

139:名無しの観測者 ID:vg/ZlwUKm

 >>136

 ねえよ! あってたまるか! 風都じゃねえんだぞ! 

 

 

143:名無しの観測者 ID:AdJjENKW8

 行方不明って蒸発したって……コト!? 

 

 

146:名無しの観測者 ID:B6bGXr8xwj

 >>143

 特撮あるあるやんけ。ミラーモンスター*1かな? 

 

 

148:一般エロゲ竿役忍者 ID:20sNB2kmn2

 >>146

 ミラーモンスター……シノビじゃ対抗できないやんけワレェ! 

 

 

151:名無しの観測者 ID:N+mIbUfyI0

 >>148

 龍騎の力使わずに晴人とソウゴがミラーワールド侵入できてるんだからシノビだってお得意のニンポ使えばへーきへーき

 

 

152:名無しの観測者 ID:ffRRWRDQd

 ??? 「出して! 出してええええええええええええ!!!」

 

 

155:名無しの観測者 ID:m1aOOKr4B

 トラックの運ちゃん蟹ったか佐野ったのか……

 

 

158:名無しの観測者 ID:0Rf56yVvm

 >>155

 その言い方やめなさい

 他作品が混ざるとなると面倒なことになるな……

 

 

161:名無しの観測者 ID:tEUmeMGwJ1

 ハルカサイドのキャラでそんなヤツいた? 

 

 

162:名無しの観測者 ID:iw5c9p4w2t

 アルメールか……いや、それならもっと派手なはずだ

 他に情報はない? 

 

 

164:一般エロゲ竿役忍者 ID:20sNB2kmn2

 情報が少なすぎる。こっちはこっちで調べてくる。

 何が起こっても不思議じゃない現状変に先入観持ってるとなんかヤバそうな気がする。

 

 

166:名無しの観測者 ID:iw5c9p4w2t

 あいわかった。情報まとまったらおせーて

 それでもある程度情報を持っていたほうがいいはずだ

 

 

168:一般エロゲ竿役忍者 ID:20sNB2kmn2

 おけ。調査に

 イテキマース! (AIBO)

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

「うわ……こりゃひで」

 

 

 真太郎の役割は何も護衛だけではない。タカマルが指令部。つもりもっとも安全なところにいたり護衛が足りてしまっている時には避難誘導、事件現場検証とやることは多岐に渡る。

 

 今回事故に対しての違和感が拭えなかったのもあり、スズモリは現場に向かうことにした。今回真太郎はそのアシスタントという形となる。

 

 件のトラックは事故から然して時間がたっていなかったということと現場保存という観点上、そのままであった。

 当然この周辺は閉鎖されており、一般人は侵入できないようになっている。

 そこにスズモリと真太郎は他の上弦衆とともに検証に入る形となった。アキラとタカマルは一旦指令室に引っ込んでおり現在この場にはいない。

 

 

 その現場に入るや否やの真太郎の第一声がそれであった。

 焼肉とは違う方向の焦げ臭い匂いが鼻腔をくすぐり不愉快さを煽る。トラックは通常ではあり得ない動きをしてからそのままコンビニに突っ込んだようだ。

 

 アスファルトに刻まれた黒々としたタイヤの跡がそう物語っていた。

 酷く曲がりくねった後そのままコンビニへと伸びていく。そしてそのままコンビニに突貫。

 トラックを見ると車止めの銀色のガードレール、つまりバリカーをへし折り、ガラスをかち割ったものの車高とコンテナが邪魔をしてやっとこさ止まったように見える。

 

 これを運転ミスでやらかしたのならば運転手はクビでは済まされないだろう。

 店の修理費や営業損害で数千万吹っ飛ぶとかどこか風のうわさで聞いたことがある。

 

「こうしてみればただの交通事故なんですけどね……」

 

「ノロイというのは操呪の印で負の感情を加速、暴走させることができるんでしたっけスズモリ先輩」

 

「えぇ。兆候が見られなかった人の突発的な自殺や犯罪行為はそれが原因ではないか、そういわれています」

 

 ノロイの掲げる恐怖と絶望による平和。その一環が自殺など極端な行動に出させることなのだろう。

 確かに人が減れば争いの数は減る。ずいぶんと捻くれた連中だ、と真太郎は一人ぼやきながら録画中のビデオカメラ片手にトラックの観察を始める。

 

 見た所なんの変哲もないトラックだ。

 まず手始めに見た運転席は、ドアが変形した状態で半開きとなっていた。接続面はどこか強引に引きちぎられたような跡がある。

 

「スズモリ先輩。歪んだドアって力づくで開けられるんですかね」

 

「人の力ではおそらく無理でしょうね……」

 

「んじゃ、次荷物ですね?」

 

「それが……」

 

 スズモリの顔を見て何となく察した真太郎は次にコンテナの中へと場所を移す。すると──

 そこで待っていたものは──空洞だった。

 本来きのこを収めた箱やらなにやらがいっぱいあったであろうそれはいずれも空箱と化しており、品物は何一つとして残されていなかった。

 

「警察が閉鎖した時点で既に空っぽだったと聞きます。監視カメラにも怪しい人影はなし──となれば」

 

「運転中に何かあったんでしょうね。現状ノロイが何かやらかしたとしか考えられない」

 

 運転中の車に何かをしたか、それとも監視カメラを搔い潜って何かをしたか。このいずれかが出来るのは確かにノロイ以外考えにくいものであった。

 ミラーモンスターがキノコを食ったりしているなんて話は聞いたことがない。頭からラーメンぶっかけられたヤツしか覚えがない。

 

「……前回の運転手が行方不明となった事故なのですが、こちらは積み荷が壊されているみたいなんです。一つ残らず」

 

「七輪か……きのこに七輪……きのこパーティーでもやるつもりか?」

 

 ノロイというのは案外庶民的なのかもしれない。……いや、流石にいくら何でも無理があるし、間抜けすぎる。それに七輪が破壊されているとなるときのこパーティー云々の話とは繋がらない。

 

「いやそれは無いと思うんですけど」

 

 当然スズモリが否定したところで真太郎の間抜けな推測は消し飛んだ。しかし、何か思うことがあったのかスズモリは言葉をつづけた。

 

「でも、ノロイの怪忍というものは生前何かしらの執着や怨念、恨み、憎悪を持っていたのが殆どです。もし仮に同一犯だと仮定した場合、きのこを盗み、七輪を破壊するという行為で何かしらの『恨み』が晴らされているのではないかと」

 

「……業岡一全が罪人を裁くように、か」

 

 仮定に仮定を重ねた形なので、あまりアテには出来ない。

 もしかしたら上手く行き過ぎた強盗やただの過失が重なっただけなのかもしれない。とはいえ、アキラのカンはそうではないと結論づけた。

 素人同然の真太郎が何か異論を唱える余地はあまりない。

 

「とはいっても情報が少なすぎて何とも言えないのが現状です。運転席に何かあれば良いんですけど」

 

 再び、スズモリと真太郎は運転席に向かう。

 とはいってもそんな都合よく何かが残っているはずもない。

 ほぼ──何も分からない状態であった。当然、あのカエル型メカも反応せずただぽつんと真太郎の掌で鎮座するだけで何もしてくれなかった。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

250:一般エロゲ竿役忍者 ID:20sNB2kmn2

 という感じで、ドン詰まり状態。

 地球の本棚じみた使い方になるけれど有識者兄貴に聞きたい

 

251:名無しの観測者 ID:ocV1ucWri

 もどかしいな。次の事件が起こるまで推理もままならないのは

 

 

253:名無しの観測者 ID:qLezj5w4xG

 >>251

 またトラックがやられるのか……

 

 

254:名無しの観測者 ID:iw5c9p4w2t

 七輪ときのこ

 このキーワードから察するに茸群道人じゃなかろうか

 

 

256:名無しの観測者 ID:CldnMJq7X

 >>254

 茸群道人? そいつが今週の怪人か

 

 

257:名無しの観測者 ID:R67fsNyYw

 毎度思うけど、エロゲ博識ニキ本当に頼りになるな……

 

 

262:名無しの観測者 ID:iw5c9p4w2t

 俺が頼りになるかというとそうでもない

 正直想定外の出来事も起きているみたいだからあまり鵜呑みにしないでほしい。この時点でまだハルカさんだけで頑張っているみたいだし

 

 話しを戻すが茸群道人はキノコがこの地球を支配することを目論んでいるキノコ型の怪人でさぁ

 

 頭に編み笠っぽいのが付いていて、全身緑色の化け物でして銀魂の沖田みたいな江戸っ子口調のしゃべり方をしているのが特徴ですぜぃ

 

 ……俺の知る限りではあいつがトラックを狙うなんて真似したのは初耳なんだが

 

 

263:名無しの観測者 ID:g5voIgfGSZ

 >銀魂の沖田みたいなしゃべり方

 リュウタロスみたいな声してそう(こなみ)

 

 

265:名無しの観測者 ID:GVifJcqsGT

 仮面ライダーとキノコか

 よく出てくるけど碌な思い出がない*2

 

 

269:名無しの観測者 ID:NFSvKgtJtm

 形状としてはトードスツールオルフェノク*3を緑色にした感じか

 

 

270:名無しの観測者 ID:7wC+9pTE9

 前回の業岡一全のように手ごわいかもしれんな

 

 

273:名無しの観測者 ID:tncgYIpQa5

 シノビは火属性の技を持っているはずだからそこまで苦戦はしないと思うけど……

 

 

 

 

 

 

 

452:名無しの観測者 ID:V1AuBV0MH

 あれ? イッチ落ちた? 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 調査が終わってからは真太郎は昭和のかおり漂う喫茶店でぼんやりとスマホを弄っていた。

 暇あればスマホを弄る。2022年人の悪癖とも言えよう*4

 

 この世界に生きてきて分かったのだが、この世界の住民にはこのスマホを認識できないようだ。

()()()()()()()()だからなのか。あちら視点では二つ折りのケータイとしか見えていないらしい。

 

 

 話を戻そう。

 今回の事件の犯人がある程度目星が付いたところで、あとは上弦衆をそういう答えに導くにはどうすればいいのかということだ。

 数学においても解だけ出しても不完全なように、過程をはっきりさせないことには「お前何言ってんだ」ということになる。

 

「おまたせ致しました。どんぶらピーチパフェでございます」

 

 店員が真太郎の席に大きなパフェグラスにぶち込まれたピーチパフェを置くとそそくさといなくなる。

 焼肉ばっかり食べているイメージがあるかもしれないが違うものも食べるときだってある。身も蓋もないが、美味しいものはなんだって美味しいのだ。

 その中でも焼肉が大好きなだけで。

 

 その名の通り大きな桃がぶち込まれており、アイスもピーチ味と桃、桃、桃と桃尽くしだ。

 ピーチと謳いながらなぜかプリンもふんだんにぶち込まれており、そのボリュームと甘さから大の大人ならうんざりすること間違いなしだ。

 

「いただきます」

 

 憑依元のお金は生活するうえで最低限に、自分が憑依してから手に入れたお金をメインに使うようにしている為、趣味には多少走るつもりはあった。

 それに加えて稼いだ金の一部は憑依元が稼いだであろう口座に振り込んでおく。

 いずれこの体はこの世界の真太郎に返す時がきっとくる。そう真太郎は信じていた。

 

 スプーンに手を伸ばし、まずはアイスを掬って口に運ぶ。

 舌に乗った瞬間、アイスの冷たさと桃特有のさわやかでかつ暴力的な甘さが通りすがる。

 

 ──あぁ、いいっ

 

 この瞬間のために生きているような、そんな幸福感がある。焼肉を食べた後のスイーツも最高だが、最初から食べるスイーツも最高というものだ。

 真太郎が味に恍惚としているさなかであった。

 

 

「うえええ……っ」

 

「どっ、どうしたのトモくん?」

 

 子供のえづくような声とそれを心配する母親の声が聞こえてきた。

 食っている時になんて声を聴かせるんだ、と少しばかり不機嫌になりながら真太郎は声のしたほうを向くとそこには育ちの良さそうな子供と、明らかに高そうな服を着た母親がグラタンを食べていたのが見えた。子供の顔はひどく、この世のものではないものを食わされたと言わんばかりの顔をしていた。

 

 この喫茶店において不味いものは置いてなどいない。コーヒーやパフェは言わずもがな、特にパスタやグラタンも絶品であり値段も比較的リーズナブル。

 真太郎にとっては最高の店であった。だというのに──

 

 ──いやまて、アレルギーの可能性だってある。

 

 アレルギー、それは持つものにとって「食べる」という行為に大きな制約をもたらすことになるものだ。先天性のものもあれば後天性のものもあり、真太郎とて無縁とは言い切れないものでもある。

 無理に食べようとしようなら、最悪死に至ることもあり得る。

 

 真太郎が神妙な顔をする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 が。

 

 

「キノコぉぉぉ……だいっきらいなキノコが入ってたよぉ……」

 

 ただの好き嫌いであった。

 思わず白目を剥きかけた。ここの料理は店長が独自に調達した選りすぐりの素材を使っており不味いことはない。……のだが好き嫌いが介入すると美味しいが介在する余地は大きく狭まる。

 真太郎も少し同情はする。真太郎とて子供のころ野菜類が苦手だったのだ。なんであんなものが存在するんだと一時期思ってもいた。

 大人になるにつれ何も思わなくなったし今となっては焼肉と一緒に馬鹿みたいに食べてはいるが、子供の頃感じたものもまた、本物だ。

 

 

「あらあらあらっ! 山菜ミートグラタンって名前だったのに……あとで店員に文句言ってやるわ!」

 

 知っている人間も多いとは思うが、キノコは元々野菜のカテゴリには入らない。菌類であり分類上カビに近いもので、菌糸という菌類の小さな体が集まって皆の知る形となっている。

 そのため山菜の内には入らない……というわけだ。

 

 店が悪いのか、親が悪いのか。

 それを論ずるほどのものは真太郎は持ち合わせていなかったし、曲がりなりにも当人の金で買ったものとはいえ、少しばかり気分が悪かった。

 せっかくのパフェが不味くなりそうだ。

 

「ママぁ……」

 

 泣き顔を見せる子供に母親は胸を張って言葉を紡ぐ。

 

「食べなくてもいいのよトモくん。世の中には好き嫌いなく食べろ、なーんて言う人もいるけどね? ママは違うわ! 子供の自由を尊重するの! それにたかが嫌いなものの一つや二つ、食べなくたって死なないもん。アレルギーの人だって生きているでしょう? 一緒よ」

 

 好き嫌いの話でアレルギーを持ち出してくるんじゃない。

 真太郎の頬が少し引き攣った。小学生の頃アレルギーだったのにも関わらず好き嫌いと断じられて給食を食わされていた同級生の姿を思い出す。

 そんなひとりイライラしてきた彼を他所に子供は泣き顔から一転してパッと笑顔を作る。

 

「ママ―! カッコイイ!」

 

「ほーら、フォークで刺してシメジなんかポーイ!」

 

 母親がフォークを握って乱雑に子供の食べていたグラタンからシメジを突き刺し、紙ナプキンの上へと除けていく。

 

「もういっちょポーイ!」

 

「もういっちょぽーい!」

 

「ポイポイポーイ!」

 

「ぽいぽいぽいのぽーい!」

 

 そんな母親に倣った子供がフォークで突き刺して除けていく姿に真太郎は思った。いつか子供が出来た時、こんなことは絶対にしないようにしよう、と。まぁ──子供以前に彼女の一つも作れずに一人で焼肉を食っているようなヤツが誓っても意味がないのだが。

 ……あれ? 自分で言ってて悲しくなってきたぞ。

 

 嫌悪感に苛まれながらどんぶらピーチパフェを引き続き食べようと、進まないスプーンを握ったその時だった──

 

 

 

 ヒュッ──と、何かが風を切った。

 カッと乾いた音を立てて、先ほどの親子の机に何かが刺さっている。それは長細い竹楊枝であった。

 

 今のが人に当たれば深々と刺さっていたであろうそれに気づいた母親が咄嗟に気炎を上げた。

 

 

「ちょっと! 刺さる所だったじゃあないの! 楊枝のサービスなら食事の後にしなさいよ! 大体ねえ! 山菜だと謳っておいて────いっ……ひいいっ!?」

 

 その気炎は長くは続かなかった。突如何か信じられない何かおろしいものを見たような顔をした母親が悲鳴を上げる。

 慌てて、楊枝の飛んできた方を見るとそこには──

 

 全身緑色、長細い四肢に、編み笠状の傘を持つキノコ人間がそこにいた。明らかにこの世の者とは思えないフォルムに真太郎は眼を見開いた。

 

 ──あれが茸群道人ってヤツか! 

 

 慌てて真太郎は通信機の録音機能をオンにしつつ、机の上に置き茸群道人を前に構えをとったものの──

 

「邪魔でさぁ」

 

 低い声で吐き捨てると同時に裏拳気味に放たれた長細い腕で真太郎の体はいともたやすく吹っ飛んだ。

 がしゃんっ! と音を立て近くのテーブルにその体が突っ込み、それに伴って割れた皿と机に置いてあったフォークとナイフが体に刺さる。

 

「ぐぁっ!?」

 

 ──つぅっ!? 

 

 鈍い痛みが走ると同時に、そのテーブルについていた男女が真太郎そっちのけで喫茶店から脱兎のごとく逃げていく。

 

「きゃあああああああああっ!」

 

「ばっ、ばけものおおおおおおっ!」

 

 見捨てる形ではあるとはいえ、見捨てられた真太郎は上弦衆。どんな人間であれ人の命を守るのが仕事だ。勝手に逃げてくれるなら好都合だ。とはいえ、先ほどの衝撃で体と頭が言うことを聞かなかった。

 シノビですらノロイと戦って多少ダメージを受けるのに生身の人間が受けて無事でいられるはずがない。

 

 シノビになれば戦えるはずだ、と淡い期待を抱きながら、懐に忍ばせたシノビヒョウタンに手を伸ばす。

 ……がそこには何もなかった。

 

「……くっ」

 

 先ほどの攻撃で瓢箪があらぬ方向に吹っ飛ばされたようだ。床に転がるそれを見て真太郎は慌てたが、どうも茸群道人はそれに気づいてはいない。

 真太郎はうまく立ち上がれない体に鞭を打ち、テーブルの上から床に転がり落ちる。

 

 どさっ、と音を立てて全身から激痛が走り頭を酷く打った真太郎は自らの意識を強く保ちながら這いながらシノビヒョウタンに目掛けて進む。

 

 痛い、全身が悲鳴を上げている。

 このまま下手を打てばおそらく自分は殺されるであろう。そう思った途端、全身が笑い始める。力が思うように入らない。

 けれどもここで立ち止まれば自分も死ぬし、あの親子も無事ではいられない。

 

 ──許すわけにはいかない。

 

 笑う体を宥めながら必死に這い続ける真太郎。

 そのさなか、茸群道人が親子に迫っていた。

 

「きっ……キノコのお化け……」

 

 母親の茸群道人に対する評は正しかった。あの茸群道人はキノコに思考能力と四肢を与えたようなものだ。

 そしてその楊枝と編み笠はまるで木枯し紋次郎のようにも見える。

 

 しかし、母親の言葉に茸群道人は首を横に振った。

 

「お化けェ? へへっ、冗談言っちゃあいけやせんや。あっしゃ、生まれは木の中、陰の中。ノロイ党が一人。妖門胞異・茸群道人でさあ」

 

 推測通りの名前であった。スレ民の慧眼に感服しながらも、なおの事放置は出来ないという思いが加速する。

 真太郎としてもキノコ型の怪人に対していい思い出がない。何せ仮面ライダークウガを一度死に追いやった怪人と同じモチーフなのだから。

 

「ノ、ノロイ党? ノロイ党のキノコが善良な私たちに何か用なの?」

 

「善良……ねぇ? 今その皿から避けた紙の上の物は何で?」

 

 自分から善良という母親に呆れそうだった。這う真太郎の体が徐々に重たくなっていく。

 茸群道人に詰められた母親は震える声で答える。

 

「し、シメジよ。息子が嫌いだから……」

 

「シィメェジィ~~ッ!?」

 

 化け物の素っ頓狂な声が親子と真太郎、茸群道人以外いなくなった喫茶店の中に響く。

 

「どぉーして嫌うんすか~~? シメジの何がよくないんすか~~、坊ちゃん? あぁん?」

 

「え……えっと、ヌルヌルしてる所とか、歯ごたえとか気持ち悪い形とか……なっ、何もかもかな!」

 

 こんな状況ではっきりと言う子供。

 このまま茸群道人を煽り立てようなら、変身する前にあの親子は殺される。上弦衆も騒ぎを聞きつけて助けに来るだろうが、時間はおそらくかかるのは明白だ。

 それに窓からはヌンジャ、ヌンジャと聞きなれた嫌な鳴き声が聞こえてくる。ハルカが来たとしても、たとえ彼女ほどの手練れでも連中を始末するのには多少時間がかかるだろう。

 

「シメジの怒り──思い知りなぁ」

 

 ふと、真太郎が茸群道人のほうを見ると、どこからか取り出した巨大なシメジの束を子供の鼻と口に突っ込んでいた。

 

「ふがっ……ふががぁ……ふもっふぁっ!?」

 

「トモちゃああああああんッ! なんてことをするの化け物!」

 

 なんでそう、相手を怒らせるような言葉選びをするのか。死にたいのか。

 苛立ちを募らせながら真太郎は再び進む。

 

「シメジづくしなんざ、優しいもんじゃねえか。罪のないキノコを蔑むなんざ磔、打ち首にされたって仕方ねえっしょ……」

 

「キッ……キノコなんてただ食べられるだけの存在じゃない! 大人しく食べられてなさいよぉっ!」

 

 ──だぁーかーらぁーっ! 

 

 母親の気炎に真太郎は思わず黙ってろと言いかける。しかしここで声を上げようなら気づかれてデッドエンドだ。息を飲み、衝動を抑え込む。

 

「食べられるだけだぁ? キノコは仲間を騙さないし、キノコは自然を破壊しないし、キノコは戦を起こさない。動くだけならいざ知らず、世間に迷惑をかける人間衆に比べりゃァ──ま、随分マシな存在と思いますがねェ」

 

 さすがにここまで言われたとなると黙らざるを得なかったらしい。その様子に真太郎はそのまま黙っていてくれと心の底で祈りながらシノビヒョウタンに手を伸ばす。──ダメだ、届かない。

 

「へへっ、言い返せませんっしょ? 不肖このあっしが物言わぬ世間のキノコに代わって代弁してるんすよ。アンタらが見下してる生き物ンが、どんだけ真っ当な存在なのかってねぇ」

 

「ひっ……来ないでぇ!」

 

 もはや言い争う体力も精神力も削がれ切った母親が弱弱しい声を上げる。

 

「好き嫌いしないからっ! キノコ食べるから──ほらっ」

 

 そして慌てて取りよけたキノコを口の中に慌てて突っ込んだその次の瞬間だった。

 

 

「この唐変木があああああああッ! 善良なキノコを食べてんじゃあねえええええええっ!」

 

「ぎゃっ」

 

 真太郎を吹き飛ばしたものと同じか、それかそれ以上の拳が閃いた。

 そしてそのままキノコを口にした母親に叩き込まれた。吹き飛んだ母親の体は壁際まで飛び、スカートがめくれ上がり顔は化粧が涙と涎と血でぐちゃぐちゃになり果てていた。

 

「ママぁ!?」

 

 シメジの束を引き抜いた子供の叫びがこだまする。しかし母親は失神しているのか物を言わず、恐怖のあまり耐えきれなくなったのか床には小さな水溜まりを作っていた。

 

「さて……大人なうえにキノコを食べたアンタにゃあ容赦しませんぜ。仲間のキノコの苗床になって養分にでもなってもらいましょうかねえ? それとも、マツタケでアダルト責めにでもしましょうか? へへっ」

 

 

 

 下衆な笑い声が聞こえる。これ以上お前を笑わせないと、必死に瓢箪へと手を伸ばす。

 そしてようやく──手が触れた。指で引っ掻くように引き寄せ、掴むと咄嗟に栓を抜く。

 

「たす……けて」

 

 助けを呼ぶ──声がした。

 子供の、母親の助けを呼ぶ声だ。

 

 ──必ず助ける

 

「誰か……ママを……助けて……」

 

 ──お前たち親子は嫌いだけど

 

「だっ、誰かママを! 助けてえええええッ!」

 

 ──俺じゃ頼りになんないかもしれないけれど

 

 ひた、ひた、と壁に叩きつけられた母親に茸群道人が迫る音を聞き、床に寝たまま隠れた状態の真太郎は慌てて腹部に巻き付いたシノビドライバーにメンキョカイデンプレートをセット。そのまま勢いよくプレートの手裏剣を回し、真太郎は吠える。

 

「やめろおおおおおおおおおッ!」

 

【誰じゃ? 俺じゃ? 忍者! シノービ・見ッ参!】

 

 

 

 

「誰でさァッ!?」

 

 店内に不自然なほどの風が吹く。それはシノビが現れたという証。

 茸群道人が慌てて真太郎の方を向くがもう遅い。既に変身は終わった。

 ゆらり、と全身への痛みに耐えながら深紫の忍び、略してシノビは立ち上がる。

 

「俺だ……お前の邪魔をしに来た……忍者だッ!」

 

 ギロリ、とシノビの黄色い目が鋭く輝く。そして次の瞬間、茸群道人にシノビが飛び掛かり、外目掛けて店から飛び出した。

 シノビと茸群道人がアスファルトの上をごろごろと転がっている中、茸群道人は慌ててシノビを蹴り剥がしひょいと立ち上がる。

 蹴り剥がされ、同じく立ち上がったシノビがシノビブレードを引き抜くと、茸群道人も頭の傘を整えなおすと腰に収めたシノビブレードと同じくらいの小太刀を引き抜いた。

 

「さっきまでどこに居たんですかねェ……まぁいい。おたくも目の上のたん瘤ってヤツでねえ……大人しく養分になってもらいやしょうか……ッ!」

 

「……来い」

 

 茸群道人が構えをとると、先ほどの気の抜けた物言いからは想像のつかないような殺気が彼を中心に広がった。

 ぞわり、と仮面の下の真太郎の鳥肌が立つ。

 

 素人でも分かる。真太郎の本能が警鐘を鳴らす。

 こいつは──ただ物ではない、と。

*1
仮面ライダー龍騎の歴史に存在した怪物。虫、動物、幻獣とそれぞれ個体によって異なるモチーフを持ち多種多様な姿を持つ。ミラーワールドと呼ばれる鏡の中の異世界に住まう。同じミラーモンスターのエネルギーや現実世界の人間の命を喰らわなければ存在し続けることはできない。そのため2002年から2003年にかけて人間が捕食され続け、結果行方不明事件が多発していたが……

*2
仮面ライダーアマゾンや仮面ライダークウガに登場したキノコ怪人のことと思われる

*3
仮面ライダー555に登場した怪人の1体。モチーフはキノコであり、敵組織スマートブレインの刺客として「九死に一生」を得た少女を攫おうと目論む。棒術を得意とし、毒の胞子も放つことができる

*4
勝手に巻き込むな




 原作からしてそうなんですが、怪忍相手にレスバしようとする閂市民メンタル強すぎん……?

 そして頑なに変身とは言わない男、斉藤真太郎。




 4/10 まさかキノコがキノコの間で会話してる可能性があるなんてイギリスで発表されるとは思わなんだ

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