【ライダー】負けたら陵辱される変身ヒロインものエロゲーの世界の竿役モブに憑依した挙句、忍者の仮面ライダーになっていた【助けて!】   作:ヌオー来訪者

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 ジョン……


キノコ狩りの女……?④

「キノコ狩りをしようと思う」

 

「……は?」

 

 真太郎の素っ頓狂な声が木霊した。

 一体急に何を言い出すんだこの頭領サマは。切り出した目の前のタカマルに対して酷く失礼な言葉が出かけたが飲み込む。

 きっと何か考えがあるに違いない。曲がりなりにも想破上弦衆の頭領という所謂『王』なのだ、タカマルは。

 しかしながら真太郎の反応のせいで完全に声を失った和室にてカチッカチッとボタンを押す音と怪物(モンスター)の小さな咆哮だけが耳朶を打つ。

 ようやっと口火を切ったのは桜色の髪をした小柄なツインテールの少女四方堂成香だった。

 

「いや、本当に何言い出してんのタカマル。やばっ切れ味落ちた」

 

 そのよく通る高い声はしん、とこのちょっと広い和室に澄み渡る。

 四方堂成香改めナリカはこの部屋──というか家の住人であるタカマルの同居人であり、閃忍候補の一人でもある。

 言い方を変えると今はまだ閃忍ではないのだがその辺の話をすると逸れるのでまたあとにしよう。

 

「僕も最初作戦会議の時は驚きました。ナリカさんここは僕たちに任せて武器研いでください」

 

 タカマルの考えを先に全て聞いていたらしいスズモリは神妙な表情で付け加える。

 これだけの情報ならばきっと4人の若者が囲んで何か重い話をしているように見えるだろうが、その実非常に間抜けな光景であった。

 4人とも各々違う色をした同じ形状の携帯ゲーム機(プレイステーションポータブル)を持って一心不乱にボタンを押し続けている。どう見ても若者が集まって遊んでいるようにしか見えない中、いずれも真剣そのものな表情であった。

 

「ごめん皆、俺また乙った(死んだ)わ」

 

「鬼頭さん。気にしないでくれ。にしてもなんか疲れてないか?」

 

「……斉藤ね? まぁ色々あって……」

 

 真太郎の突っ込みの中、聞き飽きたファンファーレが4つのゲーム機から同時に鳴り響いた。

 しかしながらいずれもゲームが終わったような表情も見せずひたすらボタンを押し続けていた。その傍らでタカマルが言葉を続けた。

 

「海堂さんが出してくれた報告書と音声データで茸群道人って怪忍、もともと同胞を食われたり焼かれたりするのが大嫌いだって言ってましたよね。皆逆鱗出た?」

 

「あぁうん俺斉藤ね。確かにあいつはそう言ってた、故にキノコを輸送していたトラックを襲撃したりして運転手を攫ったりして……駄目だ、逆鱗出ねえわ」

 

「あたしも駄目だった。ほんっっっと出ないわねこのゲーム」

 

「僕も駄目でした」

 

 口々に目的のアイテムが手に入れられなかったことを真太郎、ナリカ、スズモリが告げると4人とも一斉に大きくため息をついた。

 これで試行回数は何度目だろうか。

 

 納得のいく素材を求めて何度も狩り続ける行為はある種の執念めいたものを真太郎は我ながら感じていた。

 このゲームはモンスターを倒してランダムで出てくる素材をはぎ取りそこから素材を作ってさらに強いモンスターに挑んだりするのが醍醐味であるはずなのだが、現在その素材が出てこないことで苦しみ切っていた。逆鱗というものは全然でないことで知られている。

 

 話を戻そう。

 

「ヤツはキノコがある所に現れる。例えばキノコ料理を出している店があればそこを襲撃して駄目にするし、食べている奴がいたらそいつも襲う。だったらここでヤツの嫌がることをしておびき寄せてやろうって寸法だ」

 

「それがキノコ狩りだってことね……いやまぁ確かに理にはかなってはいるのだけど」

 

 ナリカの呆れ気味の声色に真太郎は苦笑いした。確かにそこでおびき寄せてやれば叩き潰すことだって可能ではある。

 変に広範囲を張るよりは確実とも言えよう。

 

「一応噂を立てさせることで、深紫の忍び(シノビ)が現れやすいようにしつつ茸群道人も現れやすくする土壌も作っておく。一応そんな作戦プランでアキラさんに提案はしてるんだけど……」

 

 それ以外に何かあるかと言われたらあとは後手に回って迎撃するしかなくなるのが現状だ。確実に仕留めることを考えるならば誘い出すしかない。

 勿論、この方法は一度しか通用しないだろう。ミスればあとは後手しかない。

 

「勝算、ありそうすか?」

 

 別に信用していないわけではない。タカマルも勝ち目のない戦いにそうほいほいとハルカを戦地に投げ込むような真似をする人種ではないのは分かっている。けれども()()が欲しかった。

 年下に安心を求めるなどあまりにも情けない話でもあるが、一番作戦についてこのメンツの中で知っているのはタカマルだけなのだ。故に真太郎は問う。

 すると、タカマルは首を縦に振った。

 

「ハルカさんも既に回復してる上に、ヤツの行動パターンが分かってる。それにハルカさんの力はメキメキと上がっていっているから前回みたいに遅れは取ったりしないはずだ」

 

「龍輪功……」

 

 龍輪功──まぁそういうことである。

 あれから森や山やと休日や上弦衆としての仕事終わりに籠ってたりするのであまりにそういったことに遭遇することはあまりないのだが相変わらずお盛んなことである。

 無論()()()()()()をしないとハルカはノロイに対抗できる力を失ってしまうので必要なことであるのだが──

 

 数を重ねれば重ねるほどその強さは増大していくのだという。

 それを考えるとそれ相応の体力やらなにやらが必要になるわけだが──想像しただけでちょっと寒気がした。

 自らが干からびる姿を幻視した真太郎は表情を引き攣らせながら、やがて真太郎は考えるのをやめた。──よくよく考えたらあまり羨ましくないかもしれない。そんな気がしたのだ。

 

 

 

 あと少ししたら虚無僧と修行をする時間だ。その時が来たら一旦このゲームの集まりから離れるようにしている。

 彼曰く──むやみやたらに修行をやるのは時間の無駄なのだという。自分がいない間は逆に修行をするなとすら釘を刺された。実際問題変に癖を付けられたら困るのだろう。

 なので一応言うことは聞いておく。

 

 それがシノビで戦っていく上での数少ないヒントとなりえるのだから。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 キノコ狩り。

 それは山や森に入って散策しその名の通り自生しているキノコを収穫、それを食べる行為のことを指す。

 素人がやろうなら下手すれば毒キノコを引き当てて死にかねないが、今回はそもそも食べることが目的ではない。

 加えてもし食べるとしても上弦衆が独自に雇った専門家もいるのでその辺の対策はバッチリだ。

 料理が得意だというスズモリとナリカもその辺の処理については事前に勉強しているのだと言う。

 

 タカマル衝撃の発表から数日後。

 

 

 真太郎は背中籠を背負って手袋をし、長袖長ズボン、帽子と夏にしてはあまりにも暑いとしか言いようがない出立ちであった。

 だがそれがキノコ狩りをする上で必要な装備である。最悪毒キノコに触った手で下手なことをしようなら酷い目に遭うのは目に見えているのだ。

 

 それに暑いとは言うが、2022年の夏と2008年の夏はまるで違うものだ。

 まだ2020年代の地獄に比べればゼロ年代もとい2008年の夏如き大したことはない。

 

 

 ハルカも同じような装備をしており鼻を鳴らしていた。そんな彼女にタカマルは心配げな顔色で声を掛ける。

 

「毒キノコには気をつけてねハルカさん」

 

「はい、タカマル様。でも実はキノコにはちょっとだけ、ですけど自信があるんです」

 

「え……そうだったの?」

 

「はいっ、昔小さい頃色々教えてもらって」

 

 まるで大切な思い出を抱き締めるような、それでいて戻らぬ過去を振り返るような。そんなノスタルジックな声色だった。

 

 ハルカは過去の世界……スズモリから聞いたが戦国時代あたりからやってきたのだと言う。

 過去に残した家族がいるのは明白だ。友達だってそうだ。

 

 ……それを思うとハルカの背負っているものや犠牲にして来たものの『重さ』を感じた。デンライナーやタイムマジーンとかがあればきっと帰ることは出来るのだろうけれども、そんな都合のいいものはここにはない。

 時渡りもノロイ発のものでもあるし、ここで変に何かしらの手段で過去に戻れば時の運行が乱れてしまうだろう。故に、ハルカに戻る手段は無きに等しい。

 

 自分と周囲の愛してくれた人たちとの流れる時間が異なること。

 それはきっと残酷なことだ。そして──

 

 ──誰かが『いなくなる』こと。それは、悲しいことだから。

 

 きっとスレ民というこれまでいた世界に似た世界との繋がりがなければきっと自分も折れていたことだろう。あのスレッドを見つけることが出来たのは天の配剤と言うべきか。でも──いや、よそう。

 変に考えないほうがいい。今は、まだ。

 

 

 タカマルとハルカのやり取りを横目に真太郎は懐のシノビヒョウタンを確かめるように触れた。

 こっちはこっちで元の世界に戻る方法も考えなければならない。

 あの何か知ってそうな虚無僧からは色々聞き出そうと試みたが──現状ほぼ全てはぐらかされた。

 

 確かなのはこの世界の(コトワリ)の外にいるということぐらい。

 お陰である程度シノビとしての戦い方のコツは掴むことはできた。あとは実戦で使いこなせるだけの──勇気だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 閂市そのものはそれ程ど田舎と呼ばれるような箱に入れられる程辺鄙な場所ではないが、決して都会とも言えるような場所ではない。

 確かに駅前においてはそこそこ栄えてはいるのだがそれだけなのだ。

 地理的には山に囲まれる形となっており、外部からのアクセスは基本的に車か電車を利用してトンネルを通過するのが主流と言っても良い。わざわざ移動のためだけに山に登るほど酔狂な人間はそうそういない。

 

 今回は上弦衆スタッフ数名と真太郎、ハルカが打って出る形となる。

 上弦衆の転送システムを使って茸群道人が現れたタイミングでハルカを呼べばいいんじゃないのか。という意見もあった。実際タカマルはそう主張したがあの転送システムとて万能ではないらしい。

 

 回数と距離に制限がある上に、座標をしくじれば俗にいう【*いしのなかにいる*】同然の状態になる。特に無作為に木々が配置されている山の中となれば雑に転送した結果木と一体化したハルカなどという悲惨なオチになる可能性も極めて高い訳だ。

 

 という訳でキノコ狩りに参戦してもらった次第である。タカマルも参加しようと乗り気ではあったがアキラに止められた。当然である。

 真太郎の命とタカマルの命。どっちが重いかと言われたら言わずもがな後者なのだから。

 

 

 逢魔が時と呼ばれる茜色の空の下。

 閂山の入り口に入った所で、行動隊長が号令を始める。

 ハルカ、真太郎、その他上弦衆の現場スタッフが集まり指示を待つ。

 

「諸君らにはツーマンセルでそれぞれ行動をして貰う! 諸君! ポケットキノコ図鑑は持っているな!? これらを参照し極力安全なキノコを収穫すること! このあと専門家のチェックが入るとはいえリスクは軽減しておくに限る! カエンタケは見かけても一切触れるな、皮膚が爛れるぞ! では割り振りを決める!」

 

 やたら声のデカい行動隊長の振った割り振りはハルカを中心に、囲むように上弦衆スタッフを配置していく形となる。

 何故ならば誰が襲撃されてもすぐに急行できるようにするためだ。当然無線機は耳に取り付けた状態で行うため誰かがやられた場合すぐに気づけるように出来ている。

 

 そこまではいい。

 そう、そこまでは真太郎もうなずくことが出来た。

 

 だが──

 

「えー、よろしくお願いします」

「…………はい」

 

 何故よりにもよって相方がハルカなのか。行動隊長に小一時間ほど問い詰めたかったのだが残念ながら真太郎ごときに拒否権なぞありはしない。恐らくハルカの近くが一番安全だという真太郎に対する気遣いなのだろうが今この瞬間望んでなどいなかった。

 拒否権ありそうなハルカは何も言わなかったが、やはりやたらとよそよそしい。

 

 まさか龍輪功やっている時に声を聴かれたのを相当気にしているのだろうか。それとも真太郎があずかり知らぬ所で何か問題が起きているかのどちらかだろう。

 いい加減この辺もはっきりしておかないと今後この仕事をしていく上で困ったことになる。とはいってもどう切り出せばいいのか。

 

 ──俺なんか君に悪いことしたっけ? あー……駄目だ駄目だ駄目だ! 

 

 そんなことを言ってハルカの地雷を踏めば爆発四散待ったなしだ。見え透いた地雷をわざわざ踏むヤツがいるものか。

 とはいっても上手い言葉が見つからない。こういう時上手い言葉をひり出せるのができる人間なのだろうが残念ながら真太郎はその辺ヘッポコであるとしか言いようがなかった。

 

 2人だけになったところで各々キノコ図鑑片手に足元を探す。存外キノコというものは簡単に見つかるものだ。図鑑で安全を確認したところで背中に背負った籠に放り込む。

 少し離れたハルカはというと、図鑑は見ずにキノコを籠に放り込んでいた。確かに慣れている様子だった。

 戦国時代からやってきたというのだから実際にキノコ狩りはやっていたのだろう。多分山菜関係もそれなりに知識を持ってそうだ。

 

 そんなことより。

 これから戦うはずの茸群道人だ。自分とハルカの関係なぞいずれ時間があれば分かることだし、キノコ狩りも本題じゃない。茸群道人は前回とは条件が違うとはいえ、奴が危険な存在なことには変わりはない。それにハルカの力が抜き取られていたことを考えると苦戦は必至。シノビがいるとはいえ、心配であるのには変わりはない。

 

「鷹守さん。あの茸群道人ってヤツ、近くで見てたのでアレなんですけどスピード、切れ味、あの霧のようなもの。いずれもあの深紫の忍びが苦戦するほどでした。前回とはいろいろ条件が違うかもしれませんが……どうか、無茶だけはしないでください。戦部くん──悲しみますから」

 

「……え?」

 

「え?」

 

 何故か、鳩が豆鉄砲を食ったような顔でハルカは真太郎を見た。

 そんな鳩が豆鉄砲を食ったようなハルカの顔に真太郎は鳩が豆鉄砲を食ったような顔を……しつこい。

 

 ──え、どうしてそんな顔をするの……? 

 

 驚愕する真太郎とハルカ。お互いがそれぞれ別のことを考えていて手一杯なせいでお互いフリーズし切っていた。

 まさか地雷を踏んでしまったのか。この人の地雷一体どこにあるのかまるで分らない。

 タカマルやスズモリなど同性ならまだ分かるけれども、女の子についてはまるで分からない彼女いない歴=年齢という悲惨な人生をこれまで送ってきた男は酷く混乱した。

 

 ──どないせえっちゅうねん……

 

 スレ民にでも女心でも聞こうか。いや駄目だ、ふざけた回答しか返ってこない気がする。

 膠着状態に陥り、完全にキノコ狩りどころではない空気になっていた。

 

 さらさらと枯れ葉が温い風に流されていく音だけが聞こえる。この静寂を破ったのは──

 

 

 

 

「あああああああああああああああああああッ!?」

 

 

 ハルカでも真太郎でもない。

 少し離れた場所から木霊する、誰かの苦悶に満ちた女の悲鳴であった。

 

 

『こちらC班。敵怪忍と遭遇、これよりハルカ殿到着まで時間を稼ぎます!』

 

 頭が状況を察知するより先に無線機で脳に叩き込まれる現実は、真っ先にハルカを飛び出させた。それに真太郎は見送る形で一人のこされた彼は周囲をキョロキョロと見まわしてからおもむろにシノビヒョウタンを懐から取り出した。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 茸群道人の出現は突然であった。上弦衆スタッフ2名は雑談をしながらキノコたちを引っこ抜いていた。閂山自体キノコが自生するには適度な環境であったので収穫は容易かった。

 しかし、意気揚々と女性スタッフがその場に1本だけ残されたキノコを引き抜こうとした矢先だった。

 

 どすり、手の甲から強烈な衝撃が襲った。

 手元を見るとそこには細長い楊枝が手のひらを貫通しており、血がジワリとにじみ出る。そこからだ。上弦衆スタッフが痛みを認知したのは。

 

「あああああああああああああああああああああああ!」

 

 それは想像を絶する痛みだった。何かが刺さったと言うより皮膚の一部を引き剥がされたような痛みに近い。

 喉を潰し、空を裂かんばかりの悲鳴が痛みを堪えようとスタッフの喉奥から吐き出された。

 

「こんな所で態々善良なキノコたちを狩りに来るとは随分な唐変木が現れたモンでェ。ま、鴨が葱しょってやって来たモンだと思ってそのまま養分か苗床にでもなってもらいましょか」

 

 ぬるり、と言えばいいのか。がさり、と言えばいいのか。茸群道人は気付けば()()()()()

 奴は小太刀を引き抜き、苦しむスタッフにじりじりとにじり寄る。当然それを見過ごす相方ではない。拳銃を引き抜き茸群道人目掛けて弾丸を叩き込む。しかし着弾するより茸群道人が振るう小太刀で先に弾丸は真っ二つとなり地面に、木々に突き刺さるだけであった。

 このままでは埒があかないと判断したか拳銃を仕舞い、クナイを引き抜いて格闘戦に持ち込む。しかし──

 

「へっ、閃忍ですらないようなのが無理して前に出るモンじゃァないですや。ノコノコこんなところにきて……いけやせんや」

 

 その細長い腕を一閃させると、近づいた上弦衆スタッフを10m先まで紙切れのように吹き飛ばした。完全に力の差というものをありありと見せつけられた手を貫かれたスタッフの表情が絶望に染まる。

 このままでは殺される。這う這う逃げようとする彼女を歩いて追うその様は獲物を前に舌なめずりする肉食獣のそれだ。

 

「まぁ、あっしのキノコで貫いてやるのもいいですなァ、ツラはまぁあの黄色いの(鷹守ハルカ)に比べりゃ落ちちまうが、身体の具合ってモンはまた別の話でさァ」

 

 今から自分が何をされるか。

 茸群道人の物言いで何となく察した上弦衆スタッフの表情は絶望を通り越したナニカとなり果てる。そして小太刀を一閃させると、スタッフの上着が温くなったバターをナイフで割くように下着もろとも切り裂かれた。

 

「い……いや……」

 

 手は楊枝で貫かれたせいで上手く這うことも出来なければ、立って逃げようにも腰が恐怖で死んでいた。本来ならば先ほどの相方スタッフのように立ち向かうことが出来ればよかったのだが先ほどの不意打ちで思うように体は動かなかった。

 

「たす……けて……」

 

 本来ならば助けを請う者を助ける側のはずの彼女の口からの助けを求める。

 闇を切り裂き、光を齎す。そんな救世主めいた者へと──

 

 

 その時、空からクナイが飛来した。

 狙いは──茸群道人の首だ。

 

「むッ!?」

 

 即座に小太刀で跳ね除けるが、彼にとって確かな脅威がそこにいた。

 クナイの飛んできた方向を辿ると、逆光で隠れたシルエットが一つ。そのシルエットを彼女は知っている。この想破上弦衆の切り札。

 

 

「何やつ!」

 

 茸群道人が腹立たしげにそのシルエットを見上げる。そしてその切り札を見据えるのだ。

 

 

 

 その名も! 

 

 

 

 

 その名も! 

 

 

 

 

 その名も! 

 

 

 

 

「悪鬼彷徨う現の闇を払うは月影──我、上弦なり──。想破上弦衆が閃忍、ハルカ! 見参! 茸群道人、今度こそその人の存在を否定し、勝手な道理を押し付ける悪の行い。忍びの技にて砕きます!」

 

 

 

 

 

 

 

 闇祓う山吹色の閃光。閃忍ハルカが木の枝の上から茸群道人を見下ろしていた。

 茸群道人には瞳はない。頭部にある糸目のように見える裂け目が彼の眼となっているが心なしか忌々し気に見えた。

 

「忍びは彼女だけじゃあないッ!」

 

 また、声がした。今度はフィルターがかかってはいるが男の声だ。

 ハルカがいる方向とは真逆の所には、悪意祓う深紫色の疾風。深紫の装甲を身に纏う戦士が得物を片手に立っていた。その得物の切っ先を茸群道人へと向けた。

 

「俺もここにいる……お前を討ち滅ぼす為に……!」

 

「深紫の忍び……上弦衆ある所によくあらわれるモンですなァ……思えば随分と忌々しい。この胸の傷、忘れてやいませんぜ」

 

 茸群道人が胸の傷を腕の菌糸でなぞる。確かに回復はしたようだが傷跡そのものは残っているようだ。ライトで照らすとそれが分かった。

 完全に陽が沈んでおり、暗闇同然。が、深紫の忍びとハルカの眼はそのようなことで封じられたりはしないはずだ。

 上弦衆のスタッフは這うように3人から離れる。このままずっとぼけーっと見ていれば巻き添えを喰らいかねない。今から始まるのは人智を超えた殺し合いなのだから──

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 現場にたどり着いたのは良かったが、空は完全に暗闇に覆われていた。

 無論、この程度でシノビの視界が封じられることはない。忍者のライダーだ。暗闇に弱くては話にはならない。

 

「……行きます!」

 

「はぁッ!」

 

 一斉にシノビとハルカが茸群道人に飛び掛かって斬撃を放つ。

 しかし茸群道人もその軽やかな動きでシノビの一閃を回避し、ハルカの攻撃も小太刀で受け止めてみせる。

 剣戟の技量は確かに茸群道人の方が上だがハルカも伊達や酔狂で忍びをやってなどいない。が──

 

「くぅっ!?」

 

 完全に押され切っていた。

 ハルカの攻撃を悉くはじき返し、仕舞いには持っていたクナイを弾き飛ばしスーツにこれまでとは比較にならないほどの重い斬撃を叩き込む。ハルカの忍者装束型のスーツは障壁と呼ばれる見えない壁がある。それに阻まれた小太刀が血しぶきの代わりに火花を散らす。

 その見えない壁があったとしてもその衝撃は相殺できるわけではない。

 

 火花を散らしながら、ハルカの体は吹っ飛んだ。

 完全に押され切っている。見ただけでも分かる。茸群道人もまた()()()()()()()。それを証拠に奴の小太刀には黒々とした瘴気が溢れ出ている。一撃一撃が重いのはこれが理由だった。

 

「痛いッ!? つ、強い……」

 

「これでも養分はしこたまいただいておりましてねェ……先日のあっしとは一緒にしないでいただきたいね」

 

 シノビもまた、シノビブレードで斬りかかるがカウンター気味に一閃を放ち装甲に深々とした傷を付け、流れるような剣術を打ち込んでから吹き飛ばした。シノビを吹っ飛ばしてからハルカに斬撃を叩き込み、しこたま攻撃を喰らった所で倒れ伏した彼女の背中を踏みつけた。

 

「それに比べておたくらは何も変わっちゃあいない! 進歩もしちゃあいない! 人間って生き物は斯くも醜いモンでさぁ! さてと……どうしてやりましょうかねェ」

 

 言葉の通り、ハルカをどうしてやろうかと思索しているように見えた。

 シノビはもう一度斬りかかり、再びカウンターを叩き込まれる。

 

 

 その攻撃で地面に口づけをさせられたシノビは倒れ伏した状態で震える手で、ゆっくりと這う。

 まるで満身創痍だと言わんばかりに。

 

「あぁうっ!? く……わたしを……どうするつもりですか……!」

 

「さっきのを邪魔したんですからそれ相応の報いを受けるってのがスジってモンじゃあないですかねェ? 特に上弦衆は痛めつけろとのお達しでね。キノコたちの養分と苗床にでもなってもらいましょかね。さて。深紫の忍びさんには正直養分にする気にもならんので、ここで死んでいただきましょうかね」

 

 何処からか茸群道人は楊枝を取り出す。今度は1本ではない。10本だ。

 楊枝から瘴気を注ぎ込み、楊枝そのものが黒々とした光りを放つ。これを受ければ下手すればシノビの鎧は貫通し、最悪死に至るだろう。

 倒れ伏したシノビの仮面の下で真太郎は歯軋りした。

 

「ほれっ!」

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 その闇の楊枝はシノビの装甲を貫き、足元に刺さったものは爆発を起こす。当たれば死を意味する攻撃の中でシノビの断末魔が森中に木霊した。

 そしてシノビは……まるで()()()()()()()のように動かなくなった。

 

「忍びさぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

 

 ハルカの悲痛な叫びに茸群道人は気をよくしたらしい。へへへっと笑い、ハルカの腹を全力で蹴り付けた。

 

「お゛う゛っ゛! ゛? ゛」

 

 口から何かが戻りそうになるのを堪えながらハルカの身体は蹴りにより数センチ浮いてから転がった。

 

「わ……わたしは……」

 

「今日も負けましたなァ。へへへっ、これも天の配剤って奴ですかねェ? 

 

 シノビの死で絶望に染まるハルカを嘲笑うように動かなくなったハルカの近くでニタリと笑ってから茸群道人は腕の菌糸を夜空へと高らかに挙げ、唄うように叫んだ。

 

「ノロイよ、我に力を! 陰呪、異相転移の法!」

 

 茸群道人と倒れたハルカを中心に紫色の魔法陣のようなものが広がっていく。これは業岡一全も使っていた転移術だ。そしてその光が強くなっていくと──ハルカと茸群道人の姿は消え失せた。

 

 

 

 

 

 

 糸の切れた人形と化したシノビを置いて……

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 身を起こすとそこは見知らぬ風景だった。

 先ほどの閂山よりしっとりとした、放っておけばカビが大量繁殖しそうな湿気。

 埃が舞うような古ぼけた壁、階段。

 それは主を失って長い洋館のようであった。床はコケのような物体がびっしりと敷き詰められており、本来陽が沈んでいたにもかかわらず怪しい光で満たされ明るく思えてしまう。

 そんな状況に鷹守ハルカはぶるりと身震いした。

 

「……忍びさん」

 

 ぽつり、とハルカは先ほどの散った戦士のことをつぶやく。眼前で深紫の忍びが断末魔を上げながら死んでいくのを見た。

 また自分は見殺しにしてしまったのだ。

 

 戦国時代、時渡りでこの時代にやってくる前にかつての仲間にしたのと同じように。

 タカマルの声は先ほどの転移の影響で聞こえてはこない。

 

 心細かった。

 

 

 

 ハルカはゆらりと幽鬼のように立ち上がる。

 そして気配がした方を向くとそこには茸群道人が立っていた。

 

「へへっ、ようこそ。あっしの隠れ家へ」

 

「…………」

 

 自らの家であるが故か。その佇まいはひどくリラックスしたものであった。

 周囲を見渡すとそこには無数の菌糸に絡まれた人影が1つ、2つ、3つ。そこからまるで血を吐くようなうめき声が聞こえてくる。

 今この瞬間、茸群道人たちの養分か苗床にされているようだ。目を凝らすと目を覆いたくなるような惨状を見せていた。

 生まれたままの姿で、全身のありとあらゆる箇所からキノコを生やされておりか細い声で助けを求める声を出している。

 

「適度な暗さ、適度な湿気、キノコには最高な環境でござんしょ? ま、見ての通り、あっしは実験してましてね?」

 

 勝ち誇るように苗床と養分にされた人々を一瞥してから茸群道人は言葉を続ける。

 

「あっしはたまたまノロイ様の力でこのオツムと力を手にしましたがァ……できりゃァ、他のキノコ衆もあっしのようになってほしい……な、もんでキノコに知恵を付けようと色々頑張っているんですがこれがまァ難しくて」

 

 パチン、とその腕の先端にある指のように枝分かれした菌糸の指を打ち鳴らす。

 すると足元がゾワゾワと音を立ててコケのようなものが伸び始める長い茎と傘を持った触手のような……大小ばらついたキノコの群れがハルカの周りを取り囲んだ。

 

「これは……キノコ!?」

 

「改良途中のキノコ衆でさァ。てっとり早く人間衆のエキスを混ぜたら繁殖欲だけが似ましてねェ……」

 

 ぞわり、とハルカの背筋が凍る。

 繁殖欲。いくら戦国時代からやってきて現代について疎かったとしてもそれくらいは分かる。

 そんなハルカの様子がおかしかったのか、再びへへへっと笑う。

 

「まぁ、お察しの通りってヤツでさァ。一言で言やァ、『ブチ込んでイきたい』ってねェ」

 

 そうして多くの人を手篭めにし、生ける屍として自らの兵としたということか。

 その事を思うとハルカの肚の奥からふつふつと怒りのようなものが沸上がる。

 

 そして、クナイを握りしめ──

 

「さあ! キノコ衆! この女の肉、心いくまで貪りなせぇ!」

 

 茸群道人の赦しを得て雪崩のように襲い来るキノコたちの群れを

 

 

 

 一閃した。

 

 

 

「なっ……上弦衆はもうあっしの攻撃で動けんはず!?」

 

 ハルカの反撃を想定していなかったのか、茸群道人がたじろぐ。そんな彼を他所にバラリと先端を切り落とされたキノコの傘たちがハルカの足元を転がる。

 そうだ。強くなったのは何も茸群道人だけではない。

 龍の者……戦部タカマルの力を受けた鷹守ハルカもまた強くなっているのだ。

 

 深紫の忍びを、茸群道人に養分にされて犠牲になった人々、そして仲間であり姉のような存在──スバルの顔を思い浮かべ目をカッと見開く。

 

「ここまで来たのは何もやられたからではありません。あなたに攫われた人々を、救い出す為です!」

 

「……なんですってィ!?」

 

 驚愕の声を上げる茸群道人にハルカはキッと睨みつける。

 

 

 元からハルカ自身が誘拐されるのは狙っていたものだった。そのために足蹴にされていた時に何をするのか念のために問うたのだ。

 無論、この狙いはタカマルも反対をしていた。当然だ。自ら死ねと言っているようなものだ。

 

 しかし。

 あのゾンビにされている人を見てしまった。

 そして、業岡一全に負けて皆を不安にさせてしまった。

 だからこそ、無理してでも皆に希望を持って欲しかった。

 

 

 

 

 作戦案としてはキノコ狩りか、キノコの会食かのどちらかであった。

 

 前者は山中という兼ね合い上負担がそこそこあったので、会食の方がまだ楽ではあった。

 だがキノコ狩りの方がハルカにとっては都合がよかった。今回のように負けたフリとはいえ見ている人間が居たとしたら不安にさせてしまうからだ。

 今回のように人気の無い所で人知れずやられてしまった方が誰かを不安に追い込むこともない。

 それに山中の方がまだ罠とは思われまい、そんな思いも同時にあった。

 

 アキラは言った。

 

 閃忍は最後の希望だ、と。

 

 

 深紫の忍びを見殺しにしてしまった以上後退は許されない。絶対にここで捕えられている人々を助けてみせる。

 次々と襲い来るキノコをクナイで両断していると、茸群道人がへへへっと怪しげな笑みを浮かべた。

 

「一杯食わされたって事ですかィ……だがここはあっしの『ほおむぐらうんど』ってヤツでさァ。そう簡単に──」

 

「そう簡単に、なんだ?」

 

 その時。茸群道人とはまた別の男の声が聞こえた。フィルターがかったその声には聴き覚えがある。

 茸群道人はぎしり、と錆びついたブリキ人形のように振り向くとそこには──深紫の忍びがいた。何故か手をひらひらさせており、仮面の下に人の顔があるのならきっと悪い笑顔をしていたに違いない。

 

「どうもー」

 

「なっ……深紫の忍び!? 死んだはずじゃあ……!」

 

 困惑していた茸群道人の顔面にそのまま深紫の忍びはパンチをめり込ませた。

 

「グボァ!?」

 

 拳をモロにもらったことできりもみしながら吹っ飛び勢いよく隠れ家の床を転がりその体は壁際まで離れていく。その様にはハルカも内心膝を叩いた。

 悶絶している茸群道人を他所にハルカの意識は死んだはずの深紫のシノビに行っていた。

 

「忍びさん!? 無事だったんですね!」

 

 てっきり死んでしまったものかと。

 ハルカとしては彼もまた、狙いは分からないが、誰かを助ける為に自らの命を賭けられる同志であり、戦友とも思っていた。

 故に彼の生還に目頭が熱くなりそうだった。

 

 

「……出来るか一か八かのぶっつけだった。変わり身を使いやられたと錯覚させて奴の転移に便乗したんだ。成功してよかった…………マジ死ぬかと思ったけど」

 

 最後の言葉は聞き取れないくらいに小さな声だったが、深紫の忍びは片手間に忍者刀で伸びるキノコたちを両断しながらハルカの隣に立つ。

 もう何も、迷うものは無かった。




 密猟海岸をネタにしようかなと思いましたが踏みとどまりました。
 それはそれとしてソシャゲ名義とはいえハルカさんのASMR(えっちいので18歳未満はチェックしちゃダメよ)がこの令和の時代に出るとは……


 おま◯け。
 舞台の2008年ってどんな年?

・超昂閃忍ハルカ発売
・仮面ライダーキバ/炎神戦隊ゴーオンジャー放送開始
・劇場版さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン上映
・モンスターハンターポータブル2ndG発売
・機動戦士ガンダム00 1stシーズン終了、2ndシーズン開始
・iPhone3G発売。日本で初めて発売されたiPhoneとなる。
・Twitter日本語版開始

 当時ハーメルンもなければ、きっかけとなったなろうのレギュレーションも変わる前。
 (時代)感じるんでしたよね?


 裏話ですが、タカマルがモンハンを買ったのはハルカさんがゲーム機に興味を持っていたためなんですって。
 両片想いのタカハルいいよね……アレ? タカハルだとアカニンジャーでは(ry (タカナリもタカスバもいいと思う)


 次回。キノコ狩りの女……?FINAL
 ForeverとかRとかそういうのはない。多分、おそらく、きっと。
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