告白し
結ばれる
それはとても素晴らしい事だと、誰もが言う
だが、それは間違いである!!
恋人達の間にも、明確な力関係が存在する!!
搾取する側とされる側
尽くす側と尽くされる側!
勝者と敗者!!
もし貴殿が気高く生きようと云うのなら、決して敗者になってはならない!!
恋愛は 戦!
好きになったほうが、負けなのである……!
第1話「映画に誘わせたい:改」
私立
かつて、貴族や士族を教育する機関として設立された由緒正しい名門校!
貴族制が廃止された今でなお、富豪名家に生まれ将来国を背負うであろう人材が多く就学している
「…っ!」
そんな彼らを率い纏め上げる者が、凡人であるなど許される筈もない!
「皆さん…!ご覧になって!」
「……ふっ」
「……ふふっ」
秀知院学園の廊下を堂々たる姿で歩む男女…
「生徒会のお二人よ!!」
秀知院学園 副会長
総資産200兆円
鉄道、銀行、自動車
ゆうに千を超える子会社を抱え、4大財閥の一つに数えられる『四宮グループ』
その本家本流
総帥・四宮
その血筋の優秀さを語るが如く
芸事、音楽、武芸、いずれの分野でも華々しい功績を残した正真正銘の『天才』
それが四宮かぐやである
「……」
そしてその四宮が支える男こそ!
秀知院学園 生徒会長
質実剛健
聡明英智
学園模試は不動の一位!
全国でも頂点を競い、天才たちと互角以上に渡り合う猛者である!
多才であるかぐやとは対照的に、勉学一本で畏怖と敬意を集め、その模範的な立ち振る舞いにより生徒会長へと抜擢される
代々会長に受け継がれる純金飾緒の重みは秀知院200年の重みである!!
「いつ見てもお似合いなお二人ですわ…」
「えぇ、神聖すら感じてしまいます…」
「もしかしてお付き合いなされているのかしら?どなたか訊いてくださいな」
「そんな!近付くことすら烏滸がましいというのに…出来る筈がございません……っ」
秀知院学園 生徒会室
「…なんだか、噂されているみたいですね。私たちが交際してるとか……」
四宮かぐやは白銀御行に紅茶を淹れながら話題を吹き込んだ。先程の生徒達が話していた事だろう
「そういう年頃なのだろう、聞き流せばいい」
「ふふ……そういうものですか」
かぐやは御行の前に紅茶が入ったティーカップを置き、お盆を抱える
「私はそういった事柄に疎くて…」
「……」
(…ふん、俺と四宮が付き合っているだと?くだらん色恋話に花を咲かせおって…愚かな連中だ……が、まぁ……)
「……」
(四宮がどうしても付き合ってくれって言うなら考えてやらん事もないがな……!)
「……?」
(まぁ確実に向こうは俺に気があるだろうし、時間の問題か……)
白銀は以前読んだ恋愛本に記載されていたものを思い出した
(くく……さっさとその完璧なお嬢様の仮面を崩し、赤面しながら俺に哀願してくるがいい)
「……ククク」
「……」
〈全く、下世話な愚民共。この私を誰だと思ってるの?国の心臓たる四宮家の人間よ?どうすれば私と平民が付き合うなんて発想に至ったのかしら〉
「……」
〈…まぁ、会長にギリのギリギリ可能性があるのは確かだけど。向こうが跪き、身も心も故郷すら捧げると言うならこの私に見合う男に鍛えてあげなくもないけれど……まぁこの私に恋い焦がれない男なんて居ないワケだし?時間の問題かしら?〉
「……ふふふ」
「……ククク」
などとやっているうちに……半年が過ぎた!
その間、特に何も無かった!
「そういえば今日、庭の噴水にある甘いりんごとさくらんぼのレリーフの奥深くにかたつむりが……」
「あぁ、俺の妹が昔暑いからといって噴水に入って風邪を引いてな。本当、感情で動くとろくな事に……」
このなんもない期間の間に二人の思考は
『付き合ってやってもいい』から『如何に相手に告白させるか』という思考へとシフトチェンジしていた!
この生徒会室の中で超高校級の頭脳が高度な駆け引きを行っていることに書記の
「あ〜そういえばですねぇ〜」
藤原はカバンから2枚の映画のチケット取り出す
「懸賞で映画のペアチケットが当たったのですが、わたくし家の方針でこういったものを見るのは禁止されておりまして…どなたか興味がある方がいらっしゃればお譲りしようと思って持ってきたのですが……映画の公開が今週末までで……」
「……ほぅ」
備考:ドケチ
「そういえば週末は珍しくオフだったな」
御行は自身の手帳と日時を照らし合わせた
「だったら四宮、俺たちで……」
「なんでも〜!この映画を男女で見に行くと二人は結ばれるジンクスがあるとか」
「…っ!」
(な…んだと……!!)
「あら会長…今、私の事を誘いましたか?男女で見に行くと結ばれる映画に、私と会長の
「…………ゴクッ」
「…それはまるで──」
(──まるで告白のようではないか!!)
白銀 突然の窮地!!
恋愛関係において、『好きになった方が負け』は絶対のルール!!
即ち『告白した方が負け』!!
プライドの高い両者に於いて自ら告白をするなどあってはならないのである!!
(どうする……!?あからさまではあるが誤魔化すしか選択肢は…ッ)
例
「お…俺と一緒にチケット屋に売りに行くか?」
「あらまぁ、会長ともあろうお方が慌てふためいて……」
「……ッ」
「お可愛いこと…」
(許されない!!白銀の征く道に逃げ道無し!逃げるのは貴様だ四宮!!)
「…あぁ、四宮を誘った」
「……」
「俺はそういった噂など気にせんが、お前はそうではないようだな」
「……ッ」
「どうする四宮?
「……」
(さぁ……どうでる……?)
四宮、刹那の思考
しかし、それは常人に於いての熟考に値する!!
〈あえて切り込んできましたか……勧誘の意思を強く示した上で映画を見に行くかの選択権を私に譲渡する……上手い切り返しです……〉
〈誘い自体を断るという選択肢もありますが、それではここまでの下準備が全て無駄になってしまう……これまでの──〉
〈わざわざ懸賞を偽造し……藤原さんのポストに投函……会長の少ない休日を狙い撃ちした計画が……!〉
〈それにここで誘いを断ってしまえば、案外メンタルの弱い会長に映画へ誘われるなんて状況は今後無いかもしれない〉
〈それは乙女的にNO!そのような選択肢はNO!退路は無い!〉
「そうですね……」
「……」
「やはりどうしてもこういった話は信じてしまうもので…行くならせめて、もっと情熱的にお誘い頂きたいです……」
「……ッ!?」
スキル『
これは四宮家の帝王学が編み出した一子相伝の交渉術である。この計算され尽くした表情、声音の前では、神でさえも胸キュンしてしまうという────
「…ガハッ!」
事実、白銀も思考を乱される!
頑ななプライドは霧散し
(まぁ、告白は男の役目なのかな……)
なーんて思考が頭をよぎり、思考に揺らぎが生まれた!!
「……ッ」
その隙を四宮が見逃す筈もなく、すかさずの追撃!
四宮は白銀の手を握り初々しい表情で言った!
「私だって恋の1つもしてみたい年頃なのです」
この思考戦は詰将棋の様相を呈し始めていた!
追い詰める四宮!
逆転の機を探す白銀!
「……ッ!」
「……ッ」
二人の思考は決着の論理を組み立つつあり、その理論を先に完成させた方が勝者と──
「あ、もし恋愛映画がお嫌でしたら『とっとり鳥の助』のチケットもありますよ〜」
「…!?」
「…!?」
『カオス理論』!!
書記・藤原の何気ない一言により完成寸前の理論に一点のカオスが混入する。たかが一点であるが、その
「……」プシュゥゥゥ
「……」プシュゥゥゥ
莫大に増えた選択肢を処理する為に、二人の頭脳は限界を越えた回転を強いられる!!
「あのー……どうか致しました?」
結果……!
脳は大量の糖分を欲する!
この生徒会室に存在する糖分はこの饅頭一つ限り!!
「……ッ!」
「…ッ!」
お互いに饅頭に手を伸ばす白銀とかぐや!
即ち!この饅頭を手にした者が勝者と──
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
「御三方とも、午後の授業が始まりますよ!」パクッ
「…ッ!」ガクッ!
「…ッ!」ガクッ!
「中野さん!」
「藤原さん、午後の授業は調理実習だそうですよ」
「本当ですか!?楽しみ〜!」
「……」
「……」
これは、互いの知略とプライドを掛けた
高度な恋愛頭脳戦である
本日の勝敗結果
両者敗北
秀知院学園 生徒会長 白銀御行…
学園模試は不動の一位
全国でも五本の指には入る成績だ…
「……おもしれぇ、生徒会に興味はないが、ちょいと腕試しと行こうか」
次回
第2話「五つ子ちゃんは教わりたくない」