「日本で最初に花火を見たのは徳川家康という説があるんだ。起源は中国だがヨーロッパを経て種子島に鉄砲と共に伝わり……」
「全然つまんない!何が悲しくてあんたと二人で花火見ないといけないのよ!」
「お前が悪いんだろ!」
「今連絡したが、四葉と藤原はらいはと一緒にいるみたいだ、時計台の近くだとよ」
「ほんと!?じゃああたしはその子たちを迎えに行くから、あんたは一花と三玖と五月を探しなさい!」
「俺だけ探す人数おかしくないか!?」
「さっさと行きなさい!みんなを頼んだわよ」
「……」
「花火はお母さんとの思い出なんだ」
「……わかった、迷子になるんじゃねぇぞ!」
「ふん!」
《一花…三玖…五月…何処にいる!?》
「フータロー!」
「三玖、良かった!よく俺を見つけられたな」
「…ま、まぁ…」
「そうだ!一花と五月を探してる!付いてきてくれ!」
「あ、待って!痛っ…」
「……!」
「足踏まれちゃって…フータローは先行ってて」
「……っ」
「……ごめん」
「気にするな、これで少しはマシになっただろう」
「…うん」
「……あと40分…何やってるんだあいつら…このままじゃ五人集まる前に花火が終わっちまうぞ」
「……勉強関係ないのに協力的、フータローのくせに」
「失礼な、俺にも思うところがあんだよ…この為に必死に宿題をやってるのも見たしな」
〔……フータロー…〕
「歩けるか?」
「……うん」ギュ
「すみません、花火大会に来られた方にアンケートをしているのですが……お二人はどういったご関係でしょう?」
「そこはいいでしょ、この二人はカップルに決まってるじゃん」
「そっか」
「…っ!?」
「……私たちは恋人じゃなくて」
「えっ?どう見てもそう見えますが」
「……!!」
「…こ、これは…っ」
「そんなんじゃなくって…わ、私たちは……友じ」
「ただの知り合いですよ」
「……」
「…そ、そうでしたか。失礼いたしました〜…」
「フータロー」
「?なんだ?」
「…ううん、なんでもないっ」
「……」
「…あ、フータロー、あれ見て」
「五月」
「……!……なんだあなたですか…」
「残念さを少しは隠しなさい」
「…そういえば、白銀君達は何処にいるのでしょうか」
「さぁな、アイツらもアイツらで忙しいんじゃないのか?」
花火大会終了まで00:36:28
「白銀御行は探したい」
「……そうか、四宮が…」
「どうします?藤原先輩は四葉先輩と一緒にいますし…」
「……ひとまず藤原書記達を探して、状況を判断しよう。みんなは今どんな状況なのか…」
「藤原先輩たちは今時計台の近くにいるみたいです」
「…よし、行こう」
「……あ、会長!石上くん!」
「藤原書記、四葉、それに上杉妹」
「白銀さん!みんなは何処に言っちゃったんですか!?」
「落ち着け!それを確認しに来たところだ!」
「…あ、あんた達!」
「二乃ォ!」
「二乃、誰かと落ち合わなかったか?」
「さっきまで上杉といたけど、今は何処にいるか分からないわ、他の子たちとは連絡が繋がらないし…」
「……」
(一花のこと、言うべきだろうか…だが、この花火大会は二乃にとっても大事な筈…一花なしでは達成しない)
「……二乃、お前は五人で花火を見たいか?」
「もちろんよ、それが毎年の楽しみなんだから」
「……俺もだ」
「…え?」
「俺もお前たち五人には、五人で花火を見て欲しい」
「……白銀…?」
「…上杉に伝えれたら伝えてくれ」
「……」
「……中野一花は、俺が探す」
「……っ」
「……見つけたぞ」
「…あはは…人探し上手だね〜」
「説明してくれ、あの男は誰だ?なぜ五人で花火を見れないなんて言った?」
「……」
「なぜ俺から逃げる…?」
「……さっきの人は私の仕事仲間。五人で花火を見れないのは、物理的にってこと。そして…」
「……」
「私が君から逃げてるのは…!」
「…どうした」
「私の仕事仲間!どうしよう、仕事抜けて来たから怒られちゃう!」
「知らん!奥から逃げれば…」
「あー!間に合わないよ!」
「……?」スッ
「……」ギュゥッ
「……」
(俺今一花とハグしてる!?これはどうなる!?四宮にバレたらなんて説明する!?)
「ごめん、もう少し」
「……アイツは何者だ」
「…あの人カメラマンなの、私はそこで働かせてもらってる」
「……カメラ…アシスタント…?」
「……うん。いい画が撮れるように試行錯誤する。今はそれが何より楽しいんだ」
「……学生の大切な時期にそんなことして大丈夫なのか?君たちは勉強に集中しなきゃ進級すら怪しいんだぞ」
「……カイチョー君は…何のために勉強してるの?」
「…っ!?」
(何のため──)
「……恋愛感情は永遠じゃないの」
「……」
「一花ちゃん見つけた!」
「しまっ…」
「こんなところでなにやってんの」
「えっ」
「言い訳は後で聞く。早く走って!」
「えっと…えっ?」
「……」
「三玖!?もしかして私と間違えて…」
「とにかく追うぞ……っ!」ピロン
「…どうしたの?カイチョー君」
「……悪いが、先に行っててくれ」
「……?」
「……ゲームスタートだ」
花火大会終了まで00:28:34
「中野一花は演じたい」
「一花!」
「…フータロー君…!?」
「……白銀から聞いたぞ。お前、女優だったんだな」
「……今から大事なオーディションなの…」
「それはあいつらよりも大事な物なのか…?」
「…っ」
「一花、俺はな…勉強しか出来ない…頭が良い事しか取り柄のない男だ」
「自分で言う?」
「だがな、お前たち姉妹を見ていると……どうしても黙って見てる訳には行かねぇんだよ」
「……どうして君たちは、そこまでお節介焼いてくれるの?」
「……俺とお前が、協力関係にあるパートナーだからだ」
「……っ」
「花火大会ももうじき終わる。ほんとに良いのか?」
「…これが私のやりたい事だから…協力関係にあるなら応援してよ」
「……っ」
「…これ、今日のオーディションの台本。練習付き合ってよ」
「……棒読みでしか出来ないからな」
「やったー」
「いくぞ…」
「……うん、お願い」スッ…
「……そ、そつぎょーおめでとー…」
「先生、今までありがとう」
《学園モノのクライマックスシーンか…?》
「先生、あなたが先生で良かった。あなたの生徒でよかった」
「……っ」
「…あれっ?もしかして私の演技力にジーンときちゃった?」
「あなたが先生で良かったなんてお前の口から聞けるとは…」
「そっちか……あ、社長の車だ…じゃあね」
「これだけでいいのか?」
「うんっ…とりあえず役勝ち取ってくるよ」
「……おい」パンッ!
「…!?……ほえ?」
「その作り笑いをやめろ」
「ははは…え…?」
「お前はいつも大事なところで笑って本心を隠す。ムカッと来るぜ……余裕があるフリして…白銀から聞いたぞ。震えてたって」
「……この仕事を始めて、やっと長女として胸を張れるようになれると思ったの。一人前になるまであの子たちには言わないって決めてたから…花火の約束あるのに最後まで言えずに黙って来ちゃった……これでオーディション落ちたら、みんなに合わす顔がないよ」
「……」
「それにしてもまさか君が私の細かな違いに気が付くなんて思わなかったよ。お姉さんびっくりだ」
「俺がそんなに敏感な男に見えるか?」キリッ
「自覚はあるんだ」
「お前の些細な違いなんて気づくはずもない。ただあいつらと違う笑顔だと思っただけだ」
「……参ったな…フータロー君やカイチョー君を騙せないなんて自信なくなってきたよ」
「演技の才能ないんじゃね?」
「わーお直球だね」
「言っておくがその方が俺にとって好都合だ!寄り道せずに勉強に専念してくれるからな!」
「よ、寄り道なんかじゃない!これが私の目指した道だよ!」プップーッ
「…っ!」
「一花ちゃん何やってんの、早く乗って!」
「は、はーい!」
「……まぁ、あいつらに謝る時は付き合ってやるよ…パートナーだからな」
「……フフッ」
「……さて、あとは…」
(…白銀……頑張れよ…)
花火大会終了まで00:01:09
「白銀御行は見せたい」
「……」
神様なんて居ない
そんな事は分かってた
皆は花火、楽しめたかな
だといいな
花火はビルの合間からしか見えなかったけれど
とても大きくて
皆が見た花火は……
きっと綺麗だったに違いないわ
皆が楽しめたなら
私は…
それで……
「……」
「…私も見たかった……花火……皆と」
「だったら俺が見せてやる」
「……会長……!?」
「来い四宮、そんなに見たいなら見せてやる」
「えっなんで……どうしてここが……」
「……ふん、『四宮の考えを読んで四宮を探せゲーム』の事か?
本日の勝敗結果
白銀の勝利
花火大会!!
今回白銀達が見に来た東京湾花火祭は20時までの開催である!
「かぐやさーん!」
「会長!タクシー捕まえておきました!」
都内の花火大会は大体が
だが……郊外に出れば事情は変わる!!
「運転手さん!このまま首都高乗ってアクアラインで海ほたるの方へ!」
白銀の脳内には既に夏休み期間のイベントが全て記憶されている!
無論それらは全てかぐやとのデートを想定したもの!
その日程と時刻
延期した場合の予備日まで入念に調べ上げる執念!
「先日の雨で延期になった花火大会がある」
「……会長、もしかして」
──その執念が引き寄せる!
「千葉だ!木更津の花火大会は8時半までやってる!」
一筋の光明!!
「えーっ!あと20分で千葉まで行けますか?」
「知らん!だが挑戦する価値はある!四宮に花火を見せるんだよ!!」
「…っ!」
「ちょいと飛ばしますんでね。会社には、内緒にしてね」
「えっ?誰この格好いいドライバー」
「神様ー!!間に合わせてーーっ!」
無論
この世界に神など居ない
ロマンも愛も確率論に何の影響も及ぼさない
奇跡など無い
「会長!外が全然見えないです!」
「アクアラインは海底トンネルだからな!そりゃ見えん!」
「海ほたるのパーキング表示!地上に出ます!」
だが──
努力と思考を積み重ね行動した者たちには──
「間に合えーー!」
「間に合えっ!」
「間に合えぇぇ!」
「……っ」
必ずや与えられる光景がある!!
ドンッ! バーンッ!
「……」
誰もが花火に目を向ける
皆が私の為に見せてくれた花火
だけど
ごめんなさい
その横顔から
目が離せない
心臓の音がうるさくて もう──
花火の音は聞こえない