よろしくお願いします。
「……」
「あれ、二乃どうしたの?」
「男の子と踊るってテンション上がってたじゃん」
「……フられちゃったわ」
3日目(最終日)夜
最終日の夜のプログラムはキャンプファイヤー
生徒たちが火を囲み、これまでの思い出に区切りを打つ大事な行事でもある
「え!?彼と会ったの!?」
「いいえ、上杉さんからの伝言です」
「あぁ…」
数分前、かぐやに呼び出された二乃は
キンタローが来れない事を告げられた
「外せない用事が出来たらしく、スキー場でたまたま会って頼まれたらしいです」
「…やっぱりあれ、彼だったんだ」
「……」
「…まぁ、待つだけ待ってみるわ」
「……最後に一つだけ…「元気出せよ」と、彼は言っていました」
「……」
「……」
〔1番元気の無いあんたが言うなっての…恩着せがましく心配なんてして……少しは自分の心配しなさいよ…〕
【……信じていいのよね?】
【あぁ…】
「…ムカつく」
「…あれ?二乃どこ行くのー?」
「ちょっとトイレ!」
「キャンプファイヤーもうすぐ始まるよー?」
「……」
「……一花、大丈夫?」
「三玖…うん、何とかね…」
焚き火の近く、階段に座っていた一花に三玖が近付く
「……」
「……生徒会ももうすぐ解散だねぇ…」
「…そうだね」
「生徒会が解散すれば、またあの勉強地獄の日々が始まるのかなぁ…?」
「…いつも勉強地獄だけどね」
「あはっ…私はバイトで最近は行けてないからなぁ〜…」
「……ねぇ一花…」
「ん?」
「…学校辞めるって、ほんと?」
「…っ!……誰から聞いたの?」
「フータロー…意識が朦朧としてる時に、一花の声が聞こえたんだって…」
「……あちゃ〜…やらかしたなぁ〜…」
「……」
「……分かんない…仕事が忙しくなれば、その内辞めるかも…」
「……」
「それは得策とは言えんな」
「…カイチョー君!?」
すると、2人の背後に白銀が現れる
「確かに夢を追いかける事は素晴らしい…しかし、それでお前の学生園生活がおじゃんになってしまえば元も子もない」
「…それは……」
「……しかし、この学園に未練がないのであれば…辞めてもいいんじゃないか…?」
「……カイチョー…!」
「……未練…か…」
すると、三玖が一花に振り向いた
「……一花、私は…フータローが好き」
「…っ」
「だから好き勝手にするよ、だから一花も…みんなも…」
「……」
「お好きにどうぞ。負けないから」
「……三玖…」
「……フッ…覚悟を決めたか、三玖」
「うん、カイチョーも応援してよね」
「そうはいかない、俺はいつでも中立の立場だからな」
「……何それずるい」プー
「好きに言えばいいさ…ところで、2人に質問なんだが」
「…ん?」
「どうしたの?」
「……四宮何処にいるか知らないか?」
「……」
「……」
「……」
「……四葉さん…?」
上杉のいた部屋に入った藤原
中には既に四葉が立っていて、上杉のしおりを持っていた
「…これ、上杉さんのしおり…付箋やメモがたくさん…こんなに楽しみにしてたのに…」
「……」
「…具合の悪い上杉さんを無理に連れ回して、台無しにしちゃいました…」
「……」
「…私が余計な事をしなければ…」
「……そんな事ありませんよ〜」
「…え?」
藤原は四葉から上杉のしおりを取り上げ、ページをパラパラとめくった
「だって……」
「…っ!」
メモの中にいくつも書かれている、「四葉」の文字
「これって直近の話ですよね〜?具合が悪くてもこんなメモを残すくらいです!無駄では無かったと思いますよ!」
「……藤原さん…」
「だから元気出して下さい!」
「…本当かな…三玖は寂しい終わり方って言ってたけど…楽しかったのでしょうか?」
「…さぁ〜…それは本人に聞かなきゃ分かりませんよ〜?」
「…私!上杉さんに聞いてきます!」
「はい!」
上杉の部屋を走って出ていく四葉
その後をゆっくり出てきた藤原は気付いた
「五月さん!?」
「…すいません、勝手に聞いてしまいました…」
「…五月さん!貴方も行ってください!」
「え!?今からですか!?」
「だって、五月さんだって上杉さんに聞きたい事があるんですよね!?」
「…そ、それは…」
「大丈夫です!きっと上杉さんなら、皆さんの話を聞いてくれますよ!」
「…そうでしょうか…」
「……上杉さんは、貴方を信じてくれましたよね?」
「…っ」
「…今こそ、上杉さんを信じるべきです!」
「……藤原さん…分かりました!私も四葉を見習って行ってきます!」
「はい!行ってらっしゃいですっ!」
「……ハァ……ハァ…」
(…四宮…何処にいるんだ…?)
「……」
「…かぐや様」
「……早坂…なんの用?」
「何してるんですか?会長と踊る約束じゃ…?」
宿舎から少しだけ離れたところ、かぐやは誰もいないところで、早坂に呼び止められた
「…今更何言ってるの?今から行ってもどうせ間に合わないわ。それに…」
「……それに…?」
「……っ…やっぱり昨日の事が忘れられないのっ!こんな状態で今会長と会えば!緊張してまともに喋れないわぁ!」
「……はぁ…」
早坂からは、呆れと安堵
両方のため息が1度に出た
「……かぐや様…この林間学校が開ければ、生徒会もすぐに解散…本当にこれが最後で良いんですか?」
「……それは…っ」
「……一生に一度の林間学校です…後悔の無いように、お願いしますね…」
そうしてかぐやから離れる早坂
「……分かってるわよ、そんな事…!」
〈……でも……でも…!〉
「…四宮!」
「…っ!?会長!?」
「……見つけたぞ」
「…っ」
「……どうしてここが?」
「…何となく、四宮が行きそうなところを手当り次第当たってみたんだ。見つかってよかった」
「……」
かぐやと白銀は並びながら座り込んだ
「…なんだか、夏祭りの時を思い出すな」
「…えぇ…あの時、会長が私を見つけてくれていなかったら…私はみんなとあの大きな花火を見ることは出来ませんでした…」
「……みんなで月見もしたな…」
「…はい…でも、あの時の会長は本当にどうかしていました…」
「や、やめろ!思い出させるな!」
「…ふふっ…でも、今日も月が綺麗に見えますね」
「…三日月だがな…」
「……」
「……」
暫く静かな時間が流れる
少し肌寒い空気が、かぐやの頬を冷やした
でも、心の温もりは
いつまで経っても冷めてはいなかった…
「……四宮」
「…はい…?」
白銀は立ち上がり、かぐやに手を差し伸べる
「…っ」
「…四宮、約束…覚えてるか?」
「…勿論……ですが…」
「…っ?」
かぐやは伸ばした腕を再び戻した
「……四宮…?」
「…本当に良いんでしょうか…?」
「……?」
「…この林間学校が開ければ、生徒会は解散です。ここで会長と踊るのも、ひとつの思い出となって、いい結果になるかもしれません…ですが…」
「……」
「藤原さんや石上君…中野さんや上杉さんがいない今、私たちだけが楽しんで本当にいいんでしょうか…?」
「……四宮…」
「確かに私は、後悔しない林間学校を望みます…ですが、私は…」
「……」
白銀は目を深く閉じ、再び開いた
「……俺は生徒会長として、みんなに後悔のない林間学校を、楽しい林間学校を、愉快な林間学校を…一生に一度の思い出を残して欲しかった…」
「……」
「……でも、それじゃ意味が無いんだよ!」
「…会長」
「…俺はみんなの為を思ってこの林間学校を成功させたいと思った…だけど本当は、俺が…俺たちが楽しまなきゃダメなんだよ!」
「…っ」
「…一生に一度の思い出は、今しか作れないんだ!だったら…今、俺たちには最後までこの林間学校を楽しむ権利がある筈だ!」
「…っ」
「俺たちは秀知院学園生徒会会長、そして副会長…だがその前に……俺たちはこの学園の生徒だ!」
「……っ!」
「だから、生徒として…俺はこの林間学校を楽しみたい…他でもない、お前と…」
「……会長…」
「……四宮…」
白銀は再びかぐやに手を伸ばす
(……紳士的に…)
「…俺と、踊ってくれないか?」
「……っ」
風邪が大きく吹く
遠くに見える筈のキャンプファイヤーの火が、とても大きく見えた
「……」
四宮かぐや
これまでに、幾多もの男性から声を掛けられたがその殆どがかぐやの容姿や四宮家の財産目的から来る接触
天才であるかぐやはそれを全て把握し、その殆どの男を切り捨てて来た
しかし、そんな中現れた男
それが白銀御行である
〈……こんなにも紳士的な眼を…〉
【眼は人の心を映す鏡みたいなものですから】
〈……早坂…貴方はいつも正しいわ…〉
「……一生に一度の思い出…大切なのは今…」
「……」
「……いいですか会長、私は会長の願いにはちゃんとこう答えるんですから」
「……え?」
「…はい、喜んで」
「……」
白銀の手に優しく置かれるかぐやの小さな手
「……ふふっ」
「……っ」
「…会長」
「…四宮」
「…楽しみましょう!林間学校!」
「…あぁ…!」
「早坂愛と四宮かぐやは封じたい」
「…あ、そろそろフィナーレですねぇ!」
「あれれ〜?千花ちゃん踊る相手いないの〜?」
早坂愛 対
「「「フィナーレまで!カウントダウン!」」」
「早坂さん!?」
「しょうがないなぁ〜私が代わりに踊ってあげるね〜!」
「え?えぇっとそれは…!?」
「「「 3!」」」
(少しでもかぐや様のサポートをしなければ…その前にこの対象Fの行動を…!)
「「「 2!」」」
「あわわわっ…」
「「「 1!」」」
(…封じる…!)
「……早坂さん…」
「……?」
「「「 0!」」」ワァァァァァァ
「私たち…将来を添い遂げる仲になっちゃいましたね〜」
「……えっ…?」
「「「フィナーレまで!カウントダウン!」」」
「……会長、お上手ですね」
「ま、まぁな…」
(藤原に特訓して貰った甲斐があった……ありがとう!藤原!)
「「「 3!」」」
〈はぁぁ…なんだか会長と踊っていると不思議と寒くないわ……どちらかと言うと熱くなってきたわ…〉
「「「 2!」」」
〈フィナーレを迎えたら少し涼まないと…流石に汗もかいてきたし……ん?汗?〉
「「「 1!」」」
〈……私の…手汗!〉
「「「 0!」」」ワァァァァァァ
「いやぁぁあ!」
「どわぁっ!」
急に投げ飛ばされる白銀!
自身の手汗に気付いたかぐやは白銀を背負い投げしたのだ
「…!?…!!??」
「…か、会長……ご、ごめんなさぁぁい!」
走り去るかぐや
白銀はひとりぼっちにされた!
「えっ…まっ…ちょっ……し…四宮ぁぁぁ!」
本日の勝敗結果
白銀の負け
(かぐやに背負い投げされた挙句、フィナーレを迎えれたのかどうかも微妙な為)
次回
第21話「生徒会は見舞いたい」