「パパパパーン パパパパーン」
上杉らいは
現在、高校生
上杉家の貧困生活を支えるべく、今日も朝から自炊をしている
そんな彼女のポケットに入っているスマホがバイブレーションした
「…はーい、もう会場についたー?……えーっ!なんでそんなもの忘れるの!もう!もっていくけどさー…」
『すまん、頼んだ…らいは』
「もう大人なんだからしっかりしてよ、お兄ちゃん」
「……なんだ、風太郎から電話か?」
「結婚指輪を家に忘れたって、こんな新郎他にいないよ」
「…ふっ…血は争えんな」
「もう一人いるんかーい!」
「結びの伝説 2000日目」
「…わぁ…一日でこんなに着替えるんだ…」
結婚式場に到着したらいはは、大量に用意されたウェディングドレスを見て感動していた
「いつか私も着る日がくるのかなー…」
「それでは、髪を上げますね」
「お願いします」
「…っ」
新婦控え室
少しだけ開いたドアから花嫁の後ろ姿を見て、らいははまたもや感動していた
「……」
「あーいたいた…こんな所で何やって…」
「……」スピー
「……はぁ…今日が特別な日だってわかってるのかな…今から結婚するんだよ?でもお兄ちゃんは超現実主義だからなぁ〜…そういうの気にしてな……」
らいはは机で寝ている風太郎の手首に着いていた
そう、あの日に渡したミサンガに目がいった
「…懐かし…これいつ作ったんだろ…まだ持ってたんだ」
「……」スピー
「……結婚おめでとう、お兄ちゃん」
「新郎、入場」
鐘の音が鳴り、協会のドアが開く
そこから白いタキシードを着た風太郎が深くお辞儀をして入ってくる
「……」
「…おーい…上杉さーん」
「上杉先輩」
「……藤原…石上…」
「えへへ!来ちゃいました〜」
「おめでとうございます、上杉先輩」
「…あぁ、ありがとうな……あいつらは?」
「……さぁ〜?今頃何処にいるのか…」
「…きっと、遠くから見守ってますよ。あの二人なら…」
「……あぁ」
バージンロードを進む風太郎
その背中を見て、石上は思った
「……ここまで、長かったですね…ホントに……でも、よくぞここまで来ました」
「石上くん何様目線ですか?石上くんだって結婚してないですよね〜?」
「藤原先輩のノーデリカシーも相変わらずですねー、だから彼氏も出来ないんですよ?」
「ノーデリカシーはどっちですかぁ?それに、私にはかぐやさんがいれば十分ですから!」
「……四宮先輩たち、元気ですかね?」
「……ふふっ」
「…それより知ってますか?実はあの二人…」
「はい、会長から聞きましたよ…あの二人、林間学校の最終日に──」
「新婦入場──」
「……」
あの時のことは、正直よく覚えていない
だが、災難続きだった林間学校には、不思議と嫌な覚えもなかった
結びの伝説
キャンプファイヤーの結びの瞬間、手を結んだ2人は
生涯を添い遂げる縁で結ばれるという
「……」
「えぇーっ!?みんな来てたの!?」
「し、静かに…っ」
立ち入り禁止になった上杉の部屋
しかし、結局全員集まった中野たちであった
「なんであんたたちがいるのよ!?」
「二乃こそ意外」
「あ、あたしはよく効くお守りを貸そうと思っただけ!」
「私たちもフータロー君が心配で来たんだよね、三玖」
「うん…」
「えへへ!なんか嬉しいな〜全員で同じ事考えてたんだね!」
「あたしは違うって言ってるでしょ!」
「……上杉君」
寝込む上杉の傍による五月
「みんな、貴方に元気になって欲しいと思っています。上杉君がどんな人なのか、私にはまだよく分かりませんが……目が覚めたら、良ければ…」
「……」
「…教えてください、あなたのことを」
「「「フィナーレまで!カウントダウン!」」」
「「「 3!」」」
「「「 2!」」」
「「「 1!」」」
「「「 0!」」」ワァァァァァァ
「…あの時もずっと耐えてたんだよね、私も周りが見えてなかったな」
「らしくないこと言ってないで早くいつもの調子に戻りなさい」
「私たち五人がついてるよ」
「私のパワーで元気になってください!」
「この三日間の林間学校、貴方は何を感じましたか?」
上杉の五本の指に握られる中野たちの手
一人一人が彼にエールを送っていた
「……」ムク…
「わっ」
「起きた…」
「元気になったんですね」
「おまじないすごーい!」
「……るせぇ…」
「「「「「え?」」」」」
「うるせぇ!寝られないだろぉ!」
「わー!」
「あはははは!」
「……」ムカムカ
ほろ苦い思い出さえ
幸福に感じるのも
多分みんながいたから
今なら言えるかもしれない
あの時言えなかった、一言
「……」
「……っ」
ウェディングドレスを着た花嫁が風太郎の目をじっと見る
「……」
傍にいてくれて
ありがとう