白銀御行←告らせたい
藤原千花←頻繁に呪う
石上優←手のかかる後輩
上杉風太郎←嫌いじゃないが興味もない
中野一花←地味に危険人物…?
中野二乃←自分とよく似ている
中野三玖←石上君みたいねぇ…
中野四葉←度々困らされる
中野五月←信頼出来る
「……ん」
ある朝
校舎の廊下を歩く一花
その目の前には白銀であろう学ランを来た生徒の後ろ姿があった
〔…そーだ…せっかくだし私の冬服見せてあげよ〜〕
本日から衣替えという事もあり、そんな何一つ内容のない企みをしながら、一花は白銀の背後に近寄り肩を叩く
「わっ!おはよーミユキ君〜!どう?今日の私どこかが違うと……」
「制服が違う」キリッ
「全部違う!?」
振り向いた白銀
だが、彼の印象は以前とは違いどこか好青年を丸出しにしたかのような面立ちだった!その変化には流石に驚く一花
当の本人は自覚が無かった…!
「ど、どうしたのミユキ君!?だいぶ雰囲気が違うけど!?」
「え…?別段いつもと違いは…あぁ学ランに戻ったからな、夏服着れたのホントあっという間だったなぁ〜」サラッ
「いやいや!今はそんなほんわかトークしてる場合じゃないよ!?」
そんな文言をしていると、彼の背後から二人の影が近寄る
「あんた達朝からうるさいわよー」
「白銀さん!おはようございます!!」
まだ白銀の顔を見ていない二乃と四葉
だが、白銀が二人に振り向いた瞬間にその二人の表情が崩れた
「どわぁー!?白銀さん大丈夫ですか!?なんかの呪いが解けたんですかぁ!?」
「いや、最初から呪われてねぇから!!」
四葉の言葉にド派手にツッコミを入れる白銀
一方の二乃は白銀から視線を逸らした
〔…あっぶなかったわァ…一瞬白銀がキンタロー君に見えた…そんな訳ないのに…!〕
叫び狂う四葉、頬を少々赤らめる二乃、一周まわって落ち着いて来た一花と、廊下はカオスを表現していた!!
「お前ら、通行人の邪魔だ」
「…っ…上杉…!」
そんな3人を静止させた上杉
少し驚く白銀の顔をじっと見た
「…あ?誰だお前」
「……お前もか…お前もなのか…!?」
「冗談だ、白銀。だが少し雰囲気が変わったな」
「少し所ではないと思いますよ?」
「フータロー冗談なんか言うんだ…」
上杉後ろから現れた五月と三玖
「…それにしてもなんなんだ?皆して……今日の俺はそんなに変か?」
「変」
「変よ」
「変…」
「変です!」
「まぁ…」
「……そんなにはっきり言われると傷付くな…具体的にどこが変なんだ?」
「…まぁ、はっきりと分かるのは目だな」
「…目?」
「ほら、お前いつも周りに威圧感振り撒きながら歩いてるだろ?今日はそれが皆無だ」
「威圧感……してるつもりないのに…」
「「「「「……」」」」」
上杉の指摘を鵜呑みにし、納得する中野五姉妹
「まぁなんだ…その調子なら票も多く取れるんじゃないか?俺が知ったことでは無いが……」
「…お前の方はどうなんだ?」
「…ん?」
「…だからほら、選挙活動の方は……」
「別に俺に気を使わなくたっていいんだぜ?お前はお前自身の心配をしろ。まぁ、最後に勝つのは俺だがな!ハハハハ!」
「…と、このように申してますが…現状は最悪です。上杉君の日頃の行いが顕になってきました……」
「おい五月、何故余計な事を言う?」
「……はぁ…」
五月にツッコミを入れる上杉を見て落胆する白銀
「それに、意外とライバルが手強くて…白銀君は伊井野さんの事をご存知ですか?」
「勿論、敵戦力は大体把握している…だが彼女がどうした?」
「えぇ、実は……」
生徒会選挙について詳しい話をし始めた五月達
「……」
そんな中、一花は考え事をしていた
先程五月の口から出た女生徒の名前についてだった
「……伊井野…?」
「伊井野ミコは呑まれない」
「……ふぅ〜ん…あの子が伊井野ミコかぁ…」
その日の放課後、一花は今日もビラ配りをしている伊井野ミコを校舎の影から見ていた。
「現時点ではフータロー君が彼女に負ける可能性は低いけど、やっぱり難しいよねぇ……そうだっ!」
ひとり考える一花は、とある事を思い付く。
「ここはお姉さんが一肌脱ぐ時かなぁ…」
そして、いつしかその目から光は失われていた。
「…こ、こんにちは」
「わぁ!貴女が伊井野ミコさん!?初めまして、私はフータロー君を応援してる中野一花って言いますっ」
数時間後、誰も居ない生徒会室に伊井野を呼び出した一花は、あからさまな演技を見せながら彼女に接近する。これは流石の伊井野も警戒を強め、嫌悪感を抱きながらもソファに促される。
「伊井野さんも大変でしょぉ?1年なのに生徒会長に立候補するなんて、私なら出来ないなぁ…まぁ女優の仕事でそれどころじゃ無いんだけどねぇ……」
「…一体何の御用でしょうか。私も、暇じゃないのですが……」
ここで伊井野がしびれを切らして本題に入る。自身を呼び出したその理由の究明をする為。
「そんな難しい話じゃないんだよ?ただ私は…」
「……」
「…貴女じゃあ、生徒会長としての器が未熟なんじゃないかなぁって思ってね…?」
「……それはつまり…出馬を諦めろ、と言いたいのですか?」
「……あれ、そう聞こえちゃった?」
一花の目のハイライトは完全に消え失せてしまっていた。それはさながら蛇のようだ。
それに対し完全なる敵意を向け始める伊井野。狂犬のような目を光らせてふたりは夕日が沈む教室で睨み合う。
まさに一触即発。こんな彼女達の輪を乱し有耶無耶に出来る人物はたった一人…!そう、藤──
「こんなとこに居たのか、一花。お前の姉妹全員帰ったぞ?」
「フ、フータロー君!?」
「あ、貴方は…!?」
「あ?お前までなんでここに居るんだよ。生徒会室は今は使用禁止の筈だぞ?」
この修羅場に於いて、上杉風太郎は気にすること無く生徒会室に入って行く。
「な、なんでフータロー君がここに?」
「三玖に頼まれたんだよ。バイトでもないのに一花の様子が見当たらないから探して欲しいってな」
携帯を取りだし三玖に一花の安否を報告する風太郎はその姿勢のまま目線だけ伊井野に移した。
「……」
「……んで、伊井野ミコだっけ?うちのパートナーに何の用だ?」
「……っ」
「…パートナー…ですか。本日はその方に呼び出されてここに来たんです」
「え、そうなのか?」
「あ、えぇっとぉ〜……」
目を泳がせる一花。その様子にため息を着く上杉。
「…まぁなんだ…迷惑をかけたんなら謝るが、何か言いたげだな。なんだ?」
「……いえ別に。ただひとつ、忠告しておきます」
伊井野は人差し指を上杉に立てて言い放った。
「私は貴方達のような外道なやり方で、生徒会長になるつもりはありません!」
「……あ?」
「気品のある秀知院の生徒ならば、きっと…私の考えに賛同してくれる筈……」
「……お前、先に言っておくが…自分の考えを押し付けるだけじゃ、生徒会長なんて務まらねぇよ」
「…えっ?」
上杉の言葉に、伊井野は思わず顔を上げる。
「正直、俺には生徒を纏めあげるカリスマ性も、人望も名誉も実績もねぇ」
「……」
〔…そこ、自覚はしてるんだ……〕
「…だが、それをイチから…いや、ゼロから積み上げて来た奴が居るのを、俺は知ってる」
「……っ…それって…」
「そいつはどんなどデカい壁にぶち当たっても、仲間と生徒の声に耳を傾けて乗り越えて来た。才能だけじゃ人は集まって来ない。ほんの少しの才能と、それまで自分を培ってきた努力が、初めて人を呼び寄せるんだ」
「……」
上杉の言葉を、伊井野は俯きながら静かに聴く。
「……お前の公約を見た。正直俺からしたら、ふざけてる。そういう印象を受けた」
「…っ!」
「だが、本気さだけは伝わって来た。本気でふざけてるって思った。だから、嫌いじゃねぇって思った」
「……えっ」
伊井野が顔を上げると、そこには優しい表情の上杉が居た。
「だから、全力でかかってこい。お前の出来る事を、精一杯やって見せろ」
「……上杉さん…」
「……フータロー君…」
「…だが言っておくが!俺はどんな手段を使っても生徒会長になってみせる!外道?上等だっ!ふはは!」
「…は…はぁぁっ!?」
「ちょっ…フータロー君〜…」
上杉のイキリ発言に頭を抱える一花。
「ちょっとは見直したと思ったのに…!これではっきりしました!やっぱり次期生徒会長には私がなります!投票日を楽しみにしててくださいねっ!」
「ははぁっ!望むところだ!!」
「……」
怒号を吐きながら生徒会室を後にしようとした伊井野は、ドアノブに手をかけたところで静止する。
疑問に思ったふたりだが、その時彼女の口から小さく飛び出た言葉が、彼等を綻ばせた。
「……ありがとう…ございました」
「あ〜あ…焚き付けちゃったね、あの子の事」
「ま、あのくらい強く言わないとあっちも本気で来ないだろ?」
「ふぅ〜ん…フータロー君が良いなら良いんだけど」
帰り道、ふたりは先程の伊井野との会話を思い出しながら2人並んで歩いていた。
「…ねぇ、フータロー君がさっき言ってたのってさ、ミユキ君の事でしょ?」
「……ま、まぁな…」
上杉は前髪をいじりながら答えた。
「へぇ〜…フータロー君も意外と
「……あいつはバカが付くほどの努力家なんだよ。努力バカ。あいつが生徒会に入って、まるで人が変わったのを覚えてる」
「……」
「何があったかは知らない。知りたいとも思わない。ただひとつ、思った。努力は、裏を返せば執着心。人を簡単に壊せる、めちゃくちゃやべぇやつって事だ」
「……努力が、人を壊す…?」
「…人によってだがな。俺は壊れなかったが、あいつはどうかな……」
「……」
この日のフータロー君は、まるで遠い目をしていた。過去の自分と今の自分、そして過去の誰かと今の誰かを比べているような、今まで見せたことの無いような目をしていた。
そして、来週はいよいよ選挙当日。
それまでこれといって全く選挙活動をしてこなかった上杉は、内心バクバクであった。
本日の勝敗
一花の勝利
「中野五月と本物の愛」
「……」ズーン
「……」
「……折り入って…五月さんに相談があるのですが…」
「は、はい……」
昼下がりの校庭のベンチにて、五月はかぐやに相談をもちかけられていた。
「これは、友達の話なのですが……」
「……」
〔四宮さんの話ですね……〕
「最近気になっている男子の容姿が大きく変わってしまいまして…」
「……」
〔白銀君の話ですね……〕
「それで……彼女はその変化に多少なりショックを受けてしまいまして。美醜で揺らぐ程度の想いなんて、本物の愛じゃ無いのではないかと思い詰めていて……」
「……なるほど…」
〔……本物の…愛!!??〕
口にするだけで恥ずかしいピュアワード!
このようなワードは普通に生きている分には到底出てこないものではあるが、特殊な環境で生まれ育ったかぐやである。このワードが口に出すだけで恥ずかしい物であるという認識すらしていない!
流石の五月もこのワードには驚きを隠し切れない!
〔で、ですが…これは四宮さんが個人的に私に頼る程深刻に考えている問題……何か力になれるのであれば……〕
「…れ、恋愛なんてそんなものですよ!少しの事で盛り上がったり冷めたりなんて、どこにである話です!」
「…でもー……人の美貌で態度を変えるなんて『本物の愛』からは一番遠い所にあるじゃない!『本物の愛』はそんな簡単に揺らいだりしないものでしょう!?」
「……っ!?」
〔は、恥ずかしげもなく…!?〕
「大丈夫ですよ四宮さん!貴女…ではなく、その方が抱えている気持ちは間違いなくほんも……本物の愛、ですよ…?」
〔はわわわ!私はなんて恥ずかしい発言を…!〕
この出来事が後に、五月の黒歴史となる一件となった
〔……と、言いましても…〕
「……?五月さん?」
「…上杉君が退院後、私達五つ子に同じ髪型にしろと行ってきたことがあります。どうやら、私達を見分ける方法を探るべく、カマをかけたかったのでしょう」
「……はぁ…」
「……その時、四葉が彼に言った言葉があります。『愛があれば見分けられる』。これは、母の言葉なんです」
「…お母様の…?」
「母は生前、とても愛のある方でした。私達五つ子を等しく、最大級の愛で私達を満たしてくれました」
「……」
「…つ、つまり!私が何を言いたいのかと言いますと……」
「……っ」
話を本筋に戻す為、五月はかぐやの目をじっと見つめた
「…母は同じ見た目の私達5人を等しく愛してくれた。見た目なんて関係無いんです。自分が誰を好きなのか、そういう気持ちが大事なんですよ!きっと!」
「……そういうものでしょうか…」
視線を前に俯くかぐや。その目にはまだ疑念が残っていた事に五月は気が付いた。
「四宮……」
一方、2人で何かを話すかぐやと五月の存在を確認した白銀
(先日の俺は四宮的になんか駄目みたいだったが……今回は違う!今日の俺は──)
「おう、二人共」
「あ、白銀君……」
「今日もいい天気だな」
「きゃあああああああ!!」
今日の白銀は、いつにも増して黒い隈に充血した目。目つきの悪さが最高潮まで到達していた!
「どどどどうしたんですか!?顔が大変な事になってますよ!?」
「いやなに、ちょっと最近徹夜続きでな……だいぶ目にキてしまったようだな……」
「あわわわわ……」
〔こ、これは流石に限度があるのでは……!?〕
かぐやを気にして振り向く五月
「か…会長……駄目ですよ……保健室…保健室でお休みしましょぅ……」ハフ… ハァ… フウ…
〔あれーーーー!?〕
だがそこには、何故か発情したかぐやが居た!
「いけない……いけないわ私……いけないって判ってるのに私どうして……」
〔……!!〕
そのまま白銀の肩を持つかぐや。白銀の顔をまじまじと見ながら保健室までの道を歩んで行く。そんな彼女の姿を見て、五月はある事を思った……
〔ごめんなさい、四宮さん、お母さん……たぶんそれ本物の愛じゃ無いと思います!〕
本日の勝敗
五月の負け
次回
第26話「上杉風太郎は負けられない」