白銀御行←私が居ないと…
四宮かぐや←大♡大好き
石上優←天敵
上杉風太郎←ポンコツ度合い見極め中…
中野一花←立派な女優さん!
中野二乃←怖いけど優しい!
中野三玖←石上くんみたい……
中野四葉←お、同じ波動を感じる…!
中野五月←真面目で気配り屋さん!
選挙当日
「皆さんに、お願いがあるんです」
その日、石上は白銀達に向けて神妙な面持ちでいた。
「今日の選挙、伊井野ミコに徹底的に勝ちたいんです」
「…なんだ?神妙な面持ちで」
「まぁ勿論手は抜きませんけど…」
そんな石上の変化に、白銀達は気付いていた。
「事前調査では私たちが6割近く、上杉さん達が3割近くの票を抑えてますし、そこまで心配する必要は…」
「向こうに何か隠し球でもあるのかしら?」
「いえ、無いです。今日の選挙は僕等が確実に勝つでしょう」
「だったら……」
「それでも皆さんなら、それ以上の勝ち方が出来る筈です」
「……何かあるのか?伊井野ミコに」
「……ゴクッ」
「……フータロー…緊張してる?」
「…え?…ははっ…まさか、この俺が…?」
同じく待機所で待機する上杉達。上杉は珍しく緊張しており、それを三玖が癒していた。
「そ、そんな時は掌に「人」を書いて飲むといいよ…」
「そんなのただの迷信だろ?でもまぁ…」
上杉は三玖の言う通り掌に「人」の字を書きそれを飲み込む動作をする。
「……?」
普段ならしない行動をした上杉を見て、三玖は不思議に思った。
「…フータロー君〜、そろそろ準備してってさー」
「……おう」
「……フータロー…!」
「……ん?」
立ち上がる上杉の背中姿を見て、三玖は声を掛ける。
「…が、頑張ってね…!」
「……あぁ!」
そして会場に入った瞬間、上杉は真剣な眼差しで先を進む白銀達を見つけた。
「上杉さん…」
「四葉」
「白銀さん達、今まで見た事ないくらい真剣な顔してますね…」
「…あいつらはきっと、この選挙に人生を賭けるつもりで来てる。俺たちも負けていられないな」
「はい……」
「…今更罪悪感か?世話になった奴の敵になるのは」
元気がない四葉を見て、上杉は自分なりの励ましを掛ける。
「…えへへ…上杉さんにはなんでもお見通しですねぇ〜…」
「……四葉。今だから言うが、お前は俺の選挙には巻き込まないつもりだったんだ」
「…えっ…?」
「だが、お前は人一倍正義感が強いからな。お人好しってのもあるが……お前のそのお人好しが、俺に力をくれる気がした」
「上杉さん……」
「だから頼りにしてるぞ?応援演説、お前に任せた」
「……はいっ!任されました!」
「……フッ」
四葉のその笑顔が、不思議と上杉の肩の荷を下ろしていることに、本人は気付いていなかった。
そして、応援演説が始まった!
中野四葉 応援演説 開始
「…上杉風太郎は、とても誠実で…期末試験ではあの四宮かぐやさんに次ぐ第3位という成績を収めています」
壇上にて全校生徒、全教員が体育館に集まる中、照らされたステージの真ん中で1人マイクに向かって応援演説をする四葉。
「…なるほど、応援演説には四葉を起用したか」
「確かに四葉先輩なら、上杉先輩の事を良く伝えてくれますもんね…」
「……果たしてそれだけが起用した理由かな…」
「…え…?」
「それに上杉さんには、人を観る力があります。知っての通り、わたくし中野四葉には4人の姉妹がいて、全員同じ顔の5つ子なのです!ですが上杉さんは、そんな私たちを気味悪がることもなく、私たち一人一人にしっかりと向き合ってくれました。彼には、人と向き合う力があります!」
声を張りハツラツとした笑顔で全校生徒に向けて視線を送る四葉。
だが……
「…でも上杉くんって結構暗いイメージだよね……」
「わかる。私たちに対しては結構当たりキツいしね」
「ってか成績とか関係なくね?だったら俺白銀に入れるわ」
「人望も成績も、白銀には適わないよなぁ…」
小声でありながらも、生徒達の声は周りに聞こえたりもする。その声を聞き、四葉は1歩引いてしまう。
「上杉ってあれだろ?食堂でいつも単語帳開いてる変わりもんだろ?」
「やめろよお前w」
「林間学校で遅刻した時、中野さん達と同じ部屋で泊まったらしいよ〜w」
「えっ何それ、そういう関係?」
その声はどんどんとヒートアップして行き、もはや誰がどんな言葉を発しているのか分からなくなっていていた。
「…皆さっきから、フータローの事悪く言って…!」
「落ち着きなさい三玖。選挙に出ると分かってた時点で、この事は予測出来てた筈よ」
「……二乃は、悔しくないの…?」
「……悔しいに決まってるわよ。上杉は兎も角、私たち姉妹まで悪く言われのは、我慢ならないわ…!」
「……」
(……上杉…)
その状況を目に、白銀は上杉を見る。
「……」
視線を落とす彼は、白銀には俯いて落ち込んでいるように見えた。
「……っ」
だが後の話で、その時の上杉からは
闘志のようなものを感じたという……
「みなさん静粛にっ!!」
スピーカーから放たれた四葉の大きな声は、一同を黙らせた。
「確かに上杉さんには、白銀さんに勝る程のものは持っていません!」
「……は?」
「…ですが!私は…私たちは知っています!彼が何に喜び、何に悲しみ、何に怒るのか……それを知らない皆さんは、もっと上杉さんを知るべきだと思います!」
「……ククッ」
「…上杉君?」
「……ったく……これじゃあ応援演説じゃなくて、俺を慰める会じゃねぇか…」
「……っ」
〔…上杉君……もしかして…〕
五月も、上杉の考えが少しずつ読めて来た。
彼の笑顔の理由。もう一度確かめたかったのかもしれない
「私は人を見た目や周りの評価で判断しません!上杉さんを知り、上杉さんに知ってもらえた事が沢山あるからこそ!彼には、生徒会長になる素質が沢山あると、私は思います!!」
私たち五つ子と歩んだ、その軌跡の証を
「以上です!!」
プンスカという表情でステージを降りる四葉。
上杉の横に来たところで、上杉は四葉の頭に手を置いた。
「……よく頑張ったな、四葉」
「…はい…っ」
四葉の目尻に、涙が溜まっているのがわかったからだ。
大仏こばち 応援演説 開始
「伊井野ミコはとても真っ直ぐな女の子です。心が綺麗で純粋で、誰よりも正しくあろうとする女の子です。その真面目さは風紀委員の活動を通して見てきた人も多いいのではないでしょうか。彼女は中等部で風紀委員長を勤め……」
「淀みがない。相当練習してきてるな」
「はい、だけど…」
大仏の演説を聞く白銀と石上だが、石上は大仏ではなく会場の生徒達に目がいく。そこには先程の四葉の演説もあってか、ガヤガヤと私語を漏らす生徒達がいた。
「会場の意識が散漫です。真面目に聞いてる奴は半分も居ない」
「…ご清聴ありがとうございました」
『続きまして、白銀さんさんの応援演説です。四宮さん、お願いします』
応援演説者が入れ替わり、壇上にはかぐやが立った。
かぐやの登場に会場は更なる盛り上がりを見せ、ガヤガヤはどんどんと増していった。
「……っ!」
だが、突如として会場にハウリングが発生した。それはかぐやがマイクに触れた事によるハプニングが、それとも……
「白銀御行会長候補の応援演説を務める四宮かぐやです。こんにちは」
四宮かぐや 応援演説 開始
五つ子豆知識
選挙中
五月と四葉は上杉の元に付き添い、
一花、二乃、三玖はあくまで応援側として一般生徒と同じ客席に座って選挙を見守っているぞ!
《今のハウリング、わざとだな。教師も含め、ほぼ全員の意識が強制的に引っ張られた……》
四宮が起こしたハウリングが、意図して起きた事を把握した上杉は、白銀を見る。
《……やっぱり侮れねぇな、あいつらは》
「我が校の生徒会はOB会の管理の元寄付金によって運営されています。動かす金額は子供の遊びで片付けられるものではありません。皆様のご両親が朝早くから夜遅くまで働き、皆様を想って贈られたお金です」
応援演説を始めたかぐや。
すると背後のバックスクリーンが展開し、そこにプレゼンのスライドが映し出された。
次々と映し出されていく映像。
白銀の実績から修学旅行や文化祭などの生徒達を揺さぶるネタで会場を湧かせた。
《このハッタリかましたPV……そうか…石上!》
「盛り上がってるじゃないか」
「会長の成果をそれっぽく演出して見せただけですよ。大事なのは積み重ねと
「だが意外だったな、石上がここまで本腰を入れるとは…」
「僕が言い出した事ですし。伊井野徹底的に勝つって」
「ご清聴ありがとうございました。前生徒会役員を代表しまして、白銀御行に清き一票を」
会場の拍手に見送られながら、かぐやはステージを後にした。
『続きまして、上杉風太郎さんの立候補演説です』
「……来たか」
上杉風太郎 立候補演説 開始
《今四宮の演説で分かった。普通の方法じゃ勝てねぇ…今会場は白銀派が一定数を占めてるだろう。このまま俺が普通に演説をしたところで、最後の白銀の演説でまた巻き返される。だったら……》
壇上に上がった上杉は、マイクの前に立ち深呼吸をする。
《それよりも、ものすげぇ演説をしてやる!もう手段は選ばねぇ!》
「…あー…ご紹介にあずかりました、次期生徒会立候補者の上杉風太郎です。よろしくお願いします」
会場から軽い拍手が届く。先程の四葉の演説も効いているのだろう。
「…と、堅苦しい感じでやろうとしたが……やっぱりやめだ…!」
手をバンザイしお手上げの仕草をする上杉。その行動に、会場の人達が驚く。
「まぁさっきお前らが言ってたみたいに、俺には白銀に勝てるほどの学力も実績も、人望も優しさもねぇ!だが俺にもプライドはある……だから俺も探したんだ、白銀に勝てる何かをな」
「……上杉君…」
心配そうに見つめる五月。
だが、横にいる四葉が、心配ないよと見つめ返す。
その視線を受け、五月は再び彼を信じるのであった。
「芸事、俺にそこまでの手の器用さはねぇ。音楽?俺にはそんな事をする金と時間がねぇ。武芸?魅力的だな、だが俺には体力がねぇ」
「…い、一体何を…!」
本来立候補演説とは、自分の長所や理念、公約なんかを発表する場なのだが、今の上杉はただ自分の短所を自白し、生徒に同情を巻き起こす為の小癪な手を使う者にしか見えない。周りの評価を気にせず、淡々と話す上杉を見て見かねた生徒のひとりが彼に茶々を入れる。
「だが!!」
「……っ!」
「…だが、俺には人と向き合う力がある。バカ共と向き合う力がなぁ!」
自信満々に言い放った上杉。
「それに気付くのも、俺一人ではなし得なかった事だ。あのバカ共と会えたから、俺はそれに気付く事が出来た。いや、気付かされたんだ。お前たちが俺に対するイメージが悪いことなんて分かりきってるでも!俺は本心で、お前らと向き合ってみたいんだ……」
「……上杉…」
「だから……向き合わせてくれ。あいつらだけじゃない、この学園のみんなと……秀知院の生徒として…」
軽く頭を下げる上杉。拍手も賞賛もない、そんな時間が刻々と過ぎていく。
「……う…上杉風太郎に、清き一票をっ!」
すると、五月が席を立ち上がり客席に向かって大きく叫び始めたのだ。
「清き一票を!」
「…き、清き一票を…!」
「お願いします!」
それに続き四葉、三玖、一花が立ち上がり大きく叫ぶ。
「……お前ら…」
その光景に唖然とする上杉。それに意外だったのは、こんな事には賛同しないと思っていた二乃が、立ち上がり他の姉妹たちと同じように頭を下げて投票を催促した事だった。
「……フッ…ありがとな、お前ら」
小声でそう呟いた上杉は、マイクを手を取り深くお辞儀をした。
「以上、上杉風太郎の立候補演説でした。ご清聴ありがとうございました」
『続きまして、伊井野ミコさんの立候補演説です』
マイクを戻した上杉はステージを降りて伊井野とすれ違う。
《……あいつ…》
上杉は違和感を察したが、伊井野はそのままスタスタと壇上に上がり、マイクに口を近付けた。
「…私の……名前は……ザザッ…」
「…えっ?なんて?」
「マイクトラブル?」
「きこえねーよ」
「どうかしたの?」
突然のマイクトラブルらしきものに、生徒たちはまたざわつき始めた。
だが、これはマイクトラブルなどでは無い。
当然、白銀達が仕掛けた訳でもない。
「…………いいの……みこ…です……」
そこには、壇上で台本を持った顔を真っ赤にさせた伊井野ミコが立っているだけだった。
「……くすっ」
「えっ緊張してるのかな」
「ふふっ……まただ」クスクス
「……」
「…いつものパターンですよ。これが伊井野が勝てない理由」
この状況を、石上は白銀と上杉にも聞こえるように説明した。
「もともと人前が苦手な奴でしたけど、選挙に負ける度に酷く成ってる」
今も口元を口で隠しながらクスクスと笑う生徒たちを見て、石上は更に声を漏らす。
「……そりゃ笑えますよ。学年1位の融通が利かないクソ真面目ちゃん。普段は偉そうに指図してくる目の上のタンコブがこうも見事に生き恥さらしてくれる訳ですから。普段からムカついてる奴等からしたら、笑うなってのが無理な話でしょう」
「……」
「僕だってあいつには恨みも多い……でも」
石上は知っていた。
中等部時代、1人せっせこ委員会の仕事をこなし、人を嫌がる仕事を率先し、体格の差があっても尚不良の生徒を取り締まり、校庭の花に毎日水やりをやる。
そんな彼女が、色んな生徒達の笑いものにされ続けている事を。
「…でもイラつくんすよ。頑張ってる奴が笑われるのは…!だから僕は……」
「任せろ」
「……白銀」
「…伊井野ミコを笑わせない勝ち方をすればいいんだな?」
次回
第27話「伊井野ミコは踏み出したい」