かぐや様は告らせたい ✕ 五等分の花嫁   作:キャメル16世

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石上優が抱いているイメージ

白銀御行←割と仲良し
四宮かぐや←ただただ怖い
藤原千花←ヤベェ奴
上杉風太郎←悪い人じゃなさそう
中野一花←何故か負のオーラが見える…
中野二乃←ちょっと怖い…けど優しい…
中野三玖←僕みたいだなぁ…
中野四葉←藤原先輩みたい…
中野五月←良い人



第27話「伊井野ミコは踏み出したい」

ミコちゃんは、正しさを愛してる

 

「ミコちゃんお家に誰も居ないの?」

「うん。ママは紛争地域でワクチンを配ってて、パパは裁判所で遅くまでお仕事。とっても大事なお仕事なんだよ」

「…でも、家に誰も居ないのって寂しくない?」

「……」

 

ミコちゃんは、弱さを見せない

 

「パパとママは悪くない。世の中が悪い人ばっかだから、パパとママは忙しくて、お家に帰ってこれないだけなの……みんながもっとちゃんとしてれば!」

「……」

 

ミコちゃんは、とっても真面目

毎朝誰よりも早く教室に来て、メダカに餌を上げてお花の水を替える

 

先生の言いつけを破った事はないし、勉強はいつも一番

 

「センセー!モガミくんが学校にオモチャを持ってきてます!」

それで、やっぱり真面目

児童会長に立候補するのも自然な流れだった

 

ミコちゃんは正しさを愛してる

でも遊びたがりの小学生にとって、正しさなんて自分たちの自由を侵害する敵にしか見えない

 

中等部に上がって、私たちは風紀委員に入った

ミコちゃんはやっぱり真面目で、風紀委員の仕事を誰よりも頑張った

先輩たちが怖がる人でも、人気者の男子でも遠慮なく取り締まる

 

疎ましく思う人も多かった

中には意地悪な人も居て……

 

ミコちゃんは表情を変えず意に介さない

そういう風に見えたんだろう

 

でもそれは違う

 

ミコちゃんは弱さを見せない

ミコちゃんは人の居ない所で泣く

本当は怖がりで、悪意に晒されば人並みに傷つく

 

ミコちゃんは真面目なだけで強くなんてないのに

誰も判ってくれない

 

どうしてみんな判ってくれないんだろう

ミコちゃんは正しくありたいだけなのに…

 

「……」

 

どうしてそんな目で見るの?

そんな目で見られたら、誰だって怖いんだよ?

 

「……っ」

伊井野の手から滑った台本の紙が、ステージへと舞っていく。

 

だが、それを受け止めたのは、壇上に上がった白銀だった。

 

「もーいいだろ、時間の無駄だ」

…ま……まだ……

「……」

白銀のその行動には、意味がある。

その意味を、上杉たちは理解していた。

 

「こんなアホらしい公約掲げて、票を取れると思っているのか?伊井野ミコ」

アホ……らしい……?

「アホらしいだろ。今の時代に強制坊主とか、みんな嫌がってると思うぞ」

だ……だからそれは……

不意に、伊井野は生徒たちを見る。

当然のように、生徒たちの視線は伊井野を容赦なく締め上げる。

 

「……っ」ビクッ

「…反論があるなら俺の目を見て話す事だ」

わた……私が…言いたいのは……っ」

声を詰まらせる伊井野。

だがそんな彼女を受け止めるように、白銀は口元からマイクを離し、伊井野に優しく微笑んだ。

 

「……ん、言ってみ」

「…っ」

 

「……ったく…あの野郎……俺の事は置き去りかよ」

「ほんと、放っておけば勝手に自滅してくれるっていうのに……」

「…でもまぁ……」

「……フフッ」

「…白銀(あいつ)らしいな」

 

「この公約は全然アホらしくありません!!」

突如マイクを掲げた伊井野は、先程とは比べ物にならない程の声量で演説を始めた。

 

伊井野ミコ 立候補演説 開始

 

「いいですか。こちら各高校のブランドイメージのアンケートです!我が秀知院のブランド力は、年々下降の一途を辿っております!」

バックスクリーンに映し出されたスライドを上手く使い、自分の言いたい事を伝える。

 

「ほう、原因は摑めているのか?」

「原因はいくつかありますが、その中でもモラルの低下が強く印象付いているようです!世間には『偏差値だけ良いボンボン共』そんな風に思われているのです!」

またしても生徒たちが騒ぎ出した。

だがそれは有名人の登場や批判などから来るものでは無い。

 

“伊井野ミコの演説”

これを聴いた上でのざわつきなのである。

 

「同時に近隣住民の印象もあまり良くなく、最近は行事において地域団体の協力が得られない状況が続いております!」

 

(ミコちゃんがアガらずに言いたい事言えてる!?)

 

「地域団体の協力?具体的になんの事だ」

 

(そうか!今は白銀さんの視線しか意識していないから!)

 

「例えば文化祭でのキャンプファイヤー。3年前まで恒例行事でしたが、深夜まで居座る生徒やポイ捨て問題が取り沙汰され、夜間活動に町内会の許可が下りなくなりました!風紀の乱れが引き起こした問題の一つです!周囲の不評は校則緩和の時期と符合します!ルールはモラルを育てるのです!」

「だけどそれだけの為に坊主頭にするのはやり過ぎだろ」

「カッコイイでしょボウズ頭はぁぁ!?何で判らないんですか、一周してお洒落でしょう!あのクリクリはきゅんきゅんします!!」

「お前のフェチは知らんわ!」

「この情報社会、どんな些細な問題でブランドが崩壊するか判りません!私達が社会人になってからも秀知院のブランドを保ち続ける為、今こそ!風紀のある秀知院というイメージ改革が求められているのです!」

 

「……」

 

(ミコちゃん……)

 

「…坊主が有効なデータは?」

「あります!似た校則を導入したケースでは……」

 

討論は予定を30分以上オーバーして行われましたが、誰かが止められる雰囲気じゃありませんでした

 

 

 

生徒会選挙結果

当選 白銀御行 260票

落選 伊井野ミコ 220票

落選 上杉風太郎 120票

 

まぁ選挙には負けてしまったのですが……

 

「……っっ」ガァァン

「……ミコちゃん…」

「……おーい…伊井野〜」

「…っ」

集団で迫ってくる生徒達

 

(また、またなの?またミコちゃんは無自覚な悪意に晒されるの…?そんなの…そんなの…!)

 

「惜しかったなぁああ!俺お前に入れたのによー!」

「あの会長に一歩も引かずカッコ良かったです!」

「来年もあるんだ、切り替えていけよ!」

「ぼく伊井野さんがそこまで学校の事考えてるって思ってなかったよ……」

 

「……」

杞憂だったかもしれない

それほどまでに、ミコちゃんにはこれ以上悲しんで欲しくなかった

去年や一昨年のひとりぼっちだった少女の背中は、いつの間にか大きく、そして……

 

「あーもう…っ、相手が白銀じゃなきゃなぁ…っ」

「よく頑張った!!」

 

こんなにも素敵な笑顔を見せてくれるようになったのだから

 

「み、みこぢゃ〜ん!よがっだ…よがっだよっお…」

「えっ!?なんでないてるの!?……フフッ」

 

「こういう無茶はもうやめてくださいよ!心臓に悪いです!!」

「ごめんごめん…って四宮どうしたんだ?」

藤原はかぐやをおんぶし、そんなかぐやはぐったりとしていた。

 

「胃痛で立てなくなっちゃったんですよ!誰かさんのせいで!」

「悪かったて……ん」

謝る白銀を傍に、石上は集団の中で微笑む伊井野を見てまた微笑んでいた。

 

「……そういや、他の役職も決めないとだったな」

「そうですね……って、ちょっと待ってください?何考えてます?」

 


 

「上杉風太郎は託したい」

 

「……落選、ですか…」

「ま、最後のあの展開だ。仕方ねぇよ」

「うーん…でも結構いい線いってたと思うんだけどなぁ〜……」

選挙結果を見た上杉と中野姉妹たちは、嘆きの表情を浮かべていた。

 

「まぁ、お前たちはやれる事はやったさ。すまなかった…俺の力不足だ。やっぱり俺にはお前たちの家庭教師以外の仕事には才能が無いみたいだ……」

「……」

その言葉を聞き、二乃が上杉の前に立った。

 

「…あんた、確認だけど。この選挙で負けたら私たちの家庭教師を辞めるなんて事考えてないでしょうね」

「…も、勿論だ!今回はペナルティは無い!」

「……あっそ、ならいいわ」

「…え?」

「まぁでも、フータロー君らしい演説で…私は楽しかったよ?」

「……うん、フータロー…カッコよかった…!」

「すみません!私があの時声を荒らげてなければ…!」

「私も…見ているだけで何も出来ませんでした……」

「……お前ら…」

嘆きと賞賛、少ない人数からのものではあるが、それに心救われるものがある事を、上杉は理解した。

 

「上杉…」

「…白銀」

そんな彼らの元に白銀達がやって来た。ちなみにかぐやは藤原によって保健室で仮眠を取っている。

 

「……っ」

白銀は有無を言わさず、右手を差し出した。

 

「…いい戦いだった。ありがとう」

「……ヘッ…最後はお前らの独壇場だったがな」

「そんな事は無い。お前の演説が生徒に響いている事は、票の数からもよく分かる」

「……」

上杉は自身の投票数を見る。

120票、決して多くは無い数字だが、何故だか数字だけでは悔しいという感想は出て来なかった。

 

「…今回の選挙、上杉が本気で望んでいた事がよく分かった。弱さをさらけ出す男は強い、俺には出来ない事だ」

「……白銀…」

「だからこれからも、俺はお前の背中を追い続ける。よろしく頼んだぞ、上杉……いや、風太郎!」

「…っ!」

上杉を下の名前で呼ぶ白銀。2人が出会ってから初めての事であり、それに対して上杉は驚きを露わにする。

 

「…ヘッ……あぁ、絶対お前を超えてみせるぜ。まずは次の試験でだ!覚悟しろ、御行!」

「……フッ」

「……ヘヘッ」

固く結ばれた握手は、2人の絆を一層深めた。

 

その後、新生徒会が発足された。

かぐやを初めとする前生徒会の役員に加え、新メンバーを1名獲得。

 

伊井野ミコは、また新たな1歩を踏み出した。

 

今回の選挙戦

白銀陣営の勝利

 


 

生徒会豆知識

 

生徒会活動と委員会活動は並行して行える為、伊井野ミコは風紀委員としての活動も継続しているぞ!

(大仏こばちは生徒会には興味がなく、風紀委員で伊井野と一緒に居れればそれでいいらしい)

 


 

「上杉風太郎はまだ知らない」

 

「わぁぁぁぁん!わぁぁぁぁん!」ズビッ ズビッ

「どうした!?らいは!?」

「えぇぇぇん!お兄ちゃんこれぇぇ…!」

「…んあ?少女漫画?」

 

その日、らいはが読んでいたのはとある少女漫画。

「今日はあまくちで」という作品であり、老若男女問わず人気が高い。

更にこの作品はいわゆる『純愛泣ける系』

思春期で少女漫画に抵抗がある男子高生ですらハマる人が続出する傑作なのである!

 

「この漫画が泣けて泣けて…!」

「ってからいは、こんなものどこで手に入れたんだ…?まさか本屋からパク…!」

「四葉さんから借りたの!こんなの一人で運べないし!」

「なんだ四葉か……余計な事しやがって…」

漫画をらいはから受け取った上杉だが、中身を確認することも無く、他の巻も入っている大きめの紙袋に仕舞った。

 

「えぇ〜お兄ちゃんも読みなよ〜」

「俺は読まん。それよりも試験勉強が優先だ」

 

《生徒会選挙も開けた事だ……次の試験に向けて勉強しなくては……》

 

『絶対お前を超えてみせるぜ。まずは次の試験でだ!』

 

《あんな事を言った手前、漫画なんかに時間を割いてる場合じゃねぇ……》

 

「じゃあお兄ちゃん、これ全部読み終わったからさ。明日四葉さんに返して来てくれない?」

「あ、あぁ…それくらいなら……」

 

翌日──

 

「えっ!?上杉さんが私にプレゼントですか!?」

「違ぇよ。らいはが、お前から借りてた漫画を返したいんだとさ」

翌日、生徒会室にいた四葉の前に漫画の入った紙袋を置く上杉。四葉の横には三玖と一花が座り勉強会の準備を進めていた。

 

「おぉ〜!こんなに早く返さなくても良かったのに〜!どうでしたか?上杉さん!」

「ん?何がだ?」

「何がって、上杉さんも読んだんですよね?」

「いや、読んでないが」

「ナゼっ!?」

あっけらかんとした返事で当然のような表情をする上杉。それに対し四葉は驚きを露わにしていた。

 

「…これ知ってる。五月もこの間読んでて泣いてた」

「おぉ!じゃあ三玖も読んだのっ?」

「…い、いや……私は別に…」

「えぇぇ!?」

 

〔……伝記なら読んだ事あるけど…〕

 

「私は読んだよ?良かったナー」

「うむぅ!一花心が籠ってない!さてはちゃんとストーリー覚えてないなぁ!?」

「そ、そんなことないよォ〜?いやぁ〜あのシーンは最高だったなぁー……あの、主人公が最後にカレーを食べるシーン……」

ラストシーンじゃん!もぉー!なんでみんなちゃんと読んでくれないのぉ!?」

「……今、俺ナチュラルにネタバレ喰らったか?」

 

そんな会話をワイワイとやっていると、生徒会室の扉が開く音がした

 

「こんにちは!皆さんで何の話してたんですかぁ?」

「四葉の声が外まで響いててうるさいわよー」

「藤原と二乃か。いや何、この漫画の話を……」

「「…っ!」」

と、上杉が漫画の表紙を見せると、二人の形相が一変した。

 

「「『今日あま』だぁぁぁ!!」」

※『今日はあまくちで』の略称

「いけないわ…表紙を見ただけでだけで涙腺が…」

「これ良いですよねぇ〜私も友達に1巻だけ借りたんですけど、電子で全部買っちゃう位ハマっちゃって!」

「おぉー!よく分かってらっしゃるお二人が!」

二乃と藤原の登場で舞い上がる四葉。

そんな様子を上杉は唖然としたまま見ていた。

 

「なんだなんだ、これはそんな人気なのか?」

「当たり前よ!あんたも読んでみれば、この良さが分かるわ!」

「二乃の言う通りです!」

 

《…こいつら、急に熱入ったな……普段の勉強もこのくらい励んでくれたらいいのに……》

 

意気揚々と漫画の表紙を見せてくる二人を寂れた目で見ながら、上杉はそう思った。

 

《……まぁらいはもあれだけ俺に進めてきたし、帰ったら一度くらい読んでもいいか…》

 

そう思い、上杉はもう少しだけ漫画を借りる事とし、上杉家に持ち帰った。

 

その夜──

 

「ああああああああぁぁぁ!!!俺もこんな恋してみてぇぇぇ!!!」

 

一晩で完走した上杉は謎の「恋したいテンション」に陥り、次の朝にはその熱が覚める上杉なのであった……

 

本日の勝敗

上杉の敗北

(少女漫画の凄さを痛感した為)




次回

第28話「五つ子ちゃんには戻れない」

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