かぐや様は告らせたい ✕ 五等分の花嫁   作:キャメル16世

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第9話「上杉風太郎は逃れたい」

期末テスト!!

秀知院学園では、文理混合

年5回の試験が実施される!

 

そして、先日行われた期末試験の結果は──

 

第2学年(192人)

1位 白銀御行

2位 四宮かぐや

3位 上杉風太郎

と、相変わらずの接戦をようした

 

その一方、中野五姉妹の順位は──

 

「……グッ!」

 

中野一花 162位

中野二乃 176位

中野三玖 137位

中野四葉 182位

中野五月 159位

 

「……がはっ!!」

「上杉!しっかりしろ!!」

 

当然、全員赤点である

 

「改めてお前らがバカだと思い知らされるぞ…」

「うっさいわね!」

「しかしまぁ…ここまで酷い順位だと、流石にまずいんじゃないか?留年も有り得る」

「既に全科目で赤点だ…つまり……」

「次赤点を取ればイエローカードが出されますね」

「…がはっ!!」

「上杉ィ!」

 

赤点!!

秀知院では平均点の半分以下を赤点とし、赤点を取った時補修などの救済措置は一切ない!

科目ごとに3回の赤点で欠点──

必修科目は落とした時点で留年が決定する!

 

「……」

 

この窮地に於いて、上杉風太郎はある結論に至った

家庭教師の身である上杉風太郎

今まで1人で五人の教育を任せられたが、それも虚しく

長女の一花はアルバイト、次女の二乃は上杉嫌い、五女の五月は単独での勉強

1人で五人をまとめあげるのは困難と判断!

 

「……上杉…四宮…頼みがある…」

「…なんだ」

「なんですか?」

 

 

 

時は流れ──

 

第2学期、中間試験!!

 

「そういえばそろそろ中間テストですね、皆さん勉強はなさってますか?」

「ぴゅ……ぴゅう〜♪」

「藤原さん、吹けてませんよ」

「試験勉強なんて必要ない」

「…あら」

「そんなもん普段からちゃんと勉強していれば問題ないんだ。試験前だけ勉強しても身に付かん。一夜漬けなんてもってのほか、体調を崩すだけだ……君らはくれぐれも一夜漬けなんてするなよ……」

 

嘘である

この男、最近はバイトも休み、一夜漬けどころか十夜漬けに達しようとしている!!

 

白銀は現在4回連続で学年1位を獲得、学年首席の座を盤石のものとしている!

白銀にとってその成績は最大の生命線!

学年首位の座は誰にも譲る気がない!!

 

1位を守る為ならば……嘘も駆け引きも一切躊躇わない!

 

「そうですね、テストは自分の実力を見るものです。無理に背伸びをして良い点を取っても本来の自分は見えません。自然体で受けるのが一番でしょう」ニコッ

 

嘘である

この女、珍しく本気も本気で臨んでいる

 

彼女にとって敗北とは必ずしも屈辱ではない

敗北も処世術の内と考えている為である

 

だが勉学に限って話は変わる!

天才の四宮が()()を出してなお

白銀には()()()()()勝利出来ていない!!

 

彼女にとってそれは初めての真の意味での『敗北』であり

プライドの塊である彼女には到底容認出来ない屈辱なのである!

 

「石上くんはちょっと位背伸びしないとマズイかもしれませんよ。また赤点取って補習にでもなったら……」

「大丈夫ですよ、今回は試験勉強バッチリです」

「……」

「じゃあ僕は帰って勉強でもしますので」ガチャ

 

嘘である

この男、最近買ったゲームの続きが早くしたい

 

試験前にゲームを買うこの胆力!

まるで自分の死期を察したかの如く生き急ぎ!

 

そして普通に赤点を取る!

これが石上優のやり方である!

 

「私どうしても国語がダメで…外国語もスラング使っちゃうので試験だとあんましなんですよね」

「藤原書記は語学修得がちょっと特殊だからな、普通の勉強法は効率悪いかもしれん」

「勉強量が必ずしも点数に反映される訳ではありませんしね、いっそ勉強しないという選択肢もありますよ」

 

嘘である

 

「そうだな、俺も試験前は3日ほど勉強せずに坐禅組んで精神統一してる。これが効くんだわー」

 

嘘である

 

「……なるほど…分かりました!私勉強しません!」

 

本気(マジ)である

この女、白銀とかぐやの足の引っ張り合いに巻き込まれ、順調に順位を落としている

 

成績自体は平均的であるものの

学習意欲は高く、性格以外は優等生の藤原書記!

 

だからこそ秀知院TOP2の言葉を疑わない!

 

それが戦前暗闘(ダーティープレイ)とも気付かずに!!

 

試験は

ペンを持つ前から

戦いが始まっている!!

 

 

 

「えー…来週から中間試験が始まります。念の為言っておきますが今回も平均点の半分以下は赤点とします。各自復習を怠らないように」

「……」

 

《……ついに来たか》

 


 

生徒会豆知識

 

石上優は現在3科目でイエローカードが出されている

あと1回でも赤点を取れば留年が決定するぞ!

 


 

「……あの…今なんと…?」

『聞こえなかったかい?』

「……」ゴクッ

『確かに今回の事は酷だが……ここで君の成果を見せて貰いたい』

「……」

『今度の中間試験、五人のうち1人でも赤点を取ったら、君には家庭教師を辞めてもらう』

 

その日、上杉は中野達の父親と電話をしていた

彼の放った一言は、上杉を絶望させる

 

「……」ダラッ

「……」

「……くそっ!」

「私のスマホですけど!?」

「……ふぅ…悪い、五月」

「父から何を言われましたか?」

「……世間話をしただけだ」ダラダラダラダラ

「それだけでその汗の量ですか!?」

 

《全員赤点回避だと……?今週末の家庭教師の時間だけではカバー出来ない、それに二乃と五月、こいつらが素直に言う事を聞いてくれるだろうか…どちらにせよ時間が足りない、不可能だ》

 

「……?」

 

《だが、俺にも生活がある!ここで引くわけにはいかない!クビだけは逃れてみせるぞ!》

 

「…五月、今度の中間試験の対策…やってるか?」

「…なんですか?私が信用ならないんですか?」

「…いやそう言う意味じゃなくて……これでも一応お前達の家庭教師だ、分からないところがあれば教えてやるって言ってるんだ」

「なんですかその上から目線…貴方に教えは乞わないと言ったはずです」

「お前は真面目な割に要領が悪い、俺を頼ってくれたらわかりやすく教えてやれる」

「……」

「……ッ…三玖や一花を少しは見習え!」

「……」ピタッ

上杉の言葉に反応し歩みを止める五月

上杉の方へ振り向き、彼の目をじっと見た

 

「……」

「…貴方は忘れてるでしょうが、私は最初に貴方を頼りました。それを拒否したのは貴方でしょう!嫌々相手されるなんて御免です!」

「…っ…だったらお前一人で合格出来るって言うのかよ」

「出来ます。たとえ中間試験に間に合わなくても…」

「それじゃダメだ!今回赤点なら次はない!」

「…えっ」

「これも仕事なんだ、我儘言ってないで受け入れろよ!」

「我儘を言ってるのは貴方でしょう!」

「お前だって成績上げたいんだろ…だったら…黙って俺の言う事を聞いていればいいんだよ!」

「…!」

「…ハッ…いや…今のは…」

「貴方の事を、少しは見直していたのですが…私の見込み違いだったようですね……所詮、お金の為だけですか」

「…!……金の為に働いて何が悪い。何不自由なく暮らせてるからそんな事が言えるんだ……仕事じゃなきゃ、誰がお前みたいなきかん坊の世話を焼くか!」

「……無理して教えてもらわなくても結構。私は貴方の金儲けの道具じゃありません」

「そうかよ、後悔しても知らねぇからな」

「えぇ!たとえ留年になっても、貴方からは絶対に教わりません!」

「お前だけには絶対教えねー!」

 

 

 

「……くそっ…」

 

嘘である

 

《なんであんな事言っちゃったんだー!!》

 

「…上杉、どうかしたのか?」

「……白銀…」

 

「…俺が勉強をする理由…?」

「…あぁ、教えて欲しい…なぜお前は1位に拘る…?」

「……そうだな…あまり考えた事は無いが…」

 

嘘である

 

「……1位を取る事、それは俺にとっては生きる事よりも重要な事かもしれん」

「……」

「…俺は昔から何も出来なかった…運動も、家事も、料理も…そして、恋愛も…」

「……」

「…ただ、勉強だけは違った。勉強は、才能がなくても努力する事で、弱点から武器にする事が出来た。俺にとって勉学は唯一の武器だ。俺が勉強出来なくなれば、あいつは遠く、ただ見上げるだけの存在になってしまう……俺は勝たなくちゃいけないんだ…対等な存在になる為に…!」

「……対等な…存在に…」

 

『君が必要だもん!』

 

「……」

 

《バカか俺は…こんな時にまであの子の事を…》

 

「……お前はなぜなんだ?上杉」

「…俺は……」

 

《俺はいつだって金しか見えていなかった…このバイトを始めたのも金が目当てだった……らいはに美味しいご飯を…親父に楽を…そして俺には余裕を…そんな事を考えながらあいつらの家庭教師をしてきた…そう、いつも自分の事だけを思って……だが今では…》

 

「……俺が勉強する理由はただ一つだ」

「……」

「あいつらに…5人揃って笑顔で卒業してもらう為だ!」

 

本気(マジ)である

 

「…中野達の為か…」

 

《誰かの為に勉強する!それは同時に俺の為でもあり、あの子の為でもある!》

 

「……中間試験まであと1週間、お前に中野達をどうにか出来るか?」

「…出来るか出来ないかじゃない…やるんだ」

「……そうだな」

「……あいつらの父親に言われた、全員赤点回避しないと俺はクビらしい」

「…なにっ…!?」

 

 

 

「…そうですか、上杉さんがそんな事を…」

「あの人は私たちの事を何も分かっていません!所詮はお金のため…身勝手にも程があります!」

「……」

「私があの人の金儲けの道具になるくらいなら…留年する方がマシです!」

「…その言葉、本音ですか?」

「……え?」

「…本当に留年する方がマシなんですか?貴方の心は、本当にそんな事を言ってるのですか?」

「……四宮さん…?」

「…私が知る上杉風太郎という人物は、いつも素っ気なくて、まるで昔の私のようでした。ですが……人との関わり方を知った今の彼は、きっとなりふり構わずお節介をするのでしょうね…」

「……っ」

「……もう一度訊きます…貴方のその言葉は、本心ですか?」

「……本心です!私の想いは変わりません!」

「…そうですか」

「生徒会の仕事も終わったので帰ります!失礼します!」ガチャ

 

「……これは…難儀なものですね…」

 

 

 

「……」ガチャ

 

帰宅した五月はすぐさま自室にこもり、机へと体を向けた

上杉が家庭教師の日で家に来ている事も忘れ、彼女は時の動くままにペンを進めた

 

〔今日は数学の復習をしましょう、三玖にヘッドホンを借りた事ですし、集中して出来る筈です……〕

 

「……」カキカキ

 

〔私は間違っていません……悪いのは彼の方です…私たちは貴方の道具じゃない……〕

 

「……」

 

〔私1人でも…何とかしてみせます……私…1人でも……〕

 

「……」 ポタ ポタ  グスッ…

 

嘘である

中野五月にとって一人の時間というのは自分を見つめる為の大事な時間であるが…それ故に、酷い自分を、醜い自分を見つめる事となる……

それは彼女にとって屈辱…いや、悔いの残る物なのである

 


 

五つ子豆知識!

 

五月は誰にでも敬語を使うしっかり者!

その凛々しさ故に生徒会に抜擢されたという話もあるぞ!

 


 

「……」

「……い……おい…きろ…」

「……ん、ん〜…」

「おい、起きろ」

「…あ、すみませ……っ」

 

〔上杉くん…!?〕

 

「やっと見つけたぞ、三玖」

「えっ」

 

〔あっ…三玖のヘッドホン…つけっぱなしで…上杉くん…それに気付かないで…〕

 

「勉強サボって俺から逃げてただろ!許さねぇぞ!」

「……っ…あの」

「ほらペン持て」

「私は」

「教科書広げろ!罰としてスパルタ授業だ!お前には絶対、赤点回避してもらうからぞ!」

「だから三玖じゃ…」

「そういや、五月の姿が見えねぇな。今も部屋で勉強頑張ってるんだろうな間違ってもうたた寝してるなんて事は、ないだろうなー……」

「……ッ」

「…どうした…三玖?」

「……」

 

「素直になればいいのに…」

 

「貴方のその言葉は、本心ですか?」

 

「……なんでもありま……なんでもないよ」カァァァ

「…じゃあ始めよう。今はどこやってたんだ?」

「…せ、生物…」

「そのまま続けるか?わからなかったところはあるか?」

「……えっと…」

「あ、そうだ……」

「……」

「…一昨日は悪かった」

「……な…なんの事?」

「…あっ…そうだな…ははは、三玖に何言ってんだか…」

「…私こそ、ごめんね」

「……三玖こそ何言ってるんだ?」

「そ、そうだね」

「……」

「ここが分からないんだけど」

「なんだ、もうそこまで進んでたのか…それはな」

 

「…1人でよく頑張ったな」

「……うん」

 

本日の勝敗結果

五月と上杉の勝利

(仲直りが成功したため)




次回

第10話「上杉風太郎は逃れたい②」
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