NURUTO 作:ONE DICE TWENTY
パワー!
わかりみがアサイー
所謂神様転生という奴を経ている。もっともよくあるミスとかじゃなくて、単純に死んだら神様に出会いました的なソレ。そこで転生先がNARUTOの世界になって、チート能力を貰ったってアレ。原作知識バリバリだしチート能力はこの世界でいう魔力であるチャクラを一切消費せずに発動できるってんだからもうアレよソレよコレ。
の、はずだったんだけどねー。
「おいそこのチビ! こんなトコで何してやがる、さっさと持ち場に行け!」
「へーい」
生まれましたのは波の国。そう波の国。
NARUTOといえば忍、忍と言えば隠れ里な隠れ里を持たない小さな島国。そして超貧乏。貧乏を絵に描け、って言われて描かれる絵がそのまんま国になったような国。
なんでやねん。
ここまでお膳立てされてなんで木の葉とか主要隠れ里じゃないねん。せめて火の国の中にしてほしかった。なんなら山奥とかでもいいから。いや山奥は今とそう変わんないからヤだわ。
ただまぁ、チート能力自体はあるわけで。それもチャクラを消費せずに無制限に使える代物。それさえあれば俺がガトーをぶっ倒して、なんてこともヨユーですよヨユーとかね。
思ってたんだけどね。
あいやー、無理無理。オニチャンコワイネー。
別に刃物が怖いとか殺しが怖いとかじゃなくて、単純に彼が雇ってる2人が怖い。いや刃物も怖いし殺しも怖い。血は平気なんだけどねー、やっぱ一回死んだら怖いよ、心臓止まる感覚がまた来るのは。
じゃあなんでこんな物騒な世界に転生したんだよって話。アンサー、NARUTOが好きだったから。あとBLEACHも好き。ONE PIECEも好き。ちょっと昔のジャンプ好き。
「おいそこのチビ! 道草食ってないで働け!」
「へーい」
さてはて、ここまで引っ張っておいてなんだけど、チート能力ってのをパパっと明かしちゃいたいと思う。別に隠すもんでもないからね。
そう、俺に与えられたチート能力。それは──【緑色の眩いぬるぬるしたもの】である。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】だ。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】なのだ。
なんじゃそりゃ、っていう。
とはいえここはNARUTO世界。なんぞか使えるモンが、つーか使い道があるんじゃあーりませんことよ、と模索した末、一応それっぽい戦闘スタイルには辿り着いた。戦闘スタイルつったって師もいなければライバルもいない、仮想敵を立ててのbot撃ちみたいなことだけど。
名前もこれじゃあかっこが付かないのでヌル遁と名付けた。ならせめて霧隠れとかにしろよ。とか。まぁそろそろそこへの不満は良い。泥遁とか熔遁とか似たのいっぱいあっただろ。とか。なぁ。なんなら水化の術とかさぁ。
いいんだ、それは。
ヌル遁は……まぁ割と使えた。流石チート能力を名乗るだけはある。
ぬるぬるしているので物理攻撃に非常に高い耐性があり、並大抵の攻撃ならほぼノーダメージで済む。更には水遁っぽい見た目しといて雷に耐性がある他、こっちは水遁らしく火にも耐性がある。まぁ何? 消火剤だよね、要は。
そんで、これの最大の特徴。
それは──包まれると、怪我とか疲労とかが回復する、って点だ。要は医療忍者の真似ができるってコト。まぁ回復量はそんななんだけど、己一人で回復できるってのは強い。
他にもかなりの伸縮性、展性、粘性、密封性などに長けていて、たとえば対象を包んで窒息させるとか、対象の喉に向けて噴射して窒息させるとか、対象を圧し潰して窒息させるとか、色々使い道がある。問題は出した後操れないってトコかな! いやこれが俺の力量不足なのかそういう仕様なのかはわからないけれど、とりあえず今んとこ出した後の制御は効かない。ただし口以外……というか全身のどこからでも出せる。
尚、ぬるぬるしているもの、で思い付きがちな「摩擦を失くす」というのは無理だった。
なんでって、これ破壊力あるから。
足裏から出して地面滑ろうとしたら地面掘っちゃうので滑っての移動ができない。例外としてヌル遁が動いていない状態、つまり地面に放置されている場合に限り、摩擦力がナーイ状態になる。一応トラップとしては使えるってわけだ。無駄に緑色で光っちゃってるモンだから忍者相手には通用しないだろうけど。
と、ここまで語り申したが、この能力の一番良い所ってのは、やっぱりチャクラを消費しないという事だ。
NARUTO世界は何が何でもチャクラチャクラ。チャクラありきで話が進む。体術の一つをとってもチャクラは必須だ。忍者なら、というか戦闘者なら莫大なチャクラを持っている必要があるし、無い奴とあるヤツで身体能力に天地程の差がある。
ゆえにチャクラは必要だ。幸いにして俺には素養があった。けど量があんまり多くなかった。とりあえず原作準拠なチャクラコントロールを練習しつつも、あぁこれ下忍止まりですね、くらいのチャクラしかない。いや別にチャクラ量だけが忍の格を決めるわけじゃないんだけどね。そもそも俺隠れ里出身じゃないから忍者ですらないんだけどね。
だからこそ、だ。
だからこそチャクラを必要とせずに使えるヌル遁は強い。少ないチャクラを完全に体術へ割いて、戦闘はヌル遁で済ませる。これは確かにチート能力だろう。外付け、という意味で。
よって俺はヌル遁を極めることにした。まぁ極めないとこの世界死ぬだろうし。簡単に。ぷちっと。
まず、敷かれているヌル遁で俺自身が滑らないようにする訓練だ。
一応触れさえすれば【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は吸収できる。吐き出したものを引っ込める、ということはできないのだが、触った地点の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を綺麗にお片付けすることはできるのだ。
だからそれを用い、自身の立った場所の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を吸い取ればこんなトレーニングは必要ない……と、最初は思った。
いやでもそれ完全に弱点じゃね? って。途中で思ったのだ。
ほら、一応物理無効みたいなトコあるじゃん? それじゃあどうしよー! ってなった時、俺が移動した後の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を見たら、足跡の形に【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が無くなっている……これはアイツも滑るんだ! なら地中からの攻撃だ!
のヤーツじゃん。NARUTO世界には千年殺しよろしく地中に潜る技がいくつかあるんだ、そうでなくとも土遁でドーンとかされたらひとたまりもない。
だから体幹トレーニングである。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の上で立つ練習。流石にこれにチャクラは使わない。本末転倒が過ぎるから。チャクラコントロールのトレーニングにはなるんだけどね。
結果として、まぁ物にはなった。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の上でアクロバティックな動きができる程度にはなった。副産物としてぬかるみの上でも動けるようになった。これ、波の国で活動するには結構重要で、マングローブとか湿地帯とかがある波の国の、普通は行けないような場所も通れるようになったのだ。
行かないけどね。
いや、一般人が行き難い場所ってつまり一般人じゃない奴が潜んでる場所じゃん。鬼が出るか蛇が出るか、なんていうけど、実際鬼も蛇もいる世界じゃジョーダンじゃないわよ。死して屍拾うもの無し。ホントにそう。貧乏国の貧乏チビなんて探されない。いや、探してくれる人はいるかもしれないけど、探す能力が無ければ諦めも早い。実戦経験を積む、なんてジョーダンは顔だけにしておいてほしい。それで死んだら元も子もフユキも無いだろう。
ガトーの取り巻き相手に、なんてのも現実的じゃない。
いや、多分チンピラの一人や二人倒せるっちゃ倒せるんだけど、俺がそれをやった、という事実がガトーカンパニーに知れ渡るのがよくない。一応波の国所属であり、生きるためにご近所さんなんかの助け合いあっての俺なので、俺がいきなりガトーカンパニーに喧嘩売ったなんてなったらみんなに迷惑がかかる。
俺がやるべき……というか取るべき行動は、ただ一つ。
強くなって、旅ができるくらいになって、波の国を出て行く。んで木の葉に行く。勿論正式な手順を取って、だ。隠れ里に旅人が何用だよ、って言われたらもうどうしようもないんだけど、あの里割と入管甘いし受け入れ広いから行けそうなんだよな。
甘いのは俺だって? ハハ、その通り。仮にも隠れ里がそんな甘いワケない。だからまぁ、やっぱり正式な手続きをどうにか踏む。あるいは中忍試験の観客で行く。それくらいしか思いつかん。頭が悪いのでな!!
「おいチビ、いい加減にしねぇか!」
「チビチビ言うけどそんな身長変わんなくない? 他の奴らに比べてもアンタ結構チビじゃん」
「──あァ?」
やべぇ、考えた傍からやった。
幸いにして顔は見られていない。俯いてるから。
さてここで選択肢です。1.逃げる。2.戦う。3.捕まる。
フツーに1でしょ。
「てめェチビ、面ァ見せろ!」
取り合わない。いやさっきの煽りで声は十分に聞かれている気がするけどこれ以上印象を残さないようにダッシュで逃げる。Bダッシュだ。チャクラは使わないダッシュだ。使ったらシュッって消えちゃうから。忍者っぽい移動になっちゃうから。
とはいえ子供のダッシュだ。チビダッシュだ。歩幅は当然小さいし、それで出せる速力なんてたかが知れている。大人のダッシュには敵うまい。
追いつかれる。いや、既に手が振り上げられている。首根を掴まれるか、そのままぶん殴られるか。見えてないけど風切り音的に手の形がパーなので掴まれる感じだな。比較的良い奴だ。問答無用で殴ってくる奴も珍しくないし。
「このチビ──」
「足元ご注意さんっ!」
「は──あ!?」
【緑色の眩いぬるぬるしたもの】──ではなく、それで掘った穴を設置しただけだ。前足から出して掘った穴。ソレに溜まった【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を後ろ足で吸収する高等技法……! 走り方が超絶バランス悪くなるけど証拠の残らないヌル遁として優秀!
見事チンピラは穴に足をかけて転倒。その隙に距離を稼ぐ。
「う──う、うわ、ぁああ!?」
「ン?」
想定していない悲鳴に振り返る。これがチンピーラの罠だったら大したものだ。大人しく捕まろう。嘘。
えーと、で、何?
なんで君そんな青ざめてんの?
「これ、これ、これぁ、これは、嫌だいやだいやだ嫌だ!」
「えっ」
チンピーラは自分の足を……えー、取らんばかりに払っている。え、何々? SANC入った? なんで幼児退行してんの? そういう趣味?
そのままチンピーラを眺めていれば、遠目に見ても足が赤に染まっていくのがわかった。あー、あれ、やばです。やば案件。マジでSANC入ったんじゃね。アイデアには成功してる。
人がわらわらと──寄ってはこないんだなぁ、これが。何故ってアイツがチンピーラで、見るからにガトーの配下だから。当然俺も戻ったりしない。
手を差し伸べたとして、それに怒るチンピーラもいる。貧乏人が余計なことを、と。見物していたら、それだけで矛先を向ける奴もいる。何見てやがる、と。だから何が起きても集まらないのが正解。知らなかった、が一番だ。
幸いにして? 俺の容姿はザ・普通の子供なので、探されても見つからないだろう。波の国のチビっこが全員根絶やしにされる可能性はあるけれど、流石のガトーもそこまで馬鹿じゃない。被害にあったのは取り巻き一人だしな。
……しかし、なんだ。
俺のこの【緑色の眩いぬるぬるしたもの】、なんか精神汚染みたいな効果でもあんのかね?
自分じゃわからん。見慣れてるし。というか回収したよな俺。し損ねたか?
よし。
見なかったことにしよう。
アイツは一人で発狂した。それでオッケー!
そこから時は経ち。
いやね、あんなことがあってから、俺は本当に細々と生きたわけさ。貧乏人らしく細々とね。
件のチンピーラの徘徊ルートを調べてその時だけ隠れたり、ザブーザさんとか白い子とかをそれとなく調べたり。成果/Zeroだったけど。
そんでまぁ、もうそろいいんじゃないかと。
波の国、出ても良いんじゃね? と。
つーのもまぁ、波の国にいると今がいつなのかがわからんのだ。貧乏なのでカレンダーとか買えないのだ。カレンダーあってもNARUTO世界でいつなのか、なんてわかんないんだけど。ガトーカンパニーに支配されている、という事実がNARUTOの波の国編の少し前か結構前かのどっちかであることはわかるんだけど、そのどっちかが重要なわけで。
なんだ。至極単純に言えば、痺れを切らしたのであーる。
「つーわけでやってきました火の国」
「おや、僕。一人かい?」
「なんだろう、家出じゃないんですけど、ちょっと大人になりたくて」
「家出だね」
火の国の関所で足止めなう。木ノ葉ですらない。いや波の国は一瞬で出られたんだけどね。金のある国はうまく行かないね。
「出身は?」
「強いて言うなら空、かな……」
「服装が波の国だから波の国だね」
な、なんだこの関所の人。
鋭い……! 名探偵なんじゃないだろうか。
「名前は?」
「人呼んでさすらいのジョニー。あるいは蒼天の稲妻のジョニー」
「本名は?」
「ヨゴシ」
「はい。まぁ、波の国の事情もわかっているからね。あまり危ない所には行かないようにすると約束できるなら、通ってもいいよ」
「えっ、それはそれでどうなん」
なんか通れた。
この、思ったことが口を突いて出る癖は早いトコどうにかした方が良いとは思うんだけど、如何せん自分じゃ治せないので勘弁。
ともかくこれで木ノ葉の里を目指せる。危ないトコオブ危ないトコな気がするけどヘーキヘーキ。
よぉし、んじゃいくぞー!
──と、張り切った俺の横を。
見覚えしかない四人が通り過ぎる。俺が来た方向へ。
ンンンンンタイミング悪し。でも時系列はわかったなぁ!