NURUTO 作:ONE DICE TWENTY
三すくみの戦いの前哨戦。
カブートとナルートの戦いを眺めている。ジラーヤはカブートによってチャクラを上手く操れない状態にされ、血液恐怖症によって放心状態になったツナーデも戦力扱いは出来ず。シズーネは言わずもがな。
そんな中で、ナルートが新術にして疾風伝の代名詞ともいえる螺旋丸を成功。
カブートへそれを直撃させたのち、しかしカブートも決死のオペでナルートを倒し、見事相打ちとなった──ところが、今。
これでナルートとカブートが倒れ、ツナーデが覚醒してくれたら三すくみの戦いに入る。
……はずなんだけど。
「全く……ワタシ達は見世物じゃないのだけどね……」
「何用かのぅ。ずっと目を光らせて……まるで、漁夫の利でも狙っておるかのようだのう」
見つかった。
いや俺めっっっちゃ離れたトコにいるんだけどね。最後の路銀はたいて望遠鏡買ってまでさ。
ここはほら、ナルートが暁に渡るのはマズいから、殺しておくべき! ってウォロチマールが思って殺しに行って、けれどツナーデが守って覚醒状態に入る……の流れじゃん。こっち見てる暇ないって。
「そろそろ出て来なさい……出てこないなら、無理矢理来させるわよ……」
──仕方がないので出て行く。
瞬身の術で大蛇の上に飛び乗れば、ウォロチマールもジラーヤも双方笑みを深めた。
「何用、はこっちの台詞なんだけど」
「妙に口寄せを欲していたお前の事だ、ワシらが口寄せをするまで様子を窺っていた──とかなんだろ?」
「あら、口寄せが必要なのね……。大蛇の口寄せならいくらかあげてもいいわよ……気に入られるかどうかはアナタ次第だけど……」
「え、マジ? それかなり心惹かれる」
「勿論アナタがワタシの所に来る、というのが条件よ……」
「……悩ましいな」
いやマジで悩ましい。要は口寄せの巻物貰って口寄せして、その場で調伏すればいい、ってことだろ? カツーユは確かに魅力的なんだけど、移動速度の点で大蛇もかなり良いと思ってる。熱源センサーも感知の苦手な俺にとっては役に立ちそうだし。
え、真面目に悩ましくね?
ウォロチマールの元に行ったって、別に殺される心配はほぼ無いはずだ。今のウォロチマールは印が結べない。強いて言えば呪印持ってる奴らが自然エネルギーでぶん殴ってくる可能性がある程度だけど、それだってゲレルの石の力を取り込んでいない【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で完封できる。
……アリか?
「ヨゴシ……お前、ちと趣味が悪いのう」
「ヨゴシ君……自来也の言う事など気にしなくていいの。どう……私のもとに来れば、口寄せは勿論、さらなる力を与えてあげるわよ……」
──あれ、これモテ期?
今二人の男性に言い寄られている状況? 逆ハー? 俺男だけど。
ただまぁ、うん。
「アンタのとこ行って得られるものなんて、各里からのヘイトくらいでしょ」
「アラ……フラれてしまったようね……」
「ビンゴブックへの記載があった以上、各里からのヘイトは既に貰ってると思うがのう」
「引き止めたいのか背中押したいのかどっちなんだ」
そも、俺にはチート能力というとびっきりの外付けがある。
そこへ更に、となると……ね。口寄せはあくまで道具だからいいんだけど、呪印は抑えが利かないのがなぁ。
チラ、とツナーデの方を見る。
……大丈夫そうやね。そも、ナルートを守らなくても、胸や肩に傷を負わなくても、創造再生を使わずとも。
彼女なら、自力で立ち上がる。
「綱手が気になるのかしら……?」
「ちょっとね」
「そう――なら」
ウォロチマールが動く。
目線はツナーデの方へ。咄嗟に自来也が追いかけるが、舌で邪魔をされて追いつけない。
原作での狙いはナルートだった。ゆえにツナーデはナルートを守った。
だが、今のウォロチマールの狙いは──。
「ヌル遁・ヌル陣壁!」
突如立ち昇るは緑の壁。口から蛇を出し、さらにそこから短剣を出したウォロチマールがそこへ飛び込み──取り込まれる。
「な──なんだ、これは! これは……これは、これは!」
「う……前も飲み込まれたけれど、気分のいいものではないわね……!」
あ、やべ。
ツナーデなんかトラウマばっかで正気度クソ低いんだから、ヌル遁見ちゃったら。
「あ、ああ……ダン。ダン。そこにいるのか? ……ああ……いいぞ。お前が言うのなら……」
ヌル遁の壁を見て、両手で顔を覆ったツナーデ。しかし、少しした後、虚ろな目をして……ツナーデは、驚いた顔をする。そのまま安堵の表情で中空に抱き着き、空気に頬ずりをし、今度は気を失っているナルートに対して覆い被さり──衣服をはだけ始める。
ん~~~~不味いの引いたねぇ!
「アラ大胆ね……」
「おい綱手ェ! 何しとるんじゃこんな時に!」
「つ、綱手様……こんな公衆の面前で……だ、ダメです……!」
しかし、おかしいな。
ウォロチマールはツナーデに両腕を治してもらいたいはず。だからツナーデを殺す気は無いと思っていたんだけど、まさか真っ先に狙いに行くとは。
というか【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で飲み込んだのになんで喋れるの。窒息しないのこの人。あ、自分の口から蛇出して外にグラップリングし、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】から抜け出した。
……成程、そういう抜け方があるのか。知らなかったな。
さて――まぁやば案件引いたツナーデは、だからこそ創造再生を使わずに済む。短期発狂してその後立ち直ってくれ。あるいはシズーネに看病されてくれ。
図らずも割って入ってしまった三すくみだ。口寄せのヤーツが見れないのは残念だけど、ここでツナーデを守る事で恩を売ってカツーユに取り次いでもらうのはアリな気がする。
だから、ヌル陣壁は維持したまま。
手に緑無を出現させて──ウォロチマールに対峙する。
「フフ……こうしてやりあうのは二度目ね……あれから少ししか時間が経っていないけれど、少しは強くなれたのかしら……?」
「どうだろう。ま、攻撃手段は得たよ。そっちこそ弱くなったんでしょ。三代目にしてやられてさ」
「減らず口は変わらないわね……シャァ!」
開始の合図など無い。会話の最中に突如投げられた短剣は、ヌル遁アーマーによって防がれる。
──いや、今すぐこの部分を切り離せ!
「アラ……良い判断ね」
「そういうのがある、って知ってたからね。やっぱり頭が良いというかなんというか、俺じゃ気付けない事を気付かせてくれるのはありがたいよ」
「戦場とはそういうものよ……ただし、今学ぶのでは遅い場合もあるけれど……」
今のは口寄せだった。多分。
それも、刺さった場所から陣が広がるタイプの奴。
つまり──ワンチャン、ヌル遁アーマーの内部、あるいは俺の体そのものに何かが口寄せされる可能性があったわけだ。そしてそれは、忍具の類、起爆札の類、そして何らかの毒性生物の類。なんでも考えられる。
あぶねぇあぶねぇ。いくらこの【緑色の眩いぬるぬるしたもの】に治癒能力があるからって、そんな大怪我がみるみる治っていく、ってワケじゃあない。普通にここで退場、の可能性も十分にあった。
「──ヌル遁・大太刀の術」
なーにが無敵に近い、だ。弱点バリバリじゃねぇか。可能性でしかないにしても、可能性があるだけで十二分に脅威だ。そして、それを俺が脅威に思う、ということを大蛇丸に知られてしまったのが不味い。
印が結べなかろうが天才の一人であることに変わりはない。いくらでも策を講じてくることだろう。
「大きな剣ね……そんなもの、アナタのようなおチビさんに取りまわせるのかしら……?」
「見た目より軽いんだよ、これ」
この前の夜と同じだ。
技術もへったくれもないぶん回し──だが、長射程且つ広い剣幅が、放射状一面の敵を逃がさない。当然眼前にいる大蛇丸にも当たる。
……当たった?
「フフフ……確かに物凄い破壊力だけど、切断面じゃなければただの打撃……なら抵抗せずに受け流されたらいいだけの話よ……」
「なら切断面に変えよう」
「ッ! く──これだから不定形は……!」
別に形が固定されているワケじゃない。剣の腹でぶん殴っていたのを、剣の側面に変形する、なんてのは造作もないことだ。
しかし、これだから不定形は、というと……何か過去に経験が。
「けど、どうしてアナタが綱手を守るのかしら……何か接点でも?」
「特には無いよ。治してほしい人もいないし、何か因縁があるわけでもない。けど、ホラ」
ヌル遁アーマーからぴょっこりと【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を出し、ナメクジの形に形成する。
「似てるでしょ?」
「……カツユが聞いたら、あの温厚な彼女でさえ激怒しそうね……」
「似たようなもんだと思うけどなぁ」
「それで……つまり、アナタ曰く似ているものを口寄せするから、綱手を守ると?」
「いや、別に綱手姫はどーだっていいんだわ。さっきも話してたけど、俺は口寄せが欲しくてね。いろんな動物考えてみたんだけど、やっぱり俺と一番相性良いのはナメクジかな、ってなっただけ」
「そう……アナタ、存外適当に生きてるのね……!」
「大正、解ッ!」
大蛇丸の袖から出てきた剣と緑無が克ち合う。
均衡は一瞬。ぬるりと剣を緑無が切り裂いて行き、その半ばからを完全に断ち切る。
けれど、その頃にはもう大蛇丸はそこにいない。瞬間、足を掴まれる。感覚はない。ヌル遁アーマーが直に触れられるのを防いだからだ。けど、そのまま地面へと引きずり込まれる。
そうはさせじと【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で腕を作り、地面を押すことで抜け出す。且つ、凄まじい威力で地面を押したことで大蛇丸を露出させ、足裏から緑無を発射。顔面直撃コースだったそれは、大蛇丸が首を伸ばしたことで回避された。
「不思議生物め」
「アナタに言われたくはないわ……」
形成した両腕で自身を包み込み、さらにヌル遁アーマーを増量させる。空中で広がっていくは緑色の眩い球体――地爆天星ほどではないが、周囲に影を落とすレベルの星が出来上がる。
先ほどまで俺の足を掴んでいた大蛇丸も、ソレに飲み込まれるのはまずいと判断したのだろう。俺の足を離し、自由落下を始めている──が。
「はは――噴射ァ!」
天へ向けてヌル遁を放出する。
突然推進力を得た球体はゆっくりと、だが確実に落下を始めた。
落下先にいるのは当然、大蛇丸だ。
「フフ、忍が空中で動けないと思うのかしら」
「いいや、アンタは妙な動きで飛べるってのを俺は知ってんのさ!」
それは原作でナルートを殺すためにそちらへ向かった時の事。
彼はなぜか浮き上がり何故かぬるりと方向転換し、何故か加速した。印も結べない蛇もなしていない状態で、だ。アレに関してはマジで意味が分からない動きだったけど、まぁそういうことができる技術があるんだろうと思い込めれば納得だ。
そしてそれが今できないはずもなく。
ならば──と。
「だから、逃がさないようにする」
「──ッ、く、これは、縄!?」
球状の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】から飛び出した細い縄。それが大蛇丸の体に巻き付き、引きつき、彼の逃亡を許さない。
ゲレルの石の力様様だ。この精密な形成能力はこの力あってこそ。
そして。
「ヌル遁奥義・圧塗!」
超質量の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が、大蛇丸の上に落ちる──。
「──こんなこともあろうかと、あらかじめカブトに描かせておいて正解だったわね……」
物凄い白煙が噴出される。破壊力、重量共に最高クラスのはずの【緑色の眩いぬるぬるしたもの】がどかされる――否、転がされたか?
ああ、そうか。ゲレルの石の力は自然エネルギーだから――口寄せ獣には。
「口寄せの術……」
「チッ、もうちっと見てたかったが……出てくれよ! 口寄せの術ゥ!」
「綱手様、綱手様……お気を確かにお持ちください!」
「……大丈夫だ、シズネ。私は……大丈夫だ。そして、ナルトを連れて下がっていろ。もうこれ以上の醜態は見せないさ――口寄せの術!」
ヌル遁の球体を吸収し、ヌル陣壁も消す。
しかし、シズーネは発狂しなかったんだな。結構色々抱えていたような気がしたけど。
そのままさっきの大蛇丸を真似して近くの木へとグラップリング。代償に木がバキメキと潰れ折れるけど、なんとかその場を離脱することができた。ごめんなウッド。
振り返れば。
白煙の中に──見たかったものが、展開されている。
+++
「マンダに大蛇丸。カツユに綱手……こりゃ珍しい面々じゃのう。それに……」
「ばか、集中しろよぉ。こちとらそろそろ長年の因縁にケリをつけようと思ってお前を呼び出したんだ。余所見してもらっちゃぁ困る」
「大蛇丸を、か?」
「ああそうだ」
超巨大カエル、ガマブン太。粘性のある唾液や油を吐いて火遁をサポートする他、素の身体能力にも長ける完全戦闘用口寄せ獣。
相対するはこれまた超巨大ヘビ――紫の体表に碧い目。その眼球の一つでさえ人間より大きい。
「おい大蛇丸ゥ……てめぇ、こんな臭ェ空間に俺様を呼び出してんじゃねぇよ。てめぇも、この場所も、臭くて臭くて仕方ねぇ。喰う気にもならねぇ臭さってのは久しぶりだぜ……」
「臭いはワタシのせいじゃないわ……あっちに逃げた子供にいいなさい……あれが発生源だから」
「チッ、ちゃんと風呂入りやがれこのガキが! 殺すぞ!」
あ、はい。
じゃあこれ終わったら温泉入ります。
さて、カエルとヘビ。
バチる二人を眺むるは──白に青背の超巨大ナメクジ。
お目当てのカツーユである。
「カツユ。そのガキをシズネの所にまで連れていけ」
「はい、わかりました。……ですが」
「アレは気にしなくていい。こちらを害する者ではないはずだ」
「……わかりました」
カツーユはその体液に治癒能力を持つが、凄いのはそれだけじゃない。何千にも分裂することができるとか、遠くにいても情報のやり取りができるとか、声がかわいいとか、あらゆる口寄せ獣の中でもパーフェクトな口寄せ獣なのだ。是非お近づきになりたい。
──が、先ほどのウォロチマールの反応、そして先日の自来也からの忠言を考えるに、この【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は俺以外には違う見え方をしているのだと思われる。
俺がこうして非常に可愛らしい緑色の眩い半透明なカツーユの模型を作ったとしても、他者からは多分なんらかの怪物に見えている事だろう。
残念だけど、交渉は無しかな。わざわざ不快にさせることもない。
ただ、やっぱりツナーデとジラーヤに恩を売っておくのはアリだな、と個人的に思っている。
だーいぶ服のはだけているツナーデにはもう取り返しのつかない程に失礼なことをした扱いになっていそうで怖いんだけど、それはそれ。勝手に発狂したのが悪いという事でここはひとつ。
「──あァ!?」
ヌル遁でクロスボウを作り上げ、放つ。
須佐能乎でうちはがよくやるアレだ。アレのヌル遁ver.
それを、音もなくマンダに向けて発射した――んだけど、簡単に避けられた。
「くっせェ……しかも横やりだと? 俺様を狙って? ……おい大蛇丸! アイツ、殺していいよなぁ!?」
「いいけど、アレには勝てないわ……少なくとも今はね……」
「あァ!?」
あ、そうか。
蛇ってヤコブソン器官とかいう人間の鼻よりもっと鋭敏な器官が備わってて、だから臭いには敏感なんだ。
この【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は悪臭を放っているらしいから、素早く動ける蛇には効かない、と。
……オイオイ、弱点多いな。今日だけで何個見つかったよ。
「ヨゴシぃ! ここまで来たらもうワシらの問題だ! 下がってろぉ!」
「助けてくれた借りは必ず返す! だが今は退いていろ、邪魔になる!」
「何てめェらと遊んでやると思ってんだ──俺様を馬鹿にした奴を殺すに決まってんだろ!?」
ぐるりと首の向きを変え、こちらに来るマンダ。ウォロチマールがひきつった顔をしているあたり、やっぱ制御できてないんだな。
この行動を受けて真っ先に動いたのはガマブン太とジラーヤ。大きく跳躍し、マンダを地面に縫い付けんとドスを振るうも、くねりぬらりと避けられる。
「舌歯粘酸!」
今度はカツユから。
岩をも溶かし尽くす体液。今度は面による攻撃を、けれどやはり体をくねらせることで避けるマンダ。やっぱ回避能力ピカイチだな、この蛇。
そしてそれら二つに振り向きもせず、文句も言わず――俺の元へ一直線。
「ヌル遁・巨大ヌル魔手裏剣」
巨大な手裏剣を形作る。ただし、俺はこの大きさの手裏剣を飛ばしたことが無い。無いので適当に投げる。図体でかいから当たるだろ! って感じで。
避けられた。
「くせェモンまき散らしてんじゃねェよ!!」
「その臭いモン食うことになるのはいいんだ?」
「あァ!? クソガキが、今俺様に舐めた口利いたか、オイ! コラ、ぶっ潰してやらぁ!」
初めから食べる気はなかったのだろう、直前で体を反転させ、長い長い尾による叩きつけ。
その速度、その範囲は俺に対応できるものではない。
だからそのまま叩き伏せられ。
「──かてェ!?」
「だから言ったでしょ……アレの体に纏わりついているものを剥がさない限り、アレには勝てないのよ……負ける事も無いけどね……」
「チッ、防御特化か面倒臭ェ」
「余所見厳禁だのぅ! 火遁・蝦蟇油炎弾!」
後方から凄まじい熱量が食る。
それに対し、マンダはニヤりと笑う。多分。蛇の表情とかわかんないけど。そして素早く俺の体に尾を巻き付かせ、持ち上げ――迫りくる炎の前に差し出した。
「!?」
「く──」
「まずい、止められんぞ!?」
うむ。
ヌル遁は確かに遁術じゃない。だから遁術の強弱関係には入らない。
ただ。
「ヨゴシ!」
「ぶっ、っはぁ……クソ、後味の悪ぃことをさせよるわ」
「綱手ェ! すぐに治療をッ」
炎が晴れる。
火に包まれたのは俺だけじゃなくマンダと大蛇丸もだが、消えた炎の中から出てきたのはマンダの脱皮した殻だけ。
そして、その尾の先端に掴まれた、ケロっとした顔の俺。
ヌル遁は火と雷に高い高い耐性を持つのであーる。
「ヌル遁――大太刀の術」
原作ではツナーデが拾うべきガマブン太のドスがまだ落ちていない。だからマンダの口を塞げない。
そのための措置。空中に形成する緑色の眩い太刀が、ガマブン太の直上でその刀身を露わにしていく。
「なんじゃ、新手か!?」
「違う、ブン太、地面の下だ!」
「なぁにぃ!?」
地面から突き出したものを掴むガマブン太。けれどそれはマンダの尻尾だった。
本命は背後。そう、背後から確実にガマブン太を仕留めるために。
なればこの大太刀は、確実に蛇の頭を縫い留めるために。
「!?」
「グ……!?」
それを見てか、今度はガマブン太がドスを抜く。そして、マンダの尾を地面に縫い留めた。
これで完全に移動できない。
「──そろそろ引導を渡してやろうじゃないの!」
あとは、完全試合だ。
飛来してきたツナーデが大蛇丸を殴る蹴る殴る蹴る殴るファル。原作と違ってカブートが近くにいないので(原作でもカブートはほとんど動けなかったけど)もうそれはフルボッコだ。ハートフルボッコだ。
見てて可哀想になってくるくらいのフルボッコ。壁なんかないのに壁ハメしているように見えるくらい。
だけど――それは、この大蛇丸に対してだけの話。
奴は他人の体を使っている。だからここでどんだけフルボッコにしてもあんまり意味が無い。
それでもこの状態の大蛇丸が消耗しているのは事実だ。
「飲み込め」
「アァ!? てめェ、俺様の抜け殻に何してやがる!」
「要らないから捨てたんでしょ。だから拾って有効利用しようと思っただけ」
「てめェ、さっきから舐めた口利き過ぎだ! 俺様が誰だかわかってんのか!?」
ゲレルの石の力程じゃないが、蛇の抜け殻というのにもそこそこのエネルギーは宿っているものだ。
焼け落ちてしまっているとはいえ炭化しきってないのがその証拠。だからそれを【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で飲み込み、咀嚼し、俺の中に引き摺り込んでいく。
火事場泥棒も良い所だけど、まぁこれが俺の修行スタイルってことで。
そんでもって、主が大蛇丸をフルボッコにしているために手持ち無沙汰なカツユの元へ。
「それ以上近付かないでください。そこより一歩でも進めば、酸を吐きます」
「アレ、なんかめっちゃ嫌われてる?」
「戦場において得体のしれないものに近づくなど愚行です。それに、あなたの扱う生物は……私達のような生き物から見ても、異常ですので」
足を──上げる。
瞬間目前に酸が飛んできた。ジュワジュワと地面を融かす酸。
「警告はしたはずです」
「まだ足上げただけじゃん?」
「では言い換えます。それ以上怪しい行動を一つでも取れば、私はあなたを溶かし尽くします」
嫌われてんなー。
俺は仲良くしたいんだけどなぁ。
「じゃあこっから、用件だけ言うけど」
「はい」
「湿骨林に行きたいんだ。行き方教えてくれない?」
「教えません。話は以上ですか?」
「あー、じゃあカツユの知り合いの大蛞蝓を紹介してくれ、」
「ません。あなたには誰も近づけさせません」
「おいおい俺そんな嫌われることした? 綱手姫守ったぜ?」
「それについてはありがとうございます、といいますが、私の生物的本能が言っています。あなたは関わってはいけない存在であると。人知の及ばぬ理外からやってきた特異体であると」
──コーショーケツレツ、と。
ま、ゲレルの石の力で十分ではあるんだけどね。
「最後に一つ」
「断ります」
「ちょっとだけ触らせて……って、先に断られたか」
取り付く島もない。
……そんじゃま、帰りますか。
目的は達成、とは言い難いけど、やりたいことは全部やれた。俺の弱点もいくつか知れたし、あとは修行修行修行かなー。
幼少期編で残ってるのって、アニオリのコメディ話と劇場版、それが終わったらサスケェ! の里抜けくらいだろ?
……一応サスケェ! に別れの言葉でも……あ、いややめておこう。こういうことするから余計な奴に遭うって俺学んだんだ。
終末の谷のことに関与するつもりはないし、しばらくは山籠もりかなー。
それじゃ。
「再会は二年半後だ。頑張れよ、ナルト」
「……何の話ですか」
あやっべ、普通にカツーユに聞かれてた。