NURUTO 作:ONE DICE TWENTY
~二つ名命名 無剣鐘のヨゴシ、だってばよ!~
さて、ようやく二年と半年の月日が過ぎる。
木ノ葉の忍たちが次々と中忍、上忍となり、風と火の関係性も穏やかとは言えなくも安定したものに戻ってきていて、ナルートは修行修行修行。
そんな日々が過ぎ去っての二年半。濃密な二年半だった。そう、俺にとっては──。
逃亡逃亡逃亡アンド逃亡の日々、である。
いやね、鬼の国の巫女誘拐はやりすぎだったらしい。ビンゴブックの等級はAに格上げされ、生け捕りのみからデッドオアアライブ、つまり死んでても報酬出すよ、に変わった。報酬主は風と火の二大国。見事なまでのお尋ね者。
そうなってくると落ち着く場所というものがない。なんせ俺のヌル遁はあくまで俺の意識で出たり入ったりしているチート能力だ。オート防御とかないのだ。だから寝込みを襲われたら一溜りも無い。
出したまま寝ればいい。そういう意見があると思いましたですが! 【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は悪臭を放つのです余計に見つかりやすい後宿取れない!! そう! あっちをへこませればこっちが尖ってこっちを打てばあっちが膨らんでの奴!!
……とはいえこの二年半がそれだけだった、というわけじゃ、決してない。
ちゃんと俺も強くなった。
具体的には新たな力を色々取り込んだ。俺自身? まだ変化の術一つできないよ。体術はある程度できるようになったけどね。
アニオリとかで言われてる禁術や秘伝、秘術の類。後なんかやべー力を持つもの。
そういったものを次々と飲み込んで咀嚼して、色々な変化や新機能の獲得に忙しい【緑色の眩いぬるぬるしたもの】。今度どうにか頑張ってナルート達に張り付いて、ロストタワーの龍脈の力根こそぎ奪い取ってやろうって思ってる。
とまぁ、そんな現状確認はこれくらいにしよう。
これからは本当の現状確認……俺がやっちまったことに対して向き合う時間だ。
即ち。
「フフ……まさかこんな所であいまみえるとはねぇ。やはりアナタは木ノ葉の忍に思う所がおありで?」
「まーそんなところ。しかし合縁奇縁というべきか、確かにあるねぇ、因縁」
「先生、これ……」
「動くなテンテン。……奴は、危険だ」
本来ならばにらみ合いだったこの場において、無駄な三すくみができあがってしまっている。
もう少し丁寧に言うならば。
……なーんで俺戦場に出て来ちゃったかなー。
である。
いや、いや、現実逃避は終わらせないとまずい。
つまるところ、何気なしにほっつき歩いてたら鬼鮫vsマイト・ガイのシーンに出くわしましたよって話なんだ。なんで何気なしにほっつき歩くんだよ俺。それで毎回毎回余計なコトしでかしてんじゃんか。
自戒はこれくらいにしよう。
さて、原作通りであれば、この鬼鮫は象転の術によって鬼鮫になっている何者か。生贄の誰か。本人の三割くらいのチャクラ量しか持たない存在……のはずなんだけど、うん、対面してわかるのは、コイツめっちゃ強いってことかな。
尾の無い尾獣、干柿鬼鮫。そのチャクラ量たるやってトコ。
対してマイト・ガイ率いる木ノ葉の忍は、ネジ、リー、テンテンの見慣れた三人。ガーラ奪還任務の最中だっけ? んー、ここで鬼鮫の相手を俺がしてこいつらを通す、というのも手ではあるけれど、もしそれでガーラの中から尾獣が引き抜かれない、なんて事態になったら原作崩壊もいいところだ。それは避けたい。
順当に引き抜かれてチヨ婆に救われてくれないと困る。
ので。
「フフフ……ワタシも尾の無い尾獣と呼ばれるんですけどね? 聞けば――アナタもそうだというじゃないですか。
ぐああああああ!!
こ、こいつなんて精神攻撃を!!
逃亡したり奪い取ったり色々している間についたこっぱずかしい†二つ名†を初手で呼んでくるなんて!! 最近じゃまるで苗字みたいに呼ばれることさえあるのが苦しくて苦しくて!!
いやね、いやね、俺が悪いんですよ。それはわかってるんです。原作にはでてこなかった無剣山ってトコのお寺にいって、並々ならぬパワー蓄えてる鐘を食べたんですよ。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で。したらば存外金持ちで。その住職が。
指名手配金がものっそい上がったんです。ぶっちゃけ鬼の国の巫女誘拐とソレがメインの罪状まであるくらい。歴史的遺産だったらしくてそりゃあもうカンカンで。
そっから、無剣山の鐘を奪ったヨゴシ、略して無剣鐘のヨゴシになってるんですねぇ。
赤砂のサソリ、とかはその能力を象った二つ名じゃん。
なんで俺だけ罪状なんだよ! とか思わなくもない。
「ヨゴシ……かつてはカカシの教え子だった子供。だが、あの事件を経てわかる。貴様の中にカカシへの愛など無い! あるのはただ、力を貪欲に求め続ける――それだけの心!」
「教え子だったは言い過ぎ。俺誘拐されただけだし」
「今ここで! その腐りきった根性を叩きなおしてくれるわぁ!!」
「ワタシも忘れないで欲しいんですがね……まぁ、まとめて潰しますか」
「うーん、別に木ノ葉に恨みないからなぁ。引き留めはするけど怪我はしないでね?」
原作にあった鬼鮫とガイのイチャイチャは起きない。そんなことをしている暇はないと──まず、こちらを向く鬼鮫。
「まずはアナタから――水遁・爆水衝波!」
「わお個人に向けて撃ってくるのは想定外――だけど。ヌル遁・爆ヌル衝波!」
「!?」
「ッ、リー、ネジ、テンテン! ヨゴシの方を見るな! たとえ見たとしても、我を失うな!」
「そ、そんなこと言われたって」
「はい、ガイ先生! 目を瞑ります!」
「──」
絵面としてはあんまりよろしくないだろう。
大の大人が怒涛の水を口から吐き、この歳にしてはちょっと背丈の低い青年が真っ黒の粘体を吐き出している。俺からは勿論【緑色の眩いぬるぬるしたもの】に見えているけど、流石に二年半も経てば自分の扱っているものがどう見えているかを完全に把握することもできる。
さて、水と黒がぶつかり合う。水量は水の方が多く、強度は黒の方が高い。ゆえに一度は水が黒を完全に覆う結果となる。
「フフ……フフフ、フフ、ハハハハ……フフフ、成程、これが発狂、ですか」
「おお立直り早いな」
「いえ、何分ね、こういうことは常日頃考えているものですから……今更突き付けられたところで」
恐らくは肉体的ヒステリーを引いたのだろうが、それにしたって早い。
……NARUTO世界全体で見ても鬼鮫はイターチイルーカに並ぶくらいの常識人だからな。過去の仲間殺しに対する罪悪感というトラウマがあろうと、自身の精神への分析方法を兼ね備えている、といったところか。
けど、アッチはやばいな。
「きゃ――いや、ネジ!? やめて、いきなり何するの!?」
「何してるんですかネジ! この、テンテン下がっててください!」
白眼の持ち主であるネージだ。目を瞑れ、なんて命令に即座に対応はできなかったんだろう。あるいは閉じる前に見てしまったか。
その結果がコレ。まるでゾンビのように涎を垂らし、テンテンへと襲い掛かっている。無論、性的にではなく──食べるために。
「クッ、リー! ネジを止めるか、気絶させておけ!」
「はい! ……このっ、目を覚ましてください!」
アレは、ちょっと長いかもな。
できるだけ鬼鮫をこっちに引き付けるか。
「気になりますか?」
「そりゃね。さっきも言ったけど、別に俺側からは木ノ葉に何の因縁もないのよ。俺が勝手にやらかしてるだけで」
「因縁ならある! かつて鬼の国でカカシの手を砕いた事……忘れたとは言わせんぞ!」
「ありゃカカシが勝手に突っ込んできただけだって」
「フフフ……気に入りませんねぇ。ワタシのことは覚えていないにもかかわらず、ヨゴシさんの方は記憶に強く残っている様子だ……」
勿論マイト・ガイが鬼鮫を覚えていない、というわけではない。マイト・ガイが見ているのは相手の本質であるため、象転の術で生贄になった誰か、にはそういったものを感じないだけだ。
そしてそんなマイト・ガイが俺をして「力を貪欲に求めるだけの存在」と言い表したのは……まぁ大正解かな。原作のハッピーとは言い切れないハッピーエンドさえ迎えられたら別にいいし。俺は俺で
「足元ご注意ってね。ヌル遁・毬栗の術!」
「!」
水で覆われた、けれど覆われただけの【緑色の眩いぬるぬるしたもの】。今回物凄い質量を出したソレは水の中でウニのような楕円体を取り、そこから塗流槍に似たトゲを放出しまくる。マイト・ガイの方はほぼ狙わず、キサーメだけを狙った包囲網。だってコイツは死んでも問題ないし。
あの大蛇丸でさえも回避を選択したソレ。
ソレを――。
「ふんっ!」
「……!」
鬼鮫は、封印状態のサメハダーで、弾いた。
お……おお!
ついに出たか! いや喜ぶことじゃないんだけど!
「いいね! いいね、やろうやろう!」
「喜色……? ワタシが攻撃を弾いたことに、それほど喜ぶ要素がありましたかね?」
「ああいや、ついつい隠したい本心が口に出ちゃう悪癖があってね。そんな喜ばしい事じゃなかったはずなんだけど……どうも、俺は嬉しいらしい」
こんなに感情を出したのは初めてだ。
だけど、こんなに滾るのも初めてだ。だってコイツ、本体の三割の力しかもってないんだろ? ならワンチャン――本体なら、俺を。
「オレを忘れてもらっちゃ困る! 木ノ葉壊岩升!」
「おっと、同じ轍は踏まないよ。ヌル遁・奮割堤込」
防御――ではなく、マイト・ガイを受け止めるようにして握り、リリースする。鬼の国でカカーシの手を砕いちゃったときは完全に意識外からの攻撃だったのがダメだったんだ。ちゃんと意識して攻撃させないようにすれば、相手の身体を砕かずに済む。学び。
「水遁・五食鮫!」
「ヌル遁・大太刀の術!」
背後からの水遁。噛みついてくる水の形の鮫。
ヌル遁アーマーで防ぐ――事を考えつつ、さっきの事を思い出す。その強力な顎。鋭い牙。
もしや。
「フフ……残念がっている所悪いですが、流石にあの質量を受ける悪手は打ちませんよ」
「ああいや、大太刀の術が当たらなかった事を悲しんでるわけじゃないんだ」
「では、なにを?」
「ほら」
ほら、といってみせるのは、体に纏わりついた水の鮫。
突きと共に来ていないからか、はたまたそもそも無理なのか。
その歯がヌル遁アーマーを突き抜ける事はない。ただ、噛みつき続けてはいられている。
「この程度か、ってさ」
「ナルホド……随分と血に飢えているようだ。己が血さえも、と」
「そーいうわけじゃ、なかったはずなんだけどね」
バトルジャンキーとかじゃなかったはずだ。
けど、確かに……無敵過ぎてつまんない、みたいな感情が芽生えることはあった、気がする。全然無敵じゃないんだけどね。未だ幻術対策や口寄せ、毒物なんかの弱点の克服はできてないままだし。
それでもこっちの攻撃が当たればほぼ即死、あっちの攻撃は受けてもノーダメージって現状に少しばかりの飽きを覚えていたのは事実……なのかもしれない。
俺が、というよりは。
俺の中の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が、というべきかもだけど。
だからなんだろう。
俺としては喜ばしいことじゃない。俺としては嬉しい事じゃない。
けれど、未知に。新機能の余地に。
俺の体に宿った【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が歓喜の声を上げている。それが俺に伝播している、って感じだ。
「ま、普段好きにやらせてもらってるからさ。こういう時くらい付き合わないと、相棒とは言えないだろ?」
「なんのことだかさっぱりわかりませんねぇ」
「わかると思って話してないよ。ヌル遁・緑無」
ここ二年半で投擲術も磨きがかかっている。
サメハダーとやりあうにはちょっと迫力が足りないけど、強度は折り紙付きだ。さっき弾かれた塗流槍も、防がれただけで破壊されたワケじゃないし。
「ふん!」
「っら……うわ重たっ!」
「そういうアナタは、随分と非力です、ね!」
サメハダーを緑無で受け止めるも、その重量のなんたることか。
緑無こそ壊れずとも、俺の腕が悲鳴を上げる。折れる前にヌル遁アーマーで硬化を図るけど、こりゃ……キッツいな。これは木ノ葉崩しの時からの弱点だ。本体の俺が弱すぎる。
そのまま弾かれ、水中にぶっ飛ばされる。チャクラコントロールで水の上に立っていたわけだけど、そんなん保てるレベルの力じゃなかった。怪力と称されるだけはある。
俺がぶっ飛ばされると同時、入れ替わるようにしてマイト・ガイが鬼鮫に猛攻を仕掛ける。仕掛けているのが見える。
ただ、原作と違ってネジリーテンテンの援護がない以上己が身一つで戦わねばならず、更には目を瞑っているまま、とかいうハンデ付き。いやそれでよく戦えるよ。普通にやばいよなマイト・ガイ。
「ヌル遁・蔓菁葉の術」
なればネジリーテンテンの代わりとして俺が援護する。
空気穴替わりに【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を水面に向けて一本出して、透明度の高い水中に潜ったまま【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を操る。この二年半で術のレパートリーも増えた。まぁ術なんてカッコつけてるけど全部【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を操ってるだけであんま変わんないんだけど。形と気分が変わるくらい。
足元に置いた巨大【緑色の眩いぬるぬるしたもの】から藤の蔓に似た形状の触手を数百本取り出し、その全てを鬼鮫に殺到させる。
意識外からの攻撃だ。足を、手を、胴を首をと巻き付かれたキサーメ。そこへ、マイト・ガイが渾身の蹴りをお見舞いする。
クリーンヒット。
それが、ぱしゃりと水に解けなければ。
「フフ、やはりアナタを先に潰すべきですねぇ」
「!」
「その強度――壊してみたくなりますねぇ」
背後から聞こえた声。水を切り裂く剣の音。
クリーンヒットはこっちだ。怪力、干柿鬼鮫のフルスイングが――俺の後頭部に。
+++
干柿鬼鮫の水遁によって海に変えられた荒野。
その水が全て弾け飛んだあたりで、あなたは目を覚ますだろう。
今の今まで感じていた耐え難い空腹。そして天上の馳走に見えていた――仲間。己に対し怯えを見せるその少女に、あなたは自戒する。
無剣鐘のヨゴシ。かつては木ノ葉のアカデミーに在籍していたという少年。その能力は聞いていたはずなのに、己を保つことができなかったと。
ああ、けれど。
あなたはその、身の毛もよだつ気配にまた眼を向けてしまう。白眼。あなたの特別な目。
そこには山がいた。悪夢があった。
黒っぽい玉虫色の、臭くて伸縮性のあるケモノ。四肢は膨張と収縮を繰り返し、その表面には小さな泡がコポコポと音を立てている。身体全体から発する微光。恐らくは顔であろう場所から明滅させる緑光。無数の目。それは己の瞬きと同時に消え、また開き、その一つ一つがあなたを見つめている。
大きな口が開く。小さな口が無数に開く。ギザギザの歯。鋭い歯。細かい歯。糸を引く咥内には無間の深淵が広がっている。
グジュルとまた水音を立てて生えるは尾。尾、尾、尾。
それは引っ込んだり生えたり、分かれたりまとまったりを繰り返し、落ち着きがない。
あなたは思い出すだろう。無剣鐘のヨゴシが尾の無い尾獣に数えられるのは干柿鬼鮫のようなチャクラ量からではなく──その姿にこそあるのだと。
「ネジ? ……大丈夫?」
声。先ほどまでは馳走だと、そして仲間であったと判った存在。
それが、醜悪な蛭になっている。
「ふぅ、ようやく止まりましたか……」
己が身に組み付いていた青年。それが醜悪な蛭に変わっていた。
幻覚だ。わかっている。わかっているはずだ。
けれど、では、どうしたことだろう。この悪臭は。この感触は。あなたの肌に纏わりつき、全身の血を啜らんとしてくる悍ましい怪物は!
そして――あなたはようやく気付く。
あなたの眼。その周囲。こめかみに走る、無数のヒルに。
「ちょ、ちょっとネジ、何やって!」
「ネジ! 顔を、目を引っ掻いてはダメです! ああ、仕方がない、気絶させます!」
己の顔に、米粒のような、蛭が、ヒルが――。
+++
「フフ……ようやくお出ましですか。噂に聞く尾の無い尾獣。ですが、これでは尾が無い、というより……尾が数えられない尾獣、と表現した方が的確ですねぇ」
「ま、自覚はあるよ。というか別に自ら名乗ったわけじゃないし。……しっかし、すんごい怪力とチャクラ量だ。それでまだ三割なんだろ? いやー、ホント久々だよ、痛みを覚えたの。月の国以来かな」
「頭蓋を潰すつもりで殴ったんですがねぇ……いやはや、ホントに頑丈だ」
「くっ、こっちも気になるが……」
三すくみは崩れつつあった。
マイト・ガイが本気を出すには、マイト・ガイ班の三人に懸念がありすぎるんだろう。まぁ一人かなりやばめの発狂してるしな。正直俺としてもあっちの介護に行ってもらった方が動きやすくていい。
ので、有言実行。
地中から素早く【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を伸ばし、マイト・ガイの足を掴む。リアクションの一つもさせないままネジリーテンテンの方へぶん投げる。「ぬおおおおおお!?」とかリアクション聞こえた気がするけど知らん。原作と同じくらいの時間は稼いだはずだ。ネジの精神分析するなり、遠くへ行くなり勝手にしてくれ。
俺はもうちょい、キサーメの象転体と遊びたい。
「おやおや、先ほどから木ノ葉の忍を庇ったり援護したり……先ほど写輪眼のカカシの教え子だと言われていましたが、やはり何か思う所があるので?」
「死なれちゃ困るってくらいかな。別に大した思い入れじゃあないよ」
「死なないように守る、というのが大した思い入れでなければ、何が大した思い入れになるのか疑問ですねぇ」
それはそう。
そうだけど、実際マジで思い入れはないのだ。いや、NARUTOって漫画のキャラとしては大好きだよ? そりゃ勿論。
でも個人に対して因縁、とか愛情、とかって言ったら別に。テンテンは可愛いと思うけど。成長してとても可愛くなったと思うけど。ええ、愛情とかは別に。ええ。
「ま、こっちにも色々あるのさ」
「フフ、そうですか。それにしても、不思議な感覚ですねぇ。見た目は化け物そのものなのに、こうして会話が出来ている。それも軽薄とも取れる態度だ……。後頭部を殴打しての出現でしたから、一種の暴走状態なのか、とも思ったのですが、そういうことではないみたいですねぇ?」
「ん-、まぁどっちかというと防衛本能? 今回は……そうだな、過保護だった、みたいな」
「相変わらず言っている意味はさっぱりですねぇ」
月の国でも見せた、尾の無い尾獣、あるいは尾の数えられない尾獣モード。つーかぶっちゃけ下級の奉仕種族さんそのものな体。
俺視点はナルートの九尾モードが如く全身を【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が覆ってるだけなんだけど、他から見るとショから始まってスで終わるヤーツに見えるらしい。二年半の間にも何回か人目に付く機会があって、だから名が広まっているんだけど。
で、この【緑色の眩いぬるぬるしたもの】。どーにも個別の意思があるっぽい。そんで、今のはこの【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が勝手にやったっぽい。
二年半の逃亡生活の中でずっと欲しかったオート防御に似た事ができるようになった、って話。
つまり、ヌル遁アーマーじゃ受けきれない攻撃と判断して、自分から出てきたってワケですね。
相棒って俺が勝手に言ってるだけだけど、そっちも認めてくれてんのかね。
もしくは俺が死ぬと自分も死ぬから、とかなのかもしれないけど。俺の血緑だったし。一心同体の可能性は高い。
「さて、じゃあ殺す気で行くけど」
「こっちは初めからそのつもりですよ」
「――すぐに死なないでね」
果たしてそれは、化け物退治の絵でしかなかった。
剣一本で山の如き怪物に立ち向かう大男。物語であれば、あるいは神話であれば倒し得たのだろうその敵は──けれど、この世界にて様々な力を取り込んだ、既に下級とは呼べなくなっているナニカ。
剣は遥か彼方に弾き飛ばされ、その身には穴が穿たれ。
それは勝負でも決闘でもなく。
捕食、だった。
……やっぱ無理か。でも本体と戦ってみたくはなったな。
意欲的に原作介入ってのはあんまししてこなかった……気がしなくもないけど、キサーメの出るところには行ってみたくはなったYO。
ワンチャン八尾ともやりあいそうだZE。
「遅れたか……だが、次こそは! オレが相手だ、無剣鐘のヨゴシ!」
「あ、もう全部ひっこめちゃったよ」
「……」
「俺は別に木ノ葉になんかあるわけじゃないからさ。ここは手打ちにしない? あー、ネジ君にはコレ渡しておいて」
頭の上に「……」を浮かべているマイト・ガイに、袋を一つ投げる。
放心状態でもちゃんと受け取ってくれたソレ。その袋の中身。
「これは……」
「気付け薬と心を落ち着かせるハーブティー。前者は目覚めてもまだ発狂してたら使ってあげて。してなくて、でもトラウマになってたらハーブティーをね。世界中回ってめっちゃ効果高いモン厳選してるから、よく効くはず」
「そ、そうか。ありがたい……ではなく!」
「力に貪欲で空虚ってのは認めるけど、だからといって無駄な殺生はしないよ。何よりネジはナルトの友達だしね」
んじゃ、と言って、その場を去る。
マイト・ガイが追いかけてくることはなかった。