NURUTO 作:ONE DICE TWENTY
俺には拠点らしき拠点が無い。
家なんて上等なものはおろか、洞窟ですら根城にしていない。適当な山中、適当な荒野にまで逃げて、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を纏って寝る。それが常スタイルだ。
ゆえに、というべきか、時たま俺は発見される。旅人や忍、その他諸々に。そして化け物だと思われることがほとんど、なのだが──。
「ふむ……これ、なんだろうね?」
「害アルモノ……噂ニ聞ク……尾ノ無イ尾獣ガ一体ダ……」
「これが?」
んんんゼツ~~~~! あとトビもいるねェ!
確かに来てたよね近くにウンウン。
でもこうやってなんとも思われずにゴロゴロ転がされるのは初めてかな!
「どうする? 連れて行く?」
「あ、じゃあ僕が持ち上げますよ! ゼツさんのお手を煩わせることなく! よいしょ!」
「計画ニ無イ余計ナ物を持チ帰ロウトスルナ。ソモソモソレニデキル事ナドタカガ知レテイル。過去ニオイテも幾度カ現レタガ、場ヲ荒ラスニ留マリ決定的ナ事ヲセズニ去ッテイル。コイツガイルノトイナイノトデ、結果ニ何ノ差異モ生マレナイ」
「じゃあ捨てますね! うわ……すっごいベタベタする」
「そんなの持った手で僕たちに触れないでね」
「行クゾ……」
「あ、待ってくださいよ~!」
……嵐が過ぎ去っていった。
いやあびね~~あびねーわマジ。アイツら特殊コマンドしかしてこないから俺にとって天敵に近いんだよな。木遁は防げるとはいえ。
特に神威! が来てたらやばかった。
しかし、俺がキサーメと戦ってからそれなりに日が経ってるけど、万事うまく行ったのかね。双方陣営にとって。
あと気付いたんだけど俺ナルートに会って無くね? 二年半後ナ☆、とか言ったくせにもうそろ半年以上経つぞ。
足音。
「見ていて気分が悪くなるのは変わらないけど、己を失うほどじゃなくなってきたかな……」
「アラ、まだ克服してなかったのね……早く治しなさい」
「はい、大蛇丸様」
オイオイオイオイ、大盤振る舞いかぁ?
え、なに、この荒野もしかして呪われてる? もしくはハチ公前バリに待ち合わせスポットだったりする?
「しかし……暁を尾行していたら、思わぬ拾いものがあったものね……」
「持ち帰りますか?」
「ええ、勿論……ただし、意味の有無はわからないけど、封印はしておくわ……」
「わかりました」
待て待て待て。
封印って何。その包帯見たことあるぞ第四次忍界大戦で。エドテン封じる時の奴じゃん! おいもう身動きとれないんだけど!? 札貼るの早すぎだろ準備良すぎだろ!
おーい!!
やってきました毒蛇の巣。
まぁ持ってこられた、が正しいんだけど。つか懐かしいな。前もこうやって波の国から木ノ葉の里に持ってこられたんだっけ俺。
「大蛇丸様、コレは」
「その辺にでも置いておきなさい……今はまだ、ワタシ達にできることはないのだから……」
「わかりました」
しかし、やっぱりか、という思い。
エドテンさえも封じるのが封印術だ。外から壊すのは簡単っぽいし、中身の意識は止まったりしないっぽいんだけど、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を纏ってる俺でも封印自体はされちゃうんだな。これも弱点の一つとして数えておかないと。
ただまー、多分そうなるのは単なる【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の場合だけなのかな、って。
ここにゲレルの石の力とか、魍魎の力とか加えたら破れそう。どっちも特殊なものがないと封印できない奴だし。
「大蛇丸。何を持ち帰って来た」
「サスケ君とも、無関係ではないものよ……」
「そっちの能面のことか」
「いえ、彼じゃないわ……コレよ」
さっきから物扱いしよる。
しかし、そうか。全然声発さないし足音もほぼないから気付かなかったけど、サイも一緒にいたのか。んでサスケェ! もいると。
あぁ^~険悪な雰囲気^^~。
「封印……?」
「無剣鐘のヨゴシ……巷ではそう呼ばれているわね……」
「ヨゴシだと?」
おー、覚えててくれたんだ。
波の国の一件以降、完全に関りの無かった相手だってのに。やっぱ幼少期の記憶は残るもんなんだねー。まだ二年半とはいえ。
「なんでそんな奴を持ち帰った」
「私達も手の付けられない存在だけど、敵に渡ると厄介この上ないからね……先にこっちで封印させてもらったわ……」
「ヨゴシが?」
「ええ……そうか、サスケ君は知らないのね。この子のホントウの姿……」
「知らないが興味も無い。今日は新術の開発に付き合うと約束していたはずだ。そんなどうでもいいものは捨て置いて、早く来い」
「ふふふ、せっかちね……。わかったわ。カブト、サイを部屋に案内しておいて……」
「はい」
そうして――周囲から気配が無くなっていく。
え、俺置き去り? この後多分ヤマート達が来るけどもしかしそれまでこのまま?
普通にお腹空いたんだけど。
「よし、誰もいないようだ。……これは?」
「ああそれは、大蛇丸が道中で拾った忍です。実験体の一人にするつもりだったようで」
「そんな」
「ヤマト隊長、この封印を解く方法は?」
「札を剥がせばいい。だけど、大蛇丸が封印してまで連れ帰る、ということは……余程の」
暇すぎるのでちょっと寝てたら、懐かしい懐かしい声が聞こえてきていた。
ヤマートとサイゾーはともかく、ナルートとサクーラだ。いやー、まさかこんな所で再会するとは思わなかったってば――。
「ナルト君。今は放置するべきだと思う。それより、サスケ君を」
「そうだね。最優先事項はそちらだ」
「っ……後でぜってー助けにきてやるから、待ってろよ!」
「ナルト、叫ばないの!」
「そこは流石に封印解いてほしい」
もう我慢ならないので声を出す。同時、ゲレルの石の力と魍魎の力を取り込んだ【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を噴出し、封印を内側から圧迫。特別なものじゃない、単なる封印術ではこの二つの力を抑えきれず――破綻する。
「え……今の声って」
「ナルト、下がって!」
「ナルト君!」
「──ヨゴシ?」
喋ってる暇があるなら札を剥がしてほしかった。
けど。
バチン、と札が弾ける音がする。発狂対策にすぐさま【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を体にしまい込めば、ホラこの通り。
「ふぅ」
「ヨゴシ、お前、なんでここに」
「見ての通り、というかそっちのの言った通り、連れてこられたんだよ。寝てたら封印されちゃってさ。ああお腹空いた。なんか食べ物持ってない?」
……あれ?
なんか……警戒ムード。ヤマートとサイゾーはともかく二人は「ひっさしぶりだなぁヨゴシ!」のノリじゃないの?
「君は、無剣鐘のヨゴシだね。ビンゴブックA級指名手配犯……」
「そうか、君が」
「ヨゴシ……」
「……ナルト、ヤマト先生、サイ。先に行って。ここは私が」
え、あれ。
ん? もしかして……敵だと思われてる?
「いや、いや。別に俺お前たちを害すつもりはないって。なんならすぐにでもここを出てくからさ」
「すぐにでもここを出て行くつもりがあるのなら、何故封印されたままだったんだい? あの封印、それなりの強度を持っていた。それを内側から自力で破壊できるんだ。すぐにでも逃げだせたはず。だというのに君はここに残っていて、僕達が来るまで何もしていなかった……。何か理由があるとしか思えないよ」
「ナルト君。ここはサクラさんに任せて、早く!」
「ああ……わかったてばよ。任せたぜ、サクラちゃん! それと――ヨゴシ!」
「アハイ」
「オレ、あの約束忘れてねーってば……だから、色々終わったら」
「期待してるよ。サスケ、見つかると良いね」
「ッ、やっぱり……!」
何がやっぱりなんでしょうか。
俺なんか失言しましたかね今。
そのままNARUTO走りで去っていく三人と。
構えを解かずに、ものすごく警戒した目で俺を見るサクーラ。
「久しぶり、って挨拶はしていいもの?」
「ええ、久しぶり。でも久しぶりという感じはしないのよね」
「そりゃまた、なんで」
踏み込み。サクーラの腕力で殴られたら、やばいな。
「アンタの悪評はずぅっと聞いてたから、よ!」
「わお」
理解した。
あの頃の「ヨゴシ君……」って俺を心配してくれるようなサクーラはどこにもいないのだ。
彼女にとって、俺は。
「カカシ先生の手を砕いたことに始まり、各地で歴史的建造物を壊して荒らしまくって、人を誘拐したり殺したりして……アンタ、何がしたいのよ!」
「あーね? 確かに見方によっては俺、狂人だなぁ」
「その、言い方っ! まるで目的があるように聞こえるけど!?」
「目的。またそれか。無いんだなぁこれが」
サクーラが俺を殴れないようによけ続ける。当たったらカカーシの二の舞だ。
その分、大蛇丸の拠点がボコンボコン壊れて行っているんだけど、まぁどうせ捨てる拠点だろうからいいだろ。
けど、そうかぁ。
もう木ノ葉にとっては十二分な悪者か。これは三代目に顔向けできないねぇ。
ナルートも複雑だろうなぁ。その上でまだ約束は覚えてる、って言ってくれたのは……素直に嬉しいね。
「目的も無く人を殺したり、物を壊したり……アンタも大蛇丸とか暁とかいう連中と一緒ってワケ!?」
「大蛇丸も暁も目的はあるから、俺と一緒じゃないよ」
「ッ、なら――アンタは。ただ力あるものを求めてるだけ、とでもいいたいの?」
「ああ、マイト・ガイから聞いてるのか。そうそう、目的らしい目的はないけど、強大な力は全部食べるつもり」
「……あの時。波の国で私達に接触してきた時から、ナルトを狙ってた、っていうの?」
ああ。
そこに繋がるのか。
そっかそっか。尾獣って強大な力だもんな。世界中の力の塊チャクラの塊エネルギーの塊を食べ続ける俺の矛先が、尾獣だけは向かない、なんて考える方が不思議だ。
なら、ヤマートの眼にもナルートを狙って今出てきた、と見られていただろうし、あるいはここに何かエネルギー塊があると推察されてたかもなー。
「何とか言いなさいよ!」
「ヌル遁・奮割堤込」
背後は壁、正中、回避が無理と判断したので――【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を出す。
凄まじい破壊力を持つその拳を絡めとり、無力化する。
「なに、これ……抜けないッ!?」
「気持ち悪いだろうし、不快だろうけどさ。そのままでいてよ。あんまり動くと肩抜けるよ。話聞いてくれたらすぐに解放するからさ、ちょっとくらい落ち着いて」
「……ッ」
うん、サクーラは頑固に見えて、戦闘時は物分かりが良いのが凄く良い。これがナルートならふざけんなってばよ! で肩ぶっ壊してでも突っ込んでくるだろうし、サスケェ! もふざけるな……! で肩ぶっ壊してでも突っ込んでくると思う。ヒュウ似た者同士。
しかし、サクーラは発狂せずか。まぁ色々と思い悩むことはあってもトラウマらしいトラウマはないもんな。サスケェ! を奪還できなかったことくらいか。
「尾獣はね、いらないんだ。俺が食べてるのはもっと自然的で、意思のないエネルギー……ホラ、パワースポットとかパワーストーンとか、そういう類。尾獣は意思が強すぎて馴染まないからね」
「……なら、なんで今出てきたの」
「そろそろ再会しとくべきかな、って」
「意味不明」
うん、そうだろうね。
さっきヤマートに言われた事、俺もその通りですね、って言いたくなったもん。早く逃げとけよって、ほんそれ。
けど。
「成長したナルトを見られて良かったかな。サクラも、大きくなったねぇ」
「何……保護者ぶってんの――よ!」
ゴキン、という音がして、次の瞬間には眼前に掌底があった。
出そうになるヌル遁アーマーと、過保護にも出て来そうになる【緑色の眩いぬるぬるしたもの】そのものを無理矢理引っ込めて――その掌底を食らう。
凄まじい衝撃と共に背後の壁に埋まる頭部。後頭部こそ保護したけど、ああ、これはやばいな。
初めて――今まで色々あったけど、ここまでのは初めてだ。
はは。
「殴れた……?」
「いや、いや。殴らせたんだよ。これ以上木ノ葉の忍に恨まれるのは本意じゃないし。ほら、腕も解放したからさ。早いトコ脱臼直してサスケを探しに行きなよ。俺はまた離れるからさ」
「……」
言っても俺から目を離してくれないサクーラ。
仕方がないので目の前で【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を纏う。ヌル遁アーマー以上の厚さで、コポコポと音を立てて。
やー痛い痛い。鼻っ柱を折る、なんてよく言うけど、マジで折れてるねコレ。
けど、少しずつ治癒していく。あんまり使う機会のない【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の治癒能力だけど、うん、やっぱり自分で回復できるって強いわ。
「傷が……」
「まー何? これ見ればわかるけど、俺を攻撃しても無駄なのさ。あんまりこういうイキった事言いたくはないんだけどさ、俺は子供の頃でさえ、あの自来也の爺さんに認められてたんだぜ? 里の上忍でもお前は倒せんじゃろうのぅ、って。だから、サクラにも、勿論ナルトにも無理だよ。俺を倒すのは」
「……で、何が言いたいワケ?」
「やって無駄なことならしない方が良い。殴った方が傷ついて、努力した方が傷ついて。俺みたいにヘラヘラしてる奴がイイトコだけ食ってさ。理不尽だろ? だから、出来る事を出来る分だけやるのが一番さ。この場合サクラがやるべきは、サスケの奪還、だろ? 俺なんかに構ってる暇ないって」
鼻、及び顔の治癒が完了する。
厚みを増していた【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は褐返のマントに吸い込まれていき、後にはいつも通りの薄いヌル遁アーマーだけが残った。
そんでもって、サクーラの腕を離す。
「……アンタ、子供の頃はただ無気力な子だ、って思ってたけど」
「今は?」
「今は、ただただムカつくわ。いつかその鼻っ柱叩き砕いてやるんだから、覚悟しておきなさい」
ありゃま。
嫌われちった。つか今鼻っ柱は殴り砕かれたところなんですけど。
「ナルトと、あとサスケにもよろしく言っておいて! あとカカシとイルカ先生にも!」
「ふん!」
答えは地面への桜花衝。走り去っていく音が聞こえ、次第に気配もわからなくなった。
いや、はや。
「いってぇ……。いや治したとはいえ、なんつー威力だ。姿勢も悪かっただろうに……すげーなぁ」
何がすげーって、カブートとかナルートとかコレ食らって顔の原型留めてんだろ? すげー。
……もう木ノ葉の忍に近づかないようにしよう。でないと殺しかねんし、俺が死にかねん。
平和が一番だッピよ。
海上。
火の国から見て南方の海上に、五隻の戦艦があった。
その中で慌ただしく装備などの準備をする忍たち。彼らはかつて木ノ葉に滅ばされた空の国の忍、空忍。
そして今、まさに。彼らはその復讐と――裏に秘めた野望をかけて、襲撃を。
しかしその時、突然戦艦前方の海が盛り上がっていくではないか。
すわ、巨大なクジラか。
戦艦をも脅かす程となれば伝説の一つとして数えられておかしくない規模。そのあり得ない巨大さに、空忍の誰もが先の海上を見る。
そこに。
「ハァイ」
──巨大な、黒い怪物がいた。
その後火の国の山中で巨大な陥没が見つかることになる。古きを知る者によれば、そこにはアンコール・バンティアンと呼ばれる空の国の古代遺跡があったとかなんとか……。
ああけれど、その真実は神のみぞ知る、である。