NURUTO   作:ONE DICE TWENTY

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まさかの前後編劇場版(長くなったので分割したという意味)
ロストタワー 前編です。


いーよ。

 ではペイン襲来……にはならない。

 コレの前に、もう一個大きなイベントがある。それは。

 

「オイオイオイオイ、血気盛んなのはいーことだよ元気の証。でもソレ向ける矛先違うんじゃナーイ!?」

 

 クナイが飛んでくる。当然【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で防御するけれど、直後その表面に走る墨。一瞬で読み取る、なんて芸当はできないが──多分起爆札!

 なのでその部分を切り離し、俺自身のヌル遁アーマーへ侵食されないようにする。一秒後、爆発。大爆発だ。周囲の遺跡を巻き込むその威力に、あぁ懐かしきかなポーンと飛ばされる俺。

 

 ただまー、相手が傀儡で良かったって毎回思うよね、傀儡師相手の時って。

 

「ヌル遁・八重斗六鎖!」

 

 土煙の向こう、揺らめく巨大な影の周囲に扇形の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が展開する。それはあるいは口。ギザギザの歯がついた口が、マトリョーシカのように何重にも重なって相手を挟み、閉じる!

 人間相手にはめったに使わない残虐忍術の一つ。そのまま傀儡を捕食する……けど、味うっす。まっず。

 

 そーなんだよな。

 傀儡って別にチャクラの塊とかじゃないから食っても旨味がないんだよなー。

 

 ……アレ、俺いつからエネルギーに味とか感じてたっけ。

 

「どーでもいいか、そんなこと」

 

 全身から塗流槍を射出。エイム精度はあんまし良くないけど、殲滅できればそれでいいの精神で撃ち貫く。砂嵐が酷い。地面をつたって槍は全部回収してるけど、忘れ物があったらごめんなさい。行ってみたいと思いませんか。るっるー。

 

「……あ、見つけちった」

 

 穴。

 地下へと続く穴。

 その中に、尖塔が一つそびえたっている。

 

「……えー、ナルト達来てないけど、行くべきかこれ。百パー俺が早めたとはいえ」

 

 その時――物凄い光が尖塔から発せられる。

 あ。

 これ、やばです。やば案件。

 ナルートはおろか砂も木ノ葉も一人も来てないのに始めちゃいましたねムカーデさん。

 

 行くべき、だろ!

 ソレ目当てに来たんだから!

 

 地を蹴り――その光へと飛び込む。

 今生においてはじめて受ける時空間忍術が劇場版とは恐れ入った。まぁ原作の奴は飛雷神以外食らったらアカンのやけど。

 

 視界が、ピンクっぽい白に包まれる――。

 

 

 

 

 目を開ける。

 瓦礫の山。だが──湿っぽい空気と、どこからか聞こえる唄が、ここが"そう"であると俺に伝えてくれる。

 一応確認のために【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を出せば、通常通り機能はする模様。ただ万一を考えて尾の数えられない尾獣モードとかはやめた方が良いだろうな。後世に口伝されでもしたらコトだ。

 

 周囲には誰もいない。

 ナルート達はいないのだ。

 

 ……ゲレルの石の力、イシダテの石化の術、アンコール・バンティアンに続き、四つ目か。

 ナルートや木ノ葉の忍が完全にかかわらない状態での劇場版攻略。まぁここに来た以上ある三人とは絶対関りを持つんだけど。

 

 褐返のマント、サングラスも失くしてないな。オッケー。

 んじゃ声の主に会いに行きますか。

 

「よう」

「!?」

「あー、そんなに怯えなさんな。俺はヨゴシっつってね、色んなトコに突然現れる癖があるんだ。アンタは、サーラであってるか?」

「……いいえ。私は、セーラムです。サーラは私の娘ですよ」

「え」

 

 ……え?

 あれ。よく見たら。少女、とは言えない年齢のような。

 

「あなたは……未来から来たのでしょう?」

「……いやァ、初見でそこまで看破するか、フツー」

「私の近くにも、恐らくそうであろう男が一人いますので」

 

 ムカーデか。

 成程、どうやら俺はムカーデが来てからちょっと後くらいの時間にタイムスリップしたらしい。ナルート達は六年後だったけど、セーラム……つまりロストタワーのヒロイン枠であるサーラの母親が死ぬ前の時間に飛ばされたってのは……。

 もうジラーヤ助けられたからそんなもんないとは思ってるけど、一応ヨクシー力的な力があると仮定して考えるなら、あるいはなんらかの……神の如き力が働いていると考えるなら。

 

 やれ、ってことだよな。

 俺に。

 

「ってことは、アンタ女王か」

「はい」

「んじゃ不躾なんだがよ、一つ頼みがある」

「なんでしょう」

「アンタの側近、アンロクザンを殺させてくれ。俺はアイツを追って未来から来たんだ」

 

 不躾すぎる頼みに――けれど、セーラムはにっこりと笑う。

 そして、頭を下げて。

 

「お願いします」

「契約成立だ」

 

 んじゃやってやろうじゃん。

 サーラがどうこうするまでもない。原作破壊したって俺になんかが起きるってことはなかったんだ。もう恐れる事はない。

 あるいは戦乱によって、戦火によって楼蘭が瓦礫に消えてしまう未来そのものは変えられないのかもしれないが、ワンチャン今の風の国に楼蘭が残ってる、なんて未来も掴めるやもしれない。

 

 ただ一つ残念だな、とは思う。

 この時期だと多分会うはずだった過去の木ノ葉の忍……火影じゃない時期のミナート、シービ、チョーザには会えないだろうから。

 ……っていうか、アレ。大丈夫か? 俺封印術とか知らんゼヨ? 食べるだけで……いいのかな。龍脈食い尽くしたら世界崩壊とかしない? ゲレルの石の力と同じノリで桶?

 

「行きましょう。アンロクザンは今、国中の男手を集め、強固なる傀儡の兵団を作らんとしています。それに気付いてしまった私は、数日中には殺されていた事でしょう。あなたが来なければ」

「ベストタイミングだったってワケだ」

 

 ま、ベストタイミングになる時間を狙って放り出された感はあるけど。

 石階段を上っていく。

 長い長いそこを上りきると――。

 

「……楼蘭か」

「はい。これが私達の国です」

 

 砂嵐なんてどこにもない、青い空。高く聳え立つ尖塔は幾本にも上り、それらをつなぐ橋が美しいアーチを描く。地面には緑が、塔には装飾が。

 未だ栄え始めたばかり、という印象を受ける部分も多くあるが、豊かな国になりつつあるのは間違いないだろう。

 

 傀儡の軋む音。

 劇場版の傀儡忍部隊程の力はないのかもしれないが、色々と考えて動いた方がいいだろうな。それと、パイプパイプ……おお、あるね。もうすでに張り巡らされているのか。

 最悪あそこから吸えばいいな。

 

「お気を付けください。アンロクザンの傀儡が……」

「ま、公の場で殺したりはしないだろう。あるいは事故死を装うか、だけど。まー安心してよ。俺、防御力だけで言えばピカイチなんだよね。あ、でも……万一を考えて、コレ、見てくれる?」

「はい? ……っ!?」

「はいオッケー。いいね、気が強い。気持ち悪いだろうけど、コレが俺の主武器っつーか相棒だからさ。あんまし嫌わないでやってくれると嬉しい。別に嫌ってもいいけどね」

「……わかりました」

 

 ここで発狂されてもまー別によかったりした。ヌル牢に閉じ込めて、あとはムカーデを殺すだけだったし。

 ただ、気高くその精神を保った事は評価に値しよう。

 

「アンロクザンを葬るってことは、この発展を無為にする可能性があるってことは理解してるよな。アンロクザンの傀儡の力、その源になっている龍脈にも干渉するんだ。今ほどの美しさを保てるとは保証しないぞ」

「民が虐げられ、民が傀儡に成り代わりつつある国の美しさに、何の意味がありましょうか」

「おっけー、覚悟は決まってんのな。ま、ワンチャンその覚悟が俺を呼び出したってな可能性もある。なら俺はご期待に添ってアンロクザン諸共この国の膿を食い尽くしてやっからよ」

「一つだけ、良いですか?」

「なに?」

「あなたにとって、アンロクザンとは……何ですか?」

「力の使い手」

 

 別に、恨みがあるわけじゃない。任務対象なわけでもない。

 ただ、俺が食いたい力の使い手だから。邪魔だから──殺す。

 

 ははぁ、こりゃ完全にビンゴブックA級犯罪者だ。やべー奴の思考だなぁコレ!

 

「ああ、そうか。アンタもそうだもんな。でも安心しなよ、そこまで貪欲じゃあない。もしアンタが龍脈を封印できるというのなら、俺は何もせずに見てるよ。なんなら護衛もしてやるさ」

「……申し訳ありません。これから危険なことをしていただくというのに……私は、あなたに虚空が如き暗闇を感じてしまっていました。ですが、思い直します。あなたはまだ、幼いだけなのですね」

「まー16歳だからな」

「え」

「チビだから12歳くらいに見えてた、とか言わないよね」

「ええ、はい。十を数えるくらいの幼子かと……」

 

 冗談なのはわかってる。そんな奴に殺しの依頼ができる女王様じゃないからな。

 けどダメだぞ。低身長弄りは。ヨゴシ君怒っちゃうからね! 

 

「申し訳ありません、冗談です」

「わかってるわかってる。……あー、マジか。往来でも襲ってくるとは思わなんだ。……俺にぴったりくっついてな。下がったり前に出たりしたらダメだぜ」

「はい」

 

 前方からやってくるは、一つの家族。父親、母親、娘。それが楽しそうに歩いている。娘の手には風船が握られていて、それを題した談笑が聞こえてくる。

 

 ふと、その風船が手から離れた。放してしまったと悲しむ幼子。風船は高く高く楼蘭の空へと舞い上がり、戻ってくることはない。

 高く高く。赤い風船は──目を引く。

 女王の目を。

 

「ヌル遁・ヌル陣壁」

 

 ゆえに、彼女は気付かなかったのだろう。

 目の前の家族。その父親の口から発射された苦無に。母親の腹から発射された毒針に。娘の首から飛び出した手裏剣群に。

 まー全部弾くんだけど。

 

「うっ……!?」

「言い忘れてた。悪臭が酷いけどソレも我慢してな! ヌル遁・大太刀の術!」

 

 背後に伸ばす大太刀。それは地面、排水用の蓋を開けて出てきた配管工の格好の傀儡の首を斬る。大きく振るえば、騒ぎに駆けつけてきた野次馬たちの腹を切り裂いて、目の前の家族をも一刀のもと両断する。

 しかし、流石は傀儡。上半身だけ、下半身だけとなりながらもゆらりと浮いて、歩いて――俺達の方へ向かってくる。さながらゾンビ映画だ。セーラムも、国民が傀儡に変わりつつあるとわかっていながら、その実態がこうであるとまでは思って無かったみたいだな。震えてる。

 こーなってくると劇場版の通りチャクラ刀が必要になってくるけど、生憎練習していない。大太刀の術はそもそもゲレルの石の力を取り込んであって、けれどソレで切れないというのならお手上げだ。

 

「ああだが残念! チャクラ糸がチャクラであることに変わりはない! ──薄味だろうが、パスタみたいなもんだろ!」

 

 俺の全身から蛇のようなものが迸る。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】をそういった形状にしただけだけど、これはこれで化け物染みてるな。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が下級の奉仕種族に見えていない俺でさえそう感じるんだ、近くにいる彼女は本当にヤベーもんに見えてるんだろうけど、我慢してくれな!

 ぷちぷちと小気味いい音を立ててチャクラ糸が切れて行く。

 食らっているのだ。傀儡を操るチャクラ糸を、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の蛇がぱくぱくと、ぶちぶちと。

 

 となれば傀儡は崩れ落ちる。操れなくなった人形に活力はない。それはまるで、人が死んだかのように。

 

 すべての【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を吸収すれば――あたりは残骸の山となった。

 

「……不味いな」

「どうかされましたか?」

「アンタ、娘の護衛はつけてるか?」

「ええ、信頼のおける者を」

「そいつは傀儡に勝てるか?」

「……っ」

 

 手を差し出す。

 その手を取ったセーラム――を、抱える。姫抱きだ。ヒュウ、でも人妻やでこの人。

 

「揺れは最小限無くす。中央塔か?」

「はい。そこに」

 

 そしてチャクラコントロールを使い、ピョンピョンと塔と塔の間を跳躍していく。あれ、俺今めっちゃ忍者してね?

 空に上がった事で人目を気にしなくなったのか、土偶みたいな傀儡も出てくるようになったけど、チャクラ糸を【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で捕食して落とす。下に誰かいたらごめんな。いたとしても傀儡だろうけど。

 

 そのまま、中央塔を目指す――。

 

 

 

 

 

「全く……セーラムめ、この俺様に楯突こうとは……」

「……サー、ラ、様……」

「ふん、忍でもない者が勝てるわけないだろう。チッ、貴重な労働力を殺させるな!」

「そりゃまー、外付けの力にゃ勝てんわな。フツーにズルだもん。あコレ特大ブーメランだコレ!」

「なにッ!?」

 

 ヌル遁・緑無による手裏剣影分身(物理)。影でもなんでもない、単純にものっそい量を放出しているだけのコレで、アンロクザンことムカーデを護衛の人から引き離す。

 発狂は、しないか。まぁ人を食い物にしてきたような奴にはあんまり効かないんだよね。

 

 窓を割り、侵入。

 セーラムを護衛の人の近くに置いて――ご対面だ。

 

「すみ、ません……セーラム、様。サーラ、様が……」

「喋ってはなりません。今薬を塗ります。いいですか、死んではなりませんよ」

 

 道中に渡した俺の塗り薬。効果はまーあんまり高いとは言えない。俺があんまりそういうの必要としないから、必然そういう知識も少ないんだよな。セーラムにも勿論そういう知識はない。

 ただ、一応忍の隠れ里で手に入れた薬だ。ご隠居の猛毒薬みたいなもん。

 

「貴様は……無剣鐘のヨゴシか!? 何故ここに……!」

「アレ? 遺跡群で傀儡操って襲ってきたのはそっちだろ? 俺の事は把握してるもんだろうと思ってたけど」

「な……俺を追ってきた砂の忍ではなかったのか……クソッ、余計なものを引き込んだ」

 

 サーラは……うわなんてトコにいやがる!

 

「ククッ……気付いたか。──余計な動きをしてみろ! サーラを殺すぞ!」

「!?」

 

 サーラはベッドの中にいた。

 その前に、ムカーデがいる。俺達とサーラを結んだ直線状にムカーデがいる図式。

 ムカーデはゆっくりと後退り……サーラの眠るベッドに手を掛ける。まだ幼い少女だ。ムカーデの力を考えれば、絞殺やら首を折るやら、あるいは単純に圧し潰すやら斬るやらと、殺害方法なんていくらでもあるだろう。

 ムカーデ側からすれば龍脈を操り得る奴は一人でいい。サーラかセーラムか。どっちかさえ生きてりゃいいんだ。どっちかを殺す、という可能性はゼロじゃない。

 

「やめなさい。──あなたこそ、そこから少しでも手を動かせば……私が首を斬ります」

「なにッ!?」

 

 俺の背後。そこには――放射された緑無の一本を手に持ち、その刃を自らの首に当てるセーラムの姿。

 オイオイオイオイ、潔すぎんだろ!

 

「あなたにとって龍脈を操る女王の血筋は必要不可欠なはず。あなたがサーラを手にかけた瞬間、私も死にます。これが女王の責務です」

「く……だが、良いのか、セーラム。お前の娘が死ぬんだぞ? お前の責務、その精神は褒め称えよう……だが! そのような勝手な責任感に、娘の命を巻き込むのか!?」

「……」

 

 セーラムと目が合う。

 ……あいよ。

 

「何を……何を笑っている、貴様」

「おん? あぁ俺笑ってた? すまんすまん。いや、ここで全員共倒れになれば、龍脈の力は独り占めできるな、って思ってさ。笑いはこらえてたつもりだったんだけど……隠せてなかったみたいだ」

「成程……そうか、貴様も龍脈の力が狙いか! 無剣鐘のヨゴシといえば、強大な力ばかりを狙って食い荒らすことで有名だ。ふふ、セーラム。ソイツをまるで護衛かのように扱っているが、知らないだろう! コイツは国際ビンゴブックにS級として掲載されている大犯罪者だ! 殺人、誘拐、破壊……あらゆる場所であらゆる力を食い散らかし続ける貪欲の化け物! なれば、ソイツの狙いは」

「S級ってマジけ? いつの間に上がったんだよ知らないぞソレ」

「!?」

 

 鬼の首を取ったように高らかに指摘している最中のムカーデ。その背後から、塗流槍で心臓を一突きにする。

 ……血は零れない。ま、傀儡だしな。

 

「な……いつ、のまに」

「最初からね。あそこにいるのは分身だよ」

 

 そう。

 俺がナチュラルに背後を見る事が出来たのは、別に俺が後ろに目ぇついた化け物になったから、とかではない。

 単純にそれが見える位置にいた、というだけだ。

 ジラーヤの時にも使った、ヌル分身。精密な動きなど一切できない木偶の坊。

 本体の俺は壁に貼り付いていて、窓から塗流槍を通したって寸法。サーラにガラス片が当たる可能性とか考えて角度を色々調整してたら遅くなった。俺の頭の悪さは変わらずってね。

 ちなみにこの作戦考えたの俺じゃなくてセーラムね。なんであの女王分身の術とか知ってんの。危なかったぞ、俺が下級忍術もロクに使えない忍者ですらないものだったから。変化とか要求されたらやばかった。

 

「でもま、アンタが傀儡なのも知ってる。本体は地下でチャクラ糸操ってんだろ? 安心しなよ、そこまでは行かないからさ。──その前に龍脈は食いつくさせてもらうけど」

「……ぐ、く……させるか!」

 

 その言葉と同時に動かなくなるムカーデ。糸を断ったのだろう。

 ……本体も傀儡、コイツも傀儡。確か本体は再生しまくるんだよな。いや全く、用意周到なこって。

 

「子を背負った経験は?」

「連れて行くのですか……?」

「じゃないと危険だろ。誰が守ってくれんだよ」

「……わかりました」

 

 言うと、セーラムは近くのカーテンを取り、それを結んだりしておんぶ紐に改造する。へー、器用だな。

 そしてサーラを入れて、それを背負った。

 

「改めて言うけど、安心しなよ。さっきアンロクザンが言ってたことは本当なのさ。俺、S級犯罪者だから。超やべー奴で超追われてるから。──それが味方についてんだ。怖いモンなんか無いのさ」

「大丈夫です」

「そうか、それなら良かっ」

「大丈夫。そんな風に悪びれなくとも、あなたは狂ってなどいませんよ。──ちゃんと、人の心を持った人間です」

 

 ──……。

 へぇ、流石は女王様だ。

 

 やる気の出る事言ってくれるじゃん。嬉しいね。

 

 あるいはそうあろうとしているだけであっても、俺は。

 

「んじゃま、また気持ち悪いので運ぶからよ。サーラが起きちゃったら、目と鼻覆ってやんな。子供には怖かろうさ、この力は」

「はい。──この国を、お願いします」

「おっけー」

 

 サーラを背負ったセーラムを奮割堤込で持ち上げる。そしてヌル鞠でガードした状態で――さっき配管工が出てきたマンホールを目指す。

 まだ全員が傀儡になったわけじゃない楼蘭で、そんなことをしているんだ。当然大パニックが起きる。女王のいる場所から化け物が出てきて、明らかに何かを運んでる様子なら尚更な。

 

 でも知らない。説明とかは自分でやってくれ。

 

 

 

 地下へと降りて行けば、蒸気の熱が近付いてくる。

 地下労働施設。働いた後の報酬通貨単位は何だろうね。ペリカは距離です。

 

 既に強制労働が始まっている所に化け物が入り込めば当然こっちもパニックになる……と思ったんだが、そんな気力も無い様子。まーそうか。騒ぐって疲れるもんな。

 そいじゃま、とっとと始めよう。

 セーラムを件の中継地へ降ろす。

 

「これは……ここに龍脈を引き込む……そうですか、成程、ここが工場として使われていたのですね」

「ああ。閉じてくれるか?」

「はい……離れていてください」

 

 言われた通り離れる。が、周囲を薄い【緑色の眩いぬるぬるしたもの】で覆うくらいの防御はしておく。

 

「女王の名のもとに命じます。汝、龍脈の流れを断ち、汝の力を抑えたまえ……急急如律令」

 

 身振り手振りと言葉。

 それにより、工場に供給されていた龍脈の力が消えて行く。突撃してきていた傀儡が崩れ落ち、今にも動き出さんとしていた土偶ーズが停止する。

 しかし……急急如律令、ってことは、女王は悪魔祓いの家系とかだったりすんのかね。アレ、速やかに悪霊は立ち去れ! みたいな意味でしょ? それが封印に使われてるってことは、過去、龍脈の力は被害を齎す何かだった、とか。

 そう考えると魍魎の力に似ているな。女王しか操れないってトコも含めて。

 

「……これで、ここへの供給は断ち切りました。ですが、元の栓である場を鎮めない事には……」

「勿論そこまで行くさ。ただ、奴さんは相当お怒りのようだけど」

 

 天井。

 そこから、巨大な傀儡が姿を現す。蜘蛛、あるいはアリジゴクか。

 なんで髪の毛つけてるのか知らないけど、まぁそれでギリムカーデだとわかる傀儡が、大声を上げて襲い掛かってくる。

 

「許さん……許さんぞおおおおおお!!」

「ヌル遁・吹綿条衝の術!」

 

 先ほどドーム状にしていた薄膜を広げ、工場全体に張る。それを上へ上へと持ち上げれば――自身の体重により、グシャっとなるムカーデ。

 

「ヌル遁・緑無」

 

 緑無を用い、錠に繋がれた男衆を解放していく。

 おっけおっけおっけー。

 

「セーラム、コイツら連れて地上……は無理か。とにかく安全なとこ……も無理か。えーと、まぁ龍脈の前の」

「大丈夫、この国の構造については私の方が理解しています。──皆の者! 私はこの国の女王、セーラムです! 申し訳ございません、私の失策により、あなたがたを苦しめました。ですが、どうか! 今は逃げる事に集中を……こちらへ! 私に着いてきてください!」

「……わかりました」

「ああ……セーラム様だ」

「この地獄は、終わるんだな」

「急いで!」

「はい!」

 

 人を従わせる声、っていうのかね。

 やる気の出る、活力の出る声だよ。流石は女王。

 

 さて、人目が無くなったんならこっちのもんだ。

 

 再生しつつあるムカーデを――食らう。

 尾の数えられない尾獣モード。跳躍し、食らいつき、腕や肉体をもいで、エネルギーを吸い尽くしていく。

 ……なんか俺、油女一族の蟲に仲間入りできそうだな。

 

「ぬ、ぐ……おおおおおおお!?」

「ハハッ、なんだ、自分が狙われないとでも思ってたか!? 貪欲に力を食うのが俺だってお前言ってただろうが――そりゃ食うさ、こんな力を持った傀儡、食わないはずがないだろ!」

「この……悪食め……! クソ、こんな所で使う予定はなかったが……龍脈の力よ!!」

 

 ピシャァ! と、雷のような力がムカーデを打つ。

 それにより――弾き飛ばされるのを感じた。嘘だろ? 力負けしたってのか。

 

 巨大化していくムカーデ。チャクラ糸をピンと張り、傀儡兵団になる予定だった傀儡のパーツを取り込んでいく。巨大化、巨大化、巨大化だ。形状は……アレだ、ネンドールみたいな形だ。

 

 流石にこの大きさを咀嚼するのは時間がかかるな。

 

「んじゃ、新技でも試しますかね! ──ヌル遁奥義!」

 

 相手が巨大で傀儡で、どんだけ壊しても良くて、しかも過去で! 木ノ葉の忍もいなくて、劇場版で!!

 なら──どんな無茶したっていいってことだろ!

 

「……俺はお前を信じる。いーよ、反逆しても。いーよ、見限っても。──でも、もし。俺を支えてくれんなら。俺を相棒だって思ってくれんなら。もし、お前に──人の心みたいなものが芽生えたのなら」

 

 次々と出していく。次々と【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を出していく。

 どろり、どろり、ぬめぬめり。

 

 それは液体。それは流動体。それは固体。それは生体。それは生物にして造られた存在。

 初めはそうだったのかもしれない。下級の奉仕種族。俺を転生させたあの神が、所謂神様転生の神でなく――宇宙的恐怖の、なんかやべー奴だったのかもしれない。それで、コイツにとって、俺は単なる首輪だったのかもしれない。

 時を経て、俺を侵蝕していたのかもしれない。血肉も、味の好みも、嗜好も思考も何もかも、乗っ取られようとしていたのかもしれない。

 

 けどいーよ。

 俺はお前を信じるよ。

 今のお前が変わったって、俺は信じてる。いーよ、別にそれが、勘違いであっても。

 

「口寄せェ!」

 

 痛そうだからやんなかった、やってこなかった行為。

 親指の腹を噛み、血を流すという行為。

 だらりと出てくるのは緑の血。凡そ人間のものではない緑の血を、己の胸に押し付ける。

 

 開け。

 

処漉(ショゴス)!」

 

 ソイツを、招来した。

 

 

 

 +++

 

 

 

 楼蘭が地下階段。

 そこに、セーラムと、民たちの姿があった。働かされていた男衆と合流した家族たちは再会を祝い、けれど地下で行われている化け物たちの戦いに身を震わせる。

 

「急いで、立ち止まらないで! 龍脈の近くの奥庭はあの化け物の力が及びません。そこならば、真に安全と言えるでしょう――ですから、どうかそこまでは走って!」

 

 セーラムは声を張り上げる。

 少しばかり気の抜けていた民たちもまた気を引き締め、その奥庭へと急ぐ。

 

「……」

 

 握りしめるは、返す暇もなく持ってきてしまっていた少年の武器。

 生物の目が開き、口が開き、悪臭を放つ独特な形状の苦無。けれど今はこれが唯一の武器だ。

 

 何より。

 

「大丈夫です。……あなたは決して、独りではないのですよ。たとえ世界中の誰もがあなたを恐れても、あなたには大切な存在がいる。……でしょう?」

 

 気味が悪いと言えるだろう、その苦無に。

 セーラムは、優しい声で喋りかける。

 

 苦無は──ニタり、と。

 いつも通り。けれど、確実に、笑っていた。

 

 

 

 +++

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