NURUTO 作:ONE DICE TWENTY
まぁ、すれ違っちまったモンはしょーがない。ここでクルっと踵を返してブンブンハロウユーヌーブ、なんて言おうものなら不審者極まりない。じゃあ尾行でもするか、なんて考えはポイだ。この時点で下忍にあるまじき感知力を持ったうちはサスケがいるのもそうだけど、ふつーにやばい戦争経験者であるはたけカカシがいる以上俺の尾行なんて赤子のソレだろう。
だからここはスルークリスタル。もといスルー推奨。ザブーザと白い子と後ガトーの最期を看取れないのは悲しい……悲しい、か? いやまぁ長年の付き合いがうんたらこうたらかんたらくんたらな気がしないでもないけど、しょーがないものとして諦めるとする。
しかし……はて?
すれ違ったのは四人だった。
振り返ってみても、何かを騒がしく談笑する四人しか見えない。黒髪。金髪。白髪。桃髪。
……タズーナは?
ザブーザと白い子の件がメインだから忘れがちだけど、NARUTOの波の国編のそもそもはタズーナという大工を波の国まで護衛する、という任務が始まりだったはずだ。よってこの四人はタズーナの護衛であり、何も楽しくピクニック気分で彼を置き忘れる、なんてことがあっちゃあならない。
原作のこの時期はすぐあとに中忍試験編に入ってしまう事もあって全てを把握できているわけじゃないんだけど、流石に一度行った国にまた同じ班で行く程忍者も暇じゃないだろう。ペイン襲来の後の復興時に超久しぶりじゃな、みたいな事タズナが言ってた覚えあるし、すぐには再会してない、と思うんだけど……。
それともなんか別の用事で来たとか? 護衛任務自体が発生してない的な。
……何の用だよ。
あー。
うー?
これは後を尾行るべき、ではないのだろうか。俺のチート能力ってまぁ【緑色の眩いぬるぬるしたもの】もそうではあるんだけど、何より原作知識が強すぎる。それが無駄になるとなるとかなり厳しい。マダーラオビートカグーヤあたりがなんか踏み外したりしたらやばい。
俺がいる事でのバタフライエフェクト、とかはしょーがないものとするけれど、そもそも原作で起きてたことが起きないってのは……要注意案件だなぁ。
よし。
んじゃ──尾行タイムと行きますか。
バレた。
「それで? 君はなんで俺達について来たの?」
「食べ物を持っていそうだったから」
一切興味がありません、と言った表情のサスケェ! はおいといて、他二人……ナルトとサクラはどこか心配そうに俺を見てくれている。まぁ歳同じくらいだしな。関所の人にも言われたけど、波の国の人間らしい服装……中でも貧民オブ貧民が着ている襤褸布を纏っているだけなので、同情も誘いやすい。
けれどカカシは、その昼行灯な態度とは打って変わって目だけが厳しく俺を睨んでいるものだから、ナルトが「まぁまぁカカシ先生それくらいで……」みたいな宥めをしてくれている程。それだけ力関係がはっきりしているし、俺が弱そうに見えるんだろう。
それでも──はたけカカシは気を緩めない。
まぁ俺の中のチャクラが見えてるんでしょーね。パンピーはこんなチャクラ持ってないから。任務タイミングで尾行してきた弱そうな子供(チャクラ持ち)なんて怪しいに決まってる。里の暗部を知ってるカカシからすれば、尚更に。木ノ葉の、ではないにせよ、他里の使いッ走りかなんかだと思われているに一票。
「そりゃ嘘だな。その服装、元から食料なんて持ってなかっただろう。狩りをすることはあれど、盗む気なんてサラサラ無い。というか、そんな困窮に瀕しているならこんなトコにいないよ」
ごもっとも。
服装云々に関しちゃまぁよくわからん部分も多いけど、波の国の貧乏人が火の国の関所にいる、ってのがまずおかしい。いやなまじいたとしてもこんなに元気なのがおかしいんだ。もっとやせ細ってフラッフラだったらわかるけど、俺元気百倍くらい元気だし。
さて他にもっともらしい嘘は、と検索してみるけど、無いね。
つーか嘘とか普通にバレそう。なんで尾行しようと思ったんださっきの俺。無理だろ。相手は忍だぞ上忍も上忍。
ここは……まぁ、ホントのこと言うか。
「火の国の人たちが波の国に何用かな、と思って」
「そういうってことは、君は波の国の守護者か何かなわけ?」
「生まれた国を守りたいと思うのは不思議じゃなくない?」
「出て行こうとしていたのに?」
「それを言われると弱い」
あっ。また本心が口を突いてっ。
「……なんか思ったより気の抜けた子だな。君、名前は?」
「俺は流浪の民……名など無い」
「本名は?」
「ヨゴシ」
まっずい。全然冗談通じる気がしない。
いやしかし、改めて酷い名だと思う。両親は何を思ってこんな名をつけたのか。両親が誰なのか知らないけどさ。
「そうか。じゃあヨゴシ。君もついてきなさい」
「えっ、カカシせんせ!? い、一応これって危険な任務なんじゃ……」
「カカシ……どういうつもりだ。こんな荷物を連れて行ける程甘い任務なのか?」
「甘すぎたから難しくしよう、ってだけさ。俺は少しこの子の事が気になる。この子は俺達の事が気になる。なら共にいた方が双方監視しやすいでしょ。その上で」
危険な任務。甘くない任務。
これらの言葉から、何かしらの目的があって波の国に来たことは分かった。ピクニックじゃあないのは確定。けどタズーナがいない以上護衛とかじゃない。むしろ……。
「これからお前たちにはこの子の護衛をしてもらう」
「……えーっと?」
「チッ」
「俺の直感的に、この子は波の国の誰かから逃げてきたんだと推測している。誰かに追われていたから火の国まで来ざるを得なかったのさ。それを国に連れ戻すんだから、当然刺客が襲ってくる可能性がある。お前たちにはそれを退け、この子を親御さんのもとへと無事届けてもらう」
「でも、カカシ先生……この子、"結構ですやめてください"って顔してますけど……」
「結構ですやめてください」
なまじ間違いじゃないのがやばい。
追われているっていうか探されているのは事実だし、それが面倒で、あと原作が云々かんぬんで抜け出してきたのだ。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】でチンピーラを追い払ったあの時の事件以降、確実に俺の住処周辺のチンピーラが増えたので間違いないと思う。あれは突然チンピーラが発狂しただけで俺は関係ないと思うんだけどなぁ。思い過ぎてるかもしれない。
とはいえナルトとサスケが必要な相手が送り込まれてくるかっつったら微妙なんじゃないかなぁ。原作にも出てきたチンピラ崩れくらいのは来るかもしれないけど、ザブーザと白い子まで刺客として差し出されるかってったら……うーん。
あとさっきも言ったけど親御さんいないよ俺。捨て子なのかどっちも死んでるのか知らないけど、物心ついた時には一人だった。そんな奴いくらでもいるけどね、波の国。
「でも君、俺達のこと気になるんだろう?」
「そりゃまぁ、すっごく」
「じゃあついてくるしかないんじゃないの」
さて──選択肢、も何もねぇや。
尾行するって決めたのは俺なんだから、願ったり叶ったりだろ。それで肩透かしくらうのは勝手にしてくれって話。
「……お願いします」
「よし、決まり!」
決まった。
サスケは明らかにイラついた顔してるし、あれだけ俺を庇ってたナルトもちょっと嫌そうな表情。サクラは……多分、自分がしっかりしなきゃ、みたいな決意してるんじゃないかな。
しっかし俺が護衛対象になる、か。
タズーナがいなけりゃ橋関連が進まない気がするんだけど、これ行ったとしてどうなるんやろね。あともうそろ警戒緩めてくれませんかねカカシさん。
さて、俺の護衛が難しい……はずもなく。
マジで俺が食料持ってなかったってのだけがトラブルらしいトラブルではあったものの、とてもスムーズに波の国目前の場所まで来た。
当然のことながらなーんにもなかったのでナルトとサスケのフラストレーションは溜まりに溜まりまくっているし、俺が死ぬほどずぼらなことがわかったからかサクラのフラストレーションも溜まっているように見えなくもない。
で──目前の所まで来たのだ。
目前。眼前。
けどそこで、はたけカカシはピタりと足を止めた。俺も止めた。
「ん? どうしたんだってばよ、カカシ先生」
「……霧が」
「霧?」
そう──霧が立ち込めてきたのだ。突然に。
いくら波の国が海に囲まれているからって、浜辺でもないここがこうも霧に包まれる、なんてのは早々ない。タズーナはそれを理由にしていたけど、これはどー見たって人工的な霧。
霧隠れの術──だとして。
使用者がザブーザ、だとして。
目的is何。
カカシ?
「動くなよ、お前たち」
さて──おかしなことに、殺気が向けられているのはどーにも俺。さっきからナルトやサスケの陰に隠れて逸らそうとしてるんだけど、どーにも俺。なぁに? 俺なんかした? あ、俺、なんかやっちゃいました? の方がいいか。
「どうやら本物のお出ましだ。……ヨゴシを必ず守れ」
「写輪眼のカカシか」
そいつは……桃地再不斬は、普通に出てきた。
原作みたいに木に首切り包丁刺して何故か後ろ向きに、のご登場じゃない。普通に霧の中から霧を纏って出てきた。
常纏うザブーザの殺気と、それに応対するカカシの殺気。そのぶつかり合いに、鋭敏なサスケがタケシのように震える。殺気出すならもうちょっと指向性をだな。
あ、ちなみに俺君は殺気感じ取れるけど出すとかできない。いや感じるってのも結構おかしな話なのは自覚してるんだけど、なんかわかるんだよね。ピリピリ来る感じが。でも別にこっちからぶつける、とかはてんでダメだった。何度チンピーラで試したことか。まぁ殺す気が一切ないからなんだろうけど。
さて、と。
とりあえずザブーザを退ける必要があるのは確かなんだろう。なんでか俺を狙ってきている以上、ガトーが俺の抹殺命令か何かを出したのは確定。深刻な問題ではあるものの、俺単体に限って言えばザブーザなどお茶の子さいさい。だって物理無効だし。水遁? ふ、ヌル遁・ヌルー壁で防ぐさ。
が──残念ながら、今は守ってくれようとしている三人がいる。
震えながらも、怯えながらも、俺を守ろうと苦無を構える幼き英雄が三人。三人が三人ともここで死んだら不味い人材。ナルトは大丈夫だろうけど、サスケとサクラは普通に死ぬ可能性あるからなここで。今はただの少年少女だし。
となれば、最悪俺がヌル遁を使うしかない、と。
「悪いが、そこの小僧を渡してもらおうか」
「えっ、マジで俺なん?」
「ダメ、ヨゴシ君。少し静かにしていて……カカシ先生がすぐに終わらせてくれるから」
マジで俺らしい。
サクラが俺を制してくれるけど、狙いが俺なら俺に近づかない方が良いと思う。ヌル遁は全身のどっからでも出せるので、使うなら俺だけを切り裂けるような状態になった方がいいし。そうすればそっちの方向に展開すればいいだけだから。
……って考えると。
「う、うわぁ!」
「ッ不味い!」
「バカ、動くなってばヨゴシ!」
情けない声を出して、弾かれるように卍フォーメーションから抜ける。これだけ濃い霧だ、五歩も離れたら俺の姿は見えなくなる。
見えるのは、この霧を出した張本人と、それに慣れている人物だけ。
──フ。
そんなのに正面切って戦うかよ!
「ヌル遁──ヌル鞠!」
全身から滲み出るは【緑色の眩いぬるぬるしたもの】。それはピンと伸ばした足先を起点にバランスよく周囲に放たれる。
生憎と熔遁・護謨鞠のような綺麗な球形に成形できるわけではないけれど、形としては球体のように(一瞬)なるのでそう名付けた。
さて、破壊力を持つこの粘液は、一瞬にして地面に穴を掘る。クソ程重いのだ。俺の体に乗る分にはなんでもないんだけど、他のものに圧し掛かる場合はそりゃあもうヤバい重さのものであるかのように振る舞う。
これによってできた穴。そこにそのまま沈んでいく俺。穴に粘液が溜まり、その発色から俺の姿を完全に隠しきる。フフ──この穴に剣を突き刺しても意味はない。衝撃は完全に吸収されるからな! そして、この粘液で俺が窒息する、ということもない。この粘液の内部に限り俺は通常通りの呼吸が可能なのだ。まぁ水の中でこの粘液に包まれた場合、普通に溺死するだろうけど。
んじゃま、完全安全地帯でぬくぬくとカカシの戦闘を見守らせてもらいますか──と。
「……いや、刺さらないって知ってても怖いな」
俺のいた場所。今は【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が溜まっているだけの場所に、大剣・首切り包丁がぶっ刺さり……かけて弾かれる。はっはー、物理攻撃など無駄無駄ァ!
が。
……俺から何かをする、ということはできない。できないこたないんだけど今はやんない方が良い。吐き出したヌル遁の回収がまだできない以上、ザブーザに余計なことをして【緑色の眩いぬるぬるしたもの】がナルト一行に見つかるのはまずいのだ。
こうやって自身の体に完全に密着するようにしているならまだしも、水鉄砲にしたりなんだりはまだ封印。
そーなってしまうとマジでやることがない。見守らせてもらいますか、なんてのはふざけてるわけじゃなくマジなのだ。ぶっちゃけ原作通りならナルトとサスケェのコンビネーションでカカシが助かってどうにかこうにか解決し、白い子にザブーザが仮死状態にされ云々かんぬんなはず。
それまで隠れておいて、頃合いを見て出る。それが一番……なんだけど。
「チ……なんだ、これは」
いるんだよね、上。
ご自慢の首切り包丁が刺さんなかった地面。まぁ見るからに怪しい色したそこに向けて、何度も何度もその大剣をぶっ刺している。勿論そのたんびに弾かれてんだけど、ここにいるのは確定、とばかりにザックザク。おおいカカシ何やってんの! 早く倒してよ!
ザブーザの掘り返しは休むことを知らない。
俺は【緑色の眩いぬるぬるしたもの】越しにその姿を観察できているけれど、ザブーザはそうではないはずだ。この【緑色の眩いぬるぬるしたもの】をただ一心不乱に刺し続けているだけ。
それは──どこか、偏執的に。
「そこまでだ」
当然そんなことしてたらカカーシが来る。
ザブーザの首にクナイを添え、その左目の写輪眼は既に励起済み。完全警戒モードでの接敵。
けれど──それすらも意に介さず、再不斬は【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を刺し続ける。添えられた苦無で首に傷がつくことも厭わずに、只管に。
「何を──」
と、そこで。
明らかに様子のおかしい再不斬の首に、二本の針が刺さった。
世界一短い槍、千本である。
その一撃を受けてザブーザは意識を失い、転倒。目をかっぴらき、血走らせたままに停止した。
沈黙。
カカシが地面を見る。そこには──再不斬が掘ったと思われる、深い穴が開いているばかり。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】なんてどこにも見当たらない。
その穴の中。それをカカシが確認しようとした──ところに、一人の少年が現れる。
霧隠れの追い忍。そうとわかる面をつけた少年。同じく霧隠れの、けれど抜け忍である桃地再不斬を確実に殺せる隙を窺っていたのだというその少年はカカシに礼を言い、それなりに大男であるはずの再不斬の体を持ち上げ去って行った。
……という一部始終を見納めて、ため息を一つ。
なんか……大事な部分を全部すっぽかして、始まりと終わりだけの帳尻を合わせた、みたいな。そんな感じだ。
白い子が出ててからの展開は俺も良く知る原作のそれ。台詞の一言一句まで同じだった。けれど、ソレに至るまでの経緯が違い過ぎる。
「ヨゴシ。もう出てきていいぞ」
あー、やっぱりバレてるよな、なんて思いつつ、地面から顔を出す。
霧はもう晴れてきている。遠くの方に背を合わせて警戒を続けている三人を見つけた。あの様子じゃコンビネーションもやってないな。いいのかなーそれで。
「穴掘りが得意なんだな」
「唯一の特技かな」
「そうか。……なんであれ、無事でよかった」
含みしかない言葉に肯定を返せば、案外優しい顔が返ってきて驚いた。いつの間にか隠していた左目も多分笑ってくれている。
ちなみに穴掘りが得意なのは事実。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を地面に押し付けるだけでゴリゴリ掘れるからね。
「おーいお前ら! もう大丈夫だ!」
「え、カカシ先生いつの間にそっちに!?」
「……」
「先生、大変! ヨゴシ君が……!」
「ああ、そっちも大丈夫。ヨゴシは穴を掘って逃げていたらしい」
驚きと警戒と安堵。
三者三様の反応を持って俺達の方に駆け寄ってくる三人を余所に、少し考える。
思い出すのはあのチンピラ。俺が回収しそこねたのかなんなのか、ヌル遁使用後に自身の足が血塗れになるほどその足をぶっ叩いて払ってかきむしっていた。
そして今回、再不斬はカカシのクナイを一切気にすることなくこっちを攻撃し続けた。その首が赤に染まって行こうとも、なんら構わず、だ。
……マジで狂気じゃね、これ。
この前まではふざけてSANC入ったとか言ってたけど、マジのマジじゃね?
え、そんなに狂気的かこれ。わりと綺麗な色してんだけどなー。
「へぇー、ヨゴシってば穴掘りが得意なのか!」
「ああでも、こんなに汚して……」
「……」
要検証、かなぁ。加え、たとえそうだとしてなんだって話ではあるんだけど。
それよか、サスケェがずぅーっと睨んできてて怖いです。なんだろ、もしかしてなんか気付かれた? ……そんなに隠し事なくね、俺。