NURUTO   作:ONE DICE TWENTY

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化け物には化け物ぶつけんだよ!!

 あんだけその瞬間を欲していたにもかかわらず、俺は島亀の元へは行かなかった。

 キサーメの本気──全盛期というべきところは、あの邂逅だけでいいんじゃないか、って思っちゃったんだ。彼の最期に、余計なモンは要らないだろうと。

 同じくして雨隠れにも行かなかった。俺ならばあるいはドイール……小南を救えたのかもしれないが、アレも必要な死だ。マダーラというかトビーというかオビートにイザナギを使わせるための、そして一瞬でもその光を見せるための。

 ほぼ同時期に起きるこの二つの死は、死に際大好きマンの俺からしても評価が高い。

 ……なんて、最近原作破壊しまくってる奴が言う事じゃないか。

 

 ようやく、褐返のマントとサングラスを取り戻して。

 

 だからさ、俺のやる事、というか、俺のいる場所は。

 

「お前が無剣鐘のヨゴシか、うん?」

「生前は終ぞ見えることの無かった奴だが……素直に気持ちが悪いな」

 

 カンクロー達奇襲部隊と、デーダラ達奇襲部隊のぶつかり合う場所。その直前。

 最初っから尾の数えられない尾獣モードで顕現しておいて、忍連合を近づけさせないようにした状態での相対となる。

 

「芸術性の欠片も無い奴だな、うん」

「──ヌル遁・苛伏四怨の術」

「!?」

 

 回収が面倒臭いから平地ではやらない、と言ったな! アレは嘘だ!

 いや全く嘘じゃないんだけど、今回ばかりは広がっても問題ないために初手で使う。円錐台状になった【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が発射台となり、中の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を天空へと飛ばし──それが雹となって降り注ぐ。

 ヌル遁・緑雹。

 デーダラとサソーリの乗った起爆粘土の鳥は穴だらけにされて落ちる。爆発はしない。付着した【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が起爆粘土を食べているからだ。薄味だが新しい食感で嬉しい。

 

「いきなりだな……」

「礼儀の欠片も無い奴じゃん、うん」

「だって話す事ないでしょ俺達。ヌル遁・大太刀の術」

「土遁・土流壁! ──防ぎ切れないな、うん!?」

 

 バターでも切り裂くかのようにデーダラの土流壁を割断する大太刀。それはそのままデーダラとサソーリの体を両断し、周囲の木々をも伐採する。ちょっとしたミステリーサークルになったか。

 けど、当然ながら死にはしない。エドテンされているからな。

 

「容赦ないじゃん、うん?」

「穢土転生体とは戦闘経験があってね。手加減無しで殺しても足りないことは知ってるんだよ。そんでもって、アンタらは試金石だ」

「なに?」

 

 胴体が二つに泣き別れ、動くことのできないでいる二人に近づく。

 尾の数えられない尾獣モード。その体表にあるらしい無数の口……ではなく、普通に前方についてる方の口を、開く。

 

 穢土転生体。

 それは口寄せされた魂を軸に、そして白ゼツを生贄に造られた蘇った死人。燃やされようが潰されようが溶かされようが朽ちることの無い身体は、けれどあくまで他から奪ったりができるわけじゃない事を知っている。

 あくまで個人。あくまで一人。

 

 その存在が──食われたら、どうなるのか。

 

「まさか、オレ達を食う気じゃないだろうな、うん!?」

「ホントは生前に食べたかったところはあるんだけどな。穢土転生体を食べたって栄養にはならないだろうし。でもまぁ、封印して回るより良いだろ」

「……ヒトを食らうか、化け物め」

 

 食べる。変に噛んだりせず、丸呑みで。

 咀嚼は中でするから。

 

「ヌル遁・栄養分岐……お前らはヒトじゃないからさ。なんとも思わないよ。ヒトであってもなんとも思わないけどね?」

 

 断末魔も、恨み言も。

 何もかも──緑の沼底へと消えて行った。

 

 

 

 

 その他、デーダラ達の率いていた穢土転生体を食べて、次の戦場へ。シンゾーも食べた。仕方ないとさせてほしい。

 極楽の匣を咀嚼した時、精神体も食えないことはない、というのがわかった。あの匣に込められていた、あの匣に食われていた幾多もの魂。肉体はとうに朽ち果て、ただ恐怖を、恐怖だけを受け続けていた魂たちを食べて──魂の食べ方を知った、というべきか。

 

 正直な話、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】に食われた魂がどこへ行くか、などはわからない。栄養分岐をしている以上俺の糧になったのか、それとも冥府や黄泉、穢土という場所に送られたのか。俺が死ぬまで俺が食べた魂は解放されないのか、はたまた個さえも無くなってしまうのか。

 何も、わからない。

 わからないまま力を揮う。

 

 成程、明確な目的の無い力は確かに怖い。ゴールが無いんだ、糧となる者も浮かばれないだろう。

 だから敢えて言う。セーラムには悪びれている、なんて揶揄されたけど、改めて。

 

 ご馳走様、ってね。

 

「ヨゴシ君! 何をやっているのか聞いても良いかな──君の姿を見て、僕達の部隊が混乱を覚えているんだけど……」

「サイか。気付いているだろう? 近辺に数多の、あまりに多くのエネルギー塊が現れた。こんな事は未だかつてない。馳走が自分からやって来たんだ。なら食べるだろう。ああ、安心しろ。間違って食べても人間だったら吐き出してやるよ。多分な」

「答えになってないけど、君は僕らの味方と見ていいのかな」

「少なくとも敵じゃなかろうさ」

 

 ドタドタと、それはもう激しい音を立てながら森を突き進む。尾の数えられない尾獣モードのままであるため、傍から見たらやべーのが走ってるって正気を失う奴も多いのだろう。頑張れ。

 決めたのだ。滅茶苦茶に暴れてやるって。

 

 だからまず──。

 

「戦場にいる穢土転生体。全部食らい尽くしてやる。巻き込まれたくなきゃ一か所に固まってな」

「……わかった。そう伝える」

 

 食べる。食べる食べる食べる。

 ケモノの四肢を駆使して森林を駆け抜け、穢土転生体を見つけたら【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の触手で絡め取って体内へ。走りながら咀嚼し、栄養分岐。更に強くなる。さらにエネルギーを蓄える。

 

 今の俺の姿は、あるいは貪食の獣、とでも呼ぶべきだろう。

 一見ヒトにしか見えない、あるいは仲間にさえ見えるのだろうヒトガタを、緑が、否、黒が貪り食う。穢土転生に操られている、など関係ない。

 エネルギー塊だ。穢土転生という樹木に生った果実をもいでいるだけ。もいだ果実の如何にまで樹木に干渉される筋合いはない。

 

 感慨もない。

 サイゾーを撃ち落さんとしていた白い子とザブーザも、その隣にいたパクーラとガーリも同じ。サソーリが手を出す前に、触手で絡め取って捕食する。白い子とパクーラの縛り上げる場所には一応配慮しました。

 飲み込まれる瞬間にあったのは恐怖か、無念か。どちらにせよ関係ない。俺が今やっている事はそういうことだ。

 

 原作破壊なんてどころじゃない。崩壊もいいところだ。

 忍界大戦の期間そのものを縮める行為。それはあるいは、無限月読を起こすに丁度いい時間、とやらをズラせるかもしれない。

 

 未だ、俺の幻術対策というのは基本のキである解! しかない。無限月読には勝てない。

 ゆえの大暴走。この戦争は俺が終わらせる。穢土転生体も外道魔像……十尾も何もかもを食らい尽くし、無限月読が為される前に、大筒木カグヤが復活する前に、全てを虚無に落とす。

 

 この戦いはなんだったんだ──と。

 転生者らしい行いだろう?

 

 

 

 

 

 森を抜ける。

 砂漠に出る。……砂漠は巨体だと足を取られるか。一旦全てを吸収し、元の大きさで駆け抜ける。楼蘭で傭兵やってた頃を思い出せばなんのその、ってね。

 

 まだガーラ達も来ていない段階だ。来る前に仕留めたい。ガーラの部隊は女性忍や新米忍が多く、多分【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を見たら一発で発狂するだろう子達が揃い踏みだ。短期決戦でカタをつけたい。

 流石に同時に何か所もの戦場へ、っていうのは無理だ。なんで、エネルギーの大きい方に来た。早く片付いたら海岸にも行くつもりではある。

 

「おい、なんか来るぞ。……子供か?」

「そのようだ。だが、ただの子供ではないな。額当ては無い上、チャクラもほとんどないが……」

「ア? おいおい、マジで何もないガキじゃねぇか! 拙いチャクラコントロールで砂の上走って可愛げのある……オイ、突っ込んでくるけどよ、この中にアイツ知ってる奴いるかよ。ちなみにオレは知らねえ」

「儂もだ」

「俺も知らないな」

「ヌル遁・濡れ刃烏」

 

 形成するのは手裏剣。いつか作ったヌル魔手裏剣とは違い、普通の大きさの奴だ。なんならちょっと小さいくらい。

 俺の手裏剣投げの精度は正直言ってゴミ。まともに的に当たらないからな。だから投げやすい苦無選んでるんだけど。

 ただし、今回はバラまけりゃそれでいいのでこっちを選択する。

 

「オイ攻撃してきたぞ!?」

「やはりただの子供ではなかったか」

「……」

 

 砂が持ち上がる。その砂に埋まっていく手裏剣たち。

 

 埋まっていく──否。

 

「突き抜けて来た、だと?」

「チャクラを一切感じない……ただの手裏剣でもなさそうだ」

「つーかどう見ても生きてるぞこれ! 口寄せ動物の一種じゃねぇか!?」

「……」

 

 流石に四人同時は面倒だ。プラスして、塵遁を防げるかどうかも確かめておきたい。危ない可能性もあるからな。

 砂を突き抜け、四人に避けられ、地面に突き刺さった手裏剣たち。

 それらが突然膨張、破裂し、大きさを増す。キサーメの時に使った圧縮球と同じだ。凄まじい圧縮は、けれど遠隔操作範囲外にまで行くと制御を失い元の大きさに戻る。

 ただし、体外に放出された【緑色の眩いぬるぬるしたもの】はそれら同士で繋がり合う性質を持つため、巨大化している最中に合体して──壁となる。

 

 分離したのはまず一人、四代目風影。

 

「磁遁・砂金大葬」

「ヌル遁・山津波の術!」

 

 地面から溢れ出る砂金に対し、同じ範囲でヌル遁を迸らせる。砂より砂金が重く、その動きを鈍らせられるというのなら、砂よりも砂金よりも重い【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が砂金を妨げられないはずもない。

 轟音と共に濁流と化した【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が四代目風影を飲み込む。

 

「オイガキ! 避けろ! 水遁・水牙弾!」

「ヌル遁・行火掘十の術」

 

 足先から地中深くにまで【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を射出する。それを軸に、二代目水影から放たれた水牙弾を受けきる。ぶっ飛ばされないためのもの。もうポンポンぶっ飛ばされるわけにゃいかないんだ。

 

「ヌル遁・大太刀の――」

「バカヤロウ! 俺の攻撃の話じゃねぇ、雷影だ!」

 

 ──……刹那。

 ヌル遁アーマーは纏っている。【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は火と雷に強い。

 だけど、それでも。

 

 極楽の匣を咀嚼した際に獲得したサトリの能力の一部が、教えてくれる。

 これは──恐怖だ。

 

「地獄突き!!」

 

 その突きは、確実に。

 俺の体へ突き刺さった。

 

 

 


 

 

 

 ……まぁ。

 

「もう、わかってたことだけどね」

「ヌ……!?」

 

 ずぶぶ、と底なし沼のような音を立てて、三代目雷影が俺の中へと沈んでいく。地獄突きを放った腕から、肩、その半身へと。

 俺の体には大穴。けれど、その身から垂れる血は赤ではなく緑。露出した血肉の色は赤ではなく緑。

 傷口はにゅぐにゅぐと気色の悪い音を立てながら塞がっていき、元通りになる。

 

 もう。

 随分と前から、知っていたことだ。

 俺がヒトじゃない、なんて。

 

「ヌル遁・栄養分岐」

 

 三代目雷影、そして先ほど圧し潰した四代目風影を捕食し、咀嚼する。

 正直に言えば、痛みはある。消えていない。俺は下級の奉仕種族と違って痛覚がある。身体をぶち抜かれる痛み、というのは恐ろしいものだ。意識が飛んでもおかしくはなかった。

 ……前にサクーラに殴られといて良かったな。アレの方が、効いたかもしれない。

 

 俺がヒトじゃないなんてわかってた。

 ヌル遁を、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を際限なく放出できるこの体がどうしてヒトであろうか。そんなの、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】と俺が同一であるから以外の理由がどこにあろうか。

 

 でもま、俺は約束は守る。

 だから、ヒトだ。

 

「おいおいおいおい、お前がどこの誰だか知んねぇけどよ、ちょいと不気味過ぎねえか? 一応俺達を蘇らせた奴含めて俺達が悪役だとばかり思ってたんだが……俺にはどーも、どーにもお前が正義の味方だとは思えねえ」

「お前とは気が合わないとばかり思っていたが、同感だな。我らが穢土転生体であることに関係なく、この子供はここで殺しておいた方が良いように思う……」

「酷い事言うなよ、オッサンたち。紛う方なくアンタらが今の忍界の敵だよ。俺はただ、ちょっと怖い能力を持ってるってだけだ。じゃなきゃ戦場の穢土転生体全部食う、なんて動画企画みたいなことやんないって」

「やべぇ、若者言葉についていけねぇ」

「二代目水影……貴様の無理に若者言葉に寄せようとしているような言動は、見ていて怖気の立つものがあったぞ……」

「んだと!?」

 

 分断に使った壁から幾本もの手を生み出す。それは二代目土影と二代目水影に殺到するが、土影はふわりと回避を、水影はぼやけて消えた。幻術……蜃を口寄せしてなくても使えるか。

 

「塵遁・原界剥離の術」

「おいてめェ、いくら不気味だからってガキに使う術じゃねぇだろ! ちっとは考えろ!」

「俺の意思ではない……」

「ヌル遁・豪ヌル腕の術!」

 

 お試しだ。

 本体である俺は地中に逃げつつ、豪ヌル腕の術だけで防げるかどうかを試す。

 

「無駄だ」

「口寄せェ! ……あ、俺も口寄せなんか使う気なかったんだよマジで!」

 

 無駄だった。

 豪ヌル腕の術は無残にも切り裂かれ、周囲に飛び散る。死んだとかそういうわけじゃないっぽいのが救いだけど、ヌル遁アーマーで防ぐって考えは捨てた方が良い。

 流石塵遁。血継淘汰は比じゃないな。

 

「オイ小僧! いいか、俺は陰遁使い……つまり幻術のエキスパートだ! んでこの蜃はその補助! だから見えるところにいる俺をやっても意味がねぇ!」

「うん。知ってる。その蜃を食べに来たと言っても過言じゃないし」

「……なぁおい土影。コイツ、マジでやばくねぇか? 他人の口寄せ動物食べるとか言ってんだけどよ」

「穢土転生体であるはずの雷影、風影が戻ってこないところを見るに、コイツに食われたのだろう。初めはコイツ自身も口寄せ動物の類だと思ったが、違うな。どこかの実験動物の類と見た。二代目火影がやりそうなことだ」

「ヌル遁・苛伏四怨の術」

 

 またもドンと打ち上げるは火山がごとき【緑色の眩いぬるぬるしたもの】。先ほどの手裏剣よりもさらに広範囲に広がった【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は、空中で礫となって周囲に降り注ぐ。どこに隠れていようと関係ない。雨が降れば蛤の位置もわかる。

 

「おお! やるじゃねえか坊主!」

「さっきからガキだの小僧だの坊主だのと呼び方が安定しないな」

「一々突っかかってくるんじゃねぇ。しっくりくるのを探してるんだよ」

「塵遁・原界剥離の術」

 

 避ける。

 ……無理か。片足が焼けたような痛みに晒される。

 けど、即座に降りそそいできた緑雹の一部をくっつけて再生。痛みは嘘のように消え、ただ痛かったという記憶が残るのみ。

 

 これ、首落とされたらヤバ案件かもな。

 自分で考えて再生しないと治せないのはキツい。

 

「まず、一つ」

 

 とにかく、降りそそぐ礫によって蜃の位置は特定した。固い殻を砕きつつ付着した【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は互いが互いにくっつき合い、蜃を包み込む。

 

「ヌル遁・栄養分岐……」

「あーあー、俺の可愛い蜃が。だがまぁ、よくやった、とは言ってやるか。そら、さっさと俺も食っちまいな。さっきは気ぃ悪くさせるようなこと言って悪かった。死人の言うことだ、気にするなよ?」

「水分身のクセに。何、戦ってみたくなったの?」

「──まぁな」

 

 バチン、と水影の姿が弾ける。その笑みは明らかに「興が乗って来た」とでもいうべきもの。

 けど、こっちにはそんな時間ないのだ。

 

「ヌル遁・吹綿条衝……」

 

 地面に刺さったり埋まったりしていた【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が一斉に繋がりあい、その高さを増していく。ムカーデ相手にも使ったけれど、ここは砂漠。足掛かりというべきものがヘンな形の岩くらいしかないので、キサーメの水スライムを参考にする。

 砂が落ちて行くと同時、浮き上がってくるのは二人。どちらも姿は見えずとも、エネルギー塊がある、というだけで十分だ。

 

「ヌル遁・一転地変」

 

 持ち上げた緑色の地面を──裏返す。

 上にあるものを、砂ごと包み込む。

 

「塵遁・原界剥離の術!」

 

 一瞬穴が開いてもすぐに閉じる。防げなかろうと関係ない。もう動けないだろう。足を捉えた。

 中は今どうなっているのか。砂のせいで俺ですらよく見えないけど、多分相当な恐怖演出になっているんじゃないかと思う。

 

「飲み込め」

 

 最期まで。

 何度も何度も塵遁が穴を開けてきていたけれど、彼らが出てくる事は無かった。

 

 

 ***

 

 

「報告! 現在、戦場の各地へ現れた無剣鐘のヨゴシによる穢土転生体への捕食行動が激しさを増しています! 確認できた範囲では凡そ半数程の穢土転生体が奴に取り込まれており、その後再生する様子もありません!」

「こちらの被害は?」

「ありません! 無剣鐘のヨゴシは完全に穢土転生体のみを狙っている様子。どのようにして見分けているのかは定かではありませんが、連合軍側の忍には一切手を付けることなく行動中!」

「そうか。引き続き奴の動向は監視しておけ! どれほど味方に見紛うような行動を取っても、奴が凶悪犯罪者であることには変わりないのだからな!」

「ハッ!」

 

 忍連合軍本部。

 そこには今、妙な空気が流れていた。

 

「……無剣鐘のヨゴシ。ワシとビーの奴で殺したはずだが、生きておったか」

「奴が穢土転生されている、という可能性は?」

「いえ、それはないでしょう。奇襲部隊で奴を見た、という者の話からすると、理性に欠けはなかったようで。瞳も、穢土転生特有のそれでなく、奴の特徴である緑眼であったとか」

「カーッ! 派手にやっとるようだのぅ!」

 

 穢土転生された死者を食らい続ける無剣鐘のヨゴシ。

 その報告はどれも良いものばかり。まるでこちらに味方をしているかのような、あるいはうちはマダラに敵対しているかのような立ち位置を取っている。

 各国において、無剣鐘のヨゴシはそれなりに有名な犯罪者だ。各国の歴史的建造物や遺産の類を破壊し、盗難し、食べる。おかげで失われた伝統が幾つも出ている。被害総額は両の手指で足りることなく、また被害に遭った所有者達の心に深い傷を残している。決して野放しにしてはならない犯罪者。

 

 出身国が波の国である、というのも扱いの難しい所の一つだった。

 忍五大国であれば責任の押し付け合いができようものを、隠れ里を持たない波の国出身とあらば、そう簡単に罪を問うことができない。最近波の国が勢いを増している事もあって、難しい状況なのだ。

 

 そんなヨゴシが、何故かいま、うちはマダラとの戦争における戦場に出てきていて、穢土転生によって操られている死者たちを食らい尽くしている。

 おかげで予想されていた半数以上の被害が抑えられ、忍連合は順調の途を辿っている状況だ。

 

「……ま、使えるものは利用するだけして、後でとっ捕まえればいいだろう。敵を減らしてくれるというのならありがたい限りだ」

「自来也様。あなたは無剣鐘のヨゴシに救われた経験があるのだとか。奴の本当の目的とは、ずばりなんだと思いますか?」

「ふむ。まぁ単純にアイツは食いたいから食ってるってのもあると思うがのぅ。それだけじゃないとすれば……」

「すれば?」

「デカいのが、いるんじゃないかのぅ。アイツが今まで散々食ってきたような、ドデカいチャクラの塊、みたいなのが」

 

 自来也がそう言った瞬間だった。

 

「な……なんだこれは!」

「ほぅらの……」

「ダルイ第一部隊の戦場に、とてつもないチャクラ体が出現! ──無剣鐘のヨゴシのチャクラ体がそちらへ急転換したことを確認!」

「奴の狙いはソレか!!」

「第一部隊と繋がりました! チャクラ体は巨大な人型の木像……化け物のようです!」

「無剣鐘のヨゴシ、凄まじい速度で移動中! あと数分と経たず化け物に接敵します!」

「報告! 巨大な化け物を呼び出したと思われるのは、うちはマダラのようです!」

「なに?」

「……頭が動いたとあれば、作戦を練り直す必要がありますね」

「ほ、報告! うずまきナルト、キラービーのチャクラを感知! 結界を通り抜けて移動中!」

「何だとぉ!?」

 

 一気に慌ただしくなる本部。

 冷静なのは三人。綱手と、奈良シカクと、そして自来也だけ。

 

「とりあえず様子を見ましょう。第一部隊を戦域から撤退させ、化け物と無剣鐘のヨゴシをぶつけるのです」

「成程、化け物には化け物を、か」

「ええ、作戦はその後練り直します」

「通信部隊! その旨をダルイ第一部隊に! また、他の地の部隊にも同様の内容を。急げ!」

「ハッ!」

 

 騒がしくなる中で、自来也は薄く目を開ける。

 己がここにいる意味。ヨゴシから聞いた、「俺のいた未来では死んでたよ」という言葉の意味を、じっくりと考えて。

 自来也は酒を──。

 

「莫迦者。酒など禁止に決まっているだろうが」

「……ちぇっ」

 

 怒られ、口を尖らせた。

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