NURUTO 作:ONE DICE TWENTY
「随分と杜撰な分身を使うものだ……だが確かにそれならば、感知というものをされることなくオレに接触できる……。しかし、それに何の意味がある? このだだっ広い砂漠で、たった一人で、忍ですらない者がオレに挑む……英雄でも気取っているつもりか?」
「まさか。アッチ行ったアレが英雄に見えたのなら、眼科にでも行った方が良い。うちはの写輪眼も地に落ちたもんだね」
「あまりそう粋がるな……貫禄の無いお前の見てくれでは、何を言っても愚かにしか聞こえん」
ダルーイ達がいる海岸線に向かって、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の巨塊を飛ばした。あそこには外道魔像が現れるはずなので、ワンチャン狙いと──【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を各地にまき散らすための措置。
別に忍連合の感知から逃れるためにやったとかそんなことはないんだけど、まぁずっと見られてるのも快くはなかったし、これで監視の目が外れたというのならラッキーだ。
さて、原作とは違い二代目土影の、ではなく誰か知らない穢土転生体によって口寄せされた──マダーラ。高い所から見下ろしてくれちゃって。まぁ彼の目には俺のすっくないチャクラ量が見えているだろうし、その他のスペック的にも敵ではないと認識されている事だろう。
「つまらんな」
「……」
「オレはこんなガキ一人を殺すためだけに穢土転生されたのか。もっと他に用途はあっただろうに」
「それだけこの術の術者に脅威認定されてるんだよ、俺が」
「お前はこの術の術者を知っているのか?」
「薬師カブト。ま、木端な忍だよ」
「そうか」
──恐怖。眼前に、うちはマダラがいた。
その拳が俺の顔面を捉える。
「……?」
「手加減ありがとう。ヌル遁・八重斗六鎖!」
粉砕されたのは、マダーラの拳の方だった。
ヌル遁アーマー。柱間ァ! に向けるでもない、一般人の、それも子供を殺すのに使う力などが本気であるはずもない。それ読みでハナから砂中に行火掘十の術を差し込んでおいて、ぶっ飛ばされないようにしてからの八重斗六鎖。両側から現れる歯のついた扇に、マダーラは捕まり──ポフン、と石に変わる。
変わり身の術。
「ふむ。血継限界の類か? 先ほど飛ばしたものと同様……口寄せ動物の類かと思ったが、どうやら違うらしい。だが、それにしてはチャクラ量が妙だな」
「写輪眼あれば今の避けられたんじゃないの?」
「格下相手に何故オレがそこまでしてやらねばならん。だが、少しばかり興も乗って来た。戯れ程度には相手をしてやろう」
「そりゃどうも。──ヌル遁・塗流槍」
「槍使いか」
まさか。
結局俺は槍も棒も、誰に教わった、ということはない。というか生涯師事したのはアカデミーの教師くらいだ。俺の武器類は基本独学で、マダーラのような達人との戦闘に耐え得るものじゃあない。
だからこれは。
「13kmや」
ただ長く、ただ速く伸ばすためだけの射出装置。ごめんな乱菊ゥ!
その衝撃に、大きく砂ぼこりが舞う。
走る音。振動。これは、塗流槍の上を走ってきているな。ならば塗流槍を流体に戻し、その足を絡めとる。軽くなる槍。足は確実に絡めとったのに軽くなったってことは、切り離したという事。穢土転生体ならではだ。キサーメもやってきたけど。
「ヌル遁・大太刀の術」
ならばと砂塵の全てをぶっ叩く勢いで、大太刀の腹を使って前方を薙ぐ。手応えなし。上か下か。下の場合厄介なので、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を全身に纏って大きく立つ。ヌル遁・ヌル龍だ。
砂埃さえも見下ろす形になれば、戦場を俯瞰し、マダーラがどこにいるかを判別できる。
「甘いな」
「穢土転生体にも味覚あるんだ」
「オレの率直な今の感想を言ってやろう。失望だ。興が乗ってきてすぐにこれだ。いくら術が優れていても、使い手がコレではな。今まで格下ばかりを狩って来たか、それとも命が脅かされる環境にいなかったか。どちらにせよこれ以上は意味が無い」
「そうかな」
マダーラは、後ろにいた。
俺のヌル龍に乗っていた。……ぜんっぜん気付けなかった。やっぱやばだわ。やば案件。
「終わりだ」
「だから、そうかな、って言ってるんだよ──須佐能乎!」
「なに?」
当然、そんなものは使えない。
けれど──龍脈の力を使えば。そして一応あの時捕食したムカーデの傀儡としての感覚を使えば。
形だけは、似せることができる。
「……それが、須佐能乎だと? 笑わせる……。どうやらオレを愚弄したいだけのようだな」
「だけど、防御力と攻撃力は折り紙付きってね!」
大太刀の術の半分くらいの大きさの剣を振るう。そのたった一振りで砂漠が割れ、岩々が裂けた。マダーラは──。
「火遁・豪火球の術」
「火は通しません!!」
効かない。これはヌル遁アーマーの進化系のようなものだ。見た目を寄せただけで須佐能乎の能力の類は使えないとはいえ、アーマーで巨大で人っぽい動きができる、というだけで結構十分。火遁と雷遁は基本通さず、風遁や水遁、土遁もほとんど効かない。一部水遁はやばかったりするけどマダーラは使わないから大丈夫だろう。
「……良いだろう。そこまで無残な殺され方を望むというのなら」
マダーラの周囲に青が迸る。それは骨を組み鎧を組み、二刀を以て世に顕現する。
これこそが須佐能乎。両目に万華鏡を携えた者で、うちはの血族であればだれもが携え得るうちはの奥の手。いやまぁ瞳術が強すぎて奥の手かどうかわかんないとこあるけど。
けれど──その気にさせる事に成功した。
あとは。
「ヌル遁・九条土矛!」
砂漠に潜ませていた【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の礫。影たちを相手にしたときに使ったソレを起動する。須佐能乎の内外へ飛び出し縛り上げ、須佐能乎と、そしてマダーラ本体を覆っていく。須佐能乎がどれほど暴れても関係ない。新たな鎧が如く、その表面を覆って行っているだけなのだから。
そしてそれはマダーラに対しても同じ。引き剥がそうとしても無駄だ。払った手に、指に、気付けば背に、腰に。動けば動くほど、嫌えば嫌うほど──【緑色の眩いぬるぬるしたもの】は対象に纏わりつく。
「これ、は」
「ヌル遁・堆鳬哩! 飲み込め!」
初めから狙いは──須佐能乎を食べる事だってばよ!
「神羅天征」
蝕まれ、咀嚼されていく須佐能乎とは裏腹に、マダーラに纏わりついた方の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】はその全てが斥力によって弾き飛ばされた。
……開眼したか。
「……カブトとか言ったか、その術者」
「ああ、うん」
「どうやら余計なことをしてくれたらしい。この眼をオレが開眼したのは、死の少し前だった。この若さで得たものではない」
「じゃ、大人しくしててくれる? ズルいじゃん、外付けの力なんてさ」
「いや……興は削がれたが、愚弄されたままに終わる程オレは優しくはない。ついでだ。死ね」
空中に──巨大な岩石ができあがっていく。
地爆天星。
少しだけ、笑みが零れた。
「何を笑っている?」
「いやさ、いいな、って思って」
「恐怖を前に狂ったか」
「コレを見ると、確信できる。俺はここにいる。この世界にいるんだ、って。終ぞ見る事は無かったからな。雨でも、木ノ葉でも。螺旋もまた象徴だけど、コレもまた疾風の象徴だろう。その絶望、その恐怖。あるいは外道魔像にさえ勝る鮮烈な畏怖」
「何を言っているのかわからんな」
パァン、と。
左の掌を、右の掌で打つ。ソレに何か意味があるとか、そういうわけじゃないけれど。
気合は十分!
「ヌル遁!」
ごぽりと、尋常ではない量の【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が俺の体から溢れ出る。
たった一人だ。うちはマダラの言う通り、今、俺は、たった一人だ。
それを、ソイツのためだけに。忍連合もいないこの砂漠で、俺のためだけに──これを使ううちはマダラに。
ただ感謝を。俺はこれを、この光景を、嬉しいと思う。
「蓮華蔵世界の術!!」
吹き出すは緑。立ち昇るは黒。
砂漠の各所から飛び出したそれらは、俺から溢れ出した本流に合わさったり離れたりを繰り返しながら螺旋を描き、地爆天星の隕石へと突撃する。破壊力はそのままだ。ゆえに砕き、貫き、割れ剥がれたものを食らう。地爆天星は核こそチャクラの塊なれど、その他は自然物でしかない。ゆえに栄養にはならないが──食えないこともない。
二発目が控えている事も知っている。だから速やかに。
砕き削れていく隕石を緑が包んでいく。薄く長く、広く速く。
落下速度を軽減することはできない。だから代わりに、その質量を少しでも削る。
緑黒はまるで天上世界の蓮華のように、真っすぐに立って平らな葉を開いている。
「中々に頑張るな」
さらには隕石の中へと入って行く【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の触手。蛇のような形になったそれは、隕石を内側から食べ尽くす。あとちょっと。あちょっとで包み終わる。
「──まるで第二波を知っているかのような急ぎぶりだな」
「対処済みだよ、ばーか!」
そうだ、対処済みだ。既に上で待機している隕石にも【緑色の眩いぬるぬるしたもの】を纏わりつかせてある。スムーズにコト運ぶためだ。よし、一個目はこれで──。
「なら、くれてやろう。三つめ、四つめ──五つめだ」
雲が飛ぶ。
宇宙空間にまで届く五連星。アイスクリームみたいになってるソレが、俺の目に映る。
──。
ホントは十尾戦で使いたかったが──仕方ないか。
「ほう? まだ奥の手があるようだな」
「解法・処──」
「風遁・螺旋手裏剣──だぁぁぁあああああああらっ!!」
ソレを出そうとした時だった。
オレンジ色の燃えさかる人影が空に見えて、即座に作戦を変更。
風が重なり合うすさまじい音とともに放たれたソレは三つめの隕石に向かっている。わかってるじゃないか……それでこそだ。
「ヌル遁・堆鳬哩! 飲み込め!」
一つ目の隕石が捕食される。すぐさま咀嚼し、その質量がどこぞへと消えたのも束の間に、二つ目へと取り掛かる。そっちはすでに覆ってある。だから繋げるだけでいい──おっけおっけおっけ!
また、咀嚼。
直後、その上にあった三つ目の隕石が凄まじい力によって破壊されたのを確認した。降り注ぐ小片を一つも逃さないように食らっていく。
あと二つ。
「ヨゴシ!」
「なんだ、ナルト!」
「足場、頼むってばよ!」
「あいよぉ!」
二つ目の隕石を食べて漂っていた【緑色の眩いぬるぬるしたもの】が即座に枝葉を伸ばし、硬質化する。オレンジの炎を纏うナルートがその枝に乗り、その両の手に風遁・螺旋手裏剣を二つ構えた。
「初めに奥のをやる! 手前のは止めといてくれ!」
「お安い御用で」
ナルートが乗っている所以外の枝から、四つ目の隕石に向かってトゲを射出する。刺さったらそこから中身を食らう。その間にナルートが五つ目の隕石を砕き割り、また降ってきた小片を掴む。掴んで食べる。
「これで、最後!」
「ヌル遁・離岩槍!」
上半分をナルートが、下半分を俺が。
壊し、食い尽くした。
「ほう……九尾の人柱力か」
「いや~……相変わらず薄気味悪いってばよ、それ……」
「見てトラウマ思い起こさなくなっただけ十分進歩だよ。今はそれでいい。段々愛せるようになってくるからさ」
「なんないと思う……」
砂埃が晴れて行く。
岩上を見るは、俺だけの時よりはちょっとだけ笑みの戻ったマダーラの姿。
「ナルト。その姿、どんくらい保つ?」
「まだまだいけるぜ! 道中お前が食い荒らしたとかで、全然戦ってねーしな!」
「お役に立てたよーで何よりだ。いいか、ナルト。俺は穢土転生体を食らい尽くせる。封印の必要なく、だ。ただし、アイツ……うちはマダラは輪廻眼を持ってる。ペイン天道と似た事をやってくると思え。吹っ飛ばしたり引き寄せたり、だ」
「おう」
「お前に頼みたいのは二つ。一つはアイツに吹っ飛ばす力を使わせる事。知っての通り、アレはインターバルに五秒を要する。その隙に俺が食えばジエンドだ。もう一つは──」
それを告げて、走り出す。
俺の方が圧倒的に走力が無いため、先行するのはどっちかというとヌル遁の方。
「だらぁあああああ!」
「ふむ……木遁・樹海降誕」
「大玉螺旋丸!」
「晶古球!」
ナルートの大玉螺旋丸と俺の圧縮球が樹海をぶちぶちと裂いていく。ヴァカめ! その術はもう一回食らってんだよ!
それに因んで!
「ヌル遁・柄楠雁芭!」
剣を振るう。
そこから迸るは──勿論【緑色の眩いぬるぬるしたもの】。剣はビームが撃てなきゃいけないんだよ!!
なんてことをしつつ、ナルートの足場作りも欠かさない。アニメでナルートがどういう動きをするのか、どういう時に一息を置くのかはみっちり頭に記されている。そのタイミングに合わせて足場を形成していけば、ナルートは的確に動くことができるはずだ。
……ちょっとぬるぬるしているのが玉に瑕だけど。
「九尾の人柱力が来てから多少動きがよくなったか。……しかし、気になるな。あの時何を出そうとしていたのか……」
「そんなに気になるなら引き出してみなよ」
「なに?」
その腰に、触れる。
──弾き飛ばされた。飛ばされた俺が、しかしぐちゃっとなる。ヌル分身だ。
これでまず一回!
「ナルト!」
「ああ! ──食らえ、手裏剣影分身の術!!」
ナルートから無数の手裏剣が放たれる。防ぐまでも無い、といった顔のマダーラだったが、ギリギリのところで須佐能乎を纏う事に成功した。
手裏剣は須佐能乎に弾かれる──に思われたが、べちゃ、べちゃと付着し、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】に変わる。
そう、俺が頼んだのは、俺の緑無や濡れ刃鴉をナルートに持ってもらって、隙が合ったら使ってほしい、というもの。
別に、他人の手から放たれても遠隔操作範囲内だったらヌル遁は使える。ゆえに。
「またか……」
「飲み込め!」
須佐能乎、二体目を捕食。
また理解できて来た。穢土転生体のチャクラと侮るなかれ、俺の捕食行為が穢土転生体にとって致命的であることはもうわかっている。
俺に食われたら、元には戻らない。
だから、これで。
「火遁・天牢!」
「また後ろだと?」
はっはーん、ヌル分身も段々サマになってきたな。
俺は【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の中ならスムーズに移動できる。樹海降誕でどこに何があるか分からなくなっているここなら、地面に敷き詰めた【緑色の眩いぬるぬるしたもの】の沼によって高速移動ができるって次第だ。今の今まで俺だと思ってたモンはチャクラで形作ったヌル分身。そういう使い方ができる。
「む……これは」
「お前、それ! 無為のおっさんの……」
「俺も、レパートリーならいくらかあるのさ。キャパシティが無いだけでね」
咀嚼した術しか使えない上、ソイツの技量を越えては使えない。そういう縛りがある上で、この火遁・天牢は非常に使い勝手が良い。効果が技量に影響せず、簡単に発動出来て、相手へのデバフになる。撃ち得なのだ。
「火遁の封印術か。中々マニアックな術を使うものだ」
「大玉螺旋丸!」
「風遁・大突破!」
ナルートがぶっ飛ばされる。
その身には炎。……ちぇ。
「穢土転生されたこの体に痛みなどというものが効くとでも?」
「そんなこと思って無いさ。ただ」
「ただ?」
ぐじゅる、という水音。
「天牢のためだけに接近、なんてことするわけないじゃないか!」
瞬間、【緑色の眩いぬるぬるしたもの】がマダーラを覆い尽くした──。
***
「水月」
「ん、なに?」
「お前は確か、鬼灯一族だったな」
「うん、そうだけどー? なに、重吾。アンタも血継限界とかに興味ある感じ?」
「いや……大蛇丸の元にいた頃、聞いた覚えがあると、今になって思い出した」
「そりゃそうでしょ。ボクの事だもん」
「そうじゃない。……ヨゴシ、という男。奴は自らを鬼灯一族だと名乗った。大蛇丸とカブトがそういった話をしていた……はずだ」
「へぇ?」
大蛇丸のアジトを歩く水月と重吾。
戦場で起こっているそれとは違う雰囲気……どこかほんわかとしている二人。
その最中、重吾の出した問いに、水月はふと記憶を探る。
「ヨゴシ、ってどんな字?」
「字はわからない」
「ふぅん。一応、鬼灯
「そうか……」
二人はもうすぐ、彼の元に辿り着──けない。